『英国総督 最後の家』インド人学校での特別授業 

~祖国の分離独立の歴史を背景にした宗教の違いを越えた恋物語に沸く~
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1947年2月、英国統治からの独立前夜のインド。
大英帝国総督官邸に着任した最後の総督マウントバッテン卿一家。
総督秘書官のヒンドゥー教徒のジートと、総督令嬢の世話係のイスラーム教徒の女性アーリアの恋の物語が、独立後のインドを巡る政治家たちの駆け引きを背景にダイナミックに描かれた『英国総督 最後の家』。
作品紹介:http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/460910410.html

インド独立70年を迎えた2017年に製作され、インド独立記念日(8月15日)に併せ、8月11日(土・祝)より日本公開となる本作の公開を前に、7月12日(木)、西大島にあるインドのインターナショナルスクール「India International School in Japan」で、在校生徒を対象に母国の重要な歴史的転換期を認識してもらう目的で、特別授業が開かれました。

小学生から高校生までの年齢の生徒1200人が学ぶインド人学校。
午前中の低学年を対象にした上映会では、おしゃべりする生徒たちが多かったそうで、映画はちょっと難しかったのかもしれません。
私たちは、午後の14歳~18歳の生徒たちを対象にした特別授業を取材。
映画のどんな場面に反応するのかも知りたくて、1時20分からの上映会から参加しました。
(私自身は、試写で観ていましたので、今回は2度目)
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35度はありそうな暑い真昼間、冷房のない体育館での上映会でしたが、生徒たちは静かに映画に見入っていました。

その生徒たちが初めて笑ったのは、マウントバッテン卿の夫人が官邸の台所に行き、料理人たちに「いろいろな信仰の人にあわせたインドの料理を作ってくださいね」とお願いしたのに対し、料理人の一人がヒンディー語で「せっかく洋食を習ったのに」とぼやいた時のことでした。
(私にはわからない、ちぇっ! といったニュアンスだったのかも)

官邸の所有物もインド80%、パキスタン20%できっちり分けることになり、台所でナイフやフォークを数える場面でも笑いがおきました。

そして、どっとどよめいたのが、ジートとアーリアの初キスの場面。
離れ離れになった二人が駆け寄って抱きつく場面でも、「ヒュー! ヒュー!」と掛け声を上げて拍手。
(実は、この場面、初めて観たときに、アーリアはイスラーム教徒だし、あの時代にこの場面は許されるのかなと思ったのですが、あの時代だからこそ「有り」なのですね。)

インド独立で国旗がはためいたときには、もちろん大きな拍手。
最後まで、おしゃべりすることもなく、皆、真剣に映画に見入っていたのが印象的でした。


◆特別授業
上映後、大妻女子大学、淑徳大学兼任講師でインド史を教えている関口真理さんを講師に特別授業が開かれました。
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インドの伝統衣装サリー姿で関口先生が登壇すると、皆、大きな拍手で迎えました。

関口先生: 英語? ヒンディー? どちらでお話しましょう?
(冒頭、男性のインド人の先生が英語で挨拶していたので、どうやらここでは英語が公用語のよう。この後、関口先生は英語で授業)

◆この映画のこと、分離独立のこと
関口:私は日本人です。インドとのハーフでもなくて、夫がインド人でもありません。
映画はいかがでしたか?

生徒たち:Great! (大きな拍手)

関口:歴史的なことを背景にしていて、インドにとっても、世界にとっても重要な話でしたね。この映画の中の歴史的なストーリーは、恐らく皆さん知っていると思います。皆さんどう?

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生徒:マウントバッテンの奥様の働きぶりがよかった。
生徒:独立に携わった重要な人物たちの動きを知ることができてよかった。

関口:デリーの元総督邸、今は大統領官邸ですが、行ったことのある人?

(数人の手があがる)

生徒:休暇のときに、家族と行きました。

関口:映画の中で特に印象的だった場面は?

生徒:ラブストーリーがよかった。総督の奥様がよかった。
(総督の奥様、かなり評価が高いです。実は、私は映画を初めて観たときに、奥様の働きについて、特に印象に残ってなかったのでした)

関口:分離独立の時に、とても困難な状況がありましたが、皆さん自身のおじいさんたちや家族から話を聞いたことはありますか?
パキスタンやバングラデシュの方から移住してきた先祖のいる方は?
(ほとんど手があがらない) ここにはいないようですね。
映画を観て、これを機会に家族に聞いてみてくださいね。分離独立の時の話はとても重要です。勉強してみてくださいね。次の世代にも語り継いでいく必要があると思います。

◆好きなインド映画は? 俳優は?

関口:この映画以外のこともお話しましょう。インド出身の家族と日本に住んでどんなことを考えているかなど聞いてみたいです。 ボリウッド映画はどうやって観ていますか?

生徒: インターネット!
生徒:日本の映画館!
生徒:『バーフバリ』を映画館で観ました。

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関口:好きなスターは?

生徒:シャー・ルク・カーン!  (何人もが同意の拍手。私も拍手♪)
『ヴィールとザーラ』が一番好き。

生徒:僕は、『Chak De India』が好き。
(2007年 インドの女子ホッケーチームの話。東京国際映画祭で上映されました)

生徒:僕は、アジャイ・デーヴガンが好き。独立のために闘った話が好きです。
(タイトルは聞き取れませんでした)

生徒:僕はアーミル・カーンの『Rang De Basanti』

男の子たちから次々に好きな俳優の名前があがりましたが、女の子たちは恥ずかしかったのか、手があがりませんでした。

関口:日本の文化はいかがですか?
日本でもインドのお祭り「ディワリ in 東京」を開催していますが、参加したことはありますか?
(少し手があがる)

生徒:江戸川区のクリケットチームに参加してます。

関口:逆に私に質問をどうぞ!

生徒:なぜインドの歴史を学ぼうと思ったのですか?
関口:ビートルズの歌を聴いて、ジョージ・ハリスンがラヴィ・シャンカールを師としていると知ってインドに興味を持ちました。でも、ネパールの村にいる日本の医師のことを知り、最初にネパールのことを学びました。

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皆さんも日本にいるので、将来、日本とインドのためにどんなことが将来できるか考えてくださいね。

授業の最後に生徒さんたちと一緒に記念写真

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取材:宮崎暁美(写真) 景山咲子(写真・文)

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★取材を終えて★
会場に一人だけ、スカーフを被った女の子がいて、ムスリマに違いないと、「アッサラーム アレイコム」と声をかけました。
出身地を聞いたら、南インドのケーララでした。
ケーララといえば、イスラーム映画祭3で上映された『アブ、アダムの息子』の舞台で、サリーム・アフマド監督が「私たちはアラビア語の単語も結構使います」と言っていたのを思い出し、聞いてみたら、やはりアラビア語の単語は使うとのことでした。
学校にイスラーム教徒はそれほど多くはないけれどいるとのこと。彼女のクラスの半分はネパール出身と聞いて、ちょっと意外でした。
校庭で声をかけてきてくれた女の子二人も、一人はバングラデシュ、もう一人はパキスタン出身でした。
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学校の入口には日の丸とインドの国旗が飾られていますが、まさに、分離独立前のインドの各地の出身の子どもたちがこの学校に通っていることがわかりました。
それぞれに複雑な思いで『英国総督 最後の家』を観たのではないでしょうか。
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学校の壁には、生徒たちの作品が飾られていました。どこかエキゾチック。

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駅に向かう途中で、遅いランチ。やっぱり今日はインド料理よねと!

最後になりましたが、このような素敵な企画を立ててくださった配給や宣伝の担当者の方たちに感謝です。そして、暑い会場で、できるだけ涼しい場所を探してくださったり、冷たいお水のボトルをくださったりしたことにも! ほんとうにありがとうございました。(咲)



最近、歴史に残すエピソード映画がいくつも公開されていますが、この作品もインド独立前後の話を知ることができる話でした。それを日本在住のインド系の学生が見るという企画があり、その取材とのことでとても興味を持ち、Kさんと二人参加させてもらいました。日本にインド系の生徒を集めた学校があるということ自体知らなかったし、小学生から高校生まで1200名もの生徒が通うということにびっくり。なにより、江東区の大島地区にこんなにもインド系の人々がいて、駅のそばにはインド・ネパールなどの料理店もたくさんあり、このあたりがいつのまにインドタウンになったんだろうと思いました。大久保、新大久保あたりが中華系、コリア系の人が集まるタウンになったと思ったのが20年くらい前だったから、やはりこの町もそういう歴史があったんだろうなと思いました。
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学校の体育館に行ったらものすごく暑くて、冷房慣れしてしまっている身には、この2,3時間がとても大変でしたが、配給、宣伝の方が風の通るところに案内してくれました。風がとてもありがたかったです。そして、昔はこの暑い中で運動をしていたのだなと、かつての自分のことを思い出しました。生徒たちは、たまにおしゃべりする子たちもいましたが、それでもしっかり画面を見ていました。やはり自分の国の歴史にかかわる話だったからでしょう。家族から聞いている人もいるかもしれないけど、日本だって戦争のころの話を聞いていない子供たちがほとんどになっている時代。きっとインドも同じでしょう。自分たちの国がこのようなことを経て、独立したということを知るのはとても大事なことだと思いました。でもあとのQ&Aタイムでは意外にシャイな子供たちでした。あまりインドの映画、見慣れていないのかもしれません。それにしても、インド系の学生が1200名も通う学校が江東区にあるとは全然知りませんでした。また新しいことを知りました。映画も、再度観ないと、けっこう難しかったです。(暁)