『パリの家族たち』 マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督インタビュー 

パーフェクトでなくていいと感じてほしい!

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パリの家族たち   原題:La fete des meres
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:オドレイ・フルーロ、クロチルド・クロ、オリヴィア・コート、パスカル・アルビロ、ジャンヌ・ローザ、カルメン・マウラ、ニコール・ガルシア、 ヴァンサン・ドゥディエンヌ、マリー=クリスティーヌ・バロー、パスカル・ドゥモロン、ギュスタヴ・ケルヴェン、ノエミ・メルラン

*物語*在任中に出産した大統領、シングルマザーのジャーナリスト、教え子との恋愛を楽しむ独身の大学教授、認知症の母の介護に悩む小児科医、病を抱えた舞台女優、息子を国に置いて娼婦として暮らす中国女性、連絡の取れない恋人の子を身篭った花屋の女性・・・ 母の日を前に様々な思いのパリの家族たち。

公式サイト:http://synca.jp/paris/
シネジャ作品紹介:http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/465769882.html
★2019年5月25日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開


プロデューサー・脚本家・監督
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
Marie-Castille Mention-Schaar
*プロフィール*
コロンビア・ピクチャーズのDevelopment Excutive、ハリウッド・リポーターの国際版編集長を務めたあと、制作会社Trinacaでエクセキューティブプロデューサーを務める。1998年に制作会社LOMA NASHAを共同で立ち上げ、着想、脚本執筆、公開時のマーケティングなどの、プロジェクトを通した展開戦略に力を尽くしている。2001年、さらにVENDREDI FILMを共同で立ち上げ、この2つの制作会社で12本の長編を制作している。主な長編作品として、国際映画祭で数々の賞を受賞し日本でも大ヒットした『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(14)、第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映された『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(16/劇場未公開)などがある。また、プロデューサー、配給、テレビの映画編成担当者、エージェント、ジャーナリストなど、映画業界の女性たちからなるCERCLE FEMININ DU CINEMA FRANÇAIS (フランス映画の女性サークル)の設立者でもある。(公式サイトより)


◎インタビュー

監督にお会いするのは、『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』が日本で公開された2016年以来、3年ぶり。

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』公開時のインタビューは、こちら

今回は、公式サイトに既に詳しいインタビューが掲載されているので、それを踏まえてお話を伺った。

公式サイト インタビュー 



◆出産した大統領像に到達するのが大変だった


― 女性たちが皆生き生きとしていて素敵な映画でした。
在任中に出産した大統領アンヌが、本作ではなんといってもカッコよかったです。思い出したのが、実際に、ニュージーランドのアーダーン首相が2018年6月に出産して育児休暇を取られたことです。この物語はそれより前に構想されていたのですよね?

(注:過去には、パキスタンのベナズィール・ブットー首相が在任中に出産しているが、妊娠を理由に反対勢力が解任しようとしたため、育児休暇を取らなかった。アーダーン首相は、国家元首クラスの女性で初めて育児休暇を取得した。)


監督:このストーリーを書いた時には、まだですね。

― ニュースを聞いて、どのように思われましたか?

監督:女性が権力のある立場に立つことはいいことだと思います。というのは、男性は政治に関わるときには現実離れしがちだけど、母親には現実と近づけて考えることができると思うからです。どんな地位にあれ母親であることだけで大変だけど、現実に近づいて決断がくださるので、とてもいいと思います。
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©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA


― 大統領の母親業の係わり方の部分、3回、根本から書き換えられたとのこと。具体的にどのように監督の考え方が変わっていったのでしょう?


監督:大統領像を正しく発見するのが大変でした。最初はあまりにも赤ちゃんにべったりの大統領を考えて、これは良くないと思いました。次に書き直した時には、心理的におかしいと思ってやめました。大統領役がオドレイ・フルーロさんに決まって、話をしたところ、彼女が第一子を産んだとき、産後鬱になって、赤ちゃんを可愛いと思えなかったというので、それが興味深くて採用しました。実際に女優さんが経験したことでもあるし、現実に即していると思いました。
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©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA

― 大統領の夫があのように協力的だと、とても見本になっていいと思いました。産むことは女性にしかできないけれど、子育ては夫婦で行うものだと思います。フランスの男性は一般的にいかがですか?

監督:だんだん変わってきていると思います。特に若い世代は協力的。子どもが生まれた直後に、男性も育児休暇が取れるといいなと思います。新しい法律ができるようです。お母さんと同じくらい、お父さんにも育児休暇が取れるように。

◆登場人物に少しずつ自分が入っている

― 色々なタイプの女性が出てきて、観る人それぞれ、登場人物の中に自分を見つけることができるのではないかと思います。私自身、観ていて、自分の生き方がそれでいいと思わせてくれました。

監督:映画の中でいろんな人を観て、自分はそれでいいと思ってくださったのが面白いと思いました。母としても女性としても、何かと罪悪感を抱きがちです。いろいろな人を見て、パーフェクトでなくてもいいと思って貰えればいいなと思っていました。それがこの映画を作って達成したいと思っていたことの一つです。

― 様々な女性を描くにあたって、監督のまわりの人たちを観察されたのでしょうか? また、監督が投影された人物は?


監督: いろんなキャラクターにちょっとずつ自分が入っています。
私に一番近いのではなくて、一番感動するキャラクターは、中国女性です。母として子どもに一番大きな犠牲を払っている女性です。子どもがもっといい生活が出来るようにと、遠く離れたところで働いています。

◆映画を通して異文化を知ってほしい

― 私自身は独身なので、やはり独身の大学教授に思いがいきました。
監督にはお子様がいらっしゃるのでしょうか?


監督:二人います。25歳の娘と、16歳の息子です。
私はシングルマザーなので、育てるのは大変でした。
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― フランスでは、女性の映画監督も多く、日本にくらべて、女性が自立して活躍できる国というイメージがあります。監督自身もシングルマザーと伺って、日本よりも女性が生き生きできる国なのかなと思いました。


監督:ほんとにフランスがそうかどうか、私にはわかりません。もしそうだとしたら理由はわかりません。フランスには、200万人のシングルマザーがいます。仕事と子育ての両立は大変です。シングルマザーの多くは貧困に近い状況で、もろい立場です。確かに女性は自立して活躍していますが、それなりの代償を払っていると思います。

― 日本の観客に、どんなところを一番観てほしいですか?

監督:私にとって映画を観るというのは、自分に似た人を見つけたり、違う人を見て学ぶのが好き。映画というのは、違う文化や違うバックグランドのあるところを体験することができて、映画で旅が出来ます。私が映画を観る時にするのと同じように、地理的にも社会的にも違うフランスを体験していただければと思います。

― まさに、私も映画を通じて、異文化や異なる社会を知ることができるのが、映画の一番の楽しみです。


◆次は男性に性転換して出産するトランスマンの物語
― 先ほどから気になっていたのですが、ペンダントが星と三日月です。イスラームのシンボルですね。

監督:そういうつもりじゃなかったのですが、確かにそうですね。

― 監督の前作『ヘブン ウィル ウェイト』は、残念ながら観ていないのですが、過激派イスラームに走るフランス女性を描いていてとても興味があります。もうそのテーマでは撮りませんか?

監督:もう撮らないですね。次はすごく違うものを撮ります。

― どんな作品ですか?


監督:トランスマン、つまり元は女性で、男性に性転換した人の物語です。
愛する奥さんが妊娠できないので、その彼女の代わりに子どもを産むのです。

― 産めるのでしょうか?


監督:性転換しましたが、まだ女性としての機能は持っているという設定です。

― 私の友人の娘さんがやはり性転換して男性となり、女性と結婚しています。子どものことはどうなるのだろうと・・・  誰かの精子を貰わないと出産できないですよね。実話に基づいているのでしょうか?

監督:アメリカでは、2000人の性転換した元女性の男性が妊娠しています。トーマス・ビーティという有名なトランスマンがいて、愛する奥さんのために3人子どもを産んでいます。私の映画はその人の話ではないです。フランスで実際にあるかどうか確認していないのですが、いるのではないかと思っています。

― 大胆な物語、楽しみにしています。ありがとうございました。


             取材:景山咲子




映画『居眠り磐音』 初日舞台挨拶

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(C)2019 映画「居眠り磐音」製作委員会

―松坂さん、“時代劇初主演”を務められ、座長として撮影、宣伝期間を駆け抜けてこられましたが、改めて初日を迎えられた今のお気持ちはいかがですか?

松坂:無事に初日を迎える事ができ、皆さんと同じ時間を過ごすことができて幸せに思っております。皆様、ありがとうございます。
本編でも特に見どころとなっているのが迫力の殺陣シーンです。苦労されたところは?
松坂さん:大変なことの連続でした。どのように刀を構えれば眠ったように見えるか、だいぶ練習しました。柄本さんとも一緒に何度も稽古を重ねる中で、アドバイスをいただきました。あとは3月の撮影だったので、とても寒かったのを覚えています。
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ー木村さん、京都の時代劇スタッフとの撮影はいかがでしたか?初めての本格的な時代劇で苦労された点などはありましたか?

木村:苦労が無いわけではなかったですが、京都の時代劇スタッフの皆さんは本当に暖かい方ばかりで、仕事を楽しん
でやられるスタンスを皆さんが持たれていたので、困ったときは皆さんで私を助けて下さいました。こんなに整った良い環境でお仕事をさせていただくことができて、大変幸せでした。スタッフの方も含めて、その場にいる全員で作品を創り上げている、そんな一体感を強く感じることができる現場でした。

―芳根さんは磐音にとって“かけがえのない存在”である奈緒を演じられましたが、実は磐音と同じシーンはそこまで多くはなかったと思います。そんな中で奈緒というキャラクターをどのように作られていきましたか?

芳根:とにかく監督に何度も相談させていただきました。「いつも心に磐音様」を心に掲げながら演じていました。一人のシーンが多かったので、孤独に打ち勝つメンタルの面は強くいようと思っていました。また、劇中で使用した「匂い袋」を撮影後いただきました。撮影した京都の地を思い出す、思い出の香りになりました。

ー柄本佑さんご自身も“時代劇ファン”でいらっしゃるとの事ですが、そんな柄本さんが感じる本作の魅力はどんなところにありますか?

柄本佑:時代と共に時代劇のあり方は変わってきていると思います。「居眠り磐音」は、その中でもド直球にエンタテインメント性が強い、王道の時代劇であると思っています。いろいろな時代劇が派生する中で、一番の王道を通すのは意外と難しいと思うんです。その中で、時代劇の王道として、一本の大きな柱のような存在になっていくと感じています。
時代劇を観たことのない若い人たちも、必ず時代劇好きになっちゃうと思います!

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ー杉野さんも時代劇初出演でしたが、ご自身の姿をご覧になってどうでしたか?

杉野:似合っているなと思いました。意外と悪くないなと…。(笑)
母親も僕の時代劇姿を見て、「マゲ姿がとても似合っているよ」と言ってくれました。

ー石丸さんは磐音の父親として、時に厳しくも、優しく見守る正睦(まさよし)を演じていらっしゃいます。 松坂さんとの親子役での共演はいかがでしたか?

石丸:撮影をした武家屋敷、実は私の実家だったんです!私が幼い頃を過ごした、本物の武家屋敷、本物の畳に、息子役の松坂さんが初めて正座した姿を見たとき、「これはいい映画になるぞ」と確信しました。自分の思い入れある場所で、お芝居をできて大変感慨深かったです。
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ー谷原さん演じた吉右衛門の堂々とした佇まいがとても素敵でした。 谷原さんは原作のファンでもいらっしゃるとの事ですが、作品に出演されたご感想はいかがですか?

谷原:16、7年前に、児玉清さんからご紹介いただいて、原作を読んでいました。磐音役を松坂さんが演じられると聞いた時、ぴったりだなと感じました。私自身、作品のファンとして、こうして携われることが非常に嬉しかったです。(作品が)完成したとき、原作とのズレを感じてしまうのでは、と複雑な気持ちになっていましたが、全く違和感もなく、素晴らしい作品になったと感じています。原作ファンとして太鼓判を押します!

ー本木監督、本作は京都で長年時代劇を作ってこられたスタッフと作り上げたわけですが、本木監督からご覧になった主演の松坂さんの印象はいかがでしたか?

本木監督:『活動屋』と呼ばれる、京都で長年時代劇作りに携わっているスタッフがいます。その歴史は100年以上になり、先代を後継して作品を作り続けている彼らが、「時代劇で最も重要な存在とされている”主役”に適する人間をようやく一人みつけた」と言っていました。それが、松坂さんだったんです。彼には、これからも時代劇を盛り上げていってもらいたいと思っています。

ー本作は“令和初の新時代劇”で磐音という新英雄(ニューヒーロー)が誕生いたしましたが、 皆さんにとってのヒーローは誰ですか?

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松坂:【父】です。普段はおっとりしていて、声も小さいんですが、僕や姉が悪さをすると、しっかりと叱ってくれて、正してくれました。そんな武士のような、まさに磐音のような父が僕のヒーローでした。

木村:【松坂さん】です。本格的な時代劇は初ということもあり、この作品のお仕事では本当に慣れないことばかりで、あたふたしてしまうことが多々あったのですが、松坂さんはその場の雰囲気を穏やかな空気にしてくれて、いつも私をフォローし続けてくれました。ありがとうございました。

芳根:【母】です。私の母は、いつも明るくてスーパーポジティブな人柄なんです!私が相談すると、いつでも前向きな答えをくれて、勇気づけてくれるんです。そんな母が私にとってはかけがえのない存在で、産んでくれたことに感謝しています。
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柄本佑:【杉野さん】(えっという表情の杉野さん)
今回、杉野さんとは初対面で殺陣の稽古がありました。とても不安だったのですが、初めて杉野さんと顔を合わせたとき、彼のキラキラとした目をみて、「この人なら迷いなくいける!」と感じさせてくれました。感謝しています。

杉野:【松坂さん】(さみしそうな柄本さん)
僕はデビューした頃から、先輩としてお手本にさせていただいています。稽古を頑張って頑張って、やっと松坂さんと同じ作品に出させていただいても、やはり僕よりも更に先を進んでいる松坂さんの姿をみて、憧れを持っています。僕を常に優しくフォローしてくださって、リードしてくれる松坂さんが僕のヒーローです。(松坂さん:事務所がいっしょですから。杉野くんもこれからそういう風に後輩をみるようになると思います)

石丸:【猿飛佐助】
皆さんとは少し違うのですが、僕のヒーローは時代劇に必ず出てくる”忍者”です。忍者の身のこなしや忍術に憧れていました。忍者の中でも、特に猿飛佐助が好きです!時代劇で役者として育ってきた僕からしたら、忍者、猿飛佐助がヒーローです。

谷原:【黒岩十三郎】
本作に出てくる黒岩十三郎という、かなり濃いキャラクターです。悪役でいながら、迫力ある演技がとてもかっこいいんです!

イベント終盤には、初日公開記念と今後の大ヒットを祈願して、登壇者全員で鏡開きが行われました。最後に松坂さんからは、「公開まで支えてくれた関係者の皆様、公開を楽しみに長い間待ってくださった皆様、本当にありがとうございました」と感謝の言葉が述べられました。会場の全ての人が待ちに待った初日舞台挨拶は、大盛況のうちに幕を下ろしました。(取材・撮影 白石映子)

作品紹介はこちら
本木監督インタビューはこちら
スタッフ日記はこちら

『バイオレンス・ボイジャー』宇治茶監督インタビュー

悪役・古池は自分自身を投影しつつ、
田口トモロヲさんが演じてきた役を
イメージして書きあげた

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ゲキメーションとはアニメーションと漫画(劇画)を融合した表現方法のこと。映画『バイオレンス・ボイジャー』はホラー、アクション、コメディ、クライム、ドラマ、ファンタジー、ミステリー、ロマンスなど、あらゆるジャンルを盛り込み、ゲキメーションで表現した、 史上初の全編ゲキメーション長編映画である。前作『燃える仏像人間』でゲキメーションを取り入れて注目された宇治茶が監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影の6役を担当した。3年の歳月を掛けて完成させた宇治茶監督に本作にかける思いを聞いた。

<プロフィール>
宇治茶(UJICHA)
監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・撮影
1986年生まれ。京都府宇治市出身。2009年京 都嵯峨芸術大学観光デザイン学科卒業。大学の卒 業制作展にて、自身初めてとなるゲキメーション作品『RETNEPRAC 2』を発表。2010年にはゲキメーション第二作『宇宙妖怪戦争』を制作し、京都 一条妖怪ストリートにて公開。この2作がきっかけとなり2011年より『燃える仏像人間』の制作を開始し、2013年にはゆうばり国際ファンタスティック映画祭を始め、ドイツ、韓国、オランダなど、国内外 数々の映画祭に招待された後、全国公開される。さらに2013年度第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門にて優秀賞を受賞。

『バイオレンス・ボイジャー』
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日本の山奥の村に住むアメリカ人少年のボビーは、数少ない友人のあっくんと飼い猫のデレクを連れて、村はずれの山に遊びに出かけた。その途中、娯楽施設“バイオレンス・ボイジャー”と書かれた看板を発見した彼らは、その看板に惹かれて施設を目指すことに。施設のアトラクションを堪能し、遊び疲れて休息していたところ、ボビーたちはボロボロの服を着た少女・時子と出会う。彼女は数日前からここを出られずにいると言い、行動を共にすることに。彼らはさらに、先客として迷い込んでいた村の子どもたちとも出会うが、謎の白いロボットによる襲撃を受け、子供たちたちは次々と捕獲されて行ってしまう。時子の救出とバイオレンス・ボイジャーの謎を解き明かすため、ボビーは立ち上がるのだった…!

監督・脚本・編集・キャラクターデザイン・作画・撮影:宇治茶
声の出演:ボビー:悠木碧、ジョージ:田中直樹、よし子:藤田咲、あっくん:高橋茂雄、たかあき:小野大輔、古池:田口トモロヲ、ナレーション:松本人志
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
©︎吉本興業
公式サイト:http://violencevoyager.com/
2019年5月24日(金)からシネ・リーブル池袋ほかで全国順次公開

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―監督がゲキメーションと出会ったきっかけを教えてください。

大学の卒業制作で映像作品を撮ろうと思い、参考になるものをネットで探していたところ、1979年代に放送されていた楳図かずおさん原作のゲキメーションで作られたテレビアニメ『妖怪伝 猫目小僧』を見つけました。この手法なら自分が描いていた絵を活かした作品作りができるのではないかと思ったのです。
さらに、電気グルーヴが2008年に発表した「モノノケダンス」PVでもゲキメーションが使われていたことにも影響を受け、2009年の卒業制作で短編ゲキメーションを作って発表しました。

―ゲキメーションのどんなところが自分に向いていると感じましたか。

普通のアニメを違い、ペープサートのように描かれた人物を直接、動かすので、動かすために何枚も描く必要がありません。かなり描き込んだ絵を使えるところがいちばん合っていると思いました。
まず15分くらいの短編、その後に10分の短編を作り、2011年頃から『燃える仏像人間』を作り始めました。

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―本作はペープサートから液体的なものが飛び出たり、流れ出たりするのでびっくりしました。初めての頃と比べて、技術が進歩しているのでしょうか。

ゲキメーションを教えている人はいないので、『妖怪伝 猫目小僧』を見て、独学で研究しています。やっていることはそんなに変わっていませんが、燃える規模が大きくなり、爆発シーンを入れるなど、少しずつ進歩している部分はあるかもしれません。
流れ出る液体ですが、スライムみたいなもの、片栗粉を混ぜたものなどいろいろやってみて、自分の中でいい塩梅を見つけて合成した、何とも言えない液体です。口の部分に裏からチューブを繋ぎ、その先に注射器をつけてあります。実際の原画は小さいので、片手で原画を押さえつつ、注射器を持って、ぴゅっと出しました。

―現場のサイズ感はどのくらいなのでしょうか。

机の上で人形を作り、撮影をして、編集まで完結しています。人形は10㎝もないくらい。これに棒をつけたり、クリップで挟んだり、手で直接持ったりして、カメラを片手に持ちつつ、人形を動かしています。

―日本の山間部が舞台ですが、主人公はアメリカ人の少年です。短パンをはいている辺りに時代を感じますが、なぜ、そのような設定にされたのでしょうか。

昔見た『グーニーズ』や『E.T.』のように、金髪の男の子が不思議な事態に巻き込まれていく話が作りたかったのです。そして、アメリカっぽい話を自分が知っている日本で作ったらどうなるのかなというのが発想の原点です。
ホラー映画が好きなので、そういった要素も作品の中に入っていると思いますが、『ウエストワールド』でロボットが襲ってくる、『ジュラシック・パーク』で恐竜に襲われる感じが元になっています。それを自分が住んでいたところの近所にある山を舞台にしてみました。

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―監督ご自身を投影した登場人物はいますか。

主人公のボビーにはやはり投影されていると思いますが、それだけでなく、悪役の古池にもかなり強く自分が出ています。

―キャラクターはあっくん兄弟のように額が思いっきり出ているか、しっかり髪で覆われているかのどちらかの印象を受けました。それは監督の絵の特徴なのでしょうか。

あっくんの額はキャラクターの特徴付けで、深い意味はありません。最初に子どもたちをいろいろ描いたのですが、額にしわのある子どもが出てきたら面白いかなと思って描きました。
あまり意識はしていませんが、このところ毛が抜けることが増え、僕自身、ちょっと不安を感じているので、その不安が古池の額に出ているのではないでしょうか。禿げるのが怖いのかもしれませんね(笑)。

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―作品の内容が実写ではできないくらい凄惨です。ゲキメーションだから描けると意識していましたか。

言われてみれば、そうですね。これを実写でやろうとしたら、制作費がものすごくかかるけれど、ゲキメーションなら机の上だけで作れるからいいなと思って作ったので、内容の凄惨さまでは意識していませんでした。

―ざっくり描くことで、細かな部分を想像します。これがかえって怖さを増幅しました。

普通のアニメより動きもぎこちないですからね

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―作品に物理的な奥行きを感じました。

それは前作からかなり考えていました。ずっとミラーレスカメラを使っていますが、センサーが大きいカメラを使うとぼけを活かした表現ができます。手前をぼかしたり、背景をぼかしたり、また光の感じで影を調整して、奥行きを作ることを意識していました。

―すべてを監督お一人でなさっていますが、1人で制作した事での苦労はありましたか。

前作では幻覚が見えるくらい、追い込まれました。毎日のように金縛りにあった時期もありましたが、今回はそのようなことはあまり起こりませんでした。笑
僕は夜があまり好きではないので、早寝早起きして、昼間は家に籠り、たまに散歩で外に出るくらい。できる限りの作業を明るいうちにして、乗り越えました。

―1人だったからよかったこともありましたか。

脚本の段階でもそうですが、周りからの干渉がなく、1人で気楽に、思いのまま自由に作ることができました。だからこそ、凄惨な部分も残っているのだと思います。周りからの制御があれば、もう少しソフトな作品になっていたかもしれませんね。机の上で、ただただ人形遊びしているようなことを3年続けていました。

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―本作の声の出演は豪華ですね。キャスティングは監督がされたのでしょうか。

僕は声優さんに詳しくなかったので、プロデューサーの安斎レオさんにお任せしたところ、ボビーは悠木碧さんがいいのではないかと提案がありました。そこで、僕も悠木碧さんのアニメを見て、声を聞いて、すごくいいなと思い、やっていただきました。ばっちりはまってよかったなと思っています。「ココリコ」の田中直樹さん、「サバンナ」の高橋茂雄さんは前から演技がお上手だと思っていたので、ぜひ出てほしいと思ってお願いしたところ、OKをいただきました。
田口トモロヲさんにお願いした古池というキャラクターは田口さんがこれまで演じられてきた役を基にしている部分があったので、ぴったりだったのだと思います。

―古池の役は田口トモロヲさんで当て書きされたのでしょうか。

古池は田口さんが演じてきたキャラクターを基に作っていますが、田口さんご本人に出ていただけるとは考えてもみなかったので、当て書きではありません。安斎さんから田口さんはどうだろうかと提案があり、田口さんがオファーを受けてくださったので、本当にうれしかったです。

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―アフレコの時に田口さんと話をしましたか。

田口さんは楳図かずおさんの「神の左手悪魔の右手」を実写化した作品に悪役で出演されていましたので、「あのイメージでやってほしい」とお伝えしました。そして、田口さんがみうらじゅんさんとやっていた「ブロンソンズ」が好きだったので、その本にサインをいただきました。

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―ボビーのその後が気になります。続編の予定はありますか。

『燃える仏像人間』もそうですが、僕の中では全部終わったと思っています。ここから先はご覧になった方がみんなで話してもらえるといいなと思っています。すでに次の作品を考えていますが、具体的にはまだ動き出せていない状態です。

―これから作品をご覧になる方にひとことお願いします。

前作の『燃える仏像人間』をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はもっと多くの方に見てもらえるよう、エンタメ作品を目指して作りました。PG12になっていますが、老若男女問わず、みなさんに見ていただければと思っています。万が一、僕の世界観が気に入らなくても、小野大輔さんに素晴らしい演技をしていただき、松本人志さんにはナレーションをしていただいていますので、そういった声優さんの声を聞いていただくだけでも価値があると思います。よろしくお願いいたします。
(取材・写真:堀木三紀)