『アメリカン・アニマルズ』バート・レイトン監督トークイベント

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2004年アメリカ トランシルヴァニア大学で実際に起きた事件を描いたクライム青春ムービー。犯人は大学生4人組、狙うは図書館に保管された12憶円のヴィンテージ本.......。
何一つ不自由ない若者4人を犯罪に駆り立てたものとは何だったのか?前代未聞の計画は成功することができるのか?

実行犯4人を映画に登場させた今年1番の異色にして意欲作『 アメリカン・アニマルズ』が、5月17日から新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開されている。

このほど同作のバート・レイトン監督が来日し、映画秘宝編集長の岩田和明さんをゲストに迎え、記念イベントが行われた。


『 アメリカンアニマルズ』バート・レイトン監督トークイベント 概要
■日時 :5月10日(金)
■場所 :スペースFS汐留(東京都港区東新橋1-1-16 汐留FSビル3F)
■登壇者:バート・レイトン監督、岩田和明さん(映画秘宝編集長)




試写終了後、万雷の拍手に包まれ、同監督と岩田氏が登場した。岩田氏は本作のイラストTシャツを着てくるほどの気合いの入れよう。
一方のレイトン監督は、ハイエッジーな作品を撮った人とは信じられないほどの穏やかな佇まいで終始ニコニコとした笑顔。
早速、岩田氏の編集者としての視点による質問から始まった。


岩田氏:編集者として、まずこの映画は取材力が高いことに驚いた。記者として興味があるのですが、どうして実行犯の本人たちを出そうと思ったのか?
監督:報道でこの事件を知り興味を持った。私はドキュメントを撮っていたが、ドラマの中に彼らを登場させたら.......というハイブリッドなアイデアを思いついた。当事者に話を聞くのは楽しいものだから。
なぜ恵まれた環境にあった若者たちが犯行に及んだか、その動機を知りたかった。
彼らがまだ受刑中に、何度も手紙のやり取りをした。そして自分自身の背景も話し、彼らの信頼を得た。


岩田氏:映画に出てくれというのは何時の時点で伝えたのか?
監督:手紙のやり取りや面談を重ね、数ヶ月後に依頼した。鳥類の希少本を見つけたスペンサーはアーティストを目指していたことから分かるように、ただの強盗ではなく、目的を失った若者だったのではないかと直感した。

岩田氏:映画に出るのを嫌がった人は?
監督:図書館の司書は、これがどういう映画になるか分からないし、被害者としてまだ4人に怒りを感じていた。なので、直接自分が説明し、出演を説得した。
実は、完成した映画を観て最も喜んだのは司書。一緒に観ていて彼女の夫は途中で寝てしまったのに、彼女はエンディングで脚を踏み鳴らして踊っていたくらい(笑)。
もし彼女が内容に意義を唱えたら変えるつもりだった。でも、内容を肯定的に捉えてくれたのです。そして「許す」という境地に達していた。
逆に4人が内容に意義を唱えても変えるつもりはなかった。


岩田氏:私はある意味この映画をコメディとして観ました 。バカ悲しい青春映画のような.......。
監督:コメディの他、様々なスタイルをとったつもり。ただ、被害者がいるため、敢えて強盗シーンは辛くなるように描いた。一線を越えてしまった点を見せたかった。後半は面白いと言われる。
脚本の基本は知ることから始まる。彼らの若く軽はずみな行動、生活の苦労を知らないからリアルさがない。が、通常の生活はルーザーともいえるものだ。


岩田氏:実際の4人は演技をしたことはないのに、カメラの前でとても自然に見える。その訳は?
監督:時間をかけて信頼関係を築いたので率直に話してくれた。
技術的には、説明が難しいが、カメラの前にマジックミラーを置くアイデアを採用した。そのミラー越しに映った私と話せばカメラ目線で話して貰える。
カメラを見ないでカメラを意識せずに話すことができる。これはドキュメンタリーで培った技法。


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技術的に興味深い話が飛び出し、会場全体から「ほほぉ〜」というどよめきが起きたタイミングで、岩田氏より観客へ質問が呼び掛けられた。たくさんの挙手の中、時間の都合で3人が監督に質問する機会を得た。

① あの4人は実際どんな人物だったのか?
監督:出所後、10年を経ていたため、自身の罪の重さと共に、親を悲しませたという、親の悲しみをを背負ってるいるように感じた。

②題名の由来はダーウィンの本から?
監督:いい質問だ。盗もうとした鳥類の本、ダーウィンの「種の起源」から、アニマルズと取った。ダーウィンとは掛け離れた若者が盗む。動物的衝動のような意味を表現したかった。

③4人の配役はどのように決めたのか?
監督:多くの俳優たちと会った。著名で人気のある若手俳優が集まったが、私には彼らがディズニー映画に出てくるような甘ったるい2枚目にしか見えなかった。
まず犯罪グループのリーダーである、エヴァン・ピーターズが決まった。私はバリー・コーガンをとても気に入っており、彼の1度見たら忘れられない顔、繊細さからスペンサー役は彼しかいないと最初から直感していた。ところが、プロデューサーは人気のある有名俳優を勧めてきたが、そこは自分の信念を推し通した。全体的に人間味ある良いキャスティングができたと確信している。


最後に監督は、「今日は来てくれてありがとう」と日本語で観客たちに語りかけ、拝む仕草を見せると会場は大喝采!今後注目必至の若手新鋭監督を囲む貴重な夕べとなった。



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監督・脚本:バート・レイトン『The Imposter』(英国アカデミー賞受賞)
出演:エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン
原題:American Animals
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal
Pictures Limited 2018
(2018 年/アメリカ・イギリス/116 分/スコープサイズ/5.1ch)
公式サイト:http://www.phantom-film.com/americananimals/sp/

posted by 大瀧幸恵 at 00:00 トークショー












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