台湾映画の"いま" 第七回『古代ロボットの秘密』レポート
稲見 公仁子
人形とコスプレイヤー勢ぞろい
去る9月22日(土)、虎ノ門の台湾文化センターで「台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第七回」(主催:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター/アジアンパラダイス)が開催され、冒険ファンタジー『古代ロボットの秘密』(原題:奇人密碼)が本邦初上映された。
この映画は、古代中国を舞台に、亡き父の形見である木製ロボットの動力源を求めて西域を旅する兄妹の冒険ファンタジーで、90年代に香港で流行った時代劇アクション(古装片)を彷彿させる佳作だ。だが、ジャンルに分類しきれない、きわめて大きな特色がある。それは、これが伝統芸能のひとつである布袋劇(人形劇)の映画だということだ。布袋劇は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『戯夢人生』でも描かれているが、『戯夢人生』で取り上げられたのはオーソドックスなスタイルで、現在はオーソドックスなものを引き継ぐ人々がいると同時に、時代に合わせた様々な表現方法やテクノロジーと結びついて進化を続けている流派もある。『古代ロボットの秘密』は、後者である霹靂社の作品。今回の上映に際しては、霹靂国際マルチメディア映画テレビ制作センターの西本有里プロデューサーのトーク、撮影に使われた人形の展示および操演や絢爛豪華なコスプレイヤーたちによるショーも行われた。
西本プロデューサーの話によると、布袋劇は17世紀の中国福建省泉州・漳州・潮州周辺で起こった人形劇で、1750年以降、漢民族の台湾移民に付随して台湾に伝わったものだとのこと。1920年代には黄海岱(ホアン・ハイタイ)率いる布袋劇団の劍侠布袋劇(時代劇アクション人形劇)が人気を博し、戦時下でそれは演じることができなくなったものの、戦後、華々しい復興を遂げたそうだ。70年代には、黄海岱の子・黄俊雄(ホアン・ジュンション)のテレビ布袋劇が90%を超える驚異の視聴率を叩き出し、社会機能への影響から政府が放送禁止にするほどの人気だったとか。その後も、俊雄の子・黄強華(ホアン・チャンホア)&文擇(ウェンツァ)兄弟の代になると、ビデオ市場で異彩を放ち、ケーブルテレビによる多チャンネル化では専門チャンネルも持つに至った。黄家の布袋劇は霹靂布袋劇と呼ばれ、当初30cm程度だった人形は、メディアの変化に連れて大型化し、華やかな造形が主流になっている。また、黄強華には映画製作の夢があったそうで、それが3年3億台湾元をかけた映画『古代ロボットの秘密』になった。霹靂社では、現在、2年後の劇場公開を目指して、新たな劇場用布袋劇を製作中とのことだった。
霹靂布袋劇の人気キャラたち。
(後列左から)銀鍠朱武(インホァンジューウー)、素還真(ソカンシン)、(前列)騶山棋一(ゾウシャンチーイー)
(後列左から)銀鍠朱武(インホァンジューウー)、素還真(ソカンシン)、(前列)騶山棋一(ゾウシャンチーイー)
『Thunderbolt Fantasy Project』より
(後列左から)丹翡(タンヒ)、凜雪鴉(リンセツア)、浪巫謠(ロウフヨウ)、殺無生(セツムショウ)
(前列左から)凋命(チョウメイ)、人形操演師・猫叔(ミャオシュー)、獵魅(リョウミ)、蔑天骸(ベツテンガイ)
協力:偶動漫娛樂股份有限公司/霹靂國際多媒體股份有限公司
※『Thunderbolt Fantasy Project』霹靂社と日本のニトロプラスの合作で、テレビシリーズ2作、劇場版1作が作られている。現在、テレビ版『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』が日台で同時放送中。(MX-TV、BS11、サンテレビ、バンダンチャンネルにて)