『誰がために憲法はある』井上淳一監督インタビュー(2019/4/9)

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<プロフィール>
1965年愛知県生まれ。早稲田大学卒。大学在学中より若松孝二監督に師事し、若松プロダクションにて助監督を勤める。1990年『パンツの穴・ムケそでムケないイチゴたち』で監督デビュー。その後、荒井晴彦氏に師事し、脚本家に。2013年『戦争と一人の女』で監督再デビュー。数多くの海外映画祭に招待される。2016年、福島の農家の男性を追った『大地を受け継ぐ』を監督。2018年、若松組の青春を描いた『止められるか、俺たちを』が脚本最新作。

作品紹介はこちら
2019年/日本/カラー/69分/DCP
配給:太秦
(C)「誰がために憲法はある」製作運動体
公式サイト http://www.tagatame-kenpou.com/

届かない人へ届けたい
最初は自民党の「憲法改正草案」を映画化して、自民党に投票する人に知ってもらおうと思ったんです。「こんなに酷いですけど、いいんですか?」と。そんなときに、「憲法くん」の絵本に出会いました。これがすごいのは、“憲法を擬人化していること”。これはたぶん世界中でヒロさんだけだと思うんですよ。『止められるか、俺たちを』の中で「我々の映画は、届く人にしか届かない」と言わせています。ヒロさんは子供にもわかる形で、それを“届かない人にも届く”ように作っています。僕はものすごくグッときたんです。それで、憲法の映画を作るならこっちだろうと。これを“戦争を知っている役者さん”にやってもらったら、より広がるんじゃないかと。

ご縁がつながって
そこで渡辺美佐子さんにお願いしようとプロフィールを見たら、なんとうちの母と全く同じ誕生日だったんです。そのときはちょうど母が「あと半年」と余命宣告をされたばっかりでした。運命論者じゃないんですけど、非常に運命的なものを感じました。
去年の6月まず「憲法くん」を撮影しました。撮影中に美佐子さんと“龍男くん”の話と“次の年で終わる朗読劇”のことを聞いて、それはやるしかない!しかも、4日後から稽古が始まるという。もう勢いで撮りました。どの映画もいろいろな繋がりでできていくのですが、ここまで強かったのは初めてです。

母のところに通いながら、こっちでは美佐子さんを撮っている、という行き来を母が亡くなる8月までしていました。だからなんだか不思議なものがありましたね。美佐子さんには失礼かもしれないのですが、もう一人の元気な母親を撮っている気になっていました。

なかったことにしない
こうやって残していかないと、全部なかったことになっちゃうんですよね。どれだけ反対してもアホな法案が通ってしまうし、今結構「何をやっても変わらない」って思っている人は多いです。この映画が、それでも諦めずに続けている人たちがいるという、希望の光になればいい。諦めずに同じ歌を歌い続ける。諦めたら負けじゃないですか。相手の思うツボなんです。そういうことを映画にしてこの時代を走りたいとずっと思っています。

はじめの一歩
この作品は憲法の超入門編、びっくりするくらい直球です。この映画が憲法を考える「はじめの一歩」になれば嬉しいです。
若い頃、僕も憲法は“国民が国を縛るもの”だと知らなかった。そうなんです。だからまずはそこからでいいんじゃないですか。
みなさんもそうだと思うんですけれども、知ったことはちゃんと伝えていかなきゃいけない、ということです。これがウィルスのように拡がって、世の中がこれ以上悪くならないでほしいというのが僕たちの思いなので。
(写真:宮崎暁美 まとめ:白石映子)
★本誌102号(2019年 春)より転載

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