『本気のしるし 劇場版』初日舞台挨拶 

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http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/477615990.html
2020年製作/232分/G/日本
配給:ラビットハウス
(C)星里もちる・小学館/メ~テレ
公式HP  https://www.nagoyatv.com/honki/
★2020年10月9日(金)より全国順次公開

10月9日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷
3時間52分の本編上映後森崎ウィンさん、土村芳さん、深田晃司監督が拍手に迎えられて登壇しました。客席との間に飛沫防止シートがあるので、ゲストはマスクをせずにご挨拶。(MC:小沢まゆ)


森崎 辻一路役を演じさせていただきました森崎ウィンです。本日は足元の悪い中お越しくださってまことにありがとうございます。みなさまのお陰でカンヌ映画祭のオフィシャルセレクション2020に選ばれたこの作品、ご覧になっていかがだったでしょうか?(拍手)よろしくお願いします。(拍手)
土村 葉山浮世役を演じさせていただきました土村芳(つちむらかほ)です。ドラマとして始まったこの作品が映画としてまた新しい姿で、こうしてみなさんにお届けすることができて、すごく嬉しく思います。本日はよろしくお願いします。(拍手)
監督 本日は4時間、長い時間をご覧いただきましてありがとうございます。そろそろお尻も疲れてきているんじゃないかと思いますが、もうちょっとお付き合いください。この作品は20年前に初めて漫画を読んで、映像化したいと願ってからほんとに20年かけて。願いは叶うものなんだなと実感しています。今日はみなさんに観ていただけてとても嬉しいです。ありがとうございました。
(ここで着席)

―それでは森崎ウィンさん、本作は「共感度0,1%」というキャッチコピーがついていますように、演じられた辻くんも善人なのか悪人なのかわからない。女性に対しても二股、三股という八方美人のような役どころでした。どのようにこの辻役を掴んでいかれたのでしょうか?
森崎 これはすごく個人的に思うことでもあるんですけれども、僕もウィンとして生きていく中で、ウィンがどういう人間なのかというのを自分で紐解いても100%紐解けない瞬間がやっぱりあるんですね。なので辻くんに関しても100%理解しているかと言われたら、そうとも限らず。現場で辻くんが二股も三股もかけている女優さんたちとキャッチコピー、じゃなくてキャッチボール、会話や芝居のキャッチボールを楽しみながら純粋に演じさせていただきました。一つだけ勘違いしてほしくないのは、僕は二股三股しません(ざわざわ笑)。えー、あんまりウケなかったですね(笑)。すみません。ごめんなさい。

―映画の中でやはり受け身だった浮世という存在によって、自ら人生を選び取るようになっていくのも見どころでしたよね。
森崎 おっしゃるとおりです。実際の人生のたくさんの出会いの中、恋愛に限らず仕事の中―それこそ今回土村さん、そして深田監督に出会って、また役者として一つも二つも変わった自分もいます。そういう意味では人と出会うことによって、人は変化していくんだなというのをこの作品を通じて僕自身もすごく勉強させてもらったと思っております。
今日は口が回ります(爆)。

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―土村さんが演じる浮世という役は、見る人のイライラをどんどん加速させていくような、そんな役だったと思います。ただ、浮世自身はいたって悪気がないというか天然というか、かなり難しい役どころだったんじゃないかなと思いますが、浮世と言う女性をどのように捉えて演じられたのでしょうか?
土村 おそらく大多数の方が「なんだ、この女性は?」と思ったと思うんですけど…。確かにめちゃくちゃな行動が目立つ女性ではあるんですけど、私はすごく興味を持って浮世という女性を追ってしまいました。なせそうなってしまうのか、と考えたときにその一見めちゃくちゃな行動っていうのは、浮世さんの表面的な部分であって、その行動の裏にひたむきさやピュアな部分があるから憎み切れない、っていうんですかね。私もその裏に見え隠れしている部分を意識して大事にして演じさせていただきました。はい。

―土村さん自身は浮世に似ているなぁと思うところがありますか?
土村 いえ、全くありません。(会場 笑)。えっ?
森崎 これ、たぶんあの作品に出ていた役者みんな否定しますよ。(本人は否定しても、それを否定するという意味。つまり似ているとみんな思っている)
土村 えっ!そんな。(笑)
監督 石橋けいさんも、アパートで撮影している土村さんを見ながら「ほんとにいいキャスティングだよね」って(笑)。だからって浮世みたいってわけではないんだけど、キャスティングの評判は良かったですね。
土村 喜んでいいのかちょっととまどってしまうんですけど。(笑)

―土村さんがおっしゃった浮世の内側にあるひたむきさとかピュアさとかは、土村さんご自身が持っているものが現れたんじゃないかな、と。
土村 あ、そうかもしれません。
監督 そこですね。みんなが注目したのは。
森崎 感謝ですね。(MCさんに)
土村 そうですね。(笑)

―深田監督は20年前にこの原作と出会ってどうしても映像化したい、と思い続けて夢が叶ったとおっしゃっていましたが、どんな部分に惹かれて映像化を熱望されたのでしょうか?
監督 まずストーリーの運びがめちゃめちゃうまくて、これはすごいなと思ったんです。元々星里先生の漫画はその前から読んでいて好きだったんです。「夢かもしんない」「結婚しようよ」とか。それはちょっと遊びで森崎さんの台詞に引っ張ってきて言わせて(星里)ファンにはわかってもらえるような感じで入れました。
それまでラブコメが得意だった星里先生が一切コメディの部分を封印して、ヒリヒリするような恋愛だけを描くというのはものすごく異様で、迫力があると思ったんです。「本気のしるし」ってほんとに星里先生は本気だなというところにすごく惹かれて。今#Me Tooの時代を経て振り返ってみると、青年誌の中での浮世という女性の描き方が現代的だったなと。いわば男性社会の中で「擬態」のように、自分を守る術のように男性を引きつける言葉を言ってしまったり、思わせてしまったりとか、そうすることでしか身を守れない女性。そこが面白かったですね。

―ご覧になった方の感想や反響を受けて今どんな風に感じていらっしゃいますか?
監督 想定通りというか、想定以上にイライラする方がすごく多かったみたいです。ドラマ放送当時にも「本気のしるし」と検索すると、勝手に関連ワードに「イライラ」が出てくる(笑)。自分自身、浮世にそんなにイライラしないと思っていたんですが、想像以上に反響があったんです。
それでもみんな見続けてくれて、その印象が後半になるにつれ、どんどん反転していくのが面白くて、後半になればなるほど、「浮世よりむしろ辻の方がヤバい」という感想も出てきたりして、そこを視聴者の人と一緒に見続けられるというのが面白かったです。今またみんな一気見してどうだったのか、感想を聞きたいなと思っています。

―森崎さん土村さん、深田監督の演出で心に残っているようなことはありますか?
森崎 レストランのシーン、浮世がご飯食べていなくて「私辻さんに…」あれ?「心許してる?」(監督と土村さんからフォローが入る)「油断してるのかな」というところを演出していて、「これ、浮世がどういう形で言うのがいいのか、目を見て言うのか、外して言うのか。目の前に座っている辻くんとしてどう思う?」と聞いてきたときに…(監督に)目は外しているんですよね?
監督 使ったのは…「辻の肩あたりを見て」という指示でやってもらったのを本番では使っています。
森崎 それ聞かれたのが初めてだったので、すごく印象に残っています。

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―印象的なシーンですものね。
森崎 はい。たしかオーディションのときもあのシーンをやったんです。
監督 そうですね。あのシーンをやりました。辻(森崎)さんにも土村さんにも、別々でしたけどやってもらいました。とても核になるシーンだと思います。映画の。

―土村さんいかがですか?
土村 一度現場中に迷いがあって監督に「この台詞はどういう気持ちで言ったらいいでしょうか」と相談したときに、その話の流れだったか「そもそも役というのを100%理解して演じるのは必ずしも正しいとは限らない」とお話ししていただいたことがありまして。そのお話しを聞けたおかげで私も浮世さんに対して、何かこう言葉でうまく言えないんですけど、感覚的な余白というかそういうものが存在していた方が、きっと浮世さんの魅力も現れてくるんじゃないかと思えた瞬間でした。演じさせていただく上でとてもためになりました。

―とても素敵なお話です。「本気のしるし」というタイトルにかけまして「思わず自分が本気になってしまうこと」を教えていただきたいですが、いかがですか?
森崎 本気になってしまったこと…僕は常にゼロか100かの人でして、やるならとことんやる、やらないならやらないっていう風で。辻くんとは真逆で「優柔不断」という言葉は自分には合わないな、と思うんですけど。なんですかね、本気になってしまったこと。今日一日本気を出したら…ツイッターにも書かれたんですけど、「ウィンが本気を出したら雨が降る」(爆笑)
監督 雨が降るし、台風も来るって書いてありましたね。(笑)
だからファンの方が「雨や台風で喜んでいる」っていう風な(笑)不思議なツイートが(笑)
森崎 マネージャーが僕に見せてくれたのが検索トレンドに「台風、台風、森崎ウィン」ってあった(笑)。「台風も来て、ウィンも来てるね!」ってつまらないギャグと共に(笑)。あのー、以上森崎ウィンでした。(笑)
―今日は森崎ウィンさんの本気が台風に現れているということですね。
森崎 すいません。(笑)

―土村さん思わず本気になってしまうことは?
土村 つい先日の話なんですけど、食器棚が新しく届きまして、それを一晩かけて夢中で組み立てたこと。扉を取り付けるのに観音開きの高さを合わせるのがけっこう難しいんですよね。(客席へ)やったことない?いらっしゃいませんかね。あの微調整するのがすごく難しくて、でも寸分の狂いなく揃えたくてなってしまう。 
森崎 それって元々あるところのネジ回すだけ、とかじゃなくて?
土村 ネジを調節して高さだったりを…
森崎 日曜大工にハマってる?
土村 すごくハマってる。あの“カムロック”(金具)がすごく難しい。
森崎 カムロック、ちょっとわからない。

―共感度が(笑)
監督 お客さんの上にハテナマークが、「カムロックって何?」(笑)
―0,1%に持ってくるところがさすがだなと(笑)
土村 すみません、それが本気になってしまうことだったんです。失礼しました。(笑)

―可愛いです。ありがとうございます。深田監督はいかがですか?
監督 仕事に関しては「本気だ」みたいなことは一応言っとくんですが(笑)思わず本気になるっていうと…映画が撮り終わって宣伝に入るじゃないですか、監督は別に宣伝部ではないから、宣伝は宣伝部に餅は餅屋に任せておけばいいんですけど、宣材を勝手に作るっていうのは趣味でやっていて…フォトショップっていうソフトで画像をいじったりすると、お絵描きしているような感じでけっこう楽しいんです。あれがハマり始めると徹夜で作ったりして。たいていハマっているのは脚本とかが煮詰まっているときで、まあ逃避なんですけど。宣材物作りは本気になっちゃいますね。
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―この『本気のしるし 劇場版』のポスターも監督がお作りになった?
監督 あっ、はいはいはい。ドラマ版のときに何か盛り上げられないかな、何かやりたいって思って…ドラマは毎週毎週感想が届くっていうのが新鮮だったんです…その感想をばーっと並べてやろうとTwitterからいろいろ拾ってきて。輪郭に合わせて切ったりするのは意外と地道な作業で、そういうのチマチマやるのが楽しいんです。そのときには単に趣味で、日曜大工的に作ったんですけど、劇場版を作るとなってちゃんとデザイナーの方が整えて作ってくれています。だいたいあんな感じのものを作りました。

―皆様のTwitterにあげた感想ももしかしたら入っているかもしれないので、ぜひじっくりと読んでみるといいかなと思います。

ここでマスコミのフォトセッション、続いて観客も短い時間ですが、撮影可となりました。

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―では登壇の皆様を代表して、深田監督からひとことご挨拶をいただきたいと思います。
監督 今のこのパネルも星里先生が俳優をイメージして描いてくれたもので、この作品はほんとに星里先生あってのものだと思っています。先生もドラマから今回の劇場公開も楽しみにしていろんな絵をあげてくださっているので、よければ先生のTwitterを見てみてください。
今回劇場版にしたいと思った理由の一つは、ドラマは東海三県と一部の地域しか放送されていなかったので、見たいけど見られないという人がとても多かった。今回映画という形で全国の映画館に回していきたいです。今映画館は大変な状況で、コロナでお客さんも減っていたりしています。そんな中ですがぜひ多くの方に来てほしい、この映画は予告編がテレビに流れるようなタイプの作品ではないので、ほんとに口コミがすごく大事なんです。今日観て面白いなとか、琴線に触れる部分があれば、そのことを友達や家族や同僚やSNSなどで拡散していただければ嬉しいです。本日はどうも有難うございました。

(取材・写真 白石映子)
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