『無限ファンデーション』大崎章監督、西山小雨さん(音楽・主題歌)インタビュー

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大崎章(おおさきあきら)監督プロフィール
1961年・群馬県生まれ。『ソナチネ』(北野武監督)『2/デュオ』(諏訪敦彦監督)などで助監督、『リンダ リンダ リンダ』(山下敦弘監督)では監督補を務める。『キャッチボール屋』で監督デビュー。次作『お盆の弟』がヨコハマ映画祭で4冠に輝いた。

西山小雨(にしやまこさめ)さんプロフィール
仙台出身・東京在住。人気インディーズバンド"雨先案内人"のキーボード担当だったが、作詞作曲に興味を抱いて2014年からソロ活動を開始する。ピアノやウクレレを弾きながら日々の思いや出来事を独特の世界観で自由に歌う。『無限ファンデーション』でMOOSIC LAB 2018ベストミュージシャン賞を受賞。HPはこちら

『無限ファンデーション』
監督:大崎章
音楽・主題歌:西山小雨
撮影・編集:猪本雅三(いのもと まさみ)
録音:伊藤裕規
照明:松隈信一
出演:南沙良(未来)、西山小雨(小雨)、原菜乃華(ナノカ)、小野花梨(百合)、近藤笑菜(笑菜)、日高七海(千明)、池田朱那(亜子)、佐藤蓮(智也)、嶺豪一(担任・滝本)、片岡礼子(未来の母・今日子)
作品紹介 http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/468751781.html 
★2019年8月24日(土)よりK’s cinemaほか全国順次公開

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―最初は小雨さんのMVを作るはずだったのに、映画になってしまったそうですが?
監督 なってしまった?!(笑)。
小雨 私には「なってしまった」です。今となっては嬉しいことなんですけど、当時はMV(ミュージックビデオ)をお願いしたのが始まりなんです。 大崎監督が私の友達のバンド”ザ・ラヂオカセッツ“の『HOME
AND HOME』のMVを撮られていて、そのイントロから泣いてしまったんです。そして「こんなに素敵なのを私にも作ってください」と直にお願いしました。「お金かかるよ」とあしらわれたんですが(笑)。
監督 冷たかったわけじゃないんだけど…。
小雨 でも、その後に私のライブを見に来てくださって「どれを撮りたい?」と聞かれたとき、最後に歌った「未来へ」と言いましたら、監督も同じ意見だったんです。
監督 僕は音楽詳しくはないですけど、「未来へ」はオーケストラのようにすごく広がりがある曲。特に中盤のピアノが大好きで。聞いていてじわーっと世界観を感じて「いいなぁ。このMVを作りたいなぁ」と思ったんです。(小雨:やった!)その後も何度も何度も電話でやりとりして、見積もり出したりしてね。
小雨 思い出してきました。
―それはいつのことですか?
監督 2017年の2月に初めてお会いしました。
小雨 ライブに来て下さったのはその年の6月、初めてのワンマンライブの時ですね。
―映画として始まったのは?
監督 松本花奈(まつもと はな)さんに、MVの脚本を書いてもらったらすごく良かったんですよ。その年の冬だったかな。“MOOSIC LAB 2018” の直井さんに「これ長編になりませんか?」と聞いたら「なりますよ」って。でもその話を小雨さんに全然してなくて(笑)。
小雨 事後報告でした(笑)。監督が電話の向こうからすごい嬉しそうな声で「映画になりました!」って。なりました??
監督 嬉しくて言ったんです。そのときまだ資金繰りも全然考えてないのに、なんとかするんだ!みたいな気分で。バカだなぁ。「映画になる」って言ったら喜ぶと思ったんですよ、勝手に。そしたら「は?」って感じで。
小雨 あははは。「映画になる?つまりどういうこと?」です。全然自分が出演するなんて頭にもなかったし、想像もできなかった。MVならともかく、映画っていうものに出るのは女優さん、と思っていました。
―演技経験は全くなしで?!
小雨 はい。ないどころか、マイナス(笑)。
監督 MVの脚本がファンタジーで、小雨さんの登場シーンが多かったんですよ。演技がうまいとか云々かんぬんよりも、小雨さんという人物が持っているこのキャラクターが出てしかるべきだし、出てもらって歌ってもらうしかないなと思いました。
―全編即興劇ということですが、たとえば最初に未来ちゃんと小雨ちゃんが出逢う場面があります。あの流れでは、どういう道筋がたてられていたんでしょうか?
監督 よく覚えています。「歌声が聞こえている」「未来 リサイクル施設の中に入っていく」「未来と小雨 出会う」その3行くらいしか書いていないんです。
小雨 以上です(笑)。ずっとそんなのです。(監督笑う)A4用紙5,6枚くらいの。箇条書きです。(結局9ページの構成台本になった)
―いったいどうやって、演技指導とか演出をしていたんでしょうか。
監督 現場での指導はほとんどしてないです。正直言って。
―監督の頭の中にやってほしいことがあるんですね?
監督 やってほしい感覚はあるんですけど、それすらも言わないようにしていました。それを言うと、そのとおりにやってしまうから。それも嫌だったので、とにかくお任せしていました。2人が会うシーンがすごく好きなんですよ。本人は嫌だって言っていますけど。
小雨 見てられないんです(笑)。
監督 それがすごく初々しいんです。あのシーンの良さは、説明するといくらでも出てくる。未来ちゃんがあの塀の向こう側に行くっていうのは、意味があるんです。
―ぴょんぴょんしていましたね。
監督 自転車を台にしてあそこをよじ登って行く。
小雨 そうなの? 絶対無理でしょー!
監督 リサイクル施設の入口は出していませんから、“別世界に行く”というイメージなんですよ。男の子が秘密基地遊びをするでしょう? どんどん進んでいって別世界で怪物と出会う。そんなイメージ。ま、それはおいといて。
小雨ちゃんはそこですごく嬉しそうな顔するでしょ?そこから未来ちゃんの精神が開いていくんですよね。だんだんだんだん。それがすごく意味がある。
―小雨ちゃんはどういう子なんだろう?不登校の子なのかなと想像したりしました。あそこは本物のリサイクル施設なんですか?カラフルなゴミ袋など、てっきり美術さんの仕込みかと思っていました。
監督 本物です。みんなにそういわれるんですけど、分別のために色分けされています。あとは小雨ちゃんの仕込み。
小雨 もちろん色味は配置してくださっているんですけど、ペットボトルはこの色とか、普段実際に使われているものです。
―小雨ちゃんは初め高校の制服ですが、後で未来ちゃんからプレゼントの衣装を着ますね。すごく嬉しそうでしたが。
小雨 照れた~!あれ(笑)。
―照れたってことは自前じゃないんですね?
小雨 もちろんです。
監督 衣装さんが作ったものです。自前っぽかったっていうことは似合っていたってことですね。
―はい、あれでライブをされているのかと。
小雨 劇中でも言ってたとおりあんなにひらひらしたもの着たことがないんです。ほんとに照れていました。あのまんまで、なんにも演技になってないんです(笑)。
―小雨さんも演技指導はなし?
小雨 なんにも教えてもらえませんでした~(笑)。なんにも言われなくて、息の仕方どうしてたっけ?みたいなことですよ。
―中にナノカちゃんのオーディション場面がありますね。条件を与えられて、即興演技をします。ああいう感じなのかなと想像していました。ではあのシーンは未来ちゃんに声かけられて、自然に反応しているってことなんですね。
小雨 「シーン何番です」と言われて、台本を持って移動してそのト書きのみを参考に。
あとは7日間合宿があって、演劇部員たちは毎晩毎晩ミーティングしてましたね。枕を並べて。
―あの子たちは2人きりじゃないから。
小雨 そうなんですよ。このシーンは誰がどこまで突っ込んで、どの方向に行くのがいいんだろうみたいに、たぶんやってたんですけど、私は別のスタッフ部屋のほうで。

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(C)2018「無限ファンデーション

監督 小雨さんはポテンシャルが高かったと思うんですよ、絶対に。でないと初めてなのにあのお芝居できない。リハで、ウクレレ弾きながら未来ちゃんと会うというシーンが良かった。小雨さん緊張してたというんですけど。
南沙良さんのほうもすごく度胸がすわっていて、すぐできる。この二人ならできる、と思いました。
―私もそこで(小雨ちゃんに)掴まれました。この人なんて可愛いんだろうって。
小雨 もう、自分だと目もあてられない(笑)。
監督 そんなことないよ。
小雨 普段ライブに来てくださってるお客様が「そのまんまだね」って。
―だからいいんじゃないですか(監督と声がそろいました)。中で「不思議ちゃん」って言われてましたけど、人間っていうより別世界の人って雰囲気があったんですよ。エルフみたい(見たことはないですが)な感じで。
監督 それはそうなんですよ。言われます。
小雨 いろんな人から言われました。人じゃないもの、妖精とか(監督:座敷わらしとか)・・・。
監督 それをね、その雰囲気を自然に醸し出してさすがだなと思いました。そこは狙い通り。
―小雨ちゃん部分はファンタジー、演劇部の部分はリアル。その兼ね合いも思ったとおり?
監督 明確に意識はしていないですけど、この映画の一つの側面はそこなんですよ。“現実とファンタジー”、“子どもと大人”。そして演劇部員と先生と小雨ちゃんが後からつながる。もともとあった脚本の中にはその要素が入っていましたし、それがないと絶対に面白くならないなと思いましたし、僕の好きな世界観でしたからみんなやっていただきました。
―俳優さんに任せるというのは、期待もあるし、どんな反応が出てくるかわくわくしますよね。でも逆にリスクもあるかと思いますが。
監督 やり直したシーンもいくつかあるんです。そんなにはないですが。
小雨 一発OKが多くて。
監督 なんでかというと、彼女たちがこれは一発でなくちゃいけないなと、かなり本気を出してやってくれた。一回一回のシーンで出してくれました。一番重要なのは瑞々しい芝居がやれているか、それは毎回判断していました。
リスクは、“予定調和”になりかねない、ということかな。でもみんな相当上手でした。何がバランスよかったかというと、個性があったこと。例えば原菜乃華さんはボキャボラリーが豊富ではないけれど、言葉に強い力があって、それがすごく出てくるんですよ。彼女は子役としてやってきたんです。小野花梨さんも子役からでキャリアがあったから、リアクションとかを考えてやっていた、というのが後ですごくわかった。あのペンキをかける百合ちゃん役の、あの子がすごく考えて、悩んでたかなと。悩みの発端は「即興なんてできない」ということだと言ってました。(ここの詳細は後述)
―子役からの人たちにしてみたら、これまでにない経験だったでしょうね。
監督 全員初めてです。彼女にしてみたら、今までこんなことはないし、ちょっと怒り気味だったです。
―もがいているうちに自分のエネルギーで乗り切ったのかな。じゃあ監督が想像した以上になったわけですね。
監督 想像した以上のベクトルが出ましたね。
―合宿の効果もありましたね。
監督 合宿になった時点でそこはちょっと予想しましたけど、だからみな同じ部屋にしました(笑)。
―あの子たちがみんな一斉に喋りだしたらたいへん。自分たちで調整したんですね。男の子が一人いましたけど、口はさむ隙がなかったですね。
小雨 あれは社会の縮図ですね(笑)。
監督 たしかリハのときは彼ももっと喋っていたんですけど、聞いたら「これは無理だな」と(小雨さん:笑)。本番は喋らないほうがいいなと思ったんでしょう。
―「まあまあ」となだめ役でちょっと。
監督 最後に出てきて男気を見せましたけど。
小雨 全然なだめられてない(笑)。私が俳優だったら、なんかやらなきゃとか喋らなきゃとか絶対思っちゃうんで、「喋らない演技を選べる」っていう時点ですごい。それってすごい選択。いるだけで演技になっている。
監督 それ!空見てたりして。ちゃんと目につくんですよね。劇が「シンデレラ」だったので、王子様役一人だけなんですよ。
小雨 男性弱い~(笑)。先生も押されてる(笑)。
―未来ちゃんが答案に何も書いてないのに「大丈夫、大丈夫」って。大丈夫じゃないですよ。この先生大丈夫か?(笑)。
監督 そうそう、あそこおかしいですよね。もっと怒ったほうがいいのに(笑)。
小雨 笑っちゃう。
―あの先生の独白も。でもあれで初めてつながるんですよね。
監督 あの独白はこの映画の「裏のミソ」なんです。未来ちゃんが小雨ちゃんとなんだか(性格が)似ているという。
―あのほわーんとしたところが。
監督 なんでここでしゃべるのか、っていうと、なんとなく似ているから。この子にだけしゃべりたくなる。急にそう思ってしまうんですよ。
―面白いですね。その裏、裏話?メイキング作りましたか?
監督 裏は面白いですよ。でもメイキング作る余裕もなくて誰も回してなかったんです。もったいないですが、そういうもんですよ(笑)。
とにかくワンシーンが長いんです。使っている部分が3分だとしたら前後10分くらいは回しています。それはいいシーンもいっぱいあります。
―合宿が1週間で、撮影期間は?
監督 撮影も1週間です。そうなんですけど、僕にとっては半月どころか1年以上かかってようやく7日間の撮影にこぎつけた!ってイメージなんです。初めて小雨さんと出会ってから、できあがって編集して8月24日にロードショー公開ができる。それまでの全てが僕にとっての製作期間です。編集はそんなに大変じゃなかったかな。素材は一発OKも多かったし、どこをどう切るかっていう大変さはありましたが。
小雨 カメラもあって2台でしたし。そんなにカットも切り替わらないで、ほとんど使われていますよね。
―カメラさん、音声さんはいかがでしょうか? 即興劇ならではのご苦労があったのではありませんか?
監督 カメラはね、ある種天才なんです。猪本さんっていって、こういう実験的なのが好きな人で、相当気合入っていました。もしこの猪本さんと録音の伊藤さんを連れてきたら、その件に関してよくしゃべると思いますよ(笑)。
小雨みんなマイクをつけてるわけじゃないですから。
―(即興では)大勢のシーンでは誰がいつ喋るかわからないですよね。
監督 わかんないので、その(マイクを)二本こうやってて(持つしぐさ)。その職人芸!
小雨 ほんとにすごいんです。
―監督はカメラを覗いている?
監督 僕は、モニターよりも現場のほうを、全体を見ていたかな。
―で、カメラさんに指示を出すんですか?
監督 出してない(笑)。出してないというとまた語弊があるんだけど(笑)。
小雨 出してるところ見なかった(笑)。
(ここで小雨さんの時間があと10分、とわかる)

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―では、小雨さんに。これまでの映画の経験がないということですので(小雨:ないですねぇ)観客としての映画体験をお聞かせください。子どものころから観た中で好きな作品はなんでしょうか?
小雨 子どものころからか~。子どものころは『ネバーエンディング・ストーリー』(1985)とかファンタジー好きでしたねぇ。あれは何度も観ました。ファルコンの「耳の後ろがかゆいんだ」っていうセリフが大好きで。白い龍が、前足が短くて手が届かないの。耳の後ろかけないから、って主人公にかいてもらうの。今までの中だと、北野武監督の『菊次郎の夏』が一番好きです。
―自分が重なるようなヒロインはいませんでしたか?
小雨 いやいや。そんなおこがましい。私ほんとに自分が映画に出るっていうことをこの人生で経験するなんて、全く思ってなかったですし。自分が主人公になると思ったことがないタイプ。この映画の場合、菜乃華ちゃんは自分が主役だと思ってやっているじゃないですか。役の中でもそうだし、たぶん彼女の性格もそうだと。
沙良ちゃんや私とかはわりとそうでもなくて、だから重ね合わせるなんてとんでもないです。ただ、観てあこがれる。
―この映画ができあがって観たときは?
小雨 自分の演技のところは目も当てられない。ほかの女優さんたちの言い合いのシーンとか、あそこでうるっとくるのもありつつ・・・撮影7日間ずっと泣いてて。泣いているシーン「涙どうやったの?」って言われるんですけど、私シーンのないときもずっと泣いてて(笑)。周りが進んでいくのに私は取り残されているみたいな感覚があって、ほんとに沈んでたんですよ。
―あらまあ。自然に出てきた涙なんですね。
小雨 ほっといたら涙が出ているんです。それを思い出しては泣いていましたね。
―いつもそんなに涙もろいんですか?
小雨 いやー、そんなことないんですけど。
―映画の中の小雨ちゃんだったんですね。
監督 すごくないですか?初めてなのに、それができたって。もう素質があるし、ポテンシャル高かったってこと。
―ほんとですね。あの歌もすごく印象に残るんです。語りかけるような言葉とか、あれはほとんど自分のつぶやきがそのまま出てる気がしたんです。わざわざ作ってるのでなく、こぼれて出てきましたみたいな。
小雨 ああ、それが一番嬉しいです。
―思ったことがぽろっと口からこぼれて、メロディにのったんだなって。それで「あ、ライブが観たい!」と思って(ライブチケットつきクラウドファンディングさせていただきました)。
小雨 ありがとうございます。お待ちしております。
―ここを観て!というシーンは?
小雨 えー、私が出てないところ(笑)。自分のシーンでここは好き、というのなら、未来ちゃんが衣装を作って着せてくれたシーンです。あれはほんとに嬉しかった!私の本音ですし、それを受けた未来ちゃんの本音がぽろっと出たシーン。
―このシーン自然で、2人の相性がいいんだろうなと見ていました。「よしよし」ってしながら泣いているシーンも。
小雨 あれは完全に私の涙のハードルが下がりまくっていた時期で、「先に泣いたらごめーん」と思っていました。わりと未来ちゃんと私、もしかしたら沙良ちゃんとも性格が近いんだと思います。そんなに友達がいっぱいいる社交的なタイプでもなくて、なんかこう自分の好きなことに打ち込んでいるのが、気持ちも楽だし楽しい。そういうちょっとした孤独さがあって、恐らくそこが通じ合ってて、テンポも似てるのかなって。
―いい配役でしたね、監督。
監督 後でその話を聞いたときに「しめた!」と思った(笑)。先生の裏設定(前述)がありましたから、実際に似ているって聞いて嬉しくて。意外とそういうこと多かったんです。この映画。ちゃんと、役者さんの性格付けがうまい具合にいった。実際の性格に近いというか。
―出てしまうんでしょうね。即興でやっていたらいやでも出てしまう(笑)。
監督 そう。
小雨 出しやすい役にちょうどなっていた。沙良ちゃんも、洋服作ってたり。
監督 あれ、偶然なんですよ。スケッチブックは彼女にほんとに描いてもらったんです。それがとっても上手で。
―小雨さん、会えて嬉しかったです。ライブでまた。映画はもう出ませんか?
小雨 出たいです。脚本のあるやつ(笑)。
監督 はい。今度は脚本のあるもので。
 (小雨さん退出)

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―では監督続けてお話を。即興の映画は初めてです。もう少し詳しく伺っていいですか?この作品を即興劇にしようと思ったのはどこからなんですか?
監督 今回の場合は予算がはまらなくて、さっき言ったシナリオを元にして撮るには、当時集めたお金の3倍かかると、3倍かからなくとも絶対赤字でうまくいかないという状況でした。越川道夫プロデューサーに「即興で、7日間で撮ればできる」と言われたんです。
―越川プロデューサーのアイディア?
監督 アイディアっていうか…「苦肉の策」!
―以前即興で撮られたことがあったんでしょうか?
監督 越川さんでなく、僕です。諏訪敦彦(すわのぶひろ)監督、即興映画の巨匠で、去年ジャン=ピエール・レオ主演の『ライオンは今夜死ぬ』(2017/日仏合作)、来年『風の電話』が公開される方がいます。僕はこの監督の日本での作品全てに助監督として参加しています。
―ああー、それではノウハウっていうか、どんな風かはご存知だったんですね。
監督 未体験では無理ですね。越川さんはそれを知っていたんです。それで面白いと思って「やりましょう!」と。
―そこで「面白い!」って思うところがすごいですね。チャレンジャーです。
監督 ありがとうございます(笑)。「面白い!」って立ち上がったこと、今でも直井さん(企画)が言うんですけど、ほんとにそう思ったんです。みんなは「無理だ」と思っていた(笑)。でもマネージャーが「それだったらインデペンデントの実験的な映画に、うちの南(沙良)を出す意味がある」って言ってくれたんです。
―話題性がありますよね。誰もやってないことをやる。それも若い女の子ばかりで。
監督 だから「これをできるのは世界で俺しかいない!」って。その瞬間、その状況で、やりたい、挑戦しようと思った。そこからすごく気が楽になりました。もうやるしかない。
―もう背水の陣ですね。
監督 ほんとにおっしゃるとおりです。そうです。
―チャレンジしがいがありましたね?
監督 ありました!俳優陣は10人出ているんですけど、全員たいへんだったと思うんです。ほんとに。自分たちで、自分の演出を考えてやるんで。
―自分もみんなも生きるように。
監督 みんなのことを考えたのは小野花梨さん。「すごく考えてた」ってコメントを出してくれてびっくりしましたね。最後に「監督に感謝します」って言ってくれた。現場では「わかんない」って最後まで言ってて、そういうコメントをくれたってことは、彼女もこの映画の経験で考え方が少し変わったのかもしれないです。
―それってほんとに得難い経験だったと思います。俳優さんを育てたと思いますよ。
監督 そう言っていただくと嬉しいです。
―そんなやり方をしてくれる監督さんてなかなかいないじゃないですか。ワークショップならともかく。
監督 それは言われました。賛否両論あるんで「ワークショップみたいなの作りやがって」ってすごく言われました(笑)。
―でも若い俳優さんのためになったと思います、私は。獅子が子どもを崖から落とすようなものじゃないですか?
監督 まあ、何人も怒っていましたけど(笑)、こっちもおっさんなんで、できないふりしてそのまま撮りました。
―俳優さんを信じていたからですよね。
監督 信じました! それはカメラも録音の人もそうです。「こうしろ、って絶対言わない」という姿勢なのでどうなっても信じるしかない。みんなすごく頑張ってくれました。画(え)から伝わってきますから。
―俳優も監督やスタッフにこたえたいと思うでしょう。2人3脚じゃなくて10人11脚?
監督 スタッフも入れたら30人くらいですね。
―30人でできたんですか~!
監督 もっと少ないかもしれない。
―さきほど『左様なら』(石橋夕帆監督)の試写を観たばかりです。高校生がいっぱい出てきて、一度にいろんな場所で話しているんです。このたくさんのセリフはみんな脚本にあるんだろうなと。
監督 僕のと真逆なんですよ。演出がすごく細かい。それでいて自然なんです。僕にはこの技できないです。
―その中に『無限ファンデーション』の子が2人いました。近藤笑菜さんと日高七海さん。どちらの作品も観てほしいです。2015年の『お盆の弟』は大人ばかりでしたが、今回の作品はきゃぴきゃぴの女の子ばかりですね。
監督 中年の男性を描いた『お盆の弟』は、自分のことでもあるので苦しかったですね。今回は違う。
高崎映画祭の志尾総合プロデューサーが「大崎さん、若い女の子の映画合うよ」と言ってくれたんです。「合う」と言われて自信つきましたね。違う視点で言うと、若い女の子とあまり年の差感じないの。自分が話していて。だからやりやすかったです。彼女らの意見を聞くのが好きだし、「一緒にやってる感」がすごくあって楽しかった。映画は年関係ないなって思いました。若い人が出る映画っていうのは、自分の脳をフル回転させなきゃいけないし、いい経験でした。また作りたいです。
―今日は長時間ありがとうございました。

=取材を終えて=
席についたとたんに大崎監督の眼鏡に目が釘付けになり、思わず「面白い眼鏡ですね」と口走ってしまいました(せめて「素敵」と>自分)。赤いフレームで変わったデザインなんです。そこで気を悪くせず、すぐ「イレギュラーですけど」とその経緯を語ってくださる監督、優しい方です。『ゆれる』(2006/西川美和監督)にチンピラ役で出演して、赤いトレーナーに合わせてこの赤いフレームの眼鏡にしたのだとか。「最初からイレギュラー!と」と笑う小雨さん。映画と同じに可愛い方です(役名も同じなので、劇中の役は小雨ちゃん、ご本人は小雨さんと呼んでいます)。取材はそのまま(笑)多く、話に花が咲いて予定時間を大きくオーバーして終わりました。
最後に大崎監督に好きな映画を伺いましたら、間髪入れず『ブルース・ブラザーズ』(1980)と『時計仕掛けのオレンジ』(1981)とお答え。日本映画では、小津監督の名作『晩春』(1949)が大好きとのこと。中でもお気に入りのシーンは、京都の宿で父親(笠智衆)と結婚を控えた娘の紀子(原節子)が布団を並べて話すところ。

「私、お父さんと一緒にいるだけでいいの」
「いや、それは違う。そんなもんじゃぁないさ。これから佐竹くんと新しい人生を作りあげていくんだよ。それが人間生活の歴史の順序というものなんだよ」
情感をにじませて二人のセリフをソラんじる監督。(拍手)
なんだかお得感いっぱいの取材になりました。「娘にこんなセリフを言ってもらえそうですか」とまた余計なことを言うと「僕は映画と結婚したんです」と。花の独身の大崎監督でした。独身を謳歌しつつ、若い男の子がたくさん出るのも、シニア向けのも作ってまた取材させていただきたいです。

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青空色の「未来へ」スペシャルドリンク

☆8月10日夜、クラウドファンディングのリターンのイベント、小雨さんのソロライブに行ってきました。涙の小雨ちゃんではなく、笑顔いっぱいの小雨さんの歌をたっぷり聴いてきました。「未来へ」のMVも無事完成、最後にお披露目されました。
(取材・写真:白石映子)

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