『パリの家族たち』 マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督インタビュー 

パーフェクトでなくていいと感じてほしい!

DSCF8430 paris 320.JPG

パリの家族たち   原題:La fete des meres
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:オドレイ・フルーロ、クロチルド・クロ、オリヴィア・コート、パスカル・アルビロ、ジャンヌ・ローザ、カルメン・マウラ、ニコール・ガルシア、 ヴァンサン・ドゥディエンヌ、マリー=クリスティーヌ・バロー、パスカル・ドゥモロン、ギュスタヴ・ケルヴェン、ノエミ・メルラン

*物語*在任中に出産した大統領、シングルマザーのジャーナリスト、教え子との恋愛を楽しむ独身の大学教授、認知症の母の介護に悩む小児科医、病を抱えた舞台女優、息子を国に置いて娼婦として暮らす中国女性、連絡の取れない恋人の子を身篭った花屋の女性・・・ 母の日を前に様々な思いのパリの家族たち。

公式サイト:http://synca.jp/paris/
シネジャ作品紹介:http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/465769882.html
★2019年5月25日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開


プロデューサー・脚本家・監督
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
Marie-Castille Mention-Schaar
*プロフィール*
コロンビア・ピクチャーズのDevelopment Excutive、ハリウッド・リポーターの国際版編集長を務めたあと、制作会社Trinacaでエクセキューティブプロデューサーを務める。1998年に制作会社LOMA NASHAを共同で立ち上げ、着想、脚本執筆、公開時のマーケティングなどの、プロジェクトを通した展開戦略に力を尽くしている。2001年、さらにVENDREDI FILMを共同で立ち上げ、この2つの制作会社で12本の長編を制作している。主な長編作品として、国際映画祭で数々の賞を受賞し日本でも大ヒットした『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(14)、第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映された『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(16/劇場未公開)などがある。また、プロデューサー、配給、テレビの映画編成担当者、エージェント、ジャーナリストなど、映画業界の女性たちからなるCERCLE FEMININ DU CINEMA FRANÇAIS (フランス映画の女性サークル)の設立者でもある。(公式サイトより)


◎インタビュー

監督にお会いするのは、『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』が日本で公開された2016年以来、3年ぶり。

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』公開時のインタビューは、こちら

今回は、公式サイトに既に詳しいインタビューが掲載されているので、それを踏まえてお話を伺った。

公式サイト インタビュー 



◆出産した大統領像に到達するのが大変だった


― 女性たちが皆生き生きとしていて素敵な映画でした。
在任中に出産した大統領アンヌが、本作ではなんといってもカッコよかったです。思い出したのが、実際に、ニュージーランドのアーダーン首相が2018年6月に出産して育児休暇を取られたことです。この物語はそれより前に構想されていたのですよね?

(注:過去には、パキスタンのベナズィール・ブットー首相が在任中に出産しているが、妊娠を理由に反対勢力が解任しようとしたため、育児休暇を取らなかった。アーダーン首相は、国家元首クラスの女性で初めて育児休暇を取得した。)


監督:このストーリーを書いた時には、まだですね。

― ニュースを聞いて、どのように思われましたか?

監督:女性が権力のある立場に立つことはいいことだと思います。というのは、男性は政治に関わるときには現実離れしがちだけど、母親には現実と近づけて考えることができると思うからです。どんな地位にあれ母親であることだけで大変だけど、現実に近づいて決断がくださるので、とてもいいと思います。
paris daitooryo2.jpg
©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA


― 大統領の母親業の係わり方の部分、3回、根本から書き換えられたとのこと。具体的にどのように監督の考え方が変わっていったのでしょう?


監督:大統領像を正しく発見するのが大変でした。最初はあまりにも赤ちゃんにべったりの大統領を考えて、これは良くないと思いました。次に書き直した時には、心理的におかしいと思ってやめました。大統領役がオドレイ・フルーロさんに決まって、話をしたところ、彼女が第一子を産んだとき、産後鬱になって、赤ちゃんを可愛いと思えなかったというので、それが興味深くて採用しました。実際に女優さんが経験したことでもあるし、現実に即していると思いました。
paris daitooryo1.jpg
©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA

― 大統領の夫があのように協力的だと、とても見本になっていいと思いました。産むことは女性にしかできないけれど、子育ては夫婦で行うものだと思います。フランスの男性は一般的にいかがですか?

監督:だんだん変わってきていると思います。特に若い世代は協力的。子どもが生まれた直後に、男性も育児休暇が取れるといいなと思います。新しい法律ができるようです。お母さんと同じくらい、お父さんにも育児休暇が取れるように。

◆登場人物に少しずつ自分が入っている

― 色々なタイプの女性が出てきて、観る人それぞれ、登場人物の中に自分を見つけることができるのではないかと思います。私自身、観ていて、自分の生き方がそれでいいと思わせてくれました。

監督:映画の中でいろんな人を観て、自分はそれでいいと思ってくださったのが面白いと思いました。母としても女性としても、何かと罪悪感を抱きがちです。いろいろな人を見て、パーフェクトでなくてもいいと思って貰えればいいなと思っていました。それがこの映画を作って達成したいと思っていたことの一つです。

― 様々な女性を描くにあたって、監督のまわりの人たちを観察されたのでしょうか? また、監督が投影された人物は?


監督: いろんなキャラクターにちょっとずつ自分が入っています。
私に一番近いのではなくて、一番感動するキャラクターは、中国女性です。母として子どもに一番大きな犠牲を払っている女性です。子どもがもっといい生活が出来るようにと、遠く離れたところで働いています。

◆映画を通して異文化を知ってほしい

― 私自身は独身なので、やはり独身の大学教授に思いがいきました。
監督にはお子様がいらっしゃるのでしょうか?


監督:二人います。25歳の娘と、16歳の息子です。
私はシングルマザーなので、育てるのは大変でした。
DSCF8426 paris 320.JPG


― フランスでは、女性の映画監督も多く、日本にくらべて、女性が自立して活躍できる国というイメージがあります。監督自身もシングルマザーと伺って、日本よりも女性が生き生きできる国なのかなと思いました。


監督:ほんとにフランスがそうかどうか、私にはわかりません。もしそうだとしたら理由はわかりません。フランスには、200万人のシングルマザーがいます。仕事と子育ての両立は大変です。シングルマザーの多くは貧困に近い状況で、もろい立場です。確かに女性は自立して活躍していますが、それなりの代償を払っていると思います。

― 日本の観客に、どんなところを一番観てほしいですか?

監督:私にとって映画を観るというのは、自分に似た人を見つけたり、違う人を見て学ぶのが好き。映画というのは、違う文化や違うバックグランドのあるところを体験することができて、映画で旅が出来ます。私が映画を観る時にするのと同じように、地理的にも社会的にも違うフランスを体験していただければと思います。

― まさに、私も映画を通じて、異文化や異なる社会を知ることができるのが、映画の一番の楽しみです。


◆次は男性に性転換して出産するトランスマンの物語
― 先ほどから気になっていたのですが、ペンダントが星と三日月です。イスラームのシンボルですね。

監督:そういうつもりじゃなかったのですが、確かにそうですね。

― 監督の前作『ヘブン ウィル ウェイト』は、残念ながら観ていないのですが、過激派イスラームに走るフランス女性を描いていてとても興味があります。もうそのテーマでは撮りませんか?

監督:もう撮らないですね。次はすごく違うものを撮ります。

― どんな作品ですか?


監督:トランスマン、つまり元は女性で、男性に性転換した人の物語です。
愛する奥さんが妊娠できないので、その彼女の代わりに子どもを産むのです。

― 産めるのでしょうか?


監督:性転換しましたが、まだ女性としての機能は持っているという設定です。

― 私の友人の娘さんがやはり性転換して男性となり、女性と結婚しています。子どものことはどうなるのだろうと・・・  誰かの精子を貰わないと出産できないですよね。実話に基づいているのでしょうか?

監督:アメリカでは、2000人の性転換した元女性の男性が妊娠しています。トーマス・ビーティという有名なトランスマンがいて、愛する奥さんのために3人子どもを産んでいます。私の映画はその人の話ではないです。フランスで実際にあるかどうか確認していないのですが、いるのではないかと思っています。

― 大胆な物語、楽しみにしています。ありがとうございました。


             取材:景山咲子




『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督インタビュー

悪役・古池は自分自身を投影しつつ、
田口トモロヲさんが演じてきた役を
イメージして書きあげた

utitya-mini.jpg


ゲキメーションとはアニメーションと漫画(劇画)を融合した表現方法のこと。映画『バイオレンス・ボイジャー』はホラー、アクション、コメディ、クライム、ドラマ、ファンタジー、ミステリー、ロマンスなど、あらゆるジャンルを盛り込み、ゲキメーションで表現した、 史上初の全編ゲキメーション長編映画である。前作『燃える仏像人間』でゲキメーションを取り入れて注目された宇治茶が監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影の6役を担当した。3年の歳月を掛けて完成させた宇治茶監督に本作にかける思いを聞いた。

<プロフィール>
宇治茶(UJICHA)
監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・撮影
1986年生まれ。京都府宇治市出身。2009年京 都嵯峨芸術大学観光デザイン学科卒業。大学の卒 業制作展にて、自身初めてとなるゲキメーション作品『RETNEPRAC 2』を発表。2010年にはゲキメーション第二作『宇宙妖怪戦争』を制作し、京都 一条妖怪ストリートにて公開。この2作がきっかけとなり2011年より『燃える仏像人間』の制作を開始し、2013年にはゆうばり国際ファンタスティック映画祭を始め、ドイツ、韓国、オランダなど、国内外 数々の映画祭に招待された後、全国公開される。さらに2013年度第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門にて優秀賞を受賞。

『バイオレンス・ボイジャー』
violencevoyagerposter.jpg

日本の山奥の村に住むアメリカ人少年のボビーは、数少ない友人のあっくんと飼い猫のデレクを連れて、村はずれの山に遊びに出かけた。その途中、娯楽施設“バイオレンス・ボイジャー”と書かれた看板を発見した彼らは、その看板に惹かれて施設を目指すことに。施設のアトラクションを堪能し、遊び疲れて休息していたところ、ボビーたちはボロボロの服を着た少女・時子と出会う。彼女は数日前からここを出られずにいると言い、行動を共にすることに。彼らはさらに、先客として迷い込んでいた村の子どもたちとも出会うが、謎の白いロボットによる襲撃を受け、子供たちたちは次々と捕獲されて行ってしまう。時子の救出とバイオレンス・ボイジャーの謎を解き明かすため、ボビーは立ち上がるのだった…!

監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影:宇治茶
声の出演:ボビー:悠木碧、ジョージ:田中直樹、よし子:藤田咲、あっくん:高橋茂雄、たかあき:小野大輔、古池:田口トモロヲ、ナレーション:松本人志
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
©︎吉本興業
公式サイト:http://violencevoyager.com/
2019年5月24日(金)からシネ・リーブル池袋ほかで全国順次公開

violencevoyagermain.jpg


―監督がゲキメーションと出会ったきっかけを教えてください。

大学の卒業制作で映像作品を撮ろうと思い、参考になるものをネットで探していたところ、1979年代に放送されていた楳図かずおさん原作のゲキメーションで作られたテレビアニメ『妖怪伝 猫目小僧』を見つけました。この手法なら自分が描いていた絵を活かした作品作りができるのではないかと思ったのです。
さらに、電気グルーヴが2008年に発表した「モノノケダンス」PVでもゲキメーションが使われていたことにも影響を受け、2009年の卒業制作で短編ゲキメーションを作って発表しました。

―ゲキメーションのどんなところが自分に向いていると感じましたか。

普通のアニメを違い、ペープサートのように描かれた人物を直接、動かすので、動かすために何枚も描く必要がありません。かなり描き込んだ絵を使えるところがいちばん合っていると思いました。
まず15分くらいの短編、その後に10分の短編を作り、2011年頃から『燃える仏像人間』を作り始めました。

violencevoyagersub1.jpg


―本作はペープサートから液体的なものが飛び出たり、流れ出たりするのでびっくりしました。初めての頃と比べて、技術が進歩しているのでしょうか。

ゲキメーションを教えている人はいないので、『妖怪伝 猫目小僧』を見て、独学で研究しています。やっていることはそんなに変わっていませんが、燃える規模が大きくなり、爆発シーンを入れるなど、少しずつ進歩している部分はあるかもしれません。
流れ出る液体ですが、スライムみたいなもの、片栗粉を混ぜたものなどいろいろやってみて、自分の中でいい塩梅を見つけて合成した、何とも言えない液体です。口の部分に裏からチューブを繋ぎ、その先に注射器をつけてあります。実際の原画は小さいので、片手で原画を押さえつつ、注射器を持って、ぴゅっと出しました。

―現場のサイズ感はどのくらいなのでしょうか。

机の上で人形を作り、撮影をして、編集まで完結しています。人形は10㎝もないくらい。これに棒をつけたり、クリップで挟んだり、手で直接持ったりして、カメラを片手に持ちつつ、人形を動かしています。

―日本の山間部が舞台ですが、主人公はアメリカ人の少年です。短パンをはいている辺りに時代を感じますが、なぜ、そのような設定にされたのでしょうか。

昔見た『グーニーズ』や『E.T.』のように、金髪の男の子が不思議な事態に巻き込まれていく話が作りたかったのです。そして、アメリカっぽい話を自分が知っている日本で作ったらどうなるのかなというのが発想の原点です。
ホラー映画が好きなので、そういった要素も作品の中に入っていると思いますが、『ウエストワールド』でロボットが襲ってくる、『ジュラシック・パーク』で恐竜に襲われる感じが元になっています。それを自分が住んでいたところの近所にある山を舞台にしてみました。

violencevoyagersub4.jpg


―監督ご自身を投影した登場人物はいますか。

主人公のボビーにはやはり投影されていると思いますが、それだけでなく、悪役の古池にもかなり強く自分が出ています。

―キャラクターはあっくん兄弟のように額が思いっきり出ているか、しっかり髪で覆われているかのどちらかの印象を受けました。それは監督の絵の特徴なのでしょうか。

あっくんの額はキャラクターの特徴付けで、深い意味はありません。最初に子どもたちをいろいろ描いたのですが、額にしわのある子どもが出てきたら面白いかなと思って描きました。
あまり意識はしていませんが、このところ毛が抜けることが増え、僕自身、ちょっと不安を感じているので、その不安が古池の額に出ているのではないでしょうか。禿げるのが怖いのかもしれませんね(笑)。

violencevoyagersub3.jpg


―作品の内容が実写ではできないくらい凄惨です。ゲキメーションだから描けると意識していましたか。

言われてみれば、そうですね。これを実写でやろうとしたら、制作費がものすごくかかるけれど、ゲキメーションなら机の上だけで作れるからいいなと思って作ったので、内容の凄惨さまでは意識していませんでした。

―ざっくり描くことで、細かな部分を想像します。これがかえって怖さを増幅しました。

普通のアニメより動きもぎこちないですからね

violencevoyagersub2.jpg


―作品に物理的な奥行きを感じました。

それは前作からかなり考えていました。ずっとミラーレスカメラを使っていますが、センサーが大きいカメラを使うとぼけを活かした表現ができます。手前をぼかしたり、背景をぼかしたり、また光の感じで影を調整して、奥行きを作ることを意識していました。

―すべてを監督お一人でなさっていますが、1人で制作した事での苦労はありましたか。

前作では幻覚が見えるくらい、追い込まれました。毎日のように金縛りにあった時期もありましたが、今回はそのようなことはあまり起こりませんでした。笑
僕は夜があまり好きではないので、早寝早起きして、昼間は家に籠り、たまに散歩で外に出るくらい。できる限りの作業を明るいうちにして、乗り越えました。

―1人だったからよかったこともありましたか。

脚本の段階でもそうですが、周りからの干渉がなく、1人で気楽に、思いのまま自由に作ることができました。だからこそ、凄惨な部分も残っているのだと思います。周りからの制御があれば、もう少しソフトな作品になっていたかもしれませんね。机の上で、ただただ人形遊びしているようなことを3年続けていました。

violencevoyagersub8.jpg


―本作の声の出演は豪華ですね。キャスティングは監督がされたのでしょうか。

僕は声優さんに詳しくなかったので、プロデューサーの安斎レオさんにお任せしたところ、ボビーは悠木碧さんがいいのではないかと提案がありました。そこで、僕も悠木碧さんのアニメを見て、声を聞いて、すごくいいなと思い、やっていただきました。ばっちりはまってよかったなと思っています。「ココリコ」の田中直樹さん、「サバンナ」の高橋茂雄さんは前から演技がお上手だと思っていたので、ぜひ出てほしいと思ってお願いしたところ、OKをいただきました。
田口トモロヲさんにお願いした古池というキャラクターは田口さんがこれまで演じられてきた役を基にしている部分があったので、ぴったりだったのだと思います。

―古池の役は田口トモロヲさんで当て書きされたのでしょうか。

古池は田口さんが演じてきたキャラクターを基に作っていますが、田口さんご本人に出ていただけるとは考えてもみなかったので、当て書きではありません。安斎さんから田口さんはどうだろうかと提案があり、田口さんがオファーを受けてくださったので、本当にうれしかったです。

violencevoyagersub9.jpg


―アフレコの時に田口さんと話をしましたか。

田口さんは楳図かずおさんの「神の左手悪魔の右手」を実写化した作品に悪役で出演されていましたので、「あのイメージでやってほしい」とお伝えしました。そして、田口さんがみうらじゅんさんとやっていた「ブロンソンズ」が好きだったので、その本にサインをいただきました。

violencevoyagersub5.jpg


―ボビーのその後が気になります。続編の予定はありますか。

『燃える仏像人間』もそうですが、僕の中では全部終わったと思っています。ここから先はご覧になった方がみんなで話してもらえるといいなと思っています。すでに次の作品を考えていますが、具体的にはまだ動き出せていない状態です。

―これから作品をご覧になる方にひとことお願いします。

前作の『燃える仏像人間』をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はもっと多くの方に見てもらえるよう、エンタメ作品を目指して作りました。PG12になっていますが、老若男女問わず、みなさんに見ていただければと思っています。万が一、僕の世界観が気に入らなくても、小野大輔さんに素晴らしい演技をしていただき、松本人志さんにはナレーションをしていただいていますので、そういった声優さんの声を聞いていただくだけでも価値があると思います。よろしくお願いいたします。
(取材・写真:堀木三紀)

『アメリカン・アニマルズ』バート・レイトン監督トークイベント

15580024887850.jpg


2004年アメリカ トランシルヴァニア大学で実際に起きた事件を描いたクライム青春ムービー。犯人は大学生4人組、狙うは図書館に保管された12憶円のヴィンテージ本.......。
何一つ不自由ない若者4人を犯罪に駆り立てたものとは何だったのか?前代未聞の計画は成功することができるのか?

実行犯4人を映画に登場させた今年1番の異色にして意欲作『 アメリカン・アニマルズ』が、5月17日から新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開されている。

このほど同作のバート・レイトン監督が来日し、映画秘宝編集長の岩田和明さんをゲストに迎え、記念イベントが行われた。


『 アメリカンアニマルズ』バート・レイトン監督トークイベント 概要
■日時 :5月10日(金)
■場所 :スペースFS汐留(東京都港区東新橋1-1-16 汐留FSビル3F)
■登壇者:バート・レイトン監督、岩田和明さん(映画秘宝編集長)




試写終了後、万雷の拍手に包まれ、同監督と岩田氏が登場した。岩田氏は本作のイラストTシャツを着てくるほどの気合いの入れよう。
一方のレイトン監督は、ハイエッジーな作品を撮った人とは信じられないほどの穏やかな佇まいで終始ニコニコとした笑顔。
早速、岩田氏の編集者としての視点による質問から始まった。


岩田氏:編集者として、まずこの映画は取材力が高いことに驚いた。記者として興味があるのですが、どうして実行犯の本人たちを出そうと思ったのか?
監督:報道でこの事件を知り興味を持った。私はドキュメントを撮っていたが、ドラマの中に彼らを登場させたら.......というハイブリッドなアイデアを思いついた。当事者に話を聞くのは楽しいものだから。
なぜ恵まれた環境にあった若者たちが犯行に及んだか、その動機を知りたかった。
彼らがまだ受刑中に、何度も手紙のやり取りをした。そして自分自身の背景も話し、彼らの信頼を得た。


岩田氏:映画に出てくれというのは何時の時点で伝えたのか?
監督:手紙のやり取りや面談を重ね、数ヶ月後に依頼した。鳥類の希少本を見つけたスペンサーはアーティストを目指していたことから分かるように、ただの強盗ではなく、目的を失った若者だったのではないかと直感した。

岩田氏:映画に出るのを嫌がった人は?
監督:図書館の司書は、これがどういう映画になるか分からないし、被害者としてまだ4人に怒りを感じていた。なので、直接自分が説明し、出演を説得した。
実は、完成した映画を観て最も喜んだのは司書。一緒に観ていて彼女の夫は途中で寝てしまったのに、彼女はエンディングで脚を踏み鳴らして踊っていたくらい(笑)。
もし彼女が内容に意義を唱えたら変えるつもりだった。でも、内容を肯定的に捉えてくれたのです。そして「許す」という境地に達していた。
逆に4人が内容に意義を唱えても変えるつもりはなかった。


岩田氏:私はある意味この映画をコメディとして観ました 。バカ悲しい青春映画のような.......。
監督:コメディの他、様々なスタイルをとったつもり。ただ、被害者がいるため、敢えて強盗シーンは辛くなるように描いた。一線を越えてしまった点を見せたかった。後半は面白いと言われる。
脚本の基本は知ることから始まる。彼らの若く軽はずみな行動、生活の苦労を知らないからリアルさがない。が、通常の生活はルーザーともいえるものだ。


岩田氏:実際の4人は演技をしたことはないのに、カメラの前でとても自然に見える。その訳は?
監督:時間をかけて信頼関係を築いたので率直に話してくれた。
技術的には、説明が難しいが、カメラの前にマジックミラーを置くアイデアを採用した。そのミラー越しに映った私と話せばカメラ目線で話して貰える。
カメラを見ないでカメラを意識せずに話すことができる。これはドキュメンタリーで培った技法。


15580021197552.jpg



技術的に興味深い話が飛び出し、会場全体から「ほほぉ〜」というどよめきが起きたタイミングで、岩田氏より観客へ質問が呼び掛けられた。たくさんの挙手の中、時間の都合で3人が監督に質問する機会を得た。

① あの4人は実際どんな人物だったのか?
監督:出所後、10年を経ていたため、自身の罪の重さと共に、親を悲しませたという、親の悲しみをを背負ってるいるように感じた。

②題名の由来はダーウィンの本から?
監督:いい質問だ。盗もうとした鳥類の本、ダーウィンの「種の起源」から、アニマルズと取った。ダーウィンとは掛け離れた若者が盗む。動物的衝動のような意味を表現したかった。

③4人の配役はどのように決めたのか?
監督:多くの俳優たちと会った。著名で人気のある若手俳優が集まったが、私には彼らがディズニー映画に出てくるような甘ったるい2枚目にしか見えなかった。
まず犯罪グループのリーダーである、エヴァン・ピーターズが決まった。私はバリー・コーガンをとても気に入っており、彼の1度見たら忘れられない顔、繊細さからスペンサー役は彼しかいないと最初から直感していた。ところが、プロデューサーは人気のある有名俳優を勧めてきたが、そこは自分の信念を推し通した。全体的に人間味ある良いキャスティングができたと確信している。


最後に監督は、「今日は来てくれてありがとう」と日本語で観客たちに語りかけ、拝む仕草を見せると会場は大喝采!今後注目必至の若手新鋭監督を囲む貴重な夕べとなった。



15580028768580.jpg



監督・脚本:バート・レイトン『The Imposter』(英国アカデミー賞受賞)
出演:エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン
原題:American Animals
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal
Pictures Limited 2018
(2018 年/アメリカ・イギリス/116 分/スコープサイズ/5.1ch)
公式サイト:http://www.phantom-film.com/americananimals/sp/

posted by 大瀧幸恵 at 00:00 トークショー