『ミセス・ノイズィ』公開から15週目突入  ロングラン記念舞台挨拶!!

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左から天野千尋監督、新津ちせ、篠原ゆき子、長尾卓磨、宮崎太一


2021年3月6日(土)ロングラン記念舞台挨拶
渋谷・ユーロスペースにて
登壇者 篠原ゆき子、長尾卓磨、新津ちせ、宮崎太一、天野千尋監督
MC   伊藤さとり

・シネマジャーナルHP 作品紹介『ミセス・ノイズィ』
・本誌103号でも紹介
・『ミセス・ノイズィ』公式HP
・シネマジャーナルHP 特別記事
 『ミセス・ノイズィ』天野千尋監督インタビュー記事はこちら

第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門にて上映、その後も海外でのさまざまな映画祭でも上映され話題となった天野千尋監督オリジナル脚本の映画『ミセス・ノイズィ』(出演:篠原ゆき子、大高洋子、新津ちせ ほか)が、2020年12月4日(金)より全国公開中。スランプに陥った小説家・吉岡真紀(篠原ゆき子)と、騒音を巻き起こす隣人若田美和子(大高洋子)とのご近所トラブルが、世間を巻き込んだ大騒動となるさまを描く。
ささいなすれ違いから生まれた隣人同士の対立が、マスコミやネット社会を巻き込んで、2人の女の運命を狂わせる大事件へ発展していく。「SNS炎上」や「メディアリンチ」「規格に合わないものに対する皮肉」など、現代の社会事情を反映した作品。後半は思わぬ方向に展開し、あらゆる「争い」が、ちょっとした食い違いから大きな争いに発展するさまを描いた。観客の口コミなどで広がり、ロングランヒットを記録。6日から公開劇場がユーロスペースに移し上映され、ロングランを記念して舞台挨拶があった。今後は地方の映画館などの上映のほか、東京では下高井戸シネマで4月24日から上映がある。

天野千尋監督は「映画を始めた時からユーロスペースで上映できたらいいなと考えていたので、この劇場で上映されることになりとてもうれしいです。昨年、冬の初めに公開が始まったのですが、3か月も上映され、春まで上映していただけるとは。はじめは想像もしていませんでした。口コミで広がっていったからですね。伊集院光さんや放送作家の鈴木おさむさんなどがラジオで話してくれたりもしましたし、松尾貴史さんもテレビで紹介してくださいました。観客の皆さんからは、「職場の先輩に勧められた」とか、「友だちに勧められた」とか、一番いい形で広まっているなと思いました。本当に感謝しています」と緊張しつつも感激の言葉を述べた。

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主人公の新進小説家吉岡真紀を演じた篠原ゆき子さんは、本作への出演を「なんだかドキュメンタリーのようでした」と語り、「閉店セールのようにそろそろ終わると言いながら、3カ月も続き、口コミで広げてくれた皆さんに感謝します。真紀は私に似ていると言われたり、映画の口コミサイトなどで真紀はムカつく女だと書かれていたり、当て書きだと言われたりして、落ち込んだりもしました」と苦笑い。でも「映画楽しんでいただけましたか?」と問いかけると満席に近い会場から拍手と歓声が飛んだ。

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お隣さんとのトラブルに妻に寄りそうでもなく迷惑顔で、どこか他人事な真紀の夫吉岡裕一を演じた長尾卓磨さんは「悪役でもないけど、無関心を装い、距離を置いた役でした。僕自身はそうではない人間のつもりですが、それで叩かれるのはわかります」とぼやき観客を笑わせた。

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真紀の娘、菜子を演じた新津ちせちゃんは「私は役でいろいろなことにチャレンジすることが好きです。本当の私は臆病で、誰かに怒られるようなことはしない性格ですが、この映画で私が演じたなっちゃんは自分のやりたいようにおもちゃをガッシャーンとひっくり返したり、白い壁に落書きしたりする役。この役を通して大胆な性格になれたかなと思います」と笑顔で語り、今年の抱負を尋ねられると「これからもまわりの方に感謝しながらいろんな役にチャレンジしていきたい」と、10歳とは思えないようなしっかりした答えが返ってきた。

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隣の家の若田美和子の夫、若田茂夫を演じた宮崎太一さんはハサミ虫について問われ「あれはCGではありません。スタッフがヤフオクで買った本物です。ハサミ虫が体を這うシーンは覚悟を決めて臨みました。ハサミ虫は大量にはいないので、何度もシーンを撮ったりしました」と答えていた。それは大変だったかも。

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面白かった話題はコロナ禍の話題で、「コロナでトイレットペーパーが買えなかった時、近所のおばあさんがトイレットロールがなくて困っていたので、3ロール差し上げたら、お返しにメロンをいただきびっくりしました」と篠原ゆき子さんが語っていた。

天野監督も「コロナがきっかけで近所の方との距離が近くなりました」と話し、映画のことも話すことができ、そのへんからも口コミが広がりましたと答えていた。次回作について「私は社会のちょっと悪いことをしてしまうグレーな人に興味があります。普通の女たちが悪巧みをするんだけど、それには正義があり、それぞれの生き様がありというような作品を撮りたい」と語っていた。
取材・写真 宮崎暁美


取材を終えて
この作品、試写、東京国際映画祭でも見逃していたのですがなんとか観ることができました。3か月も続いていたとはびっくりです。最初は嫌な女同士の争いかと思わせて、最後はそれぞれの思いがうまくかみ合う大団円で終わりホッとしました。でも、私としては新人小説家の吉岡真紀にしろ、となりの家の若田美和子にしても、家事をほとんどこなし、夫の面倒をみすぎという感じがして、そんなもの自分でやらせないの?と思ってしまうシーンがいくつもありました。真紀の家では妻が食器を片付け洗ったりしているのに夫はただのうのうとしていたりするシーンも何回かあったし、隣の若田家は、いくら夫がうつ病気味とはいえ、夫のハサミ虫布団を夫が自分で干すのではなく、いつも妻がやっている。ま、争いを起こす原因を作るための手段だったのかもしれないけど、観ていてちょっとイライラしてしまった。せっかく女性監督の作品なんだから、日本社会の妻の家族への献身しすぎ、家庭貢献事情にちょっと皮肉でも入れてくれたらなんて思ってしまった。そして篠原ゆき子さん大活躍ですね。今、TV番組「相棒」で刑事役で頑張っている!
それにしても、この天野監督の『ミセス・ノイズィ』のロングランといい、大九明子監督の『私をくいとめて』の東京国際映画祭の観客賞受賞といい、最近の二人の活躍が嬉しい。私は観ていないのだけど、新進女性監督3人による『放課後ロスト』(2014)というオムニバス作品に天野監督と大九監督は参加している。あいち国際女性映画祭2014ではもう一人の名倉愛監督と3人によるトークがあった。この時はまさか、二人がこんなに活躍するまでになるとは思わなかったので余計感慨深い。

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あいち国際女性映画祭2014にて

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