続き『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』講演会 

前半はこちら(記事配分を変えています)

-で、映画ご覧になっていかがだったでしょう?

大西 そのカレとは全然違う真逆のキャラクターで、最初観てて、わがままだなと思ったんです。観ていくうちに鹿野さんの性格がだんだんわかってきて「鹿野さんらしく生きる」ために必要なことなんだな。それを命をかけてじゃないと、普通に暮らせなかったんだなと思いました。すごく正直というか。いまだに重度障がい者の方が自分らしく生きるってことは、実はあまり実現してないんじゃないかと思って。でも鹿野さんみたいに戦ってきた、いのちをかけて頑張ってきてくれたおかげで、たぶん法の制度も変わってきたと思いますし、私たちは鹿野さんの恩恵を受けているんじゃないかと感じました。あともう一個、日本人って、私もそうなんですけど、人に助けを求めるというのがすごい苦手で。たぶん健常者であっても、人の助けを得ずに生きてる人っていないと思うんですよね。鹿野さんは助けを求める勇気がすごいある方だなと思いました。
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-始まる前に楽屋でみなさんとお話をしたんですけれど、大西さんは呼吸器をつけたこともある?

大西 私もけっこう同じ様な状況だったことがあって、気管切開はしなかったんですけど(呼吸器を)口から入れていて、声も出なかったんです。でも口から抜けば声は出ると思ってたんですよ。(呼吸器を)抜いても結局声が出なくて、すっごく悲しくて泣いたんです。「セリーヌ・ディオンが歌えなくなる~」って泣いたら・・・

-はい?

大西 セリーヌ・ディオン。当時『タイタニック』がはやっていて(笑)、セリーヌ・ディオンが大好きだったんです。それが歌えなくなる~ってすごく泣いたんですよ。そしたら周りから「ふつう歌えないから」って言われて、なんか終わっちゃったんですけど(笑)。でも退院してからやっぱり行ったんです。

-カラオケに?

大西 歌いたくて。当時は強心剤を飲みながら(今はペースメーカーを入れている)生活していて、車椅子だったんですがカラオケに行ったんです。でも吐いちゃうんです。でも行きたいんですよ。障害を理由にできないことを一つでも減らしたくて。なんか納得できない。けっこう鹿野さんと似てる性格だと思いました。

-今のくだり、大泉さんどうでしょうか?

大泉 どうしてそこまでセリーヌ・ディオン?(場内爆笑)もっと楽なものでもよかったのに、セリーヌ・ディオンはねぇ、やっぱり健常者のかたでもなかなか。あなた何で歌っちゃうかな?(笑)でもねぇやりたいことあきらめたくないっていうね。この映画の中にも「カラオケ行きたいなぁ」っていう台詞がいっぱい出てくる。最後まで観ていただけると、そこもなかなか気持ちのいいエンディングが。

-大泉さんはこの映画で鹿野さんの生き方を通して、ご自身が影響を受けたことはありますか?

大泉おっしゃるとおりで、日本人は特に海外の方々から見てもそうらしいですけど。私はよくインタビューで「娘さんにどんな教育をなさってるんですか?」と聞かれますと「特にないんだけど、ひとつ言えるとしたら人に迷惑をかけるんじゃないってことですかね」と言ってきました。逆にいえば人に迷惑をかけなければ何してもいいよ、っていう。
この本を読んで思ったのは、人に迷惑をかけるってことをそこまで怖れる必要はないのかなというね。今年は自己責任論みたいなのがあらためて語られるようになったけれども、人に迷惑をかけることを怖れるよりも、自分でできないことがあったら助けを求める、求められたときには助けてあげられる人になってほしいな。世の中がもっと人を許すっていうか、人の迷惑を許てあげる社会になっていくともっといいのかな。世界全体を見ても「許す」ってことが大事なのかな。
(渡辺さんに)いちいち(マイクを)切んなくても。臨戦態勢でいてください。(笑)

渡辺 切れてるの?(笑)
-今切れてますよ。さわらなくていいんですよ。
大泉 戦争ですから。(笑)
-戦争じゃないです。(笑)

渡辺 自立というのは、人の手を借りずに自分で何でもできることを自立っていうと思うんですよね。ところが重度の障がいがある人が、それをかなり拡げてくれた。鹿野さんとか、ああいう障がいがありながら自立生活をする人たちの自立がどういうものかというと、「自分の人生を自分で決める」。そのために他人とか、社会に堂々と助けを求めていいんだよ。それは、自立の一つの方法なんだよ、ということを常に社会に訴えかけてきたんですね。その考え方はさきほど大西さんも言われたように、健常者にも突き刺さる。
大泉さんが言われたように、日本は「人に迷惑をかけてはいけない」という社会的な規範がとても強い社会なので、自分の悩みや苦しみを人に言えず、人に助けを求められずにー弱味見せたくないからですねーそれで孤立している方にこそ鹿野さんのわがままがもたらす人間関係の豊かさ、そういうものを感じていただけたらなと思います。
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-大西さんいかがですか?

大西 え、何がですか?(笑)
-今の話を受けて
大泉 油断しないで!(笑)人の話も聞いてね。聞きながら自分何を話そうか考える。
-大泉さん、そんなバラエティみたいに叩き込まないで(笑)。そんな厳しい世界じゃない。怖い怖い(笑)

大西 やっぱり私たち障がい者がどんどん外に出て行って、いろんな人がいるよっていうのを知っていただきたいと思っています。私もこんな派手な衣装を着て外に出るのはそういう意味があって。かと言って、むりやり出なくてもいいかなって。鹿野さんみたいな生き方を全員ができるわけじゃない。出られる人が頑張って出て行って世の中を少しずつ変えていって、より良い世の中にしていくといいんじゃないかなと思います。

-あらためて鹿野さんのような障がい者が積極的に出て行くことで、周りが変わっていく。その点について最後に伺いたいんですが。大泉さん、まさに鹿野さんによっていろんな人が変わっていく映画ですけれども。

大泉 え、何がですか?(笑)
大西 ちょっとー!(笑)
大泉 何答えればいいんですか?(会場爆笑)
MCさん質問繰り返す
大泉 普段映画やってると「その映画で何か伝えたいことありますか?」と聞かれます。「特にないんだけど、楽しんでくれればいい」と思ったんだけど。この映画に関しては、そんなに強いメッセージがあるわけではないんです。この映画を観ることによって「ああそうか、障がい者の方もこういうふうに思ってるんだな」とか「障がい者とボランティアの関係がどういう状態が望ましいだろうか」とか、いろんなことを考えるきっかけになればいいなと思いますね。
「こんな夜更けにバナナかよ」というこのタイトルが、今はやっぱり「障がいがあるのにそんなわがままを言っていた」ということで、とっても面白いんだけど。
究極はこのタイトルが別にわがままには聞こえない社会が実現できれば、ほんとに障がいのある方にとってもいい社会だとは思います。どんな時間でもきちんとヘルパーとして働きたい人を潤沢に確保できて、それが仕事として成立していて、障がいのある方がそれを自由にお願いできる、そういう社会が一番望ましい。
日本だとまだまだ珍しい存在だけれども、それが太っている人もいれば痩せた人もいるというくらいに、たまたま障がいのある人もいるという社会になればいいなぁと、そういう何かのきっかけにこの映画がなればいいなと思います。

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-渡辺さん何かありますか?

渡辺 そうですね。そういうことが普通になるような社会は、私たち健常者も生きやすい社会なはずです。切実な問題を抱えた方たちの訴えというのは、社会全体に対する重要なメッセージを含んでいることが多いということです。
例えば駅にエレベーターがあるのも、今の時代当たり前のことだと思ってらっしゃるでしょうが、実はその地域の障害者の人たちが30年に上に渡って営々と設置運動をずっと続けてきたからこそなんんです。私たちは知らずにその利便性を享受している。
だから障がい者の人が生きやすい社会というのは、障がい者に特権を与えるとか、お金をかけるということじゃなく、社会全体が生きやすい社会になる。そういう広い視点で鹿野さんのわがままについても捉えていただければと思います。

-なるほど。大西さん。

大西 人ってみんなできることと、できないことがあると思うんですよ。みなさんがおっしゃったように、許すというかそういうことを許容できるような社会がまずないと、みんな生きづらいと思うんです。お互いもうちょっと理解し合えるような社会になってほしいなと思います。このボランティアと鹿野さんの関係は、本音で向かい合ってこられたからだと思うんです。本音もお互い言える社会になってほしいと思います。

-ありがとうございます。ここよりフォトセッションに入ります。渡辺さん大西さん、大泉さんのオーラが全開になりますから気圧されないように(笑)。

大泉 プレッシャーかけるじゃないですか(笑)。(場所移動して)写真撮るとき普通でしょ?
大西 足回しちゃダメですか?
-回していいですよ。(笑)
大泉 なんて陽気な方!
大西 ダメ?ダメ?(義足をぐるぐる回す)
大泉 全然こっちのほうがオーラあるじゃないですかー!

(取材席のカメラに順に目線を配って撮影)

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奥のムービーカメラに手を振る3人。大西さん足も振る。

-これは初めてのパターンです(笑)。
では最後に大泉さんからひとこと。


大泉 とても面白い映画だと思います。私たちが作りたかったのは、決して重い映画ではなかったんです。笑えるコメディの要素もたくさんありまして、おおいに笑っていただいて、そしてジンとするところはジンとする映画だと思いますので、多くの方に観てもらってそれぞれのお友達、お知り合いに伝えて観ていただいて、この映画が何かを考えるきっかけになるといいなぁと思っとります。
僕たちのような健常者もいろいろ思うところもあるでしょうし、障がいのある方がこれを観ることもあると思います。大西さんがおっしゃるとおりで、みんながみんな世の中に積極的に出たい人ばかりではないと思うけれども、鹿野さんの姿を見て思うところもあるでしょうし。全ての人たちにとっていい社会がくればいいなぁと思っています。どうぞ楽しんで観てただいて、沢山の方々に拡げていただければと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(取材・写真 白石映子)

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