『ソン・ランの響き』レオン・レ監督&主演リエン・ビン・ファットさんインタビュー

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レオン・レ(Leon Le)監督プロフィール
1977年サイゴン(現ホーチミン)生まれ。俳優・ダンサー・歌手として活躍した後、幼い頃からの夢であった映画監督の道へと進む。製作した短編映画『Dawn』、『Talking to My Mother』はベトナム国内で高い評価を得、『ソン・ランの響き』で長編監督デビュー。本作はベトナム映画協会最優秀作品賞、北京国際映画祭最優秀監督賞、サンディエゴ・アジアン映画祭観客賞など、国内外で現在までに合計37の賞を受賞している。写真家としても活動中。現在はニューヨーク在住。

リエン・ビン・ファット(Liên Binh Phát)プロフィール
1990年キエンザン省生まれ。在学中に人気バラエティ番組「Running Man Vietnam」に出演、人気を博す。その後3ヶ月のオーディションを経て本作にて映画初出演を果たし、第31回東京国際映画祭ジェムストーン賞(新人俳優賞)、ベトナム映画協会最優秀男優賞を受賞した。2020年2月にはフランスの舞台劇『Mr.レディ Mr.マダム』をリメイクした主演映画『The Butterfly House』の公開が予定されているなど、今後最も活躍が期待されるベトナム人俳優の一人。

作品紹介 http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/473600213.html
初日舞台挨拶 http://cineja-film-report.seesaa.net/article/473727941.html
公式 http://www.pan-dora.co.jp/songlang/
(C)2018 STUDIO68
★新宿K’s cinemaほか全国順次公開中!


日本ではコロナウィルスのニュースで大騒ぎのころ、予定どおり来日してくださいました。公開初日の前2月21日に取材の時間をいただいて、いそいそと三人で伺いました。お洒落なお二人を前にあがりぎみ。
(通訳:ダン・タン・フィエンさん)


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―2017年のTIFFの会見で、監督は「子どもの頃からカイルオンが好きで俳優になりたかった」とおっしゃっていました。長い間かかって念願のこの映画を作られたんですね。映画製作はどこで学ばれたのですか?

監督 映画製作の勉強はしたことがありません。本業は俳優で、演劇、ドラマやCMなどに出演してきました。やっぱり映画が好きでそういう仕事の合間に、一人で研究し学んできました。

―独学で!? すごい!これまで短編が2本、初長編というこの作品の完成度が高くて驚いたのですが、独学というのにさらに驚いています。

監督 ありがとうございます(日本語)

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―リエンさんもカイルオンを子どものころから観ていましたか?自分も演じたいとは?

リエン はい。昔から観ていました。そのころは大人の横にくっついて観ていた程度です。自分が出たいとは思わなかったですね。

―これは監督のオリジナルのストーリーですね。映画を作るまでの経緯を教えてください。

監督 もともと私はカイルオンに興味がありました。小さいころからカイルオンの俳優になるのが夢でしたが、実現できなかったので大人になってカイルオンに関する作品を作りたくなりました。最初は劇を作ろうと思ったんですが、劇は一度観終わったらその後に何も残りません。それなら同じ手間暇費用を注いで映画を作れば、もっとたくさんの人に観てもらえて、残すことができると思いました。

―それでゴ・タイン・バンさんのスタジオ68に話をされたのですか?

監督 正直にいうとそこに行ったのは最後です。それまでにいろんなプロデューサーに話しましたが、カイルオンがテーマというと興味を失って断られました。ゴ・タイン・バンさんだけが、ベトナムの文化や伝統的な劇などを世界に紹介したいという気持ちを持っていました。それで2日後に了承の回答をもらえました。

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―キャスティングですが、アイザックさん、リエンさんに決まったのは?

監督 主人公二人のうちアイザックはゴ・タイン・バンさんの紹介だったのですが、初めは断ったんです。そのときの彼の雰囲気がリン・フンとはマッチしていなかったからです。その後たくさんの人を見てきたのですが、なかなかふさわしい人がみつからず、結局アイザックもオーディションに参加して、他の人たちと同じくいろいろなことをやってみてもらいました。それでアイザックでいけるとわかって決定しました。
ユン役は新人で、知られていない人を探しました。なぜならスターだと、観客は映画の内容などよりも、すでにスターに対して持っているイメージで観てしまうからです。リエンさんは新人で、ユンのイメージに合っていました。

―リエンさんは演劇の勉強をしていたのですか?

リエン 演劇学校出身ではなく、関係ないものをやっていました。誰も知らないような番組のMCで全く無名だったんです(笑)。ある番組に出演した私を監督の知り合いが見て、ユンにぴったりだと監督に紹介してくれました。それでオーディションに参加して、4~5ヶ月かけてやっと監督からOKをもらいました。

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―良かったですね。楽器の練習はキャスティングされてからですか?

リエン そうです。役作りのためにアクションや楽器の演奏など習いに行きました。撮影前に監督からアドバイスをいただいて、重要なシーンなども練習しました。

―この弦楽器とソン・ランはセットで演奏されるものですか? 

監督 最近のカイルオンはギター演奏に変わっています。昔は映画のように“ダングエット”(ダン=弦楽器、グエット=月)で、ソン・ランとセットで演奏しています。ソン・ランはカイルオンのリズムを整えるためのものです。

―ソン・ランは劇の最初と最後に使われ、演奏者、役者双方にとってリズムの基礎であると資料にありました。そういう役目の大事な楽器ということですか?

監督 まさにそのとおりです。舞台の俳優やほかの演奏者に今劇のどこまで進んでいるのか、どのくらいで終わるとかテンポやリズムで教えてくれるのでとても大事なのです。主人公二人の人生と同じように、ソン・ランがなければどこに進んでいけばいいのかわからなくなります。 
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―映画は室内や夜の撮影が多いですね。演劇の部分もそうですが、光と影が美しい映画でした。撮影や照明にベテランの方々がいらしたのでしょうか?

監督 私が考えているこの映画のテーマは、(カイルオンの)劇と(実際の)人生は混じりあう存在ということです。光と影のようなリン・フンとユンの存在も同じです。撮影に関しては、ありがたいことにベトナム出身のオーストラリア人のボブ・グエンさんが撮影監督となってくれました。彼はこれまでに世界で7つの賞を受けた方です。

―リエンさんはアイザックさんと共演していかがでしたか?

リエン 最初この役をいただいたとき、アイザックさんと一緒に主人公を演じると知ってとてもプレッシャーを感じました。アイザックさんはすでに有名で、ベトナムのポップスターでしたから。難しい主人公役なのに、アイザックさんについていけるのかと不安でした。でも始まってみるとアイザックさんはとても親しみやすく親切にしてくださったので、だんだんうちとけて楽になりました。

―これは本国での上映が先ですか? それとも映画祭で受賞してから公開されたのですか?

監督 先にベトナムで上映しています。海外で初めて上映されたのは、おととしの東京国際映画祭でした。その後またベトナムで何度か上映しています。2019年には国会議員からの要請で、国会での特別上映をしています。
上映前はとても緊張しました。映画の中にははっきりは描いていませんが、政治的な要素も少し入っています。政治関係は敏感な問題ですので、もしかしたらクレームがくるかもしれないと心配しました。けれどもみなさんから高い評価を得て、芸術は人と人を繋げてくれると実感しました。
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―この映画が公開されてから、カイルオンの人気があがったということは?

監督 もう黄金期のような人気が戻ることは無理だと思います。でも、この映画が上映されたことでカイルオンについて知ってもらえました。最近は若い人たちが自分のミュージックビデオの中に、現代的なカイルオンの要素を入れていることもあります。

―出来上がった作品をご覧になってのお二人の感想をお聞かせください。

監督 上映されてすぐ感じたのは「孤独」です。というのは、この5年間毎日24時間ずっと作品のことを考え続けていたからです。
この作品が受け入れられるのか、どんな反応があるだろうか、良い評価がもらえるだろうかなどといろいろ考えていました。けれども公開されればもう自分だけの作品ではありません。みんなのものになり、自分が守ることもできなくなるのでとても不安で孤独な気持ちになってしまいました。
でもみなさんが高く評価してくださって、最終的には幸福を感じました。自分の人生の中の大きなゴールにたどり着いたと実感できました。

リエン 私にとって映画初出演のこの作品は節目になりました。それまで俳優のことはあまり真剣に考えていなくて、ただただやっていたんです。この作品は自分が今まで体験できなかった幸せをもたらしてくれました。自分にとってとても大事な作品です。

―ありがとうございました。

(取材:白石映子、宮崎暁美、景山咲子 まとめ:白石 写真:宮崎)


=取材を終えて=

映画を観た時に、打楽器であるソン・ランをちゃんと認識できなかったのですが、今回、監督にお伺いして、俳優やほかの演奏者に舞台の進行状況を知らせる大事な役目の楽器だとわかりました。歌舞伎でも「拍子木」が最初と最後に打ち鳴らされ、舞台の途中では演技のきっかけを知らせたりするので、同じですね。
今回、ぜひ監督とリエンさんにお会いしたくて、インタビューに同席させてもらいました。お二人とも、映画やベトナムの伝統に深い思いを持ったとても素敵な方でした。
最後のお別れの時にベトナム語のありがとうに挑戦。もう30年以上前、会社勤めしていた折、ベトナムからのお客様に教えてもらったのですが、片仮名で書けば「カム オン」。漢字の「感恩」からきているそうです。でも、ベトナム語には、声調が6つあって発音が難しいのです。昔教えてもらった声調で通じるか、まずは通訳さんに確認。「大丈夫ですよ」と言われ、監督、そして、リエンさんに「カム オン」と言ってみました。お二人共微笑んでくださって、ばっちり! (咲)

レオン監督はカイルオンの俳優になりたかったという方です。動画サイトにある映画の制作風景を見ますと、歌いながらカイルオンの演技指導をしているのはレオン監督でした。俳優さんでもあるし、カメラマンでもあります。カイルオンへの愛と画面へのこだわりに納得です。そんな監督に下手な写真を差し上げてしまいました。にっこり笑って受け取ってくださいましたが。
「ソン・ラン」は漢字だと「雙郎」らしいです。「二人の男」ですね。監督に確認しそびれましたが、これは二人の友情以上の物語?たぶん「観た方にお任せします」とおっしゃるでしょうね。次のコミケにファンブックが出ないかなぁ。
リエンさんはリム・カーワイ監督の作品に出演したそうです。レオン監督が準備中という脚本が順調に映画化されて、またいつか来日してお目にかかれるのを楽しみにしています。(白)

ベトナム戦争が終わったのは1975年。南北は統一され、首都サイゴンはベトナム戦争で大きな働きをしたホーチミンの名を取ってホーチミンになりました。ホーチミンはベトナムが統一される前の1969年に死亡しているけど、ベトナムの人々はホーチミンのことを親しみを込めてホーおじさんと呼んでいたので、サイゴンは陥落後、ホーチミンという名になったのでしょう。でも、今でも現地の人はホーチミンではなくサイゴンという名にこだわっているのだなと、最近公開された『サイゴン・クチュール』、『ソン・ランの響き』を観て思いました。日本人である私自身もベトナム反戦運動に参加した経験からホーおじさんには親しみを感じてはいたけど、「サイゴンはサイゴンだよね」と思っていたので、ベトナムの人たちのサイゴンへの思いを知って嬉しかった。

その思いと伝統芸術への思いは、たぶん通じるところがあるような気がする。昔から感じていたベトナムの人々の、質素だけど芯の強さは、中国、日本、フランス、アメリカなど、いろいろな国から侵略を受けてきたことに起因するのだろうけど、だからこそ、自分たちのアイデンティティーや文化を守ろうという思いが強いのでは。でもだからといって、まるっきり受け入れないということでもなく、よそからの文化も受け入れたりしながらベトナムは変わっていっている。ベトナム料理では米粉の麺で作ったフォーや生春巻きゴイ・クン、ベトナム風お好み焼きのバイン・セオなどが有名だけど、フランスパンのサンドイッチ、バインミーなどもよくみかける。

そうした一方で、伝統的なベトナムの服装アオザイなどは洋装に、歌舞劇カイルオンもだんだんに演じられなくなっていた。そんなことに思いを馳せたレオン・レ監督の思いとゴ・タイン・バンさんとが出会って、この作品は生まれたといえるのでしょう。彼女は『サイゴン・クチュール』もプロデュースしている。『サイゴン・クチュール』では、単なる伝統的なアオザイだけでなく、現代的なデザインのアオザイにも注目が広がっているようだし、この『ソン・ランの響き』の後では、ミュージックビデオなどにカイルオンが取り入れられたりしていると監督が語っていたので、こちらも単なる伝統の継続だけでなく、そういう形での新たな可能性も含めて、ベトナム文化は進化していくのでしょう。これまで観てきたのとは、違うベトナム映画の流れを感じるこのごろです(暁)。

『ソン・ランの響き』初日舞台挨拶2月22日

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2月22日(土)新宿K’Scinemaで初日舞台挨拶が行われました。10:30と12:30の回の上映後、レオン・レ監督とリエン・ビン・ファットさんが登壇しました。直前まで何度も練習された「日本語でのご挨拶」もまじえ、それぞれの思いを語ってくださいました。2回分の舞台挨拶を編集して一つにしています。
(通訳:チャン・ティ・ミーさん)(まとめ・写真:白石)


レオン監督 「みなさまこんにちは。お会いできて嬉しいです」
リエン 「こんにちは。わたしはファットです。どうぞよろしく」

―80年代のサイゴンを舞台に”カイルオン”をテーマにしたのは?

レオン監督 子供の時からカイルオンの役者になることが夢でしたが、13歳から家族とアメリカで暮らすことになったんです。その時恐らくこの夢は叶わないだろうと思いました。しかし、カイルオンへの愛は私の中に1日も消えることなく、あり続けたんです。そして20年後、カイルオンの役者になることではなく、カイルオンの映画をつくるという夢を持ってベトナムに帰国し、脚本を書き始めました。

―主役のキャスティングの理由は?

レオン監督 リエンさんのボディや美貌も重視しました。魅力的ですから(笑)。しかしそれよりも大事にしたのは彼の表現力です。特に無邪気な雰囲気の目です。
カイルオンの花形役者リン・フンを演じたアイザックについては、プロデューサーから提案された当初は断っていました。韓国のポップスターのようなアイザックは適役ではないと思っていました。しかし、何百人に会ってもふさわしい人がいませんでした。それでもう一度彼と会ってみると、バランスが取れていると感じたんです。カイルオンの役者にもオーディションを受けてもらいましたが、映画の世界にとけ込めないんです。しかし、映画の役者はカイルオンを演じられない。彼はそのバランスが良かったんです。

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ーレオン監督について

リエン レオン監督への思いはA4用紙2枚でも足りません(笑)。最も尊敬しているのは、基準をもうけ、自分の主張を譲らず、最後までやり遂げるところ。周りが経済的な効果の出る方法を提案しても、最後まで自分の基準を維持していました。

―どのように役づくりをしましたか?

リエン 俳優デビュー作であり、たくさん難しいシーンがあったため、私の全ての能力を費やしました。
脚本を何度も読み込み、演じるユンの人物像を分析し、カイルオンについても研究をしました。

―映画に出演した後、変わったことはありましたか?

リエン この映画が上映されて、以前よりずっといろいろな方に知っていただいて、それはとても嬉しいことです。映画やほかの分野からもオファーが来て、新しいチャンスが訪れました。私の中ではこれから俳優業を真剣に考えていこうと思っています。

―日本でも撮影をされたと聞きました。

リエン 東京国際映画祭で観客の方々はもちろんですが、新しいご縁がありました。リム・カーワイ監督が声をかけてくださって、昨年大阪で撮影をしました。そろそろ皆様に観ていただけると思います。映画の内容は、いろいろな国の人が日本にやってきて生活をしていくうちに、さまざまな問題に直面します。外国の異文化の中でいかに解決していくか、というストーリーです。私はベトナムから来た男の役です。どうぞ楽しみにしていてください。

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―監督のこれからのご予定を。日本で撮影の予定などありますか?

レオン監督 私は日本を愛していて、これまで5,6回来ています。残念ながら日本での撮影の機会はまだないのですが、アメリカとベトナムそれぞれで新しい脚本に着手しています。この『ソン・ランの響き』をとても支持していただいて、新しいチャンスもたくさんあります。自分に適切なこと、自分がやりたいことを冷静に考えてから、一つずつやり遂げていきたいと思っています。

―観客のみなさんの撮影タイムです。SNSで拡散してくださいね。

レオン監督 「ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします!」(拍手)
リエン 「友達にもどうぞよろしく!」(拍手)

作品紹介はこちら
★新宿K’s cinemaほか全国順次公開中!
公式 http://www.pan-dora.co.jp/songlang/

『恋恋豆花』今関あきよし監督インタビュー

2020年2月22日(土)新宿ケイズシネマほか 全国劇場公開
上映情報

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『恋恋豆花』(れんれんどうふぁ)

恋愛も人間関係も含め大学生活がつまらなくなり、中退を考えている奈央。そんな中、父・博一の提案で、彼の3度目の結婚相手となる綾と台湾旅行をすることに。父の再婚相手というだけでよく知らない女性となぜ旅行をしなければならないのか? 納得がいかないが、せっかくだから思いっきり楽しんでやろうと思う奈央の台湾旅行には、台湾の魅力的なスイーツやグルメとの出会い、そして思いがけない人々との出会いが待っていた…。
富田靖子(『アイコ十六歳』)、松浦亜弥(『美・少女日記』)、佐藤藍子(『タイム・リープ』)など数多くの美少女の面差しを映像に切り出してきた今関あきよし監督が今回カメラを向けた先は、「装苑」でモデルデビュー後、数々のファッション誌や広告に出演し、現在は映画・ドラマの出演が控え女優としても注目度№1のモトーラ世理奈。独特の雰囲気を持つ彼女が今関あきよし監督によってどう映像に切り出されるのだろうか。
奈央と台湾の旅を共にする綾には『朱花の月』、『ヘヴンズ ストーリー』の大島葉子、父・博一役には意外にも今関作品初出演となる利重剛、そして『刀剣乱舞』や『最遊記歌劇伝』などの2.5次元舞台で活躍中の椎名鯛造の出演も期待を膨らませる。
また本作は、今関映画の原点ともいうべき「ポップな楽曲が全編を彩る」音楽映画でもある。その、思わず心がほっこりするようなメロディを歌い上げるのは、女優としても進境著しい、これが久々の本格レコーディングとなる後藤郁、本人役で出演もしている日台ハーフのシンガーソングライター・洸美-hiromi-、日本でも人気急上昇中の台湾ポップス界の実力派・PiA吳蓓雅と、音楽業界も注目の女性ヴォーカリストたちである。
プレス資料より

シネマジャーナルHP 作品紹介『恋恋豆花』
『恋恋豆花』 公式HP

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

今関あきよし監督インタビュー 2019年1月10日
宮崎 暁美

★この作品を台湾で撮ろうと思ったきっかけは?

編集部 この作品のアイデア、発想などはどういうところから生まれたのですか?

今関監督 映画自体のスタートは、元々はこのスタイルの予定ではなかったんです。血のつながりはないけど、これから親子になるであろう二人の旅ドラマというのは、あとから出てきたアイデアです。
最初はまったく違う話で、姉妹愛のつもりでした。台湾にいる姉と妹の姉妹愛を描こうと思ってシナリオも作りあげたのですが、シナリオを作ってみたら、台湾でなくてもいいなと思って、その台本はやめてしまいました。僕が台湾を訪れた時の印象とか、面白さ、いろいろな人にもお会いしたので(台湾の人も含めて)、そこで食べたものも含めて、とても楽しかったので、この楽しい気持ちをそのまんま映画にしてみようと思ったのです。ということで半分ドキュメンタリー、半分ドラマというようなスタイルになりました。

編集部 それでは、先に台湾で撮ろうというのがあったのですね。

監督 そうですね。どこで撮ろうかというより台湾ありきですね。最初は映画を撮ろうと思って旅したわけではないないですが、何回か台湾を旅するうちに、息抜き行ったらはまってしまったんです。最低でも2ヶ月に1回行っています。実は昨日、台湾から帰ってきたばかりなんです。

編集部 今回、どうしてインタビューしようと思ったかというと、私は中華圏の映画にはまっていて、台湾が舞台なので監督にインタビューしてみたいと思ったのです。

監督 ありがとうございます。

編集部 私も台湾には何度か行っているのですが、この作品はグルメとかスィーツ、観光地案内的なところもあるけど、台湾のいろいろなところに行っているというのにも興味を持ちました。何ヶ所くらいですか。

監督 北から南まで、台湾中を見てまわりました。でも一番気になったのは台中ですね。台中はあまり観光地化されていないのと、台湾の人に聞くと、あそこは住みやすい。住むなら台中という方が多くて。その魅力はなんだろうと思い、台中には一番多く行っています。なんで観光地化されていないかというと、交通の便が悪いからです。台北だと電車でどこでも行けるけど、台中はバスかタクシーで移動しかないので、初心者にはきついですね。

編集部 今もですか?

監督 今も電車網はないですね。行くにはちょっとハードルが高いかな。バスに乗れるようにならないと難しいですね。あるいはお金がかかってもいいならタクシーですね。

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

★タイトルとロケ地について

編集部 台湾には20回くらい行ったということですが、実際の撮影はどのくらいだったのですか。

監督 ドラマの撮影自体は2週間強ですね。ドラマ部分は1回の撮影で撮って、後は風景や食べ物を別に撮りに2回くらい行きました。

編集部 タイトルの『恋恋豆花』は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『恋恋風塵』から来ているのですよね。

監督 侯孝賢監督の作品が好きで、そこから取りました。あと「恋恋」の並びが好きで、可愛らしい言葉だし、愛しいとかの意味を知って、このタイトルにしました。「豆花」に関しては、それまで知らなかったのですが、豆花を食べたらはまってしまって、このタイトルを入れたいと思いました。

編集部 私は『恋恋風塵』の舞台、十分(シーフェン)や、『悲情城市』の舞台九份に3回くらい行っているのですが、あのあたりの雰囲気大好きです。でもかなり観光地化してしまいましたね。

監督 そうですね。今は観光地化しすぎてしまってつらいです。

編集部 2月初旬に、私も台湾に行くのですが、この十分で行われる「平渓天燈節(平渓天燈上げ祭り)」に行く予定です。

監督 僕も、昨日まで台湾に行っていたのですが、今回は侯孝賢監督の『ミレニアム・マンボ』のロケ地を訪ねて行ったんです。この映画のフーストシーンでスーチーが屋根のある長い歩道橋を歩いていくシーンがあるのですが、この歩道橋が今年取り壊されてしまうというので、それが取り壊される前に撮りたいと思って、これを撮りに基隆(キールン)まで行きました。

編集部 基隆も私の好きな町ですが、日本人町が残っているというのを、林雅行監督の湾生(戦前、台湾で生まれた日本人)を描いた作品『心の故郷~ある湾生の歩んできた道~』で知りました。ここも見てみたいです。

監督 湾生を描いた作品としては、『湾生回家』(黄銘正/ホァン・ミンチェン監督)という作品を観ました。

編集部 その橋も日本統治時代に作られたものかもしれませんね。

監督 どうなのでしょう。でも古くなって取り壊されるということなので、時代的にはその頃作った橋かもしれませんね。ここ1年くらいで壊されてしまうということなので、行っておいたほうがいいですよ。

編集部 基隆の廟口夜市も好きです。

監督 僕もあそこの夜市好きですね。

編集部 台湾に着いて最初のシーンで、九份に行って、夜、お母さんになる予定の綾(大島葉子さん)とぶつかり、宿を出て歩き回るシーンがありましたが、あれは九份かなと思ったのですが、そうですか?

監督 そうです。九份の民宿に泊まっています。僕も何回か泊まったけど、九份はほとんど民宿です。ちょっと奥に行くと民宿がいっぱいあります。夜、店が閉まって、まだ電灯がついている時間というのが30分くらいあるんです。その時間が大好きで、それは泊まらないと見ることができないんです。観光客が帰ってしまって、いなくなった瞬間がいいんです。ほんとの30分くらいですが。

編集部 人が多いのに、ここの映像よく撮れたなと思いました。

監督 いやいや、昼間は歩けないですよ。昼間行くもんじゃないですよ(笑)。あそこのシーン大好きです。わずか30分しか時間がないので、1日じゃ撮れませんでした。

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

編集部 台湾コーディネーターに杉山亮一さんの名前がありましたが、知り合いです。彼はどんな役割だったんですか。

監督 台湾でのキャスティングが一番大きいですね。台湾側のキャスティングをどうしようかという時にお願いしました。そ相談はしんなに有名な人は使えないけど、芝居や映画が好きという人にあたってもらいました。準備段階からています。いろいろ紹介してもらい、台湾に行った時にその人たちに会っています。けっこう有名な人にも会いました。『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』で主人公を演じた簡嫚書(ジエン・マンシュー)にも会っています。

編集部 けっこうマニアックな台湾も出てきたので、こういうところに杉山さんがかかわっていたのかなと思ったのですが、監督自身がこんなに台湾に行っているので、その賜物だったんですね。


監督 有名な観光地ばかりではつまらないから、「ここはどこ?」というようなところもないとと思ったので入れました。台北で試写をした時、台湾の人にも「あれはどこで撮ったか教えてほしい」と言われました。それで今、まとめています。

編集部 夜市のところなどは、だいたい土林夜市多いけど、ここに出てきたのは寧夏(ニンシア)夜市ですか?

監督 そうです。あそこの夜市が好きなんです。

編集部 実は私、「豆花」を初めて食べたのが、この夜市だったんです。台湾人の友だちが屋台の脇にある豆花店に連れていってくれました。だからこの『恋恋豆花』というタイトルに親しみを感じます。この作品でも、台湾の友人がおいしい「豆花」の店に連れて行ってくれたシーンありましたね。

監督 そうでしたか。この夜市の食べ物屋おいしいですね。クオリティ高いです。台湾に行くと時間があれば行きます。この夜市の入り口近くに豆花荘という店があって、この豆花はおいしいです(笑)。ここの豆花は蜜からして違います(笑)。豆花は、あれって思うのもあるし、ピンキリですけどね。
映画のシーンでは、友だちに会うといって違うところに行くのですが、ここに出てきたグラデンスという女の子に紹介された店は、家の近くにおいしい店があると言って連れて行ってもらいました。

編集部 私も台湾人の女性に連れていってもらって、初めて豆花を食べたので、同じようなシチュエーションだと思いなが観ていました。

監督 やっぱり地元の人の紹介が一番信用できますね。ガイドブックより。

編集部 だからこの映画は台湾好きな人の心をくすぐるシーンがたくさんあると思いました。

監督 あまり通好みにしちゃうととっかかり悪いので、初心者向けと中級者向けぐらいからがいいかなと思って作りました。

編集部 最初、奈央が綾さんと合わずにつんけんしていたのが、いろいろな食べ物を食べたりしているうちになじんでくるというところはうまく繋がっているなと思いました。

監督 ありがとうございます。台湾のご飯って、全体にやさしいじゃないですか。中華料理と間違えて油っこいという人がいますが、油っこいのってそんなにないですよね。今、台湾のスイーツ、タピオカミルクティが日本でブームですが、映画の中では全然出てこないですよね。意図的というよりは、僕があまり好きではないので出していないんです。

編集部 一気にブームになってビックリです。

監督 台湾の友だちが日本に来て街を歩くと行列ができていてビックリするんですよ。インスタで広がったんですよ。台中の春水堂が発祥の地らしく、行きましたが、日本にも春水堂を始めとして、今じゃあちこちタピオカティの店ありますね。

★ストーリー展開

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編集部 この台湾への旅は、お父さんも一緒に3人で行く予定だったんですか?

監督 いや、二人で行かせて、仲良くさせたいというお父さんの魂胆があるわけですよ。

編集部 そうだったんのですね。それに奈央が気落ちしていた時だったからというのもありますかね。

監督 ただで行けるからラッキーというのもあるでしょう。ま、我慢していればいいかっていうつもりですかね。知らない人ではあるけど、お父さんのパートナー。自分にとってのお母さんには成り得ないから割り切っている感じですね。まして設定上ではバツ2ですから。3人目ですので、もう勝手にしろっていう感じじゃないですか。もうお父さんの身勝手さ満載ですから。

編集部 そうですね。観ていてどうなってるのと思ってしまいました(笑)。

監督 私もバツ1なんで、人のことはあまり言えないですが、さすがに僕は3人目は無理だろうと思います(笑)。

編集部 以前だったら考えられない設定だなと思いました。

監督 いまどきですね。だから日本に帰ってきても、友だちと台湾ヅイーツの店なんです。

編集部 マニアックそうで、そうではない女の子も観るかもしれないなという感じですね。

監督 あまりアート映画にしてもしょうがないので、タピオカミルクティを飲んで台湾に興味を持ってくれて、豆花に興味をもってくれて、映画に繋がってくれたらいいなと思っています。

編集部 旅にもって行くカメラですが、持っていきやすい大きさのものがいいですね。若い人はそれで動画も撮っていますしね。
*ここで、私が持っていったカメラの話から、カメラの話が続いたのですが、それは割愛。
注釈:奈央のカメラはチェキという「ポラロイドカメラ」です。

監督 今の若い子はスマホで動画も撮っちゃいますからね。でも限られてしまうのでつまらないですけど。

★キャスティング

編集部 キャスティングについて聞きたいのですが、まずライブのシーンに出てきた方ですが、実際に日本と台湾で活動している方なんですか?

監督 洸美-hiromi-さんと言って、日台ハーフで、高校まで台中にいて、その後、歌をやりたくて日本に来て、日本で活躍しています。2/3日本、1/3台湾くらいでライブ活動をしているようです。今回、劇中歌『恋恋豆花』を歌っています。

編集部 先にお母さん役の大島葉子(はこ)さんが決まっていて、あとでモトーラ世理奈さんが決まったとどこかで見たのですが、実際は?

監督 台湾を舞台に映画を作ろうかなと思った時に、ある機会に葉子さんとお会いして、とてもナチュラルであまり女優ぜんとしていなくて面白いと思って、映画の中身決めていないけど、次出てねって言ったんです。それからストーリーを決めてから、娘役のオーディションをやったんです。有名な人も含めて2000人くらい集まりました。その中にモトーラ世理奈も来ていて、独特な個性でインパクトがありました。最終的に決める時は葉子さんも呼んで、葉子さんと芝居をさせて、「どう?」って聞いたらモトーラがいいということで決めたのですが、モトーラ以外は質感がみんな似ているんです。最終的に5人残ったのですが、モトーラありきか、それ以外を選ぶかという感じでした。

編集部 最後に残った人たちは、別の役で出ていたりするのですか?

監督 いや、出ていないです。その役でオーディションをしているわけですから、今回は他の役に振ってはいないです。

編集部 お父さん役の利重剛さんですが、彼はどのように。

監督 彼は高校時代から知っています。ずっと知っているのですが、電話したら「やっとオファーきたか」と言われました。彼は監督でもあるので、僕の映画をずっと見てもらっていました。

編集部 利重さんは、私の中では監督のイメージだったんですが…

監督 彼は「相棒」で犯人役で出ていたりしていますね。CMも多いですし。

編集部 キャスティングというのは、この人だったからピッタリとかありますよね。

監督 重要ですよね。キャスティングが決まった時点で、ほとんど映画は決まるというけど、そう思います。

編集部 台湾の方はどのようにしたんですか?

監督 主にはティエンとヴィッキーですね。今回の台湾行きでもティエンに会ってきたのですが、ティエンは今、相当出ていますね。『若葉のころ』では主人公の若い頃を演じています。
*石知田/シー・チーティエン 潘之敏/ヴィッキー・パン・ズーミン

編集部 シー・チーティエンの出演作『軍中楽園』『私の少女時代-Our Times-』も観ています。でもどこに出ていたのか思い出せない(笑)。再度観てみたらわかるかも。ヴィッキーさんの出演作『河豚』『粽邪』は観ていないです。
*2/16に『河豚』の上映会があり行ってきました。今関監督もゲストで来ていました。

監督 シー・チーティエンは4月3日に公開される『悲しみよりもっと悲しい物語』(韓国映画のリメイク版)にも出ているし、二人は大陸の映画にも出ています。

編集部 バックパッカー役の椎名鯛造さんはどうですか?

監督 彼は『中学生日記』や『キッズ・ウォー3』の子役で活躍したあと、『最遊記歌劇伝』『刀剣乱舞』『刀剣乱舞 -継承-』など2,5次元などの舞台を中心に活躍しています。彼はピンポイントで人気ありあす。アニメおたくとか。台湾のファンもいます。
モトーラ世理奈は台湾でも有名ですね。モトーラが出るというので、台湾のキャストが出てくれたというのもあります。

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

★これからの作品の予定は?

編集部 前作がロシアなどで撮っていて、今回は台湾。次の作品は?

監督 僕はロシアで撮ったり、ウクライナで撮ったり、今回は台湾、日本に近づいています(笑)。けど、もう一本、台湾で撮りたいというのと、ヨーロッパ圏でもう1回撮りたいという思いがあります。2つ迷いつつ台湾で撮りたいという構想はあるので、それで今回、台湾に行ったというのもあります。台南の方でイメージするものがあって、基隆と台南、両方に行ってきたのですが、構想中という感じ。日本で撮るというのは、今、思い浮かばないです。海外の方が楽しいです。台湾は南に行くほど人がやさしくなるし、味付けが甘くなる感人じ。台湾の人いわく「南に行くほど味付けが良くなる」と言っています。

編集部 私は台北のあたりにしか行ったことがないので、台北以南のことは映画でしか知らないので、ぜひ機会があれば行ってみたいと思っています。侯孝賢監督の作品に影響を受けて九份とか金瓜石、基隆、平渓線沿線ばかりに行っているので。

監督 侯孝賢監督と撮るのけっこう大変みたいですね。向こうのスタッフとかプロデューサーに会っていますけど、リテイク多くて泣くって言っていました。侯孝賢監督とずっとやりたいという人と、もうやりたくないという人と分かれるようです。いわゆる予定通り終わる人でないので、撮影終わって編集しているのにもう一回撮り直しするとか、あり得ないことを言い出すので、プロデューサーも心して撮影にインしないと無理なので、彼につく人は肝をすえてやらないと、ということのようです。次の仕事を入れていたりするとだめなんです。次、空けておかないと、まだ撮る、まだ撮るというタイプなので。そういう意味では粘る監督です。僕は『ミレニアム・マンボ』に関しては観ていなくてやっと観たんですが、けっこうはまって、それで、この間、そのロケに使った歩道橋を見に行って、撮影してきたところです。

*編集部 私も2月に見てきました。
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編集部 スーチーが出ていた作品ですよね。彼女は台湾の人だけど、香港映画で有名になりましたし、シルヴィア・チャンなんかも台湾出身だけど香港映画で活躍しているように、日本の俳優さんでも台湾で活躍したりとか、けっこうアジア圏ではそういうことがありますよね。

監督 言葉の問題が多少ありますが、香港が今、ゆれているけどそういう影響もありますね。台湾もそういう状態になってしまうかもしれないということがありますね。僕が台湾に行っていた時は、ちょうど選挙戦の時で、ただ見ていただけなのに旗を渡されてしまったんですが、街をあげて大騒ぎでした。中国側につくタイプの人か、そうでないかで大接戦です。高尾の方の人なんかは中国側についたほうが得だと思っている人も多いですが、そうだと国が失われてしまう国家の危機というのがあるので、いまの総統につくという人と半々という感じです。どうなるんだろう。シリアスな問題です。
俳優や監督も、SNSで台湾は1国だと主張するような人は中国では働けないし、みんな言いたいけど言えない状態で悩んでいます。言っている人もいますけど。中国でも仕事をしようと思うと、その問題はデリケートです。

編集部 日本人はそのへんのことあまり知らないですよね。

監督 これだけ日本からたくさんの観光客が行っているし、人が行き来しているのに、僕も台湾に行くまで台湾の大使館がないというのを知らなかった。中国にならって国として認めていないわけですから、非常に複雑ですね。

編集部 台湾の話ばかりになってしまいましたが、監督が台湾にはまってしまったきっかけはなにかあるんですか?

監督 僕は甘党なのでスイーツですね。タピオカミルクティはもちろん日本でも飲んでいたけど、そんなでもないんですが、愛玉子 (オーギョーチー) とか豆花とか含めて好きです。オーギョーチーなんか、材料を買って自分で作ったりしましたから。あれ作った日本人はあんまりいないと思いますよ。原料の実をガーゼに包んで、水の中でグニュグニュすると寒天状のものが出てくるんです。そういうのにはまって、台湾好きになっていったというところがありますね。映画でなくて、台湾話、もっとしたいですね。

編集部 はまると台湾通いになりますよね。

監督 台湾の映画もたくさん観るようになりました。台湾の映画クオリティ高いし、むしろ日本の映画のほうが遅れていると実感しています。

編集部 そういう意味では、コラボレーションとかあると面白いですね。

監督 この映画を台湾で上映する時に、なんか台湾の方のと一緒に上映するとか、仲良くなった監督も何人かいるので、一緒にやってもいいかなと思っています。

編集部 最近、若手の人多いですよね。

監督 多いですね。がんばっています。面白いし。すごいです。インディーズで撮っている人もいるし、みんな苦労しながら撮っていますよ。

編集部 この『恋恋豆花』も、大手の会社というのではなく撮ったのは?

監督 そうですね。自分で自由に撮りたいなというのがありますね。もちろん大手もいいけれど、自分の大好きな台湾で、スイーツで、自分のテリトリーでやりたいというのがスタートではあります。

編集部 ありがとうございました。

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映画『静かな雨』公開記念舞台挨拶

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でんでん、仲野太賀、衛藤美彩、中川龍太郎監督、宮下奈都(原作者)

2月8日(土)シネマート新宿にて『静かな雨』の中川龍太郎監督と出演者による上映後の舞台挨拶が行われました。まず、朝早くから観に来てくださったたくさんのお客様にお礼を一言ずつ。MCさんとのQ&Aに移ります。


―今のお気持ちはいかがでしょうか?

中川監督 宮下さんが書かれた美しい原作を初めて読んだのが1年前のことになります。1年経ってこの映画の最初のお客さまに、皆さまになっていただけて非常に嬉しいなと思っています。初めて原作がある作品を作ったので、最初は不安もあったんですけど、この素晴らしい仲間や先輩方に囲まれて作れたので、ここに立てて光栄だなと思っています。

衛藤美彩 映画の初主演というこのオファーをいただいたときには、不安のほうが大きかったんです。まだグループ(乃木坂46)在籍中でしたし、調整して撮影に臨みました。監督がおっしゃったように、素敵なキャストの皆さまとスタッフの方々に支えられました。それから約1年経って、今日皆さんに見ていただけて…ここまでの過程が全部初めて、こんなに嬉しい気持ちになったのも初めてです。とても嬉しい気持ちでいっぱいです。

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仲野太賀 観てくださった衛藤さんのファンの方にお叱りを受けないかなとちょっと怖気付いています。w
衛藤さんとご一緒するのは初めてですけれど、中川監督と2度目です。素晴らしいキャストの皆さまとスタッフの方と作り上げた、濃密な時間が刻まれた映画になっています。どういう風に皆さんの元に届いて、どういう風にこの映画が広がっていくのかなって興味もあって楽しみです。なんかこう、大丈夫でしたか?(笑)本当に嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいです。

でんでん 僕はこの映画をテレビ(DVD)でしか観ていないんです。寝転びながら見ていたんです。無言のシーンがものすごく多いんですよね。耳が遠くなったんじゃないかと(笑)思うくらいでした。太賀くんと衛藤さんのキメの細かい芝居が、同じ役者から見ても素晴らしいなと思って見ていました。新藤兼人監督の『裸の島』を彷彿させるようなシーンもありましたね。とっても静かな、淡々と流れる映画の中で、細かい感情の起伏なんだけど、太賀くんと衛藤さんが上手に演じているのを見て、共演者としてもちょっと痺れた映画でもありました。監督には「どうも呼んでいただいてありがとうございました」(笑)

―ほぼ1年前の撮影だそうですが、振り返ってみて現場の雰囲気やエピソードを。

中川監督 自分としてはこのお話は一種のおとぎ話だと思うと同時に、メインのキャストに関しては年齢の近い人間でこの物語を作りたいなと思っていました。将来、先行きが見えない中で、走り出したくても走れない行助と、未来に進みたくても過去に戻ってしまう、ここでしか生きられないこよみの寓話というかおとぎ話を作ろうと取り組みました。なかなかどこをとっかかりにしえいいか苦しんだのが、本当のところでありました。
そういう意味では、現場で自分と太賀がぶつかるというか、気まずくなることが結構あったんですけど(笑)、衛藤さんがめちゃくちゃ空気が読める人で、読んでくれたんじゃないかな。(笑)
衛藤さんがいなかったらもうちょっと現場の空気が暗かったかもしれないです。

仲野太賀 めちゃくちゃ喧嘩してるみたいじゃん。(衛藤:喧嘩のシーンは見てない。でんでん:カメラオフではあったかもしれんけど)

衛藤美彩 私今日でんでんさんと「初めまして」なんです。

でんでん (一緒のシーンがなくて)現場では全然会ってないもんね。

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衛藤美彩 そうですね。映画と全然違うねって言われました。
私は太賀さんとのシーンが多くて、年齢も同い年で、ねっ?(笑)想像していたよりも気さくで、カメラが回っていないときでもたくさん話しかけてくださったりして、私も緊張がほぐれて楽しく撮影できたかなと感謝しています。

太賀 僕も感謝しています。確かに、中川監督とは同世代でもありますし、意見交換で激しめのディスカッションがあったかも、しれないんですけど(笑)、衛藤さんが現場を明るくするパワーを持っていて、衛藤さんが現場に来るだけでみんなが明るくなるという。本当に助けられましたね。ありがとうございます。(二人してお辞儀)

中川監督 衛藤さん、本当にいい人。現場にご飯を作って来てくれたりね。無限ピーマンとか作って来てくれましたね。

仲野太賀 衛藤さんに支えられましたね。

衛藤美彩 ありがとうございます。

でんでん そんな衛藤さんと一度もからめなくて、ちょっと残念なんですけど。(笑)
僕と太賀くんはここ2,3年よく仕事しているよね。(太賀:そうですね)CMでも一緒だったし。なんとなくいい感じだと俺は思っているんだけど。(笑)

太賀 僕も思ってます。(笑)

でんでん で、なんとなくほんわか~な感じで二人お芝居していたと思うんだけど。そういえば中川監督てんぱってたね。(笑)今思い出した。

中川監督 でんでんさんに相談しましたよね。緊張しないように、アドバイスいただいたりしました。

でんでん あ、そう?(笑)アドバイスするの逆じゃないの?楽しかったよね。俺はね。2,3日のお仕事だから。見てわかるように。ほんと、赤いマフラーが似合うなと思ったね。恥ずかしかったんだけど、あれ。

―はい、みなさま、素敵なエピソードたくさんありがとうございます。

仲野太賀 バッサリ行きますね。(笑)

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―次の質問させていただいてよろしいでしょうか?
仲野さんに伺います。今回クランクインの前に取り組んだことなどあったでしょうか?


仲野太賀 僕に限らず、だったと思うんですけど、クランクインの何ヶ月か前からワークショップみたいなのをしましたね。衛藤さんと。

衛藤美彩 はい、しましたね。2,3か月前。

中川監督 月に1回か2回ずつやりました。

仲野太賀 現場に入ってしまう前に衛藤さんとの関係性とか、一緒にいて居心地がいい、お互い気を使わないような空間を作ることで、衛藤さんとワークショップをしたり。あと監督やスタッフのみなさんと今ある脚本をいかに前進させるかとか、よりいいものにするためのディスカッションにすごい時間をかけた気がします。

―ありがとうございます。では、衛藤さんに伺います。こよみは鯛焼き屋という設定ですが、あの屋台はセットだと伺いました。そこでぜひ鯛焼きエピソードを教えてください。

衛藤美彩 鯛焼きエピソード?鯛焼きを一人でパチンコ屋さんの横で焼いてる女の子っていないんです…

中川監督 どんなに取材しても出てこなかったですね(笑)。

衛藤美彩 1丁焼きっていうのがあるのも知らなくって。なので、今回監修していただいたお店に行って、1週間くらい行って仕事が終わってから実際に教えていただきました。監督も何回か来てくださって。ほんとうにずっとそこで働いている人に見えるようにたくさん教えていただきました。たくさん失敗したりもしたんですけど、最後はきれいに焼けるようになって、それを現場のセットで美術さんが同じように作ってくれたので、とても焼きやすかったです。
映画の中で食べているものは、私が実際に焼かせていただいたものもあって、それを太賀さんがすっごく美味しそうに食べくれて(笑)。何個?たくさん食べましたよね?

仲野太賀 たっくさん食べました。

衛藤美彩 たくさん食べるんだけど、いつ食べても初めて食べたときの美味しい顔をしてくれて。

仲野太賀 ほんと美味しかったんです。

衛藤美彩 良かったです。その姿に励まされたというか、本当に作っているかたはこういう気持ちになるんだなって体験させてもらいましたね。

―心がほっこりするエピソードをありがとうございます。スペシャルゲストがお見えになっていますのでお呼びしましょう。本作『静かな雨』の原作者、宮下奈都さんです。(拍手)公開日であります昨日2月7日は仲野太賀さんの誕生日(27才)でした!

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宮下奈都 お誕生日おめでとうございます。(花束を贈呈)

仲野太賀 ありがとうございます。なんだか受賞したみたい(笑)。

中川監督 どうでしたか?作品を観ていただいて。

宮下奈都 はい。手触りがザラザラだったり、ツヤツヤだったり、本当にいい映画で。「ゆきさん」って呼んだ衛藤さんの声で、ゆきさん(行助)の世界が立ち上がった気がして、ほんとにこよみさんの目と、行助さんの目が同じ色で、すごくよかったと思いました。すごく嬉しかったです。(拍手)

ここからフォトセッション

―ではお別れの挨拶をでんでんさんから

でんでん では「お別れの挨拶」を(笑)。ほんと月並みなんだけれど、口コミでよろしくお願いいたします。こういうことはなかったかと思いますが、朝いちばんの上映で睡眠不足で眠られた方、もう一度見直してください。(笑&拍手)

仲野太賀 みなさん、観に来てくださってありがとうございました。ちょうど一年前に作った映画なんですけれど、中川監督と素敵なキャスト・スタッフのみなさんとご一緒できたのも嬉しくて。宮下先生の原作が素晴らしくて、それを映画化するときにいかに、なんだろな、「顔に泥を塗る」じゃなくて(笑)、塗らないように、丁寧にやっていこうと思いました。映画化するときに、また違う要素、音楽的な要素、ほかの要素も含めて最終的に中川監督の作品になればいいなと思ってやっていました。
僕としては中川監督の新しい作品の一つになったと思いますし、衛藤さんの輝かしい初主演作になっているんじゃないかと思っております。今日はほんとにありがとうございました。これでお別れの挨拶とさせていただきます。(笑&拍手)

衛藤美彩 一年前にお話をいただいて撮影して、今になるまでの過程で、映画っていいなって。個人的にすごく映画界の魅力に自分自身もどっぷりつかってしまいそうなくらい、このお話も大好きですし、この作品をこれからたくさんの方に観ていただけるんだということがすごく嬉しいです。行助とこよみは、この作品の中で毎日を丁寧に生きていて、そういう姿は私自身も原題を生きるにあたって考えさせられます。みなさんの心の中にこの『静かな雨』の優しい物語が少しでも残ったら嬉しいなと思います。何度も観に来てほしいです。今日はありがとうございました。(拍手)

中川監督 宮下さんの素晴らしい小説があった上で作らせてもらったわけですが、いろいろ自分も初めてのことが多くて、一番苦しんだ作品でもありました。そういう中で、今日来てくださっている太賀さん、衛藤さん、でんでんさん、そのほかほんとに素晴らしい人に恵まれてこの作品が、生み出せたのでぜひこの作品が広まってほしい。届くべき人に届いてほしいと思っている次第です。ぜひ周りの方とか、ご自身にとって大切な人に少しでも気に入っていただけたら。
率直な感想を、僕の所属している東京ニューシネマという会社にメールでください。必ず見るようにしています。ご連絡いただけたら嬉しいなと思います。今日はほんとうにありがとうございました!(拍手)

宮下奈都 原作を書いているときには無意識だったんですけど、今回この美しい恋愛映画を観て「恋愛って、その外側で人がどう生きるかっていうことだったんだな」と知りました。ほんとにいい映画になっていて感激しました。ありがとうございました。(拍手)

ほぼ書き起こし。(まとめ・写真 白石映子)
作品紹介はこちら

映画とゲームの融合!?「DEATH COME TRUE」

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左から森崎ウィン、栗山千明、本郷奏多、梶裕貴、山本千尋

2月6日(木)新宿バルト9にて実写ムービーゲーム「DEATH COME TRUE」プレス発表会が開催されました。 
まず制作側の梅田 慎介氏(イザナギゲームズCEO)、安藤隼人氏(ムービー・ディレクター)、小高 和剛氏(ディレクター/シナリオライター)。続いて映画のキャスト、本郷奏多、栗山千明、森崎ウィン、梶裕貴、山本千尋が登壇。ツイッターのお知らせをRTした中から抽選で招待されたファン70名の歓声があがりました。 
スクリーンで予告編を紹介、「インタラクティブコンテンツ」というジャンルだそうです。プラットホームも使用可能言語も多数。
映画のストーリー中、主人公が選択しなければならない場面がたびたび出てきます。その選択次第でゲームがどちらかに進み、何通りもの組み合わせが生まれます。映画を観ているような感覚で、ふだんゲームをやらない人に体験してもらいたい、と映画と同じ設定の格安価格です。これは買って試してみたいです。
6月の発売に向けて準備中のため、スタッフ・キャストたちもネタバレを避けなければならず、Q&Aに苦戦していました。(白)

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梅田 慎介氏、安藤隼人氏、小高 和剛氏

≪DEATH COME TRUE≫
舞台は、とあるホテル。
主人公、カラキマコト(本郷奏多)は連続殺人事件の犯人として指名手配されている。
しかし男には一切の記憶がない。
そんな状況の中、男には死ぬと『タイムリープ』して過去に戻る不思議な能力がある。
犯人として追われながら、男は誰を信じて、誰を疑う?
そして、自分自身の本当の正体とは?
選択と死を繰り返しながら、男は真実を目指す。

■CAST
本郷奏多:カラキ マコト役 
栗山千明:サチムラ アカネ役 
森崎ウィン:クジ ノゾム役 
梶裕貴:ホテルのフロント役 
山本千尋:クルシマ ネネ役 

■STAFF
ゲームディレクター・シナリオ:小高和剛
プロデューサー:梅田慎介
クリエイティブディレクター:鎌田俊輔
製作:イザナギゲームズ
リリース予定:2020年6月 予定価格1900円 
(C)IZANAGIGAMES, Inc. All rights reserved.
■『Death Come True』カウントダウンサイト:https://deathcometrue.com/
■『Death Come True』公式Twitter:https://twitter.com/DeathComeTrue