オダギリジョー長編初監督作品『ある船頭の話』完成披露舞台挨拶

クリスが切り取った美しい日本。ぜひ劇場で味わってほしい!
DSCF0778 sendo 420.JPG

左から村上虹郎、柄本明、川島鈴遥、オダギリジョー監督

オダギリジョーが、10年前に書きとめた物語をもとに脚本を書き、これまでの俳優人生の中で培った交友をもとに、豪華なキャストとスタッフを結集。
時代が大きく移ろう中で、「ほんとうに人間らしい生き方とは何か」を問う映画を放ちました。
完成披露試写会が行われ、上映前に出演者と共に登壇。監督オダギリジョーとして、映画への思いを語りました。

2019年8月21日、東京・スペースFS汐留
登壇者:柄本明、川島鈴遥、村上虹郎、オダギリジョー監督
司会:奥浜レイラ

『ある船頭の話』

脚本·監督:オダギリ ジョー
撮影監督:クリストファー·ドイル
衣装デザイン:ワダエミ
音楽:ティグラン・ハマシアン.
出演:柄本明、川島鈴遥、村上虹郎/伊原剛志、浅野忠信、村上淳、蒼井優/笹野高史、草笛光子/細野晴臣、永瀬正敏、橋爪功
aru.jpg

*物語*
のどかな山奥の村。河原の小屋に暮らす渡し舟を営む船頭トイチ。
明治から大正へと時代が移ろい、川の少し上流には橋が出来つつある。これまで町に出るのに渡し舟が頼りだった村の人たちは、完成を楽しみにしている。
そんなある日、川を流されてきた少女が舟にぶつかる。トイチは少女を助け、小屋で一緒に暮らし始める。過去を何も語らない少女だが、孤独だったトイチは癒される。一方で、トイチの人生は大きく狂い始める・・・

2019年/137分/PG12/日本
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://aru-sendou.jp/
(C)2019「ある船頭の話」製作委員会
★2019年9月13日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開


◎舞台挨拶

MCの呼び込みで、4人が拍手に迎えられて登壇

MC:ひとこと挨拶を! まずは主演を務められました柄本さんからお願いします。
DSCF0649 sendo.JPG

柄本明:たくさんのお客様、ありがとうございます。『ある船頭の話』、オダギリジョー監督作品です。内容を言ってもしょうがいないので、ご覧になってお家に帰られて、家族、親戚、知人の方に宣伝いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

DSCF0650 sendo.JPG

川島鈴遥:はじめまして。今日はご来場いただきまして、ほんとうにありがとうございます。ちょうど一年前の今頃撮影していたのですが、撮影に入る前は演じることに精一杯だったので、皆さんの前でご挨拶させていただくことを全く想像していませんでした。今、とても不思議な気持ちでいっぱいです。こうして、素敵な先輩方と一緒に登壇して挨拶できていることが、とても幸せです。今日は楽しんでいってください。

DSCF0667 sendo.JPG

村上虹郎:はじめまして、で、いいんでしょうか?
今日はお集まりいただきましてありがとうございます。源三役をやりました。

DSCF0688 sendo.JPG

オダギリジョー監督:皆さん、どうもありがとうございます。普段は俳優として舞台挨拶に立つことが多いので、今日は監督としてこういう場に立っているので、いつもより何倍も緊張しています。今日は初めて関係者以外の方に観ていただくので、どういう反応があるのか心配でもあります。期待と不安がありますが、今さら直すこともできないので、どんな感想を持たれたとしても、それはそれとして、いい部分だけを周りの方に伝えていただけたらと思います。

DSCF0639 sendo 420.JPG

MC:この後ろの幕にもありますが、映画のポスタービジュアルにあわせて、皆さん、赤と黒の衣装ですね。

柄本:偶然ですか? (と、とぼけた反応に皆で笑って顔を見合わせる)
村上も、「偶然ですか?」と呼応する。 苦笑するオダギリ監督。みごとな赤と黒の衣装!


◆舟を漕ぐのは上手くなったが過酷な現場

MC:上映前ですので、皆さんの楽しみをそがないように気をつけながら作品の内容に触れていきたいと思います。
柄本さんは、村と町を繋ぐ渡しを生業としている男性ですが、夏と冬、厳しい中で身を置く主人公として生きるのも過酷だったと思います。現場ではどのように進められていったのでしょうか?

柄本:過酷なのは映画を観ていただければわかると思いますが、撮影は、ちょうど去年の今頃、7月・8月の40日、1月に10日間ほど冬の撮影。夏の撮影がとにかく過酷でしたね。

MC:映像のロケーションとしては最高の場所でしたね?

柄本:監督の思い通りの場所だと思うのですが、岩場で河原で、朝から晩まで舟を漕いで、大変でしたね。

MC:流れもあって大変だったのでは?

柄本:舟を漕ぐのは上手くなったのですが、川の流れが早くて、ロープをつけて牽引してもらわないと進めなかったですね。
毎日毎日なんでこんなに疲れるのかと思って、あらためて台本を読んだら、ほとんど全シーン出てるんですね。それで疲れたのかと。とにかく暑いし、逃げ場所がないし、テントを張ってそこにいましたけど、大変な撮影でした。

◆柄本の背中に滲み出る悲しみ
MC:川島さんは100名以上の中からオーディションで選ばれたとのことですが、オダギリ組の撮影はいかがでしたか?

川島:
今回、テストというテストをしなくて、ほとんど一発本番。私にとって初めての経験で、違和感はなくて、テストで起こる慣れというものがなくて、いつもいい緊張感で撮影に臨めたなと思いました。

MC:柄本さんとの共演はいかがでしたか?
DSCF0704 sendo.JPG

川島:柄本さんは後姿が印象的でした。あるシーンで背中を見つめていたのですが、寂しさや悲しさが感じられて、あらためてすごい方だなと思いました。

柄本:ありがとうございます! (と、深々とお辞儀)

◆虹郎はムードメーカー
MC:村上さんとは一番年が近いですね。

川島:そうですね。私が控えめなので、話しかけてくれるのですけど、なかなかうまく返事ができなくて・・・

村上:俺の話はつまんない?

川島:そういうわけじゃなくて・・・ 虹郎さんがいる現場は、いつもより明るいような気がしました。現場のムードメーカー的な方です。

村上:誕生日が一緒なんです。最初に会った時にそう話しました。豊臣秀吉も一緒なんです。モナリザが盗まれた日。もういいですね。
DSCF0719 sendo.JPG

MC:村上さんは船頭の友人の役。柄本さんと3度目の共演だそうですね。現場ではいろいろお話されましたか?

村上:今回一番一緒の場面が多かったのですが、控え室では柄本さんといろいろ話しましたけど、現場では過酷すぎて、あんまり何かを喋った記憶がないですね。

柄本:しゃべらないですよ。あんなに暑いんだもん。ほんとに暑いんだもん。

MC:牛を川の中を引っ張る場面がありましたね。

オダギリ:あれはあれで楽しかったですね。

MC:柄本さんにとって、村上さんはやはり孫のようだと思われましたか?

柄本:この映画に出ている村上淳さんがお父さんで、昔、テレビで村上淳のオヤジ役をやったことがあるんですよ。今回の映画、友達のような役。普段からタメ口なんですよ。

村上:そんなことないですよ!

◆豪華なキャストにスタッフは、事務所を通して
MC:オダギリ監督、今回、すごいキャストの方々。映画ファンも胸の高鳴る方たち。どういう風にお声をかけてキャスティングされたのですか?

オダギリ:
いや~ ちゃんと事務所を通したと思います。(会場:笑)
僕自身、俳優をやってるから、同業者の中にも好きな方、嫌いな方がいるのですけど、好きな方に声をかけましたね。

MC:スタッフの方も、撮影監督 クリストファー·ドイルさん、衣装デザイン ワダエミさん、音楽 ティグラン・ハマシアンさんと、海外の方もスタッフとして参加されていますが、どういった経緯で?

オダギリ:事務所を通して・・・(笑) いろいろな経緯があったので、パンフレットを買っていただければ・・・

◆日本の美しさを切り取るクリスの画作り

MC:大事なのはクリストファーさんの存在?

オダギリ:
クリストファーさん!(笑) 素晴らしい撮影監督だとは思っていたのですが、クリスは風景の切り取り方が独特で、僕らが気付かないような日本の美しさをしっかりカメラに収めてくれました。画だけみると、日本映画らしからぬ、日本なのに日本じゃないようなのがクリスの画なのかなと。

MC:以前にクリスさんの映画に出て、撮り方に刺激を受けられたとか・・・

オダギリ:
あ~(『宵闇真珠』を思い出した様子)  川島さんが言っていたテストをしないのは、クリスがそういうタイプなんです。余計なことをしないで、どんどんカメラを回したがる。本人が待てない。そのスタイルがそのまま来てるんですね。テストを重ねると慣れてしまうからテストしない。カメラの動きが合わなければもう一度やればいいだけの話だから、いいっかと。

MC:ワダエミさんの衣装が国や年代を特定しないものでしたね。

オダギリ:
ワダエミさんは大変な方。日本の宝のような方。家にある貴重な生地をこの作品のために使ってくださいました。お金にならない仕事を一生懸命やってくださって感謝しています。
DSCF0700 sendo.JPG

MC:印象に残る赤い衣装でしたが、着心地はいかがでしたか?

オダギリ:
着心地・・・(笑)

川島:夏冬(見た目は)同じなのですが、夏のままだと冬は寒いからと工夫してくださいました。

◆ヴェネチア正式出品! 作家性を重視する部門に選ばれたことが嬉しい
MC:第76回ヴェネチア国際映画祭のヴェニス・デイズ部門に正式出品が決定しましたね。お気持ちをお聞かせください。

オダギリ:身が引き締まりますね。自分も俳優として何度か参加させていただいた映画祭でもありますし、イタリアの監督協会が選んでくれている部門で、それがまず嬉しいですね。商業性やエンターテインメント性ではなくて、作家性を重視する部門なので。日本では俳優オダギリジョーというフィルターがとかくつけられるじゃないですか。それがない形で評価してもらえたことが本当に嬉しいですへ

柄本:大変に光栄なことと思っております。
2度目のヴェネチア参加なのですけれど、オダギリジョー監督の作品ということで、日本人の何かがあちらの方にどういう風に伝わるのかが大変楽しみです。

MC:テーマが海外の方にも同じように感じてもらえるものかなと思いました。

★フォトセッション

DSCF0799 sendo 420.JPG

最後の10秒は、一般のお客様にも撮影許可が出ました。

◆劇場でないと良さが伝わらない!
MC:観客の皆さんに向けて、最後にひとことずつお願いします。

村上:僕も大好きな俳優の方たちがいっぱい出ていますし、柄本先生がこんなにも長く出演している映画、どうぞ楽しんでください。

川島:素晴らしいキャストとスタッフ。この作品に関わった人たちの思いが皆さんに伝わればいいなと思います。

柄本:今の映画からは逆行したような作品だと思います。でも普遍的な大きな問題の映画だと思います。そしておとぎ話のような作品です。なかなか正直こういう映画はヒットしにくいと思いますので、皆さんのお力を借りて、なんとか宣伝していただければ幸いです。よろしくお願いします。
DSCF0735 sendo.JPG

オダギリ:柄本さんがおっしゃってくださったのですが、なかなか挑戦的なことをやっていて、今の日本映画を観慣れている方には観づらい映画なのかもしれません。ただ、それに挑戦したかったのが正直なところでした。それを面白がってくださればといいなと。映画にはいろいろなタイプがあるべきだと思うし、今の主流がすべてではないと思うので、どう捉えていただくかは自由ですけど、がんばって観ていただければいいなと。
あともう一つ、この劇場で音のチェックをしていたのですが、画面もこの大きさで観やすいようにに画作りをしていますし、音の配置も細かくやっていますので、これを家でDVDで観てもまったく伝わりかたが違うんです。特に、ど真ん中で観ていただくとよく伝わるんです。劇場で観ないとまったくよさが伝わりません。DVDやタブレットで観ようとかは考えないほうがいいです。以上です!


この記事へのコメント