『ハウス・イン・ザ・フィールズ』 タラ・ハディド監督インタビュー (アップリンク提供)
アトラス山脈の四季折々の自然風景と、モロッコの山奥で暮らすアマズィーグ人の姉妹の慎ましくも美しい日々の営みを記録した映画『ハウス・イン・ザ・フィールズ』。
2020年公開予定でしたがコロナ禍で延期になり、2020年5月にオンライン配信で緊急公開されました。この度、ようやく劇場公開が決まりました。
★2021年4月9日(金)よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
劇場公開にあたり、世界的建築家ザハ・ハディドを叔母に持ち、写真家としても活躍するタラ・ハディド監督のインタビューが、配給のアップリンク様から届きました。
また、公開に併せて、アマズィーグ語の文字ティフナグをあしらったロゴTシャツ、トートバッグ、そしてハディド監督によるフォトTシャツなど、オリジナルグッズも発売されますので、あわせてご紹介します。
作品詳細は、下記もあわせてごらんください。
★シネジャ 作品紹介
★シネジャ スタッフ日記 2020年5月17日
モロッコ、アマズィーグ族の姉妹『ハウス・イン・ザ・フィールズ』 ★オンライン公開中 (咲)
☆タラ・ハディド 監督インタビュー☆
ーーなぜこの作品を作ろうと思ったのでしょうか
20年ほど前初めてこの村を訪れた時、圧倒されました。マラケシュから10時間以上かかる場所で、たどり着くのが非常に大変なのですが、荘厳な風景や、そこに住む人々に魅了され、数年後にまた訪れました。数百年前から変わらないコミュニティの、失われつつある生活様式を記録し、彼らのクロニクルを撮りたいと思いました。人里離れて、閉鎖された山間部に暮らす特定の家族、特定の女の子たちを撮ろうと思ったのです。
7年かけて、彼女たちの生活に入っていって、カメラも一緒に生活を共にし、たくさんの映像を撮りました。撮影し終わってフッテージを見た際、彼女たちの痛みがどれほど強いのか、私はやっと理解しました。自分の気持ちをはっきり表明しない人たちなので一緒に生活している時にはわからなかったのですが、カメラが彼女たちの内面を捉えていたんです。
ーー モロッコの女性の地位
15年ぐらい前にモロッコ政府は、女性の地位を根本的に上げる、革命的といっていい家族法を作りました。離婚したら財産は半分に分ける、就業の自由などが書かれているわけですが、法案が通っても実際にそれを適用しないと意味がない。男性たちがそれに応じて動かないといけない。とくに田舎では、まだまだ時間がかかる。
ただ、実際に生活を共にして見えてきたことは、女性が犠牲になっているだけではなく、男性も犠牲になっていたということ。つまり、このコミュニティが、犠牲のうえで成り立っている。伝統があまりにも強く存在しているので、そこを破るわけにはいかない。個人のためではなく、共同体のため。個人の犠牲によって共同体が今まで生き延びてきたのです。
とはいえ、男の子のほうが少し特権的な立場にあることは確かです。自分がやりたいことを主張できる立場にはあるからです。女の子が「大学に行きたい」というのはタブーですが、男の子だとそれほどタブーではありません。
ーー 彼女たちのその後は?
ハディージャはとても活発で頭のいい子です。家族法が変わったことにより、今までになかった権利が女性に大きく与えられた、それを知って彼女は弁護士になりたいと思ったようです。ですが、夢を追いかけるために共同体を離れるということは、とても大変なことです。私はハディージャのご両親に「彼女を大学に行かせてあげてください」と懇願したことがあります。でも、それは行き過ぎたお願いだったようです。お母さんに「彼女がいなくなったら誰が畑仕事を手伝ってくれるの?動物の世話をするの?」と言われました。
村の人たちも「教育は必要ない」と考えているわけではありません。しかし子供たちが学校に行くと、仕事を手伝う人間がいなくなる。「村を出たい」という願望を持つ若者たちも多いと思いますが、実際には、彼らは村の一部であり、山の一部なのです。山間の暮らしに愛憎を抱きながら、その一部として生きている。ここは、外部の人間が立ち入ることのできない、白黒ではない難しい問題です。
わたしは教育が大切だと考えています。ただ、あの村をとても尊敬し敬意をもっていますので、彼らのルールを尊重したいとも思っている。コミュニティの価値観を変えるというのは、とても長いプロセスが必要で、政府とかNGOとか、いろんな人が関わって根本から変えていかなくてはいけない。
今、彼女は結婚して、夫と息子と幸せに暮らしています。でも、まだ全然遅くないと思うのです。彼女はまだ19歳です。マラケシュの郊外に住んでいるので時々会いますが、いつも言っています。「まだまだあなたは若いし、遅すぎるということはないのだから、また勉強したらいいんじゃない?」と。
【監督プロフィール】
タラ・ハディド Tala Hadid
脚本家、監督、プロデューサー。建築家のザハ・ハディドは叔母にあたる。
1996 年に『Sacred Poet on Pier Paolo Pasolini』で監督デビュー。何本かの短編を監督した後『Tes Cheveux Noirs Ihsan』(2005)で学生アカデミー賞を受賞し、ベルリン国際映画祭パノラマ部門最優秀短編映画作品賞に輝いた。
2014 年、『Itarr el Layl』 (英語タイトル:The Narrow Frame of Midnight)を完成。この作品は、トロント国際映画祭でプレミア上映された後、ニューヨークのリンカーン・センター、ローマ国際映画祭、ロンドン国際映画祭、 ウォーカー・アート・センターなど世界中の数多くの映画祭や映画イベントで上映された。
ニューヨークの売春宿を撮り続けた写真ドキュメントのプロジェクト“Heterotopia”や、2芸術写真の出版を手がけるスターン出版から、新進の写真家を紹介する “Stern Fotografie Portfolio” シリーズでハディドの写真を特集した本が出版されるなど写真家としても活躍している。
★オリジナルグッズ※4月9日(金)発売
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』タラ・ハディド フォトTシャツ 人物
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』タラ・ハディド フォトTシャツ 風景
カラー:ホワイト
サイズ:M、L
販売価格:3,500円(税抜)
写真家としても活躍するタラ・ハディド監督によるフォトTシャツ。
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』ロゴ Tシャツ
カラー:ホワイト、ブラック、ライトピンク、ライトイエロー
サイズ:M、L
販売価格:2,800円(税抜)
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』ロゴ トートバッグ
カラー:ナチュラル、ブラック、レッド、スカイブルー
販売価格:1,800円(税抜)
▼お取扱店舗▼
◎ アップリンク渋谷
https://shibuya.uplink.co.jp/
◎ アップリンク吉祥寺
https://joji.uplink.co.jp/
◎ アップリンク京都
https://kyoto.uplink.co.jp/
◎アップリンク・オンライン・マーケット
https://uplink-co.square.site/
【作品概要】
『ハウス・イン・ザ・フィールズ』 原題:TIGMI N IGREN
監督・撮影:タラ・ハディド
出演:ハディージャ・エルグナド、ファーティマ・エルグナドほか
弁護士になりたい妹と、結婚のため学校を辞める姉。
モロッコの山奥、圧倒的な自然風景とアマズィーグ人の姉妹の日々の営みとゆれる心を繊細に描く。
弁護士を夢見る少女ハディージャとその姉のファーティマは、モロッコの山奥で暮らすアマズィーグ人の姉妹。ある日、ファーティマが学校を辞めて結婚することになる。「結婚するのが怖い。だけど義務だから」と胸のうちを語るファーティマ。ハディージャは、大好きな姉と離ればなれになってしまう寂しさ、そして自分も姉のように学校を卒業できないかもしれないという不安を募らせていく。2人の揺れ動く想いをよそに、その日はやって来て……。
アフリカ北西部に広大に走るアトラス山脈の一部、モロッコの高アトラス南西地域。そこに住むアマズィーグ人は、信心深く、伝統を重んじ、自然の恩恵を受け、数百年もの間ほとんど変わらない生活を送っている。世界的建築家ザハ・ハディドを叔母に持ち、写真家としても活躍するタラ・ハディド監督は、本作の製作にあたり、7年にわたって現地に通い、彼らと寝食をともにしたという。雄大なアトラス山脈の四季折々の自然の中で、被写体に寄り添った親密な映像は、失われつつある生活様式や文化を記録しながら、人々の内なる想いをも紡いでいく
モロッコ、カタール/2017年/86分/1:1.85/アマズィーグ語
字幕翻訳:松岡葉子
配給・宣伝:アップリンク
■公式サイト https://www.uplink.co.jp/fields/
■公式Twitter https://twitter.com/intheFieldsJP
■公式facebook https://www.facebook.com/113411273686745/
★2021年4月9日(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
▼予告編 YouTube▼
https://youtu.be/dVunYbRl2hA