10月1日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開 劇場情報
『人生の運転手ドライバー ~明るい未来に進む路~』
原題:『阿索的故事』/英題:『The Calling Of A Bus Driver』
監督:葉念琛(パトリック・コン)
出演
ソック役 王菀之(イヴァナ・ウォン)
レイ・ザンマン役 姜皓文(フィリップ・キョン)
チャン・ジーコウ役 梁漢文(エドモンド・リョン)
ケイケイ役 蔡潔(ジャッキー・ツァイ)
ソックの父親役 夏韶聲(ダニー・サマー)
2020年/香港/105分/DCP/広東語・北京語/
日本語字幕:最上麻衣子 映倫
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
失恋・失業・失意の「三失」に陥ったソックの人生再起物語。香港のシンガー・ソングライターであるイヴァナ・ウォンが主人公ソックを演じる。
恋人のジーコウと共にチリソース店「陳三益」を切り盛りしているソックだが、ふたりの前にケイケイという女性が現れ、ソックとジーコウはすれ違い始める。ジーコウとケイケイの浮気現場に遭遇し、ソックはジーコウの元を離れる。恋人に裏切られ仕事も失ったソックが、失意の中、心機一転。幼いころからの夢であったバス運転手になり、人生を挽回していく姿を描いた香港発の人情コメディ。
主人公ソックを演じるシンガー・ソングライターのイヴァナ・ウォンは女優としても活躍している。今回、役作りのためにバス運転の免許を取得しバスの運転にも挑戦。気弱で浮気者の恋人ジーコウを演じるのは1990年代から歌手として活躍するエドモンド・リョン。ソックの運命を狂わせる悪女ケイケイを演じるのはジャッキー・ツァイ。またソックの父親役を演じたのは香港ロック界を牽引してきたダニー・サマー。監督・脚本はパトリック・コン。
『人生の運転手ドライバー ~明るい未来に進む路~』
シネマジャーナルHP 作品紹介
公式HP
王菀之(イヴァナ・ウォン Ivana WONG)プロフィール 公式HPより
蒋九索(ソック)役
1979年6月18日香港生まれ。6歳からピアノを学び始めるなど音楽の才能をのばす。カナダ・バンクーバーの大学在学中に参加した「CASH流行曲創作大賽」にてグランプリを受賞。2005年にシンガーソングライターとしてデビュー、その年の様々な音楽賞で最優秀新人賞を受賞する。2007年から俳優業を始め、2013年TVドラマ「老表、你好嘢!」に出演、2014年には『金鶏SSS(原題)』『Delete愛人(原題)』他計4本の映画に出演し、「第34回香港電影金像奨」にて最優秀新人賞、最優秀助演女優賞をW受賞する。コメディ映画だけでなく、アン・ホイ監督『明日幾時有(原題)』(17年)のドラマ作品や、『ソウルフル・ワールド』(20年)の22号役を吹き替えるなど幅広く活躍している。
イヴァナ・ウォンさん、質問への回答
今回、オンラインインタビューはかなわなかったのですが、質問事項をメールでお願いし回答していただいたものを掲載します。宣伝担当の方からは「イヴァナさん、映画の彼女そのものといった感じで、とてもポジティヴで素敵な方でした」ともメールをいただきました。また、トップ写真はイヴァナさんが普段の活動で使われている写真だそうです。
質問 役作りのためバス運転の免許証を取得したそうですが、バスを運転してみていかがでしたか? 実際に路上で運転はしましたか? 路上運転した場合は感想を。どんな場所で運転しましたか?
イヴァナさん 実際の路上を運転することはできなかったんです。というのは、香港でバスの運転手になるためには、まず免許を取得して、その後、バス会社によって雇用してもらう必要があります。従業員になってから、そのバス会社が従業員に対して、40時間かけて実際の運転の訓練をしなければならないんです。それに合格すれば、会社が保険をかけて、初めてお客様を乗せて運転することができるわけです。今回、私の場合は、免許を取って運転席に座ることはできるのですが、職員になったわけではないので、バス会社が指定するバス停や場所だけしか運転することができないんです。実際、私はそういうところで運転をしたんですね。ただ、撮影は実際のバスターミナルで行われました。これは許可を受けた上で、普通にたくさんの人が出入りしている場所で、時間・エリアが指定され、その区域で運転する感じです。
質問 エドモンド・リョンやダニー・サマーなど、音楽界の大先輩たちとの共演はいかがでしたか?
イヴァナさん そうですね、今でも覚えているんですが、お父さん役をダニーさんが演じてくれて、香港で人気のCDショップで撮影をしたんですが、彼は私にとっても音楽の大先輩ですので、彼と一緒にショップにあるレコードについていろいろな話ができました。とても親しみのある方なんですよね。
ちなみに、映画に出てくるあのショップは、特にインディーズのアーティストにとっては聖地のような場所なんです。輸入アルバムを多く扱っていますし、ショップ自体が香港の様々なアーティストと契約をしていて、公演を主催したりもしているんです。
質問 歌手と俳優、自分の中で共通点と違うところ、それぞれに影響するようなことはありますか?
イヴァナさん 音楽と俳優活動は異なるように見えるのですが、実は、どの職業も、結局、私たち人間の人生と切っても切れない関係があると思っています。そうすると、自然と私たちの見ること、聞くこと、振る舞いは、すべて私たち自身の心を通して、表現として現れますよね。例えば、私がコンサートで歌う時には、ただ歌うわけではなくて、頭の中で色々な映像や物語が見えるんです。逆に、映画に出ているときには、セリフ、感情を表現するときに、私の頭の中には音楽が聞こえているんですよね。だから、私が言いたいことは、こうしたことは全部、私たちの心を通して現れているということです。たとえ国籍が違っても、言葉が違っても、人間同士の喜怒哀楽といったものは、全部、実は心を通してつながっているものなんですよね。だから、歌手と俳優とで違うところというものはなく、全部、共通し影響し合っていると思います。
公式HPより
脚本・監督:葉念琛(パトリック・コンPatrick KONG)
1975年3月19日香港生まれ。脚本家として映画業界に入る。脚本家としてクレジットされている作品にエリック・コット監督『初恋』(98年)、パン・ホーチョン監督『大丈夫』(03年)などがある。2004年脚本を手掛けた『甜絲絲(原題)』を自ら監督し、映画監督デビューを果たす。その後も現代の香港に生きる若い男女の恋物語を描く作品を多数撮りあげ、若者の共感を得る。多種多様な恋模様を描くが、特に「三角関係」を得意とし、今回の『人生の運転手(ドライバー)~明るい未来に進む路~』でもその見事な手腕を発揮している。日本での公開作品はないが、「恋愛4部作」と言われる『独家試愛(原題)』(06年)、『十分愛(原題)』(07年)、『我的最愛(原題)』(08年)、『記念日(原題)』(15年)がある。
監督からのメッセージ
『人生の運転手(ドライバー)~明るい未来に進む路~』が描くのは、「人生には曲がり角がある」ということ。ソックは失業、失恋、失意の「三失」に見舞われるが、楽観的な性格で自暴自棄になることもなく、人生の崖っぷちで活路を見いだすのだ。「行いては到る水の窮まるところ 坐しては看る雲の起きる時」という詩が言うように、人生の窮地に立たされた時、諦めないためには、逆境を受け流し、再出発する勇気を持つこと! 人は一生苦しむことはない。苦しいのは一時だけである。一時の苦しみの中で心を落ち着かせ、パワーアップできれば、すべての苦難は神が与えた試練だと割り切れる。しっかり休養し、心軽く、体についたホコリを払って、気持ちを奮い立たせて、明るい未来に進もう。劇中のソックのように、僕らも楽観的に、明るく、ガッツを持って生きたい。
梁漢文(エドモンド・リョン Edmond LEUNG)
陳志高(チャン・ジーコウ)役
1971年11月5日香港生まれ。小さい頃からサッカーに熱中し、16歳から3年間香港サッカー代表(青年チーム)の選手に選ばれる。その一方1988年から本格的に歌を学び、1989年に「第8回新秀歌唱大賽」に出場し歌手として芸能界入りを果たす。1991年にデビューアルバムを発売、その後数多くのヒット曲を送り出し人気を博す。1996年ウィルソン・イップ監督『旺角風雲(原題)』に主演し映画デビュー。その後は歌手活動を主軸に、俳優活動は『ボクらはいつも恋してる! 金枝玉葉2』などにゲスト出演をしている。本作はデレク・クォック、ヘンリー・ウォンが監督したバドミントンアクションコメディ『全力スマッシュ』(15年)以来の映画出演となる。
夏韶聲(ダニー・サマー Danny Summer)
ソックの父役
1952年12月8日香港生まれ。「香港ロックの父」と称される歌手である。勉強が嫌で中学の頃から様々な仕事につく。1974年ホテルでバンド活動をしていた時テレビ局のプロデューサーの目に留まり、ミュージシャンとして芸能界デビューを果たす。ハスキーボイスが特徴で、多くのヒット曲を生み出す。役者としては、消防学校の教官を演じたTVドラマ「烈火雄心」のほか映画『SPL 狼よ静かに死ね』(05年)などに出演している。
最近音楽をほとんど聴いていないのですが、中華圏の音楽CDを500枚くらい持っています。1990年頃から2010年くらいまで、香港や台湾、中国、マレーシアなどで買ったりしていました。でも日本でもHMVやタワーレコード、あるいは池袋や大久保あたりの中国人がやっている店でも100枚以上買ったと思います。中華圏の映画にハマったら俳優さんたちが歌手でもあったということもありますが、一番の理由は中島みゆきの歌をたくさんの中華圏の歌手がカバーしていたことでした。彼女の歌が好きで1975年のデビュー時から歌を聴いていた私にとって、中華圏のたくさんの歌手が彼女の歌をカバーしているのを知ったのは大発見でした。100曲以上カバーされています。一時期、中島みゆきの歌をカバーしている人のCDを買い集め、それだけで100枚以上はあるかもしれません。夏韶聲(ダニー・サマー)のCDも持っています。中島みゆきの8分に及ぶ名曲「歌姫」(1982年)をカバーした「請給他再醉」(1985年)という曲を歌っていたので、この曲が入っている夏韶聲のCDを買いました。そのほかにも1,2枚購入しました。なので夏韶聲がロック歌手というイメージはありませんでした。でも、この作品に出てきた彼はやっぱりロッカーでした。梁漢文(エドモンド・リョン)のCDも1枚くらい持っていると思いますが、残念ながら、その後デビューした王菀之(イヴァナ・ウォン)のCDは持っていません。今、日本のCDショップでは、中華圏の歌手のCDはほとんどないので、また香港に行くチャンスがあったら彼女のCDも買ってみたいと思います。
一国2制度の約束が反故にされ、香港の社会状況が不安定になっている今、香港の街と人はどのように変わっていくのか心配ではありますが、活気のある香港の姿をまた見に行きたい。
まとめ:編集部 宮崎暁美