特集上映「そしてキアロスタミはつづく」初日 中村獅童さん登壇!

「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」初日

キアロスタミ監督ファンを代表して、
中村獅童さん(歌舞伎俳優)登壇

DSCF4851 kiarostami sidou 5 420.JPG

■日程:10月16日(土)12:40回 『友だちのうちはどこ?』※上映前
■場所:ユーロスペース

★「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」
公式サイト
シネマジャーナル

イラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ監督の初期7作品のデジタル・リマスター版特集上映「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」が2021年10月16日(土)にユーロスペースで公開初日を迎えました。
映画『友だちのうちはどこ?』上映前に、キアロスタミ監督ファンを代表して、中村獅童さん(歌舞伎俳優)による舞台挨拶が開催されました。(聞き手:藤井克郎さん/映画記者)

◆キアロスタミ作品のあるがままの演技に衝撃を受けた
獅童:久しぶりにユーロスペースにきて、キアロスタミ監督の作品がデジタル・リマスター版として蘇ることにとても興奮しています。

― 今日は短い時間ですけど、よろしくお願いします。

獅童:映画やキアロスタミ監督への思いをいっぱいしゃべりたいのですけど、15分しかないから話しきれないです。

― 90年代にキアロスタミに出会われて衝撃を受けたそうですね。

獅童:90年代、僕は大学生でミニシアターブームでした。僕自身まだまだ映画やテレビに出させていただけなくて無名時代で、たくさんの映画を観客として楽しんでいたのですが、もちろん役者としての目線もありました。当時、ユーロスペースに行くと、いい映画がかかっているというイメージでした。まだ向こう(桜丘 さくら通り)にあった頃でしたが、そんな思いでユーロスペースに通っている中で、キアロスタミの映画に出会って、衝撃的でした。自然な少年の姿、演技じゃ出せない味、それを僕ら役者はやらないといけない。プロだけど一期一会。自然の姿をと。
歌舞伎というのは、400年の歴史があって、型のある世界だけれど、その中に自分の魂や気持ちをどうやって込めていくかを研究しているときにキアロスタミ監督の作品に出会って、演じている人たちの自然な姿に衝撃を受けました。

DSCF4842 kiarostami sidou 4.JPG


― キアロスタミの映画の中から、演技をしていく上で、どういう風に学ばれましたか?

獅童:15分じゃとても語れません。人間として生きてきたら、大人になっていつのまにか生き方が上手になっていたりします。役者も同じで、なんとなく演じていると、それらしくなって身についていると思います。映画で演じる時には、歌舞伎役者・中村獅童はしまいます。台本をもらった時に、自分に何が求められているのかを考えて演じます。
歌舞伎は、1か月、毎日毎日同じことを演じるけど、今日出会ったお客様と一期一会。どうやってその日その日、新鮮な気持ちでお客様のハートに届くかを考えます。
『友だちのうちはどこ?』の主人公・アハマッドは、キアロスタミ監督に見いだされた素人の少年で、芝居じゃない、一期一会の気持ちでやってて、褒められようとも思ってない。計算じゃない、純粋な少年の気持ちでやってます。自然な姿はプロの役者にかなわない。純粋に演技をする気持ちを忘れてはいけないと、キアロスタミ監督の作品は思い出させてくれます。プロの役者が目指す自然な姿をぜひ観てください。

◆映画館で時を共有する醍醐味
― 『友だちのうちはどこ?』は、世界中の子供から大人まで愛される名作ですが、陽喜くん、夏幹くんと一緒に観る予定は?

獅童:自分が新作歌舞伎を作る時も、子供から大人まで楽しめるように作ることを意識しています。特に子供に楽しんでほしいと思っています。キアロスタミ監督の作品は原点にもなっていて、影響はすごく大きいと思います。
今、皆さんが劇場の椅子に座って映画の始まるのを待っているワクワク感が伝わってきて、やっぱり劇場で共有するというのはいいなぁ~と思います。
自分の出演した映画も、DVDをくれるといわれても、映画館で観客の皆さんと一緒に観ます。ここで笑ってくれるんだという楽しみもあります。今は、家で映画も楽しめる時代ですが、やっぱり映画館に行くと、暗くなって、予告編があって、本編が始まるという映画館独特の味わいがあります。
コロナ禍で映画館や劇場に足を運ぶのが難しい時代ですが、映画は家で観るのと映画館で観るのとでは全然違います。
劇場に行って映画を楽しんだこと、ユーロスペースに通ったことが蘇ってきて、足を運ぶということが、自分の人生の思い出となって、明日からまた頑張れるという糧になります。

********

あっという間に時間が経ち、最後に、司会の方から、「キアロスタミ監督ファンを代表して、一言お願いします」と言われた獅童さん。
「ファンを代表してなんて、全作品を観ているわけじゃないし、おこがましいです。先ほども言った通り、共有するというのは生きているということ。同じものを観て、泣いたり笑ったりして、感動することが大切。まだまだ大変な日常が続いていますが、ぜひ劇場に足を運んで、キアロスタミ監督の中の子供たちの姿をみて優しい気持ちになったり、一瞬でも夢を見たりしてほしいです。それが映画や演劇の醍醐味。僕の大好きなキアロスタミ監督の作品を肌で感じて、楽しんでください。


このあと、マスコミ向けの」フォトセッション。
DSCF4880 320.jpg

「こういう時、お客様は一番つまらないですよね」と気遣う獅童さん。
最後に、一般のお客様にも撮影が許されました。


◆今後のユーロスペースでのトークショー予定
10月23日(土)12:40『風が吹くまま』
上映後 ゲスト:ショーレ・ゴルパリアン(映画プロデューサー、翻訳家、通訳)

10月24日(日)12:40『そして人生はつづく』
上映後 ゲスト:佐藤元状(英文学・映画研究者)


「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」
期間・劇場:2021年10月16日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催
 ユーロスペース 公式サイト:http://www.eurospace.co.jp/

上映作品:
『トラベラー』(1974)
『友だちのうちはどこ?』(1987)
『ホームワーク』(1989)
『そして人生はつづく』(1992)
『オリーブの林をぬけて』(1994)
『桜桃の味』(1997)
『風が吹くまま』(1999)

作品内容詳細など、公式サイトでご確認ください
https://kiarostamiforever.com/

『WHOLE/ホール』公開を前に映画にかけた思いを聞く

cinemajournal_top1 480.jpg

2019年の第14回大阪アジアン映画祭で、JAPAN CUTS Award スペシャル・メンションを受賞した『WHOLE/ホール』。
2021年10月15日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開となるのを前に、監督の川添ビイラルさん、脚本・主演の川添ウスマンさん、主演のサンディー海さんの3人に、ハーフとしての生い立ちや、この映画にかけた思いを伺いました。


『WHOLE/ホール』
監督・編集:川添 ビイラル
脚本:川添 ウスマン
出演:サンディー海、川添ウスマン、伊吹葵、菊池明明、尾崎紅、中山佳祐、松田顕生

*物語*
ハーフの大学生、春樹(サンディー 海)は親に黙って海外の大学を辞め、日本の実家に帰ってくる。「中退してどうするの」と、つれない母。生まれ故郷なのに、電車に乗っていても、よそ者を見るような視線を感じてしまう。
ある夜、春樹は鍵がなくて家に入れず、入ったラーメン屋で建設作業員のハーフの青年・誠(川添 ウスマン)と知り合う。母親と二人で暮らす団地の部屋に泊めてもらい、一見ぶっきらぼうな誠が母親に甲斐甲斐しく尽くしている姿をみる。そんな誠から、春樹は英語の手紙を訳してくれと頼まれる。国籍も知らず会ったこともない父親からの手紙だった・・・

シネマジャーナル作品紹介

公式サイト




◎インタビュー
アップリンク吉祥寺にて

cinemajournal_kub4.JPG

監督:川添ビイラル (ビイラル)
脚本・主演:川添ウスマン (ウスマン)
主演:サンディー海 (海)

◆日本語が上手と週に1度は言われる!
― 神戸・岡本で生まれて15歳までいましたので、家の裏山にある保久良神社が出てきてびっくりでした。小学生のころに北野町を家族と散歩して、神戸モスクにとても惹かれて、それが潜在意識にあって、イスラーム圏の言葉を学びたいと思い、大学でペルシア語とウルドゥー語を専攻しました。ビイラルさん、ウスマンさんというお名前をみて、ルーツはどこなのか、とても気になりました。

ビイラル:父はパキスタンの人なのですが、サウジアラビアのクォーターで、生まれはインドで、その後パキスタンに移って、国籍はパキスタンです。神戸モスクには、しょっちゅうお祈りに行ってました。

― サンディー海さんは、お父さんがアメリカの方とのことですが、アメリカとなるとあちこちから移民してきていますよね。 ルーツは聞いておられますか?

海:適当なことを言ったら怒られるかもしれませんが、スウェーデンやイタリアなどヨーロッパの血がいろいろ混ざっているらしいです。わかっているのは、サンディーという名字にアメリカに来て変えたそうで、もとはサンデルソンだったらしいです。

― 海さん演じる春樹は、「ハーフ?」と聞かれて「ダブル」と答えていますが、海さん自身はいっぱい混ざってダブルどころじゃないですね。昔は、混血、合いの子、1970年代くらいからハーフという言い方が定着したと聞いています。ダブルという言い方は、2013年に公開された『ハーフ』(監督:西倉めぐみ、高木ララ)という映画で知りました。最近は、ミックスとかミックスルーツという言い方にしようという傾向もあると聞いたのですが、今はどう自称することが多いのでしょうか?  

海:まだ、日本ではハーフだと思います。自分の経験では、ダブルという言葉は、親の年代が子どもに対して、「ダブルがいいよ」というのを聞くことが多いです。自分の周りでは、皆ハーフと言ってますね。

― ハーフじゃなくて、まったくの外人とみられることも、もちろんあるんですよね。

全員:ありますね。

―映画に出てきたように、いじめられたり、よそ者扱いされたりというご経験はありますか?

海:いじめられたことはないですが、よそ者はありますね。

ウスマン:僕も同じですね。

― 日本語うまいですねと言われて、日本生まれの日本育ちと答える場面がありますよね。

全員: それはもうしょっちゅう! 週に1回は絶対ある。

海:そして、実は~から始まる。名古屋生まれなんですよ。田舎もんなんですよって。

― 3人は英語ができますが、逆にハーフで英語ができないというと不思議に思われる! 映画の中で、英語で話しかけられる場面も、「ハーフあるある」と思いながら観ました。考えさせられながらも、笑って観れる素敵な映画ですね。

ビイラル:ありがとうございます。


◆外国人と結婚した母のこと
― 映画の中で、春樹とお母さんの関係はちょっと冷めた感じ、誠とお母さんの関係はよく話して近しい感じと、とても対照的に描かれていますが、 外国の方と結婚されたお母様のことや、お母様への思いについてお聞かせいただけますか。

海:母は18歳の頃に、ウェストバージニアの大学に留学したのですが、行った理由がクリント・イーストウッドに会いたかった! 何年か後に出会って連れて帰ってきたのが、ブルース・ウィリス似の父でした。母もバイリンガルです。結構仲良くて、キャラクターとしては誠の母の方が似ています。名古屋で楽しく暮らしています。

― 川添兄弟のお母様は?

ウスマン:僕らの母は鹿児島で生まれ育って、大学の時に大阪に出てきて父と出会いました。素朴で純粋で心がたくましい女性です。僕はすごく尊敬しています。

― 恐らく、パキスタンの方と結婚するというと、鹿児島のご実家で反対されたのではないかと思いますが・・・

ウスマン:まさにそうですね。反対されていろいろありましたね。

ビイラル:田舎に行って、母と結婚したいと言ったら大反対されたと言ってました。

―お二人は鹿児島にもよくいかれますか?

ウスマン:今はもう祖父母のお墓があるだけですので、行かないですね。


◆暮らしの場としての神戸の魅力も伝えたい
― 川添兄弟お二人は神戸生まれ?

ウスマン:神戸で生まれ育ちました。家は北野町でした。

― モスクに歩いていけますね。私が神戸にいたころは、うろこの家も人が住んでいて、お手伝いさんが洗濯物を干しているのを見たことがあります。ほかの異人館も普通に人が住んでました。今の北野町は、すっかり観光地になっていてびっくりします。
今回の映画、北野町など、いわゆる観光地は出してないですよね。
最初、ポートライナーから山が見えて、やっぱり神戸いいところだなぁ~と。住宅街や海の見える建築現場など、神戸の良さがとてもよく描かれてました。撮影場所も苦心して選ばれたことと思います。


ビイラル:神戸で撮ることが決まっていたので、神戸の魅力はちゃんと伝えたいと弟と考えました。神戸フィルムコミッションや知り合いの方に助けていただいて、神戸の美しさを見せつつ、二人の人物の現実的な日常も見せたいとバランスを考えました。神戸にもいろいろなところがあるので、誠は誠らしいところ、春樹は裕福な方々が住んでいるところと。

― 春樹の家はどこで撮影されたのですか?

ビイラル:あれは芦屋の六麓荘の手前あたりですね。

― 坂の下に海が見えていて、神戸の住宅街らしい懐かしい光景でした。
(注:芦屋は神戸市ではなく神戸の一番東の東灘区の隣の市。)

ビイラル:神戸ではよく観る光景ですね。

― 保久良神社を選んだのは? フィルムコミッションですか?

ビイラル:もともと知っていて、直接交渉にいきました。ここで撮りたいという思いを伝えたら、撮らせてもらえました。神戸の綺麗な町の景色が見晴らせるということと、春樹が幼馴染の仁美と子どもの頃によく行っていたという設定としても素敵な場所でしたので。日本人なら神社に行くのは普通なので、それも描きたかった。

― あそこから見える景色が、昔はもっと海が近かったのですが、埋め立てて海が遠くなったなと思いました。 海さんは、神戸とは縁があったのでしょうか?

海:ウスマンが大好きでウスマンの住んでいる町ということはあるのですが、インターナショナルスクール時代にスポーツなどの対戦で行ったことがあるくらい。ウスマンの通っていた神戸のインターナショナルスクールと対戦してました。

― 今回、撮影でいらしていかがでしたか?

海:5日間の撮影で、ハードでほとんど寝てなくて、今回も神戸の観光はできませんでした。出来上がった映画を観て、素敵な町だなと思いました。

― 2017年10月にクラウドファンディングされてますよね。撮影はいつ?

ビイラル:2018年1月。そのあと、編集に時間がかかりまして、やっと完成したのが8月か9月位。そこから映画祭への応募を始め、2019年の映画祭にかけていただきました。

― 1月の撮影はいかがでしたか?

ウスマン:寒かったですね。つねに海とハグしてました。仲良すぎて、ふざけて、怒られました。

cinemajournal_ku 320.jpg


◆様々なハーフの思いを伝えたい
― 今の日本では外国人やハーフの方もすごく増えてきて、学校にも大勢いて、普通になってきたけれど、一方で移民難民排斥というような風潮も世界には残念ながらあります。そういう問題を前面に掲げた映画ではありませんが、心に残るインパクトのある映画でした。映画作りにかけた思いをそれぞれお聞かせください。

ビイラル:日本にはいろいろなハーフの方々、マイノリティーの方々がいるので、私たちのストーリーだけでなく、いろんな方々の思いや経験を知っていただきたいという思いが強かったので、純粋にこの映画を観ていただけるようにと思って映画を作りました。

ウスマン:兄が全部言ってしまったのですが、映画を観ていただけるなら、色々なタイプのハーフがいて、僕らが抱えている不満を観客に押し付けているわけではなくて、純粋に観ていただいて、こういうバイレイシャルなハーフがいるのだとわかっていただけると、それだけでいいかなと思って映画を作りました。

― ウスマンさんは脚本を書かれましたが、お兄さんと相談しながら?

ウスマン:僕と兄は似たような経験をしていまして、相談しながら最初僕が長編の脚本を書いて、兄に投げて相談して、中編映画のほうが観客側からすると観やすいかなと思って色々カットして短くしました。

― 海さんは、この映画にお声がかかっていかがでしたか?

海:台本をもらって、読んで、「こんな映画、観たことのない!」と思って、テンションがあがりましたね。ウスマンがさっき言ったように、複雑なカルチャーに対してこれが正解というものはないと思います。「これが正解」という映画は多いと思うのですが、二人は繊細に描いているので、「正解は一つではない」という多様性を表現できるように頑張ろうと思いました。

― 映画の中では内向きの暗い役ですよね。ほんとの自分とは違う?

海:結構、真逆のタイプ。春樹はほかの人の目線や意見に対してデリケートだけど、自分の意思はちゃんと持っているという難しい役。僕自身の中でも、昔、こう見られたけど自分は違うという経験があって、それをもっと強くして、面倒くさくして、強調して取り組みましたね。

― 日本だと、どちらかというと白人にはへつらうようなところがあって、あこがれの目で見られることもあると思います。

海:今回の映画でも、カッコいいとか、モデルやればとか言われる場面があるように、いわれた時に嫌じゃないのですが、違和感があって、それを笑いにしたり自虐ネタにしたりするディフェンスメカニズムが出来上がってます。

― 小さい時から、どう対応するのかが身についているのですね。


◆今、映画界にいるワケ
― 映画の世界に入りたいと思ったきっかけは? 

ビイラル:小学校(インターナショナルスクール)の時に、自分たちでカメラを持って動画を撮って編集する授業があって、それまで数学など勉強は全部できなかったのですが、カメラを持ったらとても自然で、私はこれがしたいと。そこからですね。あの授業があったからこそ、今私がここにあるんだと思います。

ウスマン:兄のおかげで映画業界に入ったと思います。昔から映画が好き。父が映画が好きだったので、2歳の時に『ターミネーター』を観てました。映画もですが、写真を撮るのもすごく好きです。兄が映画を作るというときに、撮る方を担当しました。CMや短編映画のアシスタントカメラマンをしていて、撮影監督を目指しています。

海:僕もビイラルと似ていて、インターナショナルスクールの中学の時に映画を作る授業があって、クリスマスがテーマだったのですが、作ったのが結構ダークな映画。親友がいじめられて自殺しそうになり、クリスマスの前に夢でサンタクロースが出てきて「助けてあげなよ」と言う物語。クラスで上映した時に、皆の顔を見ていたら、感動しているのがわかって、映画の力を感じました。そのあとに、エリスさん(注)という素晴らしい方の演技の授業があって、それをずっと中学から高校にかけて受けていて、役者になろうと思いました。

注)エリス・ブァン・マーセビィンEllis Van Maarseveen
イギリスとオランダで舞台監督、演劇・映画役者、演劇指導者としての豊富で多彩な経歴をもつ演劇トレーナー



◆一押しの映画
― 皆さん、好きな映画は? 1本にしぼるのは難しいと思いますが。

ウスマン:今年はまだ終わってないので、去年のナンバーワンを挙げると、『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』(監督:ダリウス・マーダー、2019年、アメリカ )。Amazon Prime オリジナル(2020年12月4日から配信)。音の描写が素晴らしい映画です。
(★2021年10月1日劇場公開
公式サイトhttps://www.culture-ville.jp/soundofmetal


ビイラル:いっぱいありますが、大好きな映画は、『エターナル・サンシャイン』(監督:ミシェル・ゴンドリー、2004年、アメリカ) 。素敵な映画ですので、ぜひ観てください。

海:2つあって、まず『カッコーの巣の上で』(監督:ミロス・フォアマン、1975年、アメリカ)。ジャック・ニコルソンがすごく好きで、観て衝撃でした。 メーキングを観て、すごいなと。精神病院に1か月くらい役者を入れて、キャラクターのまま過ごさせています。もうひとつが、『ナポレオン・ダイナマイト』(監督:ジャレッド・ヘス、2004年、アメリカ)、2006年DVD発売時の邦題『バス男』ですね。子どもの頃から影響されています。ふわふわしたコメディが大好きですね。



◆河瀨直美監督から学んだこと
ー ビイラルさんの卒業制作『波と共に』(2016年)には福島からの避難民とミャンマーの難民の方が出ていますよね。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021に出品の『ひびき』はコロナ禍での人と人との関係を描いていて、いつも今的なことに焦点を当てておられますね。
河瀨直美監督ともご縁がありますが、河瀨さんから学んだことは?


ビイラル:よく一緒に仕事をさせていただいてます。直美さんは独特なスタイルで撮る方。現場に行かせていただいて、すごい学びになります。こういうスタイルもあるんだと。役者のことを思う監督。自然な演技を引き出すために役者のために環境を作ってあげることを大事にされている方。そこはすごく学びました。

― 河瀨直美監督は、『朝が来る』の時にも「役積み」の手法で、奈良や東京の海の見えるマンションで、撮影前に1か月くらい本物の家族のように俳優の方たちに暮らしてもらったそうですね。

ビイラル:ほんとは海さんに撮影の前に1か月位、神戸の豪邸に住まわせてあげたいところでした。予算がないのでそれはできなかったのですが、その大切さは学びました。


◆ほかにないユニークな映画をぜひ観てほしい
― 映画作りはお金がかかりますよね。お金をかけない方法もあるとは思いますが。
コロナで映画館の興行収入も減っているし、いろいろ大変だと思います。

ビイラル:だからこそ映画を作らないといけないのかなというのは、海もウスマンも同じ気持ちだと思います。コロナで苦労されている人が大勢いると思いますので、アートは多様な声を表現するために貴重な存在。映画を作り続けることが大事だなと思います。

― 今のが観客に向けての言葉とも思えるのですが、公開に向けて、観客に一言お願いします。

ビイラル:コロナの感染拡大で映画館に足を運ぶのも難しいと思いますが、ユニークな作品になっていますので、ぜひ観ていただきたいです。ほかにはないものが、この映画にはあると思います。

海:川添兄弟は面白く、繊細に映画を作ります。ハーフやバイリンガル、バイレイシャルの描き方をぜひ観ていただきたいと思います。

ウスマン:映画自体はセンシティブ。僕らの思いを受け入れてもらうのもありがたいけれど、面白い場面もありますので、複雑に深く考えずにエンジョイしていただければと思います。

*☆*☆*☆*☆*☆*

このあと、写真を撮らせていただいたのですが、インタビュー中以上に、じゃれあうウスマンさんと海さんでした。ちなみに、3人の間では英語で話すほうが楽だそう。今また、3人でのプロジェクトが進行中とのこと。次回作も楽しみです。 
景山咲子


■プロフィール


【監督】川添ビイラル Bilal Kawazoe

cinemajournal_b 320.jpg

大阪ビジュアルアーツ専門学校放送映画学科での卒業制作『波と共に』('16)が、なら国際映画祭NARA-waveと第38回ぴあフィルムフェスティバルに入選し、第69回カンヌ国際映画祭ショートフィルムコーナーに選出される。中編第2作目『WHOLE』('19)は、第14回大阪アジアン映画祭インディー・フォーラム部門にてJAPAN CUTS賞 スペシャル・メンションを受賞し、北米最大の日本映画祭であるニューヨークのJAPAN CUTS 2019へ正式出品される。現在はフリーランスとして河瀨直美監督や世界的に活躍する監督の元で映画制作に携わる。


【中村春樹役】サンディー海 Kai Sandy

cinemajournal_k1 320.jpg

日本生まれ日本育ちの俳優。シアトルのコーニッシュ大学で演劇を学び、東京に戻ってくる。東京に帰国直後、大根仁監の『奥田民生になりたいボーイ』で映画俳優としてのキャリアをスタート。マッケンジー・シェパード監督の短編映画『Butterfly』('19)では主演を務め、NHK大河ドラマ「いだてん」('19)にはユダヤ人通訳・ヤーコプ役で出演した。2020年には、出演『花と雨』(監督:土屋貴史、主演:笠松将)が公開された。



【脚本・森誠役】川添 ウスマン Usman Kawazoe

cinemajournal_u2 320.jpg

コンテンツクリエイター・俳優。日本人の母とインド人の父を持つミックス。神戸で生まれ、日本のインターナショナルスクールで育った。本作のプロデューサー・脚本・主演を務めた後、進路を変える決意をし、2019年にプロのフォトグラファー・カメラマンとしてデビュー。ハリウッド映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』の現場等に参加しつつ、自らプロジェクトをプロデュースし、撮影をしている。


『人生の運転手(ドライバー) 明るい未来に進む路』 イヴァナ・ウォンさん 質問に対する回答

イヴァナ・ウォン320.jpg

10月1日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開 劇場情報 

『人生の運転手ドライバー ~明るい未来に進む路~』
原題:『阿索的故事』/英題:『The Calling Of A Bus Driver』


監督:葉念琛(パトリック・コン)
出演
ソック役 王菀之(イヴァナ・ウォン)
レイ・ザンマン役 姜皓文(フィリップ・キョン)
チャン・ジーコウ役 梁漢文(エドモンド・リョン)
ケイケイ役 蔡潔(ジャッキー・ツァイ)
ソックの父親役 夏韶聲(ダニー・サマー)

2020年/香港/105分/DCP/広東語・北京語/
日本語字幕:最上麻衣子 映倫
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社

失恋・失業・失意の「三失」に陥ったソックの人生再起物語。香港のシンガー・ソングライターであるイヴァナ・ウォンが主人公ソックを演じる。
恋人のジーコウと共にチリソース店「陳三益」を切り盛りしているソックだが、ふたりの前にケイケイという女性が現れ、ソックとジーコウはすれ違い始める。ジーコウとケイケイの浮気現場に遭遇し、ソックはジーコウの元を離れる。恋人に裏切られ仕事も失ったソックが、失意の中、心機一転。幼いころからの夢であったバス運転手になり、人生を挽回していく姿を描いた香港発の人情コメディ。
主人公ソックを演じるシンガー・ソングライターのイヴァナ・ウォンは女優としても活躍している。今回、役作りのためにバス運転の免許を取得しバスの運転にも挑戦。気弱で浮気者の恋人ジーコウを演じるのは1990年代から歌手として活躍するエドモンド・リョン。ソックの運命を狂わせる悪女ケイケイを演じるのはジャッキー・ツァイ。またソックの父親役を演じたのは香港ロック界を牽引してきたダニー・サマー。監督・脚本はパトリック・コン。

『人生の運転手ドライバー ~明るい未来に進む路~』
シネマジャーナルHP 作品紹介
公式HP

王菀之(イヴァナ・ウォン Ivana WONG)プロフィール 公式HPより
蒋九索(ソック)役
1979年6月18日香港生まれ。6歳からピアノを学び始めるなど音楽の才能をのばす。カナダ・バンクーバーの大学在学中に参加した「CASH流行曲創作大賽」にてグランプリを受賞。2005年にシンガーソングライターとしてデビュー、その年の様々な音楽賞で最優秀新人賞を受賞する。2007年から俳優業を始め、2013年TVドラマ「老表、你好嘢!」に出演、2014年には『金鶏SSS(原題)』『Delete愛人(原題)』他計4本の映画に出演し、「第34回香港電影金像奨」にて最優秀新人賞、最優秀助演女優賞をW受賞する。コメディ映画だけでなく、アン・ホイ監督『明日幾時有(原題)』(17年)のドラマ作品や、『ソウルフル・ワールド』(20年)の22号役を吹き替えるなど幅広く活躍している。

イヴァナ・ウォンさん、質問への回答

今回、オンラインインタビューはかなわなかったのですが、質問事項をメールでお願いし回答していただいたものを掲載します。宣伝担当の方からは「イヴァナさん、映画の彼女そのものといった感じで、とてもポジティヴで素敵な方でした」ともメールをいただきました。また、トップ写真はイヴァナさんが普段の活動で使われている写真だそうです。

質問 役作りのためバス運転の免許証を取得したそうですが、バスを運転してみていかがでしたか? 実際に路上で運転はしましたか? 路上運転した場合は感想を。どんな場所で運転しましたか?

イヴァナさん 実際の路上を運転することはできなかったんです。というのは、香港でバスの運転手になるためには、まず免許を取得して、その後、バス会社によって雇用してもらう必要があります。従業員になってから、そのバス会社が従業員に対して、40時間かけて実際の運転の訓練をしなければならないんです。それに合格すれば、会社が保険をかけて、初めてお客様を乗せて運転することができるわけです。今回、私の場合は、免許を取って運転席に座ることはできるのですが、職員になったわけではないので、バス会社が指定するバス停や場所だけしか運転することができないんです。実際、私はそういうところで運転をしたんですね。ただ、撮影は実際のバスターミナルで行われました。これは許可を受けた上で、普通にたくさんの人が出入りしている場所で、時間・エリアが指定され、その区域で運転する感じです。

質問 エドモンド・リョンやダニー・サマーなど、音楽界の大先輩たちとの共演はいかがでしたか? 

イヴァナさん そうですね、今でも覚えているんですが、お父さん役をダニーさんが演じてくれて、香港で人気のCDショップで撮影をしたんですが、彼は私にとっても音楽の大先輩ですので、彼と一緒にショップにあるレコードについていろいろな話ができました。とても親しみのある方なんですよね。
ちなみに、映画に出てくるあのショップは、特にインディーズのアーティストにとっては聖地のような場所なんです。輸入アルバムを多く扱っていますし、ショップ自体が香港の様々なアーティストと契約をしていて、公演を主催したりもしているんです。

質問
 歌手と俳優、自分の中で共通点と違うところ、それぞれに影響するようなことはありますか?


イヴァナさん 音楽と俳優活動は異なるように見えるのですが、実は、どの職業も、結局、私たち人間の人生と切っても切れない関係があると思っています。そうすると、自然と私たちの見ること、聞くこと、振る舞いは、すべて私たち自身の心を通して、表現として現れますよね。例えば、私がコンサートで歌う時には、ただ歌うわけではなくて、頭の中で色々な映像や物語が見えるんです。逆に、映画に出ているときには、セリフ、感情を表現するときに、私の頭の中には音楽が聞こえているんですよね。だから、私が言いたいことは、こうしたことは全部、私たちの心を通して現れているということです。たとえ国籍が違っても、言葉が違っても、人間同士の喜怒哀楽といったものは、全部、実は心を通してつながっているものなんですよね。だから、歌手と俳優とで違うところというものはなく、全部、共通し影響し合っていると思います。

XhSkaVkI_R_R.jpg

©2020 Media Asia Film Production Limited. All Rights Reserved.


公式HPより

脚本・監督:葉念琛(パトリック・コンPatrick KONG)
1975年3月19日香港生まれ。脚本家として映画業界に入る。脚本家としてクレジットされている作品にエリック・コット監督『初恋』(98年)、パン・ホーチョン監督『大丈夫』(03年)などがある。2004年脚本を手掛けた『甜絲絲(原題)』を自ら監督し、映画監督デビューを果たす。その後も現代の香港に生きる若い男女の恋物語を描く作品を多数撮りあげ、若者の共感を得る。多種多様な恋模様を描くが、特に「三角関係」を得意とし、今回の『人生の運転手(ドライバー)~明るい未来に進む路~』でもその見事な手腕を発揮している。日本での公開作品はないが、「恋愛4部作」と言われる『独家試愛(原題)』(06年)、『十分愛(原題)』(07年)、『我的最愛(原題)』(08年)、『記念日(原題)』(15年)がある。

監督からのメッセージ
『人生の運転手(ドライバー)~明るい未来に進む路~』が描くのは、「人生には曲がり角がある」ということ。ソックは失業、失恋、失意の「三失」に見舞われるが、楽観的な性格で自暴自棄になることもなく、人生の崖っぷちで活路を見いだすのだ。「行いては到る水の窮まるところ 坐しては看る雲の起きる時」という詩が言うように、人生の窮地に立たされた時、諦めないためには、逆境を受け流し、再出発する勇気を持つこと! 人は一生苦しむことはない。苦しいのは一時だけである。一時の苦しみの中で心を落ち着かせ、パワーアップできれば、すべての苦難は神が与えた試練だと割り切れる。しっかり休養し、心軽く、体についたホコリを払って、気持ちを奮い立たせて、明るい未来に進もう。劇中のソックのように、僕らも楽観的に、明るく、ガッツを持って生きたい。

梁漢文(エドモンド・リョン Edmond LEUNG)
陳志高(チャン・ジーコウ)役
1971年11月5日香港生まれ。小さい頃からサッカーに熱中し、16歳から3年間香港サッカー代表(青年チーム)の選手に選ばれる。その一方1988年から本格的に歌を学び、1989年に「第8回新秀歌唱大賽」に出場し歌手として芸能界入りを果たす。1991年にデビューアルバムを発売、その後数多くのヒット曲を送り出し人気を博す。1996年ウィルソン・イップ監督『旺角風雲(原題)』に主演し映画デビュー。その後は歌手活動を主軸に、俳優活動は『ボクらはいつも恋してる! 金枝玉葉2』などにゲスト出演をしている。本作はデレク・クォック、ヘンリー・ウォンが監督したバドミントンアクションコメディ『全力スマッシュ』(15年)以来の映画出演となる。

夏韶聲(ダニー・サマー Danny Summer)
ソックの父役
1952年12月8日香港生まれ。「香港ロックの父」と称される歌手である。勉強が嫌で中学の頃から様々な仕事につく。1974年ホテルでバンド活動をしていた時テレビ局のプロデューサーの目に留まり、ミュージシャンとして芸能界デビューを果たす。ハスキーボイスが特徴で、多くのヒット曲を生み出す。役者としては、消防学校の教官を演じたTVドラマ「烈火雄心」のほか映画『SPL 狼よ静かに死ね』(05年)などに出演している。


最近音楽をほとんど聴いていないのですが、中華圏の音楽CDを500枚くらい持っています。1990年頃から2010年くらいまで、香港や台湾、中国、マレーシアなどで買ったりしていました。でも日本でもHMVやタワーレコード、あるいは池袋や大久保あたりの中国人がやっている店でも100枚以上買ったと思います。中華圏の映画にハマったら俳優さんたちが歌手でもあったということもありますが、一番の理由は中島みゆきの歌をたくさんの中華圏の歌手がカバーしていたことでした。彼女の歌が好きで1975年のデビュー時から歌を聴いていた私にとって、中華圏のたくさんの歌手が彼女の歌をカバーしているのを知ったのは大発見でした。100曲以上カバーされています。一時期、中島みゆきの歌をカバーしている人のCDを買い集め、それだけで100枚以上はあるかもしれません。夏韶聲(ダニー・サマー)のCDも持っています。中島みゆきの8分に及ぶ名曲「歌姫」(1982年)をカバーした「請給他再醉」(1985年)という曲を歌っていたので、この曲が入っている夏韶聲のCDを買いました。そのほかにも1,2枚購入しました。なので夏韶聲がロック歌手というイメージはありませんでした。でも、この作品に出てきた彼はやっぱりロッカーでした。梁漢文(エドモンド・リョン)のCDも1枚くらい持っていると思いますが、残念ながら、その後デビューした王菀之(イヴァナ・ウォン)のCDは持っていません。今、日本のCDショップでは、中華圏の歌手のCDはほとんどないので、また香港に行くチャンスがあったら彼女のCDも買ってみたいと思います。
一国2制度の約束が反故にされ、香港の社会状況が不安定になっている今、香港の街と人はどのように変わっていくのか心配ではありますが、活気のある香港の姿をまた見に行きたい。


まとめ:編集部 宮崎暁美