『ロボット修理人のAi(愛)』主演:土師野隆之介さんインタビュー

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*プロフィール*
2003年生まれ。神奈川県出身。TV大河ドラマ『平清盛』牛若丸役、『水戸黄門最終回スペシヤル』など幼い時から雜誌、テレビに出演。映画『ロックわんこの島』('11/中江功監督)では、300 人を超えるオーディションで主人公の男の子役に抜擢。主な出演作に、映画『呪怨 黒い少女』('09/安里麻里監督)、『猿ロック』('10/前田哲監督)、『MONSTERS』('14/中田秀夫監督)、『最後の命』('14/松本准平監督)など。
2020年、『ロボット修理人のAi(愛)』で、ブータンのドゥルク国際映画祭で最優秀主演男優賞、カンヌ世界映画祭で優秀若手男優賞(best young actor)を受賞した。

『ロボット修理人のAi(愛)』
監督:田中じゅうこう
出演:土師野隆之介、緒川佳波、大村崑、大空眞由美、金谷ヒデユキほか

夕焼け劇場 presents (C)2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY
http://roboshu.com/
作品紹介はこちらです。

★2021年7月10日(土)より新宿K's cinemaにて2週間限定上映
7/10(土)~7/23(金)
AM10:00~上映後、舞台挨拶&トークショー

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本作で映画初主演を飾った高校生の土師野隆之介(はしのりゅうのすけ)さんにお話を伺いました。

―学校が終わってすぐ来てくださったんですね。夕飯の時間ですが、お腹すいていませんか?

お昼たくさん食べていますので大丈夫です(笑)。

―土師野(はしの)さんは本名ですか?珍しいお名前ですね。

本名です。全国に数十人しかいないらしいです。珍しいのでみんなに覚えてもらいやすいかなとずっと本名です。

―ずいぶん小さいときから子役をなさっていて、ベテランですね。今でもよく覚えている作品はありますか?

長いだけです(照れ)。やっぱりあの『ロック わんこの島』という作品です。すごく長期間やったというのもあるんですけど、僕の代表作になりましたし、印象に残っています。

―予告編観ただけで泣きそうでした。もう10年前の作品ですが、あんまりお顔が変わっていませんね。

はい、あんまり変わってないかもしれないです(笑)。

―すくすく素直に伸びてきた子って感じがします。
出演依頼は事務所とマネージャーさんを通してくると思いますが、大きくなられた今は自分の意見もおっしゃるんですか?


あ、お話をいただいたときですか? 未成年なので、内容によってはできないこともありますけど、予定が合えばやらせていただいています。

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―今回の『ロボット修理人のAi(愛)』は初主演で、こちらも代表作になりますね。3年くらいかかっているようですが、始まりは?

田中監督が「こういう映画を作りたいんだけど」と事務所に男の子を探しにいらっしゃったときに、僕が推薦されて監督とお話ししました。中学2年生のときで、まだ映画ができるかわからないころです。パイロット版を撮ってそれも映画に入っています。

―秋冬のシーズンの映像を観ましたら、ちょっと顔立ちが幼い感じでした。それがパイロット版なんですね。

そうです。本編は中3のときに撮り始めて、高校2年までちょくちょく撮っていました。一番新しいのが最後のほうに一瞬出てくる図書館で勉強しているシーンです。コロナで上映が延期になって、今は高校3年です。

―榛名湖の四季が撮られていました。土師野さんも映画と一緒に成長しているんですね。若鮎のようなスタイルも見せていただきました。

榛名湖はほんとに綺麗なところでした。身体はガリガリです(笑)。

―きっと縦に成長する時期だったんですよ。横に大きくなるのが後で。
素直に大きくなった土師野さん、孤児の倫太郎の役にどうやって寄せていかれたんですか?


倫太郎は生い立ちがすごく複雑で、暗い過去を持っているんですけど、まっすぐに育っているんです。それで、監督に「こんなに暗い過去があるのに、なんでこんなに真面目で明るく育っているのか」と聞いたことがあります。
「周りの大人たちの支えや愛でこんなにまっすぐ育っているんだよ」とおっしゃって、なるほどなと思いました。もちろん孤独とかはあるとは思うんですけど、それを周りの人には見せてはいないんです。だから周りの人たちとの会話では、明るい倫太郎を演じていました。でもその中にも「孤独」があったりするので、難しかったです。

―AIBOが重要な役割を果たしています。AIBOくんとのエピソードがあったら。

森の中にAIBOを置いてきてしまったシーンで、その後AIBOが戻った時に抱っこすると、「落とさないでね」と言ったんです。とても可愛くて、本当に生きていると感じました。

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―この作品はリアルとファンタジーの両方の場面があって、観客はその境目がときどきわからなくなります。脚本は最初からそうでしたか?

映画が始まる前にいただいた台本もそうでした。現実とファンタジーと、現在と過去とごちゃごちゃになって、ときどきわからなくなるようなところがあります。観る人によって、捉え方が違ったりするので、それも楽しいかなと思います。

―倫太郎にしてみたら全部繋がっているわけですね。学校に行ってない設定なので、すずめちゃん以外、周りが大人ばかりでした。

はい、ベテランの方ばかりでした。ロケ中は殆ど撮影でしたが、周りの方々はほんとに優しくて、気さくに話しかけてくださいました。

―映画の倫太郎のまんまみたいですね。彼は大人に囲まれて可愛がられる働き者です。それでいて頑固で(笑)。自分との共通点はありましたか?まっすぐなところ?

まっすぐなところもあると思うんですけど…倫太郎は絶対周りの人に暗いところを見せない。僕も自分の暗いところを周りに見せたくないタイプなので、そこにすごく共感しました。

―自立心も強いですか?

自立したいとは思っていますけど、まだ全然親に甘えっぱなしです。

―真ん中の子って自立しやすいんですよ。(土師野さんは姉と弟に挟まれた中の子)
最初の子は親に良く世話されます。次の子は上の子を見て育つので、あまり手がかかりません。そのうち下の子が生まれて、またそちらに親の目が行きがちなんです。


確かに。この業界に入ったのは生後10ヶ月の頃だったんです。お母さんが入れてくれたんですけど、その理由が「真ん中の子は愛情が注がれにくいとよく言われるから、思い出作りのために」だったんです。なので姉や弟はやってなくて、僕だけなんです。

―まあ、お母さん「先見の明」がある! ご家族みんなが土師野さんの芸能活動を応援しているんですね。映画はご覧になっていますか?

はい。試写で観て「すごく良かった」と言っていました。

―映画を観た方に何を受け取ってもらいたいですか?

倫太郎は過去を知って、将来のことも考えられなくなるような状態だったのに、そんな中でも、将来に向かって動けました。それは周りの人の愛があったからだと思うんです。なので「周りの人はあなたを愛しているんだよ」「愛している人は絶対いるんだよ」ってということ。

―土師野さんもそういうことをこの作品を通じて受け取ったっていうことかな。

そうですね。ほかにもいろいろ、ファンタジーと混ざっていたりして難しいと思いますが、全体的に見るとさまざまな「愛」が描かれています。愛ってLOVEだけじゃなく、隣人愛とかも含まれていますし。

―すずめちゃんと仲良くなるのかなぁと思ったんです。

今どきの「壁ドン」とかのものじゃなく、ピュアな心情が描かれていて、今なかなかないんじゃないかなって思います。

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―高校3年生ですから、これから学園もので「ラブロマンス」作品とか、くるかもしれませんよ。

ラブロマンス…やってみたい気持ちはあります。それもいいんですけど、僕は「アクション」がやりたいです。

―アクションをやるために、何かスキルアップしていますか?

3歳のころからずっと空手をやっています。小さいころには全国で準優勝したこともあります。今は初段で、止まったままなんですけど。受験を機に離れてしまって、そうしたら身体が成長して道着が合わないんです。

―この俳優さんと共演したい、この監督さんの作品に出たい、という希望がありますか?

『ロック わんこの島』で共演していただいた(両親役)佐藤隆太さんと麻生久美子さんとはまた共演できたらと思っています。麻生さんは今同じ事務所なんですが、まだ会えていません。ぜひお会いしたいです。

―麻生さんドラマの「あのときキスしておけば」がすごく良かったですよね。
共演した方や自分の出演作品はよく見ますか?


はい、よく見ます。自分のは「ゆるく」見ています(笑)。でも納得いかなかった演技とかは、反省して次に生かそうと思っています。

―ふだん映画を観ますか?

今はけっこう学校が忙しかったりして映画はそんなに観ていません。だいぶ前の映画ですが、ウィル・スミスさんの『幸せのちから』(2006)がすごく記憶に残っています。最後に職を得て喜びをかみしめるシーンがあって、「よっしゃ!」って喜ぶのは違うんですよ。ウィル・スミスさんの演技が正解だったんです。それに感動してこんな演技ができるようになりたいなと思って。

―『アラジン』も観ました?

あっ観ました!それが一番最近かもしれないです!

―現場で大事にしていることを教えてください。

もちろん演技については、自然な演技をするとかいろいろありますが、それは俳優として当たり前のことだと思うんです。
台本が送られてきたときに、田中監督からの手紙も一緒に入っていました。そこに「俳優としての前に、人としての鍛錬を忘れるな」と書いてあって、「わ、ほんとにそうだな!」と思いました。
今回大空眞弓さんと2度目の共演だったんです。「春日局」という舞台で一度共演していただいていたので「僕のこと覚えてますか?」と聞いたら、「あ、覚えてるよ!大きくなったね!」って優しく声をかけてくださって。こういう人が人として尊敬される人なんだなと思いました。
大村崑さんと今回共演させていただいたんですけど、みんなで集合写真を撮るときに、「元気溌剌!」の声をかけていただきました。一世を風靡した方なんです。みんな笑顔になっていました。そういう空気を作れるような、尊敬されるような人でありたいと思っています。

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―素晴らしい先輩たちと共演できたんですね。
学校との両立も大丈夫そうですね。


はい。なんとか頑張っています。

―得意なことと、苦手なことはなんでしょう?

得意なことは…スポーツが全体的に得意です。
苦手なことはなんだろ? なんでも器用にというか、そこそこできるので「何かを究める!」というのが苦手かもしれないです。ハマったらとことんできるといえばできるんですけど。

―それは逆に長所にもなりますよ。いろいろ挑戦されてハマるものを見つけてください。今日はありがとうございました。

=取材を終えて=
ひさびさに孫のような年頃の若い俳優さんに会いました。役得、役得。土師野さんはご家族に囲まれ、愛情と応援をいっぱい受けて育った感じがしました。演じるのは過酷な境遇の孤児の男の子です。田中監督の演出を素直に受けて想像力を働かせたのでしょう。トラウマから取り乱してしまう倫太郎、暗さや孤独をしまい込んで明るく振舞う倫太郎を演じ分けないといけません。すずめちゃんとのシーンは、倫太郎の素がそのまま出ているように見えました。
後半に「僕、倫太郎です」という台詞があります。その短いひとことがとても胸に残りました。取材のときに言い忘れてしまったので、ここに書き残しておきます。きっとこれからも元気で素直で、たくさん体験していい俳優さんになられることでしょう。また取材できるのを楽しみにしています。(取材・写真:白石映子)



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