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〈プロフィール〉
日本エレキテル連合
2008年に日本エレキテル連合としてデビュー。見るものにトラウマを与える狂気のキャラクターコントで、多くのファンを抱えるコンビ。2015年には“ダメよ〜ダメダメ!”で新語・流行語大賞の年間大賞を受賞。
橋本小雪
1984年生まれ。兵庫県出身。橋本は女優としても活動中「忘れてしまう前に想い出してほしい」(2017 RKB毎日放送)「私のおじさん」(2019 テレビ朝日)「ひみつ×戦士 ファントミラージュ!」(2019 テレビ東京)ほか、多数出演
中野聡子
1983年生まれ。愛媛県出身。ネタ製作担当。特技は日本画、趣味は小道具製作。
Youtubeチャンネル「日本エレキテル連合の感電パラレル

橋本小雪insta https://www.instagram.com/elekitel_kokiyu/?hl=ja
Twitter https://twitter.com/elekitel_denki?lang=ja
★『実りゆく』10月3日(金)より長野県先行公開、10月9日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
ⓒ 「実りゆく」製作委員会

八木順一朗監督インタビューはこちら(リンク)
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/477196893.html
竹内一希さん・田中永真さん(まんじゅう大帝国)インタビューはこちら(リンク)
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/477481025.html


―日本エレキテル連合さんの動画をたくさん見せていただきました。まだ観切れていないんですけど、どれもとても面白くて癖になりました。

中野 嬉しいー。ほんとですか。
橋本 ありがとうございます。

―そのままショートショートになってるんですよね。コメディ映画祭などに出してほしかったです。

中野 映画に携わっている方にそういっていただけると光栄です。(映画紹介書いているだけです 汗)

―ほんとにそうなんです。あ、今日は俳優さんとしての話を伺うんでした。

中野・橋本 はい。

―お二人は長編になってからの登場ですね。最初に脚本を読まれた感想をお聞かせください。
夢を諦めて東京から故郷に戻った朱美役の橋本小雪さんから。


橋本 芸人の気持ちをわかっているマネージャーだからこそ書ける、面白い、そして感動できる作品だと思いました。私の役は、自分にないことをしなくちゃいけないなと思いました。色気であったり、ちょっとこうきつく言ったりとか、そういった性格だろうと。自分とは違うので大変かもしれないけれど、キーパーソンだと思いました。

―モテ役でしたね。

橋本 そうなんです、すごく。自分とは真逆ですけれども、そういう役ができたのはいいなと。

―朱美ちゃんの勤めるお店のママさん役だった中野聡子さんは?

中野 まず脚本を読んだときは“実る”だなと思いました。全体を通して―芸人さんもだしりんごもだし、監督自身もこれが初めての作品で、全部が実るーほんとにそのままだなぁと。橋本さんもものすごく自分にない役どころということで、苦悩して実らせていただいてピッタリのテーマでした。
私の役はー私だけ申し訳ないけれど、自由に好きにやらせていただいて(笑)。もうちょっと抑えた感じの台本だったんですけど、監督の意向を無視して「ちょっとやってやろう!」と、思いっきりやったら採用してくださって。楽しくやらせてもらいました。朱美ちゃんとは違って、自分に近いものがありましたので、やりやすかったです。

―普通のメイクのお二人を見るのが初めてでしたので、試写室で「ダメよ~、ダメダメ」の台詞でどっと笑いが起こるまでわかりませんでした。中野さんがママさん役だったのも後からわかりました。てっきり女優さんだと思っていたんです。

中野 それは最高の褒め言葉です。
橋本 嬉しい~。
橋本・中野 ありがとうございます!

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朱美ちゃん

―マネージャーさんが監督になって、どんな感じでしたか?

中野 もともと映画が好き、というのは知っていたんです。私たちのライブ映像なんかも撮ってくれていましたし。でもこんなに本格的な映画で、ちゃんと監督をやっていてその“肝(きも)”がすごいと思いました。たくさんのベテランのスタッフさんの、職人さん風のちょっと怖そうな方々に囲まれても動じなくて、その肝のすわり方にびっくりしました。
橋本 マネージャーが監督をするなんて初めてなんです。見た目もヒョロヒョロで(笑)。
中野 “ヒョロ吉”と呼ばれているんです。
橋本 そう、あだ名が“ヒョロ吉”(笑)。どっちかというと優しくて、ゴリゴリ押したりしない。手も出さないタイプで。優男だし、大丈夫かなぁと思ってたんです。もう始まったら、「これはどうですかね?」「これはこうしてください!」「はいOK!」って。”監督降臨!”でした。そのときはヒョロっとしてなくて、ビシッとしてカッコよかったですよ。ほんとに。

―八木監督が聞いたら喜ばれますよー。
エレキテルさんは「コスプレとメイクと小道具」で役に入っていく、と知りました。ゲームの主人公がいろいろな装備とアイテムで強くなっていくのと似ていると思いました。

中野・橋本 ああ~!
中野 それ、初めて言われました。その表現使ってもいいですか?(笑)

―どうぞ~。ロールプレイングしかできないんですけど、ゲーム好きなので(笑)。

橋本 ドラクエとか。
中野 私たちは何かを装備して、とにかく見た目で説明しちゃう。エフェクトかけまくってやっているので、映画はそれを一切取っ払った感じだったので、今回ほんっとに苦労しました。

―何かやりたくなる?

中野 やりたくなるんです。鼻毛描きたい!(笑)
橋本 アゴ出したい!(笑)

―自然に女優さんでしたよ。だって気が付かなかったですもん。

橋本 よかったです。

―これからも映画のお話があったらまた出られますか?

中野 そんなに素敵なことはそうはないと思いますけど(笑)。役者さんってすごい。何でもない普通の人も演じられるし、トリッキーな役も、通行人Aもできる。どんなにオーラがあっても消せる力があるんです。私たちにはそれがほんとにないんだなと痛感して「勉強して来たいな」と思って。(橋本さんへ)役者さんってすごいよね。
橋本 ほんとに。
中野 私たちは出ちゃうものね。自分たちの我(が)が。
橋本 うん。我が出ちゃうし、何かその「変なこと言いたい」とかあるし(笑)。

―サービス精神があるからじゃないですか?

橋本 あと照れくささがどこかにあるから、私たちもちょっとボケたりしたくなる。

―盛りたくなるっていうか?

橋本 そう、そうです。
中野 それをすることによって、きっと今回は邪魔をしてしまうんじゃないかと思ったので、それをどう消していくかという…
橋本 もうそれとの闘いでしたが、本番はそういうのを取っ払ってやれたので良かったです。

―機会があったらまたぜひ出てくださいね。

橋本・中野 はい、是非!

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ママさん

―YouTubeのお二人を遡って見てきたんですが、最初は7年くらい前ですね。早くから発信していて先見の明があると思いました。あの中でしかできないことってやっぱりありますね。

中野 舞台によっても違いがあるんですけど、かといってテレビコントも選ばれた一部の方たちしかできませんし、だったら自分たちで媒体を作ろうと。編集もできるし、ちょっとしたショートフィルムもできます。

―あのYouTubeに出すものって一旦事務所に見せないといけないものですか?

中野 一応コンプライアンス的なこととか、言ってはいけないこととか、そういうのはマネージャーに見てもらいます。自分たちも気をつけているので、だいたいOKが出ます。

―始めたころは「毎日あげてま~す」と。

中野 最初のうちはほんとに毎日アップしていましたが、さすがに大変になって減らしました。

―朱美ちゃんシリーズが目立ちましたが、たくさんのキャラがありました。でもテレビには出しにくいのもありますね。

中野 テレビはみんなが安心して見たいものですが、私たちはどうしても「毒」とか「哀愁」とかが好きなんです。みんなが楽しく笑えないこともあったりします。

―作るときは、自分たちとカメラさんだけですか?

橋本 今はもう二人だけで作っています。

―目の前にお客様がいなくてもノリは大丈夫ですか?

中野 私たちテレビコントで育ったので「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」(加藤茶と志村けんの冠番組)とか。しかも、私たちの舞台って、笑うツボがみな違うんです。みんながどっと笑うのでなく、ポイントポイントで笑う人が違うので、動画作品に出して笑っていただけたほうがいいなと。だから動画の方が合ってたりする…
橋本 うん。合う。
中野 好きなところ見つけてください。
橋本 それぞれが楽しんでください、と。

―自分たちが全く違う人になって、発信するのがお好きなんですねぇ。クリエイターですね。

中野 私はずっと裏方志望で。 

―お二人仲良く長く続けている秘訣はなんでしょうか?

橋本 秘訣…やりたいことがあってそれを二人でやってきた、ってことだけ。
中野 面白いと思うポイントが一緒で、それがハマったんだと思います。
橋本 一緒に作っていくと自ずと仲良くなっていくんじゃないかな。

―すごくいい出会いをなさったんですね。出逢いといえば中野さんご結婚おめでとうございます。

中野 はい、この映画のモデルの松尾さんと結婚して、3回しか会っていません(笑)。籍を入れただけで、これから仲良くなっていこうかな、と(笑)。

―それもまたいいですね。ネタになるんですか?

中野 ネタに(笑)。勝手になっちゃってますね。
橋本 人生が面白くなるんじゃないかと思って、交際ゼロ日で結婚した。
中野 基準が「面白いか、面白くないか」。「面白いな」と思って。好きとかより。(笑)

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―みなさんに「大切にしていること」を伺っています。お仕事でも人生でも。
変わらずに大切にしていることがあれば。

橋本 真面目に答えていいんですか? 一言ですか?

―真面目にどうぞ。一言でも長くてもいいですよ。

橋本 大切にしていること。ええと、う~~んと。ちょっと待ってください。

―待ってます(笑)。

橋本 ええと、う~んと、待ってください(笑)。

―はい。それも書いときます(笑)

橋本 私はとても、“人よりできない”んです。それで人より千倍の努力をしないといけない、と頭に置いておくこと。「努力すること!」です。
中野 私は「ひとさまにお金をいただいて提供するからには、いただいた以上のものを出す」ということを大切にしています。自分なりの精一杯で、まだまだですけれども、「今できることの精一杯を提供する」。

―そのために心がけていること、努力していることがありますか?

中野 そのために努力しているのは…「一日サボれば自分にバレる。二日サボれば師にバレる。三日サボればお客様にバレる」芸人3箇条です。

―好きな映画があったら教えてください。子どものころからでも、最近でも。

橋本 『裸の銃(ガン)を持つ男』(1988年/アメリカ)というコメディ、この映画が好きです。
中野 たくさんあるんですけれども…北野武監督の『HANA-BI』(1988年)が大好きです。あの映画はどこを一時停止しても、切り取って額に入れて飾れる絵になるんです。どのシーンも美しいので。絵が美しい映画が大好きです。

―日本画をされていたんでしたね。

中野 ほんのちょっとかじりました。

―お二人とも絵がお上手ですよね。

中野 こちら(橋本)はマンガが。私は写実的なほうで。

―いいですねえ。いろんな方面に才能があって。

中野 おしゃべりっていう…芸人に一番必要なおしゃべりが一番下手かも。
橋本(笑)

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―自粛中はどうなさっていましたか? YouTube撮り?

中野 YouTubeと、単独公演(9月18~20日)があるので、それを毎日。こういう状況なのでどうなるかわからないですが。
橋本 ネタ作りと、構成を考えたり。出て行けないときは電話で、撮影もどうにかリモートでできないか、と考えたり。でも会って練習しないと“やった感”がないです。

―これからの目標は何でしょう?

中野 二人に共通しているのは「長編のコメディ作品を作りたい」というのが目標です。ライブがだいたい4分くらいなので。
橋本 ネタがね。
中野 70分くらいのを撮りたいなぁというのが、今の近い目標です。
お笑いを観に行くとだいたい90分くらいで集中力が途切れるんです。ちょうどいいのが70分くらいかなぁと。「あ、もうちょっと見たいな」というところで終わる。90分が好きなんですけど。

―映画でも90分の作品は多いです。中編が50分くらいかな?でも値段の付け方が難しいようです。

橋本 じゃあ長編にしよう(笑)。
中野 いろんな人の目に触れるコメディの長編で。内容は固まっていないんですが、私が完全に裏方に回って橋本さんをとにかく生かしたものを作りたいです。

―ひとり芝居ですか?

中野 何役もできるので。

―あ、撮影するならいくらでもできますね。それ楽しそう! 

橋本 そうですね(笑)。

―最後に中野さんも出るとか?

橋本 ちらっと(笑)。
中野 遅刻したり(笑)。

―でき上がったら教えてくださいね。取材に来ます。
今日はありがとうございました。


=取材を終えて=
日本エレキテル連合さんの動画をまとめて見て、そのフィールドの広さ、キャラの多様さに驚きました。未亡人朱美ちゃんシリーズが爆発的な人気になりましたが、あれはかなり大人向けです。ほかに大阪の二人、ケンちゃんクミちゃんや、教祖と信者や、可愛いぱにぽよちゃんと変な凸とか、た~くさんのキャラがあります。まだ観終わっていません。
それぞれの特徴を捕まえるのがすごく上手で、キャラが立っています。きっといつもよく人間観察されているのでしょう。中野さんのアンテナの張り具合と感度の良さ、それに対応できる橋本さん、とてもいいコンビです。初めてお目にかかったら、あのテンションの高さと全く違う、控え目で真面目なお二人。“盛りメイク”(笑)をとると、こんなに可愛くて素敵な女性たちです。
初めての映画出演でたくさん得ることがあったようすです。目標の長編を作り終えたら、またお目にかかりたいものです。その前にライブに行かなくては!(取材・写真 白石映子)