*プロフィール*
1994年6月3日生まれ。兵庫県出身。
映画出演作
2017年『⼆者択⼀』名倉健郎監督/主演:昌毅役/マイアミ映画祭ノミネート作品
2018年『春待つ僕ら』平川雄⼀朗監督/清凌バスケット部員役
2019年『スカーフ』的場政⾏監督/菊池遙役/SKIPシティ国際Dシネマ映画祭⼊選作品
2020年『追い⾵』安楽涼監督/新郎友⼈役/MOOSIC LAB 2019 ⼊選作
2020年「RED』三島由紀⼦監督/バーテンダー役
『虹が落ちる前に』は2021年門真国際映画祭で最優秀作品賞、最優秀男優賞、優秀助演女優賞、優秀助演男優賞を受賞。
ほかテレビ「東京男子図鑑」脇田役、CM、MVなど
*ストーリー*
風間公平(守山龍之介)は、現状に満足できないまま売れないバンドを続けている。周りにいる仲間や彼女の珠江(畔田ひとみ)に甘え、それが当たり前の毎日を過ごしていた。心のどこかでは、それがいつか無くなってしまうのではと感じていたが、気付かないフリをしながら...。そしてあるきっかけでその全てを無くしてしまう。もう取り戻せない事が分かってはいるが前に進む決断をし、曲を作り始める。
監督・脚本・音楽・衣装:Koji Uehara
出演:守山龍之介、畔田ひとみ、白磯大知、末松暢茂
https://www.nijiochi.com/
(C)2021「虹が落ちる前に」製作委員会
★2022年3月19日(土)よりK's cinema、UPLINK吉祥寺ほか全国順次公開
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―初めてお目にかかると、まず「なぜ俳優さんになられたのか」と伺っています。守山さんは仮面ライダーに憧れていたと知りました。
はい、なりたいものが「政治家と仮面ライダー」で(笑)。それは小学校の卒業文集にも書いてあります。昔から憧れていて、今でも仮面ライダーやりたいです。
―今も。初志貫徹・初心忘れずでエライ!
エライですか(笑)。
―では『虹が落ちる前に』のお話を。この守山さん演じる風間公平くんについてどう感じられましたか?
なよなよした感じはあるんですけど、内側にしっかり芯がある人だなぁと思いました。現状を楽しみたいという気持ちもある中で、今のままじゃダメだというのもしっかり感じて考えていた役だと思ったので、内側に芯がある人としてやりたいと思いました。
―ちょっと気弱というか腰引けたところありますよね。穏やかで人と争いたくないんでしょうね。
ああ、公平そういうところありますね(笑)。
―そこを補ってくれるのが、白磯さん演じる竜彦で。
公平は大切にしたいものに一番弱いタイプだと思います。竜彦はそれにしっかり向き合う。そこが二極化しているかな。公平は大切にしたいからこそ、争わない。それが逆にマイナスに行っちゃっている。
―公平は正義感が強くて負けるとわかっていてもいきますね(笑)。そこはいいところなんですが、彼女との問題を先送りしてしまう。そういうところ、どう思いますか?
正直自分と似ているなぁと。(笑)
だからこそ公平の思うことがわかるんですよ。逃げているんじゃないんです。面倒くさいとかやりたくないからやらないんじゃなくて、先のことまで考えちゃって。ある意味どう手を出したらいいのかがわからない。
―考えてグルグルしちゃうんですね。
そう。グルグルしちゃうのが手に取るようにわかる。追い込まれればやるタイプだとは思っています。なにかきっかけ、兆しが見えればズンズン進んでいくタイプ。
だからこそ、こういう系の男はどう思いますか?と聞かれたら、逃げますね(笑)。見ていてちょっと腹が立ちます。
―なるべく穏やかにおさめたいですよね。おさまるものなら(笑)。
はい、おさまるものなら(笑)。
―おさまらないところへ竜彦が出てきて解決しちゃうという。いい役ですね、竜彦って。
竜彦はもう、女性の方たちがモニターに食いつくような男前っぷりで、ちょっと羨ましかったです(笑)。
―守山さんは「誰かのヒーローになりたかった」とおっしゃっていた記事が印象に残っています。今回、主役の守山さんは座長でヒーローでもあるわけです。この作品で気を配ったことは?
僕は相手の役者さんをその都度その都度しっかり見ていようと思いました。カットがかかる、かからない関係なく。この映画ちょっと特殊なんですよ。監督の家にメンズたちは全員寝泊まりをして、ほんとに合宿みたいな感じで。そのおかげでずっといい関係が作れたと思います。
その時に、役のために話しかけない方もいましたし、話しかけてくるメンバーもいたし、そういうの全然気にしないメンバーもいたし。僕からその壁をぶち破ることは絶対にしないでおこうと思っていましたね。
―メンバーの気持ちを大事にされたんですね。
あとは、コミュニケーションは会話以外でもとれるものだと思っていたので。信頼関係だとか、何か通ずるもので会話ができたらなとそのときは考えていました。主演をさせていただいたので、主演の仕事はうまく芝居をすることだけじゃない。この作品をみんなのベストのものになるように尽力しなきゃと思いながら毎日過ごしていました。
―舞台の主演もなさっていましたね。舞台と映画はどんな風に違いますか?生の舞台と撮り直しができる映画との違いはわかりますが、俳優さんとしての心構えなどは?
舞台は、僕は苦手意識がまだありますね。ただ勉強になることはいっぱいあります。舞台の凄みっていうのは、感情の切り替えの速さだと思うんですよ。受けてから返すまでの間(ま)が、たぶん普段話すときよりももっとクイックなもの。観ている方がよりのめり込んでくれるように、もっとスピード感を持ってやっていくものだと思うので感情の動きもやっぱり速い。そこは勉強になる+難しい。舞台の良さでもあると思っています。
―舞台はカメラのようなズームもなしで、観客の視線をひきつけないといけませんよね。
そうなんです。だからといって一人だけ目立ってはいけない。そこは結局、舞台も映像もチームで作っているということは一緒なのかもしれないです。
―舞台は準備期間のわりに公演日数が少ないですね。この映画は先ほどの合宿から始まって、クランクアップまではどのくらいの期間だったんでしょうか?
僕の場合は1ヶ月半弱くらい。間も空いていたり夜だけの撮影もあったりで、ゆっくりする時間が意外にあったんです。
―その間モチベーションを保つには?ずっと役の公平でいたんでしょうか?
僕がそれをしなくても、みんながそうさせてくれました。僕を「公平でいさせてくれた」という感じがありましたね。
―男の子いっぱいいましたよね。危ない人やら怖い人やら(笑)。バンドマンの話かと思ったら、「ヤの人」も出てきて、エピソードがいろいろありました。公平は後から加わるんですが痛い場面もありましたね。
あの(怖い)方々は僕が出てないシーンもあって、一緒だったのは一瞬でした。痛い場面ではほんとに(吐き気がして)戻しちゃって。ご飯食べてなかったので吐くものもなかったんですが。
―まあ、なんと繊細な。あのシーンはそれだけ真に迫っていたってことですね。
そうなんです。
―Uehara監督は監督・脚本・音楽・衣装と八面六臂のスーパーマンのような方ですけど、どういう風に演出されるんですか?
僕らには全くと言っていいほど演出はなかったです。基本的に僕らに任せてくださって。
僕はクランクインして最初のカットで、「もう少しだけ間(ま)を大事にして」と言われた以外、ないですね。こう動いて、という指示もなくて、それは僕たちを信頼してくださっている部分だと思います。その代わり、こういう背景とかロケ地をめぐって決めるまでほんとにこだわられたんだと思います。
―それまでいろいろなことなさって注目されていた方ですし、映画は初めてでも、いろんなノウハウやスキルをたくさんお持ちの方なんですね。
そうですね。クリエイティブに生きて来られた方だと思います。
―最初の方にレストランバーで働く公平が出てきます。あの動きなどは練習されたんですか?
僕は大阪で、元々飲食店でバイトした経験があって、野菜を切ったりとかフライパンさばきとかはある程度できていました。僕はお芝居をするときに、何かロケーションがあって「自分の家」「働くバイト先」とかがあれば、いつもちょっとだけお時間をいただいています。
ちょっと動いたり触らせてもらったりします。見る人は見ていると思うし、僕自身が”邪魔になってしまう部分”だと思っているんです。「あ、違うわ」とか無駄ですし、そういうのがないように。
―ちゃんとキッチンに馴染んで、働いていましたよ。
ほんとですか。その日はみんなと喋りながらも動きを止めずにやっていられたと思うんです。よく見ていただいてありがとうございます。
―練習つながりで、楽器のお話を。ボーカルだけじゃなく楽器もありましたね。
ギターです。趣味程度にはやっていたんですけど、僕はどっちかという”アルペジオ”(1音ずつ)で弾くほうが好きだったので。あれは”バレーコード”(指1本で複数の弦を押さえる)で弾くバンドだったので、初めて練習しました。監督の家で寝泊まりしていたので、誰かがギターやベースを持ったりすれば、みんなその部屋に集まってほんとにバンドマンの一日みたいな流れができていました。
―映画の中では仲間から外れる人が一人いましたけど(笑)、合宿ではみんな仲良しなんですね。
はい、ほんとに仲良かったです。
―守山さんの動画を探して何本か見ました。「熱血チャンネル」面白かったです。「ももたろう」の一人何役のお芝居とか、無茶ぶりの(笑)。
あれはほんと「無茶ぶり」で、困ったもんだと思いながらやりました(笑)。
―MVにも出ていらっしゃるでしょう?
僕はバンド好きですし、広告も撮りたいですけど、MVに出たいんですよね。
―こういう俳優さんになりたいと目標にする方がいらっしゃいますか。
海外の俳優ならエディ・レッドメインさん。『リリーのすべて』(2015/トム・フーパー監督)がほんとに好きで。ここまで表現したいなぁと思える役者さんです。で、国内でいうと大泉洋さんがすごく好きなんです。大泉洋さんは地元にも愛されながら、面白いお芝居も暖かい人間味にあふれたお芝居もします。かと思えば、実写化のような作品にも出ていたりとか振り幅がすごくあって、この方のようにいろんなお芝居ができると、きっと観ている方も楽しんでもらえると思うし、自分もやっていて楽しいだろうなと。
―エディ・レッドメインと大泉洋さんという組み合わせが面白いです。映画ではどういう作品に出てみたいですか?
インパクトのある映画というよりは、静かな日常が流れるような映画に出たくて。その中でも人間は心を動かしていて、そちらのほうがグサッとくるものがあったり、何気ない一言が意外と相手に突き刺さっていたり、ということがいっぱいあります。だから人って生きるのが難しい。そういうのを僕は伝えていきたいなぁと思いますし、僕がいることで豊かになってくれればと思うんですよね。たとえば李相日監督とか、坂元裕二さんの脚本とか、出たいなぁと思っています。
―言っとくとどこかで繋がるかもしれないので、なるべく希望は口に出しておくといいですよ。
そうですよね(笑)。坂元裕二さんのドラマには一度出させていただいたことがあるんです。「スイッチ」で名前があるだけなんですけど、すごく嬉しかったですね。こうやって関わりを持っていきたかったですし、一歩一歩つかんでいきたいと思っています。
―元気で続けていればきっと巡ってきますよ。元気でいるためにしていることは?
えー、僕元気なのかなあ? 元気ですけど(笑)。
たぶん自分のしたいように生きていると思います。「これしたくないなぁ」と思うものはしないようにしますし、食べたいものは食べて、変なところで自分に「圧」を与えないように、抑制もしないというか。
―それはお母さんの薫陶でしょうか?
いや、どうですかね。母親はどっちかというとルールに厳しい。「こうでありなさい」とか厳しいほうだとは思うんですけど、だからと言って強要はしてこなかったのはすごく有難い。この人に育ててもらって良かったなと感じました。
―だって「仮面ライダーになっていい?」って聞いたら「いいよ」って言ってくださったんですもんね。いいお母さんですよね。
はい(笑)、いい母親です。
大学に入って20歳にもなってたのに「ダメでしょ。何考えてんの、あんたは」って言わなかった。「やりなさい、自分の人生なんだから」って言うのがすごいなと。
―大阪のお母さんみんなが、そんなに物分かりいいわけじゃないですよね?
僕の周りでは反対されている人も多かったですねぇ。信じてくれているんだなと思いました。
結果も見せていかないと。
―仮面ライダーのほかに、「この1本」という映画がありましたら。
『ペイ・フォワード 可能の王国』(2000/ミミ・レダー)です。見返します。残酷でもあるなと思ったんです。結果が見えるのは自分が死んでからなのか、結末としてはいいけれど本人としては絶対いやだよな、と。いい映画ですけど。
―善意を他人へ渡していく映画でしたよね。見直してみます。
今日はありがとうございました。
(取材・写真 白石映子)
=取材を終えて=
守山龍之介さん、質問をしっかり考えて答えてくださる好青年でした。政治学科で勉強していたのが、もう一つの夢だった俳優の道に来られたのは、「話せば長くなりそう」だそうなのでまたこの次に(実現しますように)。森山未來さんとちょっと似た感じがして、光も影も併せ持つ幅の広いタイプの俳優さんに成長されるといいなぁと思います。
撮影しながらお話を続けていたら、お婆ちゃんっ子だと判明。たくさん愛情を受けて大きくなった守山さん、今度はお好きだという映画『ペイ・フォワード 可能の王国』のように、受けた愛情をほかの方々やお仕事に注いでいくはず。そしたらまた新しい愛やら善意が入ってきますよね。元気で俳優の道を進まれますように。(白)