『こころの通訳者たち What a Wonderful World』プロデューサー  CINEMA Chupki TABATA代表  平塚千穂子さんインタビュー

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『こころの通訳者たち』再上映中!
5/1(月)~7(日) 19:10〜20:54/5/8(月)〜16(火)19:30~21:14 
*3日(水・祝)上映あり、10日(水)休映
ゲストトークあり

*プロフィール* 平塚千穂子(ひらつか ちほこ)
1972年9月29日生まれ。
早稲田大学教育学部教育学科卒。飲食店や映画館「早稲田松竹」勤務。
2001年 バリアフリー映画観賞推進団体“City Lights”を設立。
以後、視覚障害者の映画鑑賞環境づくりに従事。
2003年 第37回「NHK障害福祉賞 優秀賞」受賞。
2016年 日本初のユニバーサルシアターCINEMA Chupki TABATAを設立。
第24回「ヘレンケラー・サリバン賞」
2017年「日本映画ペンクラブ賞 特別奨励賞」
平成30年度「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰 内閣府特命担当大臣表彰優良賞」
2019年 読書工房より「夢のユニバーサルシアター」出版。
2022年 山路ふみ子映画賞にて第36回 福祉賞受賞。
2022年 『こころの通訳者たち What a Wonderful World』(山田礼於監督)プロデューサー・出演。
2023年 文化庁 芸術選奨 芸術振興部門 新人賞受賞
2023年 日本映画復興賞 日本映画復興奨励賞 受賞

★『こころの通訳者たち What a Wonderful World』山田礼於監督インタビュー(2022/9/17取材)はこちら
★4月末発行の「シネマジャーナル106号」に山田礼於監督と平塚千穂子代表のインタビュー(2023/3/6取材)記事を掲載しています。

―平塚さんはCINEMA Chupki TABATA代表ですね。スタッフさんは何人いらっしゃるんですか?

はい、代表と支配人を兼ねています。チュプキのスタッフは社員3人、アルバイト3人です。うち男性は社員の2人です。今まで社員は2人だったんですけど、つい最近新人が増えました。
この本「夢のユニバーサルシアター」〈2019/平塚千穂子著/読書工房/2200円〉に載っている和田支配人は、いまは島根の益田市で頑張っています。2008年に閉館した映画館を復活させて2022年に「Shimane Cinema ONOZAWA」として夫婦で始めたんです。

―そちらはユニバーサルシアターなんですか?

”ユニバーサル”とは「全てのお客様を対象に」という意味で、そう呼んでいます。どんな方でも安心して映画をお楽しみいただけるよう、設備とツールを用意しているユニバーサルシアターです。もちろん一般の方にもご鑑賞いただけるシアターです。

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入口のチョーク絵

―平塚さんは『こころの通訳者たち What a Wonderful World』のプロデューサー&出演で、この映画ができてから、舞台挨拶のために全国に行かれているんですよね。

そうなんです(笑)。この配給業も業務に追加されてきているので、スタッフを一人補充したんです。

―作った人が来ると来ないではお客様の反応が違いますね。作ったほうも反応がわかって嬉しいですし。

そうですね。やっぱりお客様と直に交流ができるのは。これまで届けるというのをずっとやってきたので、よそでかかったら、一日くらいはご挨拶に行きたいなぁと思って極力回っています。ま、半分旅を楽しんでる感じです。

―私たちもそうです。映画祭に行けるとなると「わーい!」って、美味しいもの調べたりして(笑)。一番最近はどこへ?

つい昨日(取材は3月6日)上田映劇へ行きました。(http://www.uedaeigeki.com/

―お客様とのトークがあったんですか?

ええ、やりました。とっても良かったです。「舞台手話通訳者になりたい」という若い女の子がいて、ちょうどこの春から”国立障害者リハビリテーションセンター”で、手話の勉強をするそうです。そういう方とも出会えましたし、結構長めのトーク時間をとってくださっていて、『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』という作品を同時上映していたので、その三好大輔監督が進行に入ってくださいました。質問が監督目線で「どんな風に作っていったのか」という、ほかの舞台挨拶ではあまりしていないような話ができて面白かったです。

―それはどこかに書き起こしとか残っていないんでしょうか?

書き起こしまでは(笑)。それがうっかり録音も忘れちゃって・・・いつも記録係が同行するんですけど、この日は来れなかったので。

―それは惜しかった!スマホで録っておけばよかったですねえ。
その女の子のように、映画で将来の夢や進路ができる人もいるんですね。平塚さんも映画で人生が変わりましたよね。


人生変わりましたね。ほんとにチャップリンの『街の灯』がなければ、今こうしていないと思いますね。

―その映画が「見えない方に映画を観てもらう」というところにつながるわけですね。原題の『City Lights』が2001年にできたボランティア団体「City Lights(シティ・ライツ)」や、チュプキ(アイヌ語で光)の名前にもなって。

そうです。それがきっかけでした。

―生涯ベストの映画にもなりますか?

ええと~、自分にとってのベストの映画は『バグダッド・カフェ』(1987)です。なかなか一本には絞れないけれど、これは学生時代に自分とも重ねたりして、すごく印象に残って特別ですね。

―好きな方が多い作品ですね。いちばん古い映画体験はなんですか?

うちは、あまり家族が映画を観に行くとかなくて。恥ずかしい話、父が競馬好きで(笑)。馬が好きだったので『優駿』(1988)に連れて行ってもらったのが、たぶん家族で行った初めての映画。
あと、小さいころは『ユニコ』(1981、1983)とか、サンリオ映画を観に行っていました。サンリオが映画に力を入れていた時代だったんです。一番、心に残っているのは『シリウスの伝説』(1981)『くるみ割り人形』(1979)は人形を使ったものでした。

―この本を読んで平塚さんは「想いがいっぱいあって、それがとても強くて行動に移せる人」と思ったんです。想うだけじゃなく、ちゃんと動くところがすごい。初めてのことって怖くないですか?

せっかちなんだと思います(笑)。早く形にしたくなっちゃうんでしょうね。誰かの後をついていくのは型ができちゃっていて、そのとおりに行くっていうのは面白くないなぁと。それよりは、開拓する方が大変そうにみえるけど、本人は楽しいんですよ。やっぱり失敗もするけど、自分で経験して身につけたことじゃないと信じられない。

―ああ、わかります。役所勤めはダメなほうですね(笑)。

ダメです(笑)。組織は全然ダメ。集団行動とか、学校という場所がなんかもうなじめなかったですね。
きのう(取材は3月6日)上田映劇に行ったら、”こどもシネマクラブ”っていう、フリースクールみたいなこどもの居場所づくりを、映画館がやっているんですよ。山田礼於監督と素敵ですね、って話をしてて。「私、幼稚園のときから登園拒否をしてました」って言ったら「あ、一緒だ!」(笑)。山田監督も「幼稚園は3日間行ってイヤになって行ってないんだよ」って。「あ、私も3日間です!」(笑)

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幼稚園は3日間だけのお二人

―クリエイティブな仕事をしている人に、多い気がします。そういう人が世の中進めているんです、きっと(笑)。「面白い」っていうのが大事ですね。これは、作品選びにもつながっていますか?

作品もそうですね。やっぱりこう、初めて見るような手法だったりすると面白いですし、こんな感情を引き出されるんだみたいに、揺さぶられるとね。最近はわかりやすい映画が増えちゃってて、なんだろ、先が見えちゃうとつまんないですもんね。

―うーん、私もそれ思うんですけど、たくさん数見ていると先が読みやすくなるんですよね。でも世の中そういう人ばっかりじゃなくて、年に数本見たり見なかったりの人は「今のは何だったんだろ?どうなってるの?」となるかもしれない。

ああ、そうですね。映画ファンが面白いと思う映画が、必ずしもお客様が入るわけじゃなくて。

―そこが難しいですよね。商売だと。

ええ、ええ、そうです。ほんとに。今ドキュメンタリーがよく入るんですけど、ナレーションですごくわかりやすく作ってあるドキュメンタリーはやっぱり一番入ります。人それぞれですけど。

―こういう特色ある映画館は、閉館した岩波ホールや飯田橋ギンレイホールもそうでしたけど、その映画館のチョイスが好きで、と通われる方いますでしょう。

岩波のファンクラブみたいなのを自主的に作っていた方々が、閉館しちゃったので「チュプキにシフトしました」って来られました。(笑)お客様に入っていただかないと、劇場も寂しくなっちゃいますし、(選定の)バランスを取りながらやっています。

―チョイスは難しいですね。でもチュプキのラインナップ好きです。
平塚さんは試写に行かれるんですか?


いや、全然行けてなくて。最近全然観れなくなっちゃってるんです。時間足りないんですよ。それもあって社員一人増やしたんですけど。経営者だから社員には週休2日はとらせないと。
音声ガイドと字幕の製作もやっているので、ほとんど行けません。試写の視聴リンクもいただいて、そっちのほうが観やすいですけど、2時間がなかなか取れません。周りの・・・チュプキの前に作った団体”シティ・ライツ”が、映画好きな人がボランティアで関わっているんです。そういう人たちなので、こっちが聞かなくても「これ、良かったよ!」と教えてくれるし、お客様からのリクエストもあるし。
あと、スタッフたちがグループウェアで「番組編成相談室」っていうのを作って、そこにいろいろ投稿したのを参考にしながら。ファーストランでかかっている劇場さんの入りや評判、似たような編成をやっているほかのミニシアターさんが、どれを選んでいるかな、と参考にしながらですね。

―劇場は1階、事務所が2階。賃貸料の支払いがある。

はい、賃貸料と人件費ですね。それは絶対に払わなくちゃいけない。吹っ飛んでしまいます(笑)。

―私たちもなんとか次の本誌が出せればと。好きで集まって、ウェブ記事に変わっても(本誌は年に1回)今まで残っています(笑)。

ほんとに好きなことがやれるっていうのが何より。楽しくてやりがいがあれば。

―そうですよね。やりたくないことを我慢して続けられない。

いやぁ、そのほうが時間がもったいないです。だから全然悔いのない生き方をしてるんで、いつ死んでもいい感じ(笑)。

―いや、まだ死んだらダメです!(爆)私くらいになったら明日目がさめないかもしれないけど、そんなお年で、まだダメ。(笑)悔いがないって言える生き方をしているって、何より幸せなことですね。

そうですねぇ、ほんとに。

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壁にはゲストのサインがいっぱい!

―「ああすればよかったな~」とか、「失敗したな~」とか、たとえあっても苦にしないんですね。

あんまりくよくよしないですね。引きずらないです。ケロッと忘れちゃうタイプです。(笑)
だから繊細な人たちの気持ちに、なかなか同じレベルで共感してあげられないから、そういう人は「わかってくれない」と思ってるかもしれないけど。

―そういう人はそういう人で、ちゃんとわかってくれる人いますよ、きっと。振り返ると、私も好きなことだけして生きてこれました。

自分で喜びとか、楽しみとか見つける習慣があればいいですよね。人に求められているかとか、役立てているかとか、周りの評価ばかり気にしちゃうようなんじゃなくてね。
ユニバーサル上映の意義とか、価値とかという話も積極的にするようにしています。「映画を文化として大事にしていこうという同じ土俵上にユニバーサル上映があるんだよ」と。いつでも映画が楽しめるようにどんどん便利になったら配信で観ればいいや、ってなるかもしれないけれど。
見えない人聞こえない人は、欠けた感覚を担うかのように使える感覚ですごいよく観てらっしゃるんですよ、映画を。そういうことから学ぶことが多くて、作品に向かう姿勢を見ていると、もっと大事にしなきゃ、と思わされます。そういう人たちと「一緒に観ている空間」「場」から、ちゃんと作品を観ている空気が生まれているんです。
福祉の問題じゃなくて、「文化を一緒に守っていく」っていうところに、今の時代必要な人たちだからもっとユニバーサル上映が広まって、いろんな人と大切に映画を観るという意識を持っていければいいな、という話をよくしています。

―ここは誰でも一緒に映画が観られる、だから20席よりあともう少し多いといいなと思うんです。せっかくゲストさんが来てもすぐいっぱいになっちゃうし。

そうなんです。もうちょっと、50席くらいあるといいんですけどね。
遠くは青森から、奈良から来てくださる常連さんも、いらっしゃいます。ここだけに来るというよりは、東京に来たついでに寄ってくださる方とか。田端は都民にもあまり知られてないというか、降りたことがなかったという場所なので。

―「シネマ・チュプキ・タバタ」でずいぶん名前を広めたと思いますよ。

ここに映画を観に来たついでに田端散策も(と壁の絵地図)。この映画館と周りのお店も連携したスタンプカードを作っているんです。6ポイントためると、たとえばその向いのソフトクリームが50円引きになりますとか、お花屋さんでは10%割引になりますとか。そういうコラボレーション、あとOGUMAGというギャラリーさんも映画と連携しています。こないだは『手でふれてみる世界』(2022/岡野晃子監督)っていう”ヴァンジ彫刻庭園美術館”(静岡県長泉町)の副館長さんが作られたドキュメンタリー映画があって、それ見ると触ってみたくなるんですよ。触って鑑賞できる作品をいくつか展示していただいて、映画を観たあとギャラリーへ、というの。

―それはいいですね。「触れてはいけません」ばかりで触ってみることってできないです。

見えない人は「触察」(何かを獲得・理解するために「触れる」こと)のプロなので。
ワークショップなんかもやっていただいて。

―身近に障害のある人がいないとほんとにわからない。

出会う機会もなかなかないし、やっぱりここがそういうきっかけを作れたらいいなぁと思ってて。出会って、知り合ってみないと、はなしかけるのもおずおずしちゃったりするじゃないですか。ここは映画を一緒に観てたあとだと、なんか。

―近くなる?

そうなんです。ほんとに意気投合して、「駅までですか?」「じゃ、ご一緒に」なんて帰るお客様もいらっしゃいます。

―結ぶお手伝いをしたみたいで。

そういうのが自然と生まれる。ただ、しかけを作ってるだけで、自然に生まれるんです。

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天井の葉っぱにはクラファン協力者のお名前が

―今、さかんに「居場所」と言われています。こういう居場所が、増えていくと嬉しいです。贅沢言えばここにカフェがあれば。

そうなんです!それ、カフェを作りたいんです!

―本屋さんで本を買ったら、それ持ってカフェで読みたいと思うし、映画観た後は語りあいたいですから。
希望はなるべく声に出したり、知らせておくといいです。どこでつながるかわからない。ここにも書いておこう(笑)。

書いといてください!(笑)

―誰かに届くかもしれないですから。

それはほんとにそうですね。ここの映画館も「音のいい映画館を作りたい」と言ってたら、音響監督と結びついたわけですし。人が人を連れて来てくれるんです。
 
―音声ガイド・字幕はこれまで何本くらい作られたんですか?

400本くらい作りました。数年経って、以前の音声ガイドをきいてみると「何をやっているんだ!」と、過去の自分にツッコミを入れたくなります。『ニュー・シネマ・パラダイス』『ローマの休日』など長く何度も上映される作品は、何度か作り直しました。でも、それは成長している証とも言えますよね?

―映画館経営と音声ガイド・字幕作り、二つの仕事の割合は?上映は毎日(水曜定休・特別上映があることも)ですが、字幕づくりは何曜日とか決まっているんですか?

今は月ごとに作品を変えていますけど、よほど人気の作品でないとひと月持たなくて2週交代くらいになっています。切り替わる直前は台本が出来上がって収録して仕上げるので、ぎゅっと忙しくなります。月でいうと、2週目と4週目は製作にとられて、上映作品が切り替わった直後は宣伝活動にとられる感じです。

―隙間なく働かれて、忙しいですねえ。

製作は長年シティ・ライツでやってきているので、手伝ってくれる人たち(劇場のスタッフ以外)のコーディネーター、誰が何を作るかというのをを私がやっています。届いたものを仕上げていく作業は私。映画館の社員は映画館の運営だけにほぼ集中しています。一人、製作にも興味のある子がいて、最近編成を決めた作品の音声ガイドを「自分が作りますから」とやってくれたんです。こないだ原一男監督の『水俣曼荼羅』(2020)、6時間を超える作品をやりたい!って本人が言って・・・「それはボランティアにお願いできる尺(長さ)じゃないから無理だよ」って言ったんですが、「僕がやります!」「じゃやってもいいよ」って(笑)。

―6時間って3本分だから1日1回上映ですか?

年末にオールナイトと、丸々一日2回転でやりました。
この前DVDBOXが出たときも、記念上映でもう一回オールナイトで。もう満席でした。

―それはみなさん待っていたんですね。まさかできると思わなかったんじゃないかな。

そうですねぇ。しかも鑑賞された中に、聴覚障害のお客様がいらっしゃったんです。原一男監督、必ず舞台挨拶つけてくださるんですけど、6時間以上映画観たあと、2時間くらいお話しになって、それに手話通訳つけたり、文字起こしつけたりしなくちゃいけないので、大変でした。

―その舞台挨拶2時間分は観られないんですか?

ああ、そのとき来場したお客様の特典ですね。それは。

―チュプキの何周年記念・これまでの名トークとかで(笑)。

録音だけはあるかな。リアルタイム文字起こしは大変でしたよ。聴覚障害のお客様がいらしたときにはつけなきゃならないので。手話通訳の方もオールナイトのあと、明け方に2時間手話通訳。無茶ぶりができる人しか頼めません。

―監督も前もって2時間喋りますとか、おっしゃいませんよね。始まったら勢いで終わらなかったんでしょうか。きっと原監督よほど嬉しかったんでしょう。

ここね、すごく距離が近いし、こじんまりしているので、すごく話しやすいんだと思います。よくみなさんおっしゃいますけど、ほかの大きな劇場に行くと、一方的に話して終わっちゃう舞台挨拶が多いけど、ここはキャッチボールでくる。だからついお話続いちゃった。

―ここは全員の顔が見えますね。監督さんがまめに来てくださいますし、こんなにゲストがしょっちゅういるミニシアターもないかも。

都内だから来やすい、というのもあると思うんですけど。私はこんなにちっちゃい映画館だし、公開も始まってだいぶ経ってからの興行だし、って最初はお呼びするのにひけめを感じて、積極的にはお願いしていなかったんですよ。だけど、コロナがあって劇場の役目って何だろう?って考えたときに、「お客様と製作者を結ぶ場」かなって。それから積極的にどんどんお願いしちゃう。
コロナでなかなか対面もできなかったり、届けられないもどかしさっていうのもあったと思うので。リモートでもやりましょう、と結構やってくださるようになって。

―コロナも大変でしたけど、考える時間もできたし、まあいいこともあったと。

ほんとに立ち止まって考えた人多かったんじゃないかな。「ほんとは自分、何をやりたかったんだろう」みたいなことに向き合って。「映画館作りたかったんだ、そういえば!」っていう人が結構来ましたよ。で、「このサイズでどうやっているんですか?」とか自分もやれるんじゃないか、とかお話しに来る人が増えました。

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チラシや手作りグッズも並んでいます

―それは種まいてどこかで小さい花が咲くみたい。楽しみなことですね。

そう。コロナのときにみんな閉館しなくちゃならなかった、つぶれそうになったときに「ミニシアター・エイド」がすごく助けたじゃないですか。あのうねりもすごかった。

―3億も集まってびっくりしましたが、みんなに分けると少ないでしょう?

それでも助かりましたよー、すごく。家賃の高い繁華街の映画館さんとか、新宿や渋谷のような街に行きたがらなくなったりで大変だったと思います。地方は地方でいまだに大変です。車で行こうとなるとショッピングモールに入っているシネコンに行きがちですし、おうちにホームシアター環境を作っちゃうと、おうちで映画がいいかとなっちゃいます。

―人が動かなくなったから、飲食店もずいぶん閉店したりで町が変わっちゃいましたね。そしてスマホで配信を観るようになると、背景など作りこまなくなって映画も変わっていくのかな、寂しいなと思います。それでも映画館で観たい人も、映画をつくりたい人、監督になりたい人いますから。
平塚さんは「目標を持たない」「リーダーシップを持たない」って本にありましたけど(笑)これからは?


そうなんですよ(笑)。だから「風のように」(笑)。
カフェは作りたいですね。若い子たちは「映画で人生を学べる」作品にであってないんじゃないかと思うので、そういう機会が作れたらいいし、上田映劇さんがやっている「子どもシネマクラブ」みたいな、家でも学校でもないところ、居場所をを作りたい。『こころの通訳者たち』の出演者のみなさんは魅力的で、こういう大人たちに早いうちに出会って、話ができたりしたら変わるんだろうなとかいろいろ思うんです。
出会わせたい人がいっぱいいるんです。ワークショップみたいなのも丁寧にやれたらいいですね。

―ユニバーサルシアターは、ほかに増えてはいないんでしょうか?

作品ごとに対応するシアターは増えてきていると思います。映連に加盟している配給には義務化されますので。ただチュプキのように全作品に対して音声ガイドと字幕を作って、どの回でもやっているところはないです。

―ここで作った音声ガイドをほかへ貸し出すというのは?

やりますやります。ユニバーサルシアターをやりたいという人は結構いらっしゃいます。やりたい人たちがそれぞれ作ってみんなでシェアするというのができれば、だいぶ楽になるんじゃないかと思います。

―youtubeでウェブラジオもされていますね。聞きました。

あ、”きら星radio”です。あれも二人がやりたいと言って。一人は音声ガイド制作のお手伝いを主にしてくれている、プロのナレーターになりたい子なんです。それで、製作でもナレーターをやってもらっています。もう一人は、劇場スタッフでここの受付にいますよ。元々クラファンの途中経過をお知らせするのに始めたんですけど、作品紹介をかねて続けることになりました。何曜日と決めると苦しくなるので、編成が決まったら発信することにしています。

―発信する手段は多いほうがいいですよね。いろんな方法で受け取れるように。平塚さんもやりたいことをやりつつ、無理のないようにお体大事にしてください。今日はありがとうございました。 
(取材・写真:白石映子)

CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)
★住所:東京都北区東田端2-8-4
(JR田端駅北口より徒歩7分、業務スーパー隣)
 電話:03-6240-8480(水曜休)https://chupki.jpn.org/
 https://www.facebook.com/cinema.chupki.tabata/
 Mail:cinema.chupki@gmail.com

★サポータークラブ会員募集:https://chupki.jpn.org/support
 お買い物ページ:https://chupki.thebase.in

★⚠全20席の小さな劇場ですのでご予約をお勧めしております。
 映画鑑賞のご予約方法は3つ
・予約サイト:https://coubic.com/chupki
・電話/FAX:03-6240-8480(10時00分〜)
・店頭でも承っています
★設備 
スクリーン 120インチ
DCP(デジタル・シネマ・パッケージ)映写機
全席に音声ガイド用イヤホンジャック(左右の音量調節可)
抱っこスピーカー(振動で音の強弱を伝えます)貸出し
車椅子スペース
親子鑑賞室(完全防音なので泣いても大丈夫+映画の音量調節も可能+照明をつけたままでも可+)