『カーマイン・ストリート・ギター』公開記念 高田漣、カーマイン・ストリート・ギターから直輸入のギターを弾く
ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジにある、手作りのギターショップを描いた映画『カーマイン・ストリート・ギター』が、8月10日㈯より公開されている。その公開に先駆けて、同店の職人リック・ケリーが制作したギターが直輸入され、その音色を聴く試奏会が開催された。演奏者はギタリストの高田漣さん。
日時 :2019年 8月5日(月)
会場 :御茶ノ水 Rittor Base
試奏者:高田漣 (ギタリスト)
ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを手作りする「カーマイン・ストリート・ギター」の職人リック・ケリー。彼が古い木の板を使って作るギターは世界で一つしかないギター。伝説のギタリストたちを虜にしている。ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら、フォーク、ロック界の大御所がリックのギターを愛用。劇中でも有名なギタリストが来店し、リックが作ったギターを手に演奏に熱中する姿が映し出される。
古い木材のほうがギターの響きがいいということを発見したリックは、廃材があると聞くと引き取りに行き、ギターとして復活させる。こうして長年愛されてきた街の歴史がギターの中に生き続ける。
この店では、ほかに見習いのシンディ・ヒュレッジとリックの母親が働いている。シンディは、大工だった父親の影響で物作りに興味を抱き、アートスクールに通ってからこの店に入った。細かい作業が得意でウッドバーニングやペイティングを施したギター、ストラップも作っている。
そんなギターが直輸入され、試奏会が行われた。リックが作ったギターを試奏したのは高田漣さん。なぜ漣さんと思ったら、細野晴臣のニューヨーク公演に同行した際、このカーマイン・ストリート・ギター」を訪れたという。漣さんの語りとギターの演奏をしばし楽しませてもらいました。
店の様子は映画で出てきた感じそのもので、リックは作業を止めて、ひとつひとつ丁寧に説明してくれたという。仕事が滞ってしまうのではないかと心配になるくらいと語っていた。工房の壁という壁に、もらってきた木材が積み上げられていて圧巻でした。その風景だけでも一見の価値ありと、材木のあまりの量に驚いていた。
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さらに驚いたのはリックが持つ工具の数。ギター職人が持つ工具の量じゃなかった。彫刻家とか芸術家の作業場を見ているような雰囲気だったそう。ただ雑然と工具が置いてあるように見えたけど、必要な工具がどこにあるかはリックだけがわかるのでしょう。
劇中に登場するギタリストたちを魅了している理由は「リックの心意気や姿勢に共感し、彼らは楽器を買うと同時に、その心意気をかっているのだろうと語った。30分以上はいたけど試奏は出来なかったので。今回、試奏したいという念願がかないましたと言っていた。
ギターを持ち、最初に出た言葉は「ネックがものすごく太い! 今まで触ったギターの中で一番太いネックかも」と言い、しきりにネックを触っていた。「細いネックに慣れた人は驚くかも知れないけれど、ネックが太い分、手が疲れないのでは」と言っていた。そして、重さが先端(ネック)にある方が音に重みが生まれて、鳴りがいいのでは」と語った。しかし、手が小さい人は扱いにくいかも。他の「カーマイン・ストリート・ギター」制作のギターもみんなそうなのだろうか?と、思わず思ってしまった手の小さな私。試奏後、司会者から「このギター欲しいですか?」と聞かれ、「欲しいです」と即答していた。「オーダーメイドのギターは値段があってないようなもの。欲しくなったら困ると思い、店では値段を聞かなかったと言っていたけど、このギターの値段を聞き、思ったより高くはないですねと語り、そのくらいなら買えばよかったと残念がっていた。「このギターは作り手の愛情が感じられ、リックの佇まいが出ているように思います」と、ギターへの思いを語り試奏は終了した。
音響の良い会場だった。試奏会のあと、「このギターを弾いてみたい方、触ってみたい方はどうぞ」と案内があり、参加者たちが次々とギター演奏していた。たぶんそうそうたるギタリストたちが来ていたのかも。私も手にとってみようと思ったけど、皆さんとても上手で、私など、とてもギターのそばには寄れなかった。
それにしても、古い木材のほうが良い音が出るというのが、この映画を観た発見だった。家にあるギターは、50年くらい前に買って10年以上ほったらかしにしているけど、意外にきれいな音が出るのかもしれないなどと思った。取材 宮崎暁美
8月10日(土)より新宿シネマカリテ、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!公開中
監督・製作:ロン・マン
扇動者:ジム・ジャームッシュ
編集:ロバート・ケネディ
出演:リック・ケリー、シンディ・ヒュレッジ、ドロシー・ケリー
ジム・ジャームッシュ(スクワール)、ネルス・クライン(ウィルコ)、カーク・ダグラス(ザ・ルーツ)、ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン(ボブ・ディラン・バンド)他
音楽:ザ・セイディーズ
高田漣さんのエピソード
私は高田漣さんの父の高田渡さん同じアパートに住んでいた。高校時代にフォークソングに目覚め、初めて買ったのが高田渡さんのレコードだった。ライブに行ったこともある。三鷹に長年住んでいたけど、街を歩いていると時々高田渡さんに会うので、この辺に住んでいるのかなと思っていたけど、あるとき引越ししたら、そのアパートに渡さんは住んでいた。めったに会わかなかったけど、会えば挨拶はしていた。また漣さんのお母さんも知り合いだったけど、その頃はすでに別々に暮らしていたので漣さんに会うことはなかった。
漣さんのことは、渡さんのバックで演奏もしていたので、ギタリストとして活躍しているとは知ってはいたけど、CDなどは買ったことがなかった。私は中島みゆきさんのファンで、数年前、彼女の新しいCDが出たので、東京駅中にあるタワーレコードに買いに行った。彼女のCDをみつけ、他にも何かCDをと思ったら、偶然目に入ったのが高田漣さんの「コーヒーブルース~高田渡を歌う~」というCD。
これは父親の渡さんが歌っていた歌をカバーをしたもの。こんなCD出したんだと思って、これも買うことにした。さらに、中島みゆきのコーナーで「歌縁」(うたえにし)というアルバムをみつけ、これも買った。これは中島みゆきをリスペクトする歌手たちが一同に会して中島みゆきの歌を歌ったコンサートのCDだった。この日、この3枚のCDを買ったのだけど、なんと、この「歌縁」の音楽監督は高田漣さんだった。なんという偶然と思った。そして漣さんの意外な仕事を知り、嬉しかった。
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