毎熊克哉さんプロフィール
1987年3月28日生まれ、広島県出身。小路紘史監督作『ケンとカズ』に主演し、第71回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞、おおさかシネマフェスティバル2017 新人男優賞、第31回高崎映画祭 最優秀新進男優賞を受賞。その後、吉永小百合主演映画『北の桜守』や『万引き家族』などに出演。
『いざなぎ暮れた。』作品紹介はこちらです。
(C)2018 「いざなぎ暮れた。」製作委員会
★2020年3月20日(金)よりテアトル新宿にて公開
―以前『ケンとカズ』(2016)の試写の後、カトウシンスケさんと並んで送り出して下さってびっくりしたことがありました。映画もとても印象深くて、それ以来ずっと出演作を観ています。
ありがとうございます。
―『ケンとカズ』はやっぱり大きかったですね。節目になりましたね。
そうですね。それまでは映画に出たとしても、そんなに印象に残るような役というのはまず皆無な状態でしたから。あれは映画学校の友達(小路紘史監督)と撮った映画なので、転機になって良かったです。
―その後の快進撃たるや!フィルモグラフィーには、映画だけで2017年3本、2018年は13本、テレビや舞台もありますね。こんな風に変わってきていかがですか?
仕事で任せてもらえる役割は、大きくなればなるほど大変だなぁと思うんですが、自分の身の回りの友達とかはそんなに変わっていなくて。そういう意味では変わってないです。
―道を歩いていて「きゃ~!」とか言われませんか?
それが言われないんですよ。全く。
―今佐藤健さんとテレビに出ていらして(TBS「恋はつづくよどこまでも」)。これからですよ、「きゃ~!」は。
テレビは見ている人多いですね。でもあんまり言われたくないんですよ(笑)。
―大きくて目立つから気づかれそうですが。
テレビに出ている人が横を歩いていたとしても、気づかれないですよ。普通に歩いているんですけど。
―役柄と素が違うからでしょうか。こう見ていても、役のノボルと今の雰囲気は全然違います。
この映画は島根で先行上映されましたね。あちらでの評判は?
上映後に舞台挨拶がありました。地元の人たちや親戚の人たちが来たような感じでした。東京の映画館でやったときとは全然違う、ローカルな感じでした。おじちゃんやおばちゃんが「頑張って~!」「応援しとるよ~!」みたいな(笑)。僕は広島出身なんですが、地元のような温かさでした。
―忘れないうちにお聞きしたいんですが、電話でノボルにいろいろ指示していたのは誰でしょう?
あれは…(マネージャーさんへ)言っていいんですか?(マネージャーさん:公言しないほうがいいというか、観る前に先入観を持たないほうがいいです)言ったらすぐに笑いが起きちゃうかな…? 観ていただいて誰の声か当てていただけたら嬉しいです。
―では誰なのかお楽しみということにします。東京の後の公開は決まりましたか?
まだなんです。でもこの映画は「持っている」というか、全然想像もしなかった発展をしているので、あわよくばもうちょっと上映館が増えたらいいなと思っています。
―ウィルスが恨めしいですね。この時期に。
今日(3月5日)もほんとはテアトル新宿で、一般のお客様もいる盛大なイベントがある予定だったんですが中止になりました。公開は20日ですが、収束することを祈っています。
―微力ですが、応援させていただきます。
ノボルは新宿の元ナンバーワンホストで、今はピンチだけど経営者ですね。これまではその手前の人、まだ登れてない人の役が多かった気がします。
全部が初めてといえば初めての役ですけど、ノボルはビジュアルがインパクトあります(笑)。でも裏社会の人間ではないんです。誰もが思うことですけど「男として成り上がりたい」、けれども何かが足を引っ張っているんです。
―ノボルには何が足りないと思いますか?
目先のことしか見えていない。彼もほんとの意味で成り上がりたいのに、目先のことしか見えていないから、いろんなことがうまくいかなくなる。もっと豊かな成り上がり方があるはずなのに、ここでトップになったとか、わかりやすいことでしか評価できていない。だからちょっと寂しい男です。
―まあ、新宿でお店も持っただけでもちょっとエライかなと。
エライんですけどね、もうちょっとこう幅広く考えれば、男としてはもっと上はあるんじゃないかと思います。
―毎熊さん自身のこれからは?
「新宿のホストクラブでナンバーワンになった!」と言うことって、「映画祭で主演俳優賞とった!」っていうのと似ている気がするんです。例えばですけど。もっと先があるだろうと思う。豊かに純粋にとは思います。
―以前からダンスをしてらっしゃいますよね。どの作品にもそんな場面はないですが、毎熊さんのダンスは観られないのでしょうか。
踊っているシーンはないですが、”ダンスから学んだことは役に生きている”と思いますね。踊りの先生たちに「エロい踊りをしなさい」つまり、色気を大事にしなさいと言われました。指をさす、目線を向ける、というシンプルな踊りの中身を埋めなさいって。それは役者としても同じことですし、色気とは何ぞや、っていつも思っています。ですので、どんな役にも色気をもつことは意識していますね。いろんな種類があると思うんですけど。
―この人を見ていたい、と思うときがありますね。
見ていたい=目に留まる。ガチャガチャしてなくても座っているだけで、そこに“存在している”人っているじゃないですか。それってやっぱり究極だなと思って。そういうものは目指したいです。
―俳優さんには「目がひきつけられる吸引力」必須ですね。
はい、僕もそう思います。
―先日遡ってちょっと前の映画『夜明けまで離さない』(2018)を観たら、高倉健さんみたいに全然喋らないヒットマンの役でした。ノボルはこの対極で、ずっと喋っていますね。これまでで一番台詞が多かったんじゃないでしょうか?
ああ、喋っていましたね。自分の中で一番多かったのは、去年寅さんのお父さん役(2019年NHK「少年寅次郎」)を演じさせていただき、結構喋りました。喋れば喋るほどしょうもなさが出る、という感じの(笑)。このノボルも喋っていることが全部薄っぺらい(笑)。
―とにかくノリコへ言いわけして、嘘が重なっていくんですけど、やりとりが自然で面白かったです。脚本どおりですか?
脚本どおりなんですけど、スタッフもかなり少なくて、冒頭とラストの車の中でのシーンはカメラだけ設置して、「用意、はい」って急に台詞が始まってずっと二人だけでした。その感じが自然に出てるんじゃないかな。
―テイク少なく、どんどん撮っていった?
少ないです。武田梨奈さんとの共演だからこそ、一発本番シーンもうまくいったんだと思います。息が合ってとても助けられました。
―武田さんとはこれが初共演ですか?
えっと2回目です。前はテレビの「ヘヤチョウ」(2017/EXテレビ)、武田さんはがっつり刑事役で、僕は犯人と間違えられる役でした(笑)。それで初めてお会いしました。台詞のやり取りは全くなかったですけど。
―この映画のタイトル、前は違いましたね?
何回も変わっているんです。車も変わって、今はダッジですけど。その車の名前が入っていたり。(マネージャーさん:3回くらい変わっています)『いざなぎサンセット』『渚のダッジ』とか(笑)。『いざなぎ暮れた。』がベストなタイトルだと素直に思います。
―もともとはショートバージョンを撮る予定だったそうですが。
ショートバージョンを撮ったつもりが長かった、というノリなんですよ(笑)。15分の作品を3日で撮るならけっこう贅沢に撮れるんです。そこに全てをパンパンに入れて、ぎりぎりまで撮って84分。劇場にかけられる長さになりました。
―海に入るシーンがありましたね。すごく寒そうでしたが、いつの撮影でしたか?
去年の2月です。無茶苦茶寒いんです。とにかく寒かったです。神事は12月3日だったので、地元美保関の方々のご協力で、撮影のときに再現していただけたんです。時間が少ないのに、天候が不安定で大変でした。普通は雨のシーンの次に晴れていたら、繋がりがおかしいじゃないですか。でもこの町では変じゃないんです。逆にそういう(神様に近い)場所なので、それはいいかって(笑)。
―まあ、お疲れ様です。神事に会うと霊験あらたかで無病息災だそうですから、再現でもこれからも大丈夫かも。
そうですね(笑)。
―ノボルは車マニアでしたけれど、毎熊さんは?
僕は車まったくわからないです。
―私もわからなくて、ダッジ・チャレンジャーを検索しました。あの説明を覚えるのは大変じゃなかったですか?
あれもいろいろ変わったんです。やる直前に「車変わったの聞いてます?」「いえ聞いてません」って(笑)。
―なんでもできそうな毎熊さんですが、これは苦手ということはありますか?
モノ、道具を使った球技ですかね。ゴルフ、野球、テニス…とか。
―チームプレーはOKですか?
あんまり向いてないと思います。「あ、どうぞどうぞ」って感じになっちゃうんで(笑)。サッカーも「俺が俺が」の集まりで、そうじゃないとたぶん勝てないんだと思いますが。
格闘技とかは1:1だからまだいいんですけど。
―喧嘩も?
喧嘩はしないです(笑)。役では喧嘩をするとか殴るとかありますが
―そういう役も、これから自分で手を出さなくていい、命令するほうにだんだん変わっていきそうです。
ダンスのシーンがある映画、ミュージカルもですが、特に時代劇に出てくださるのを楽しみにしています。似合いますよ、きっと。
ありがとうございます。一つ一つ様々な役にチャレンジしたいです。
―ぜひ。今日はありがとうございました。
(まとめ・写真 白石映子)
★武田梨奈さんインタビューはこちらです。
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