特集上映「そしてキアロスタミはつづく」初日 中村獅童さん登壇!

「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」初日

キアロスタミ監督ファンを代表して、
中村獅童さん(歌舞伎俳優)登壇

DSCF4851 kiarostami sidou 5 420.JPG

■日程:10月16日(土)12:40回 『友だちのうちはどこ?』※上映前
■場所:ユーロスペース

★「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」
公式サイト
シネマジャーナル

イラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ監督の初期7作品のデジタル・リマスター版特集上映「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」が2021年10月16日(土)にユーロスペースで公開初日を迎えました。
映画『友だちのうちはどこ?』上映前に、キアロスタミ監督ファンを代表して、中村獅童さん(歌舞伎俳優)による舞台挨拶が開催されました。(聞き手:藤井克郎さん/映画記者)

◆キアロスタミ作品のあるがままの演技に衝撃を受けた
獅童:久しぶりにユーロスペースにきて、キアロスタミ監督の作品がデジタル・リマスター版として蘇ることにとても興奮しています。

― 今日は短い時間ですけど、よろしくお願いします。

獅童:映画やキアロスタミ監督への思いをいっぱいしゃべりたいのですけど、15分しかないから話しきれないです。

― 90年代にキアロスタミに出会われて衝撃を受けたそうですね。

獅童:90年代、僕は大学生でミニシアターブームでした。僕自身まだまだ映画やテレビに出させていただけなくて無名時代で、たくさんの映画を観客として楽しんでいたのですが、もちろん役者としての目線もありました。当時、ユーロスペースに行くと、いい映画がかかっているというイメージでした。まだ向こう(桜丘 さくら通り)にあった頃でしたが、そんな思いでユーロスペースに通っている中で、キアロスタミの映画に出会って、衝撃的でした。自然な少年の姿、演技じゃ出せない味、それを僕ら役者はやらないといけない。プロだけど一期一会。自然の姿をと。
歌舞伎というのは、400年の歴史があって、型のある世界だけれど、その中に自分の魂や気持ちをどうやって込めていくかを研究しているときにキアロスタミ監督の作品に出会って、演じている人たちの自然な姿に衝撃を受けました。

DSCF4842 kiarostami sidou 4.JPG


― キアロスタミの映画の中から、演技をしていく上で、どういう風に学ばれましたか?

獅童:15分じゃとても語れません。人間として生きてきたら、大人になっていつのまにか生き方が上手になっていたりします。役者も同じで、なんとなく演じていると、それらしくなって身についていると思います。映画で演じる時には、歌舞伎役者・中村獅童はしまいます。台本をもらった時に、自分に何が求められているのかを考えて演じます。
歌舞伎は、1か月、毎日毎日同じことを演じるけど、今日出会ったお客様と一期一会。どうやってその日その日、新鮮な気持ちでお客様のハートに届くかを考えます。
『友だちのうちはどこ?』の主人公・アハマッドは、キアロスタミ監督に見いだされた素人の少年で、芝居じゃない、一期一会の気持ちでやってて、褒められようとも思ってない。計算じゃない、純粋な少年の気持ちでやってます。自然な姿はプロの役者にかなわない。純粋に演技をする気持ちを忘れてはいけないと、キアロスタミ監督の作品は思い出させてくれます。プロの役者が目指す自然な姿をぜひ観てください。

◆映画館で時を共有する醍醐味
― 『友だちのうちはどこ?』は、世界中の子供から大人まで愛される名作ですが、陽喜くん、夏幹くんと一緒に観る予定は?

獅童:自分が新作歌舞伎を作る時も、子供から大人まで楽しめるように作ることを意識しています。特に子供に楽しんでほしいと思っています。キアロスタミ監督の作品は原点にもなっていて、影響はすごく大きいと思います。
今、皆さんが劇場の椅子に座って映画の始まるのを待っているワクワク感が伝わってきて、やっぱり劇場で共有するというのはいいなぁ~と思います。
自分の出演した映画も、DVDをくれるといわれても、映画館で観客の皆さんと一緒に観ます。ここで笑ってくれるんだという楽しみもあります。今は、家で映画も楽しめる時代ですが、やっぱり映画館に行くと、暗くなって、予告編があって、本編が始まるという映画館独特の味わいがあります。
コロナ禍で映画館や劇場に足を運ぶのが難しい時代ですが、映画は家で観るのと映画館で観るのとでは全然違います。
劇場に行って映画を楽しんだこと、ユーロスペースに通ったことが蘇ってきて、足を運ぶということが、自分の人生の思い出となって、明日からまた頑張れるという糧になります。

********

あっという間に時間が経ち、最後に、司会の方から、「キアロスタミ監督ファンを代表して、一言お願いします」と言われた獅童さん。
「ファンを代表してなんて、全作品を観ているわけじゃないし、おこがましいです。先ほども言った通り、共有するというのは生きているということ。同じものを観て、泣いたり笑ったりして、感動することが大切。まだまだ大変な日常が続いていますが、ぜひ劇場に足を運んで、キアロスタミ監督の中の子供たちの姿をみて優しい気持ちになったり、一瞬でも夢を見たりしてほしいです。それが映画や演劇の醍醐味。僕の大好きなキアロスタミ監督の作品を肌で感じて、楽しんでください。


このあと、マスコミ向けの」フォトセッション。
DSCF4880 320.jpg

「こういう時、お客様は一番つまらないですよね」と気遣う獅童さん。
最後に、一般のお客様にも撮影が許されました。


◆今後のユーロスペースでのトークショー予定
10月23日(土)12:40『風が吹くまま』
上映後 ゲスト:ショーレ・ゴルパリアン(映画プロデューサー、翻訳家、通訳)

10月24日(日)12:40『そして人生はつづく』
上映後 ゲスト:佐藤元状(英文学・映画研究者)


「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」
期間・劇場:2021年10月16日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催
 ユーロスペース 公式サイト:http://www.eurospace.co.jp/

上映作品:
『トラベラー』(1974)
『友だちのうちはどこ?』(1987)
『ホームワーク』(1989)
『そして人生はつづく』(1992)
『オリーブの林をぬけて』(1994)
『桜桃の味』(1997)
『風が吹くまま』(1999)

作品内容詳細など、公式サイトでご確認ください
https://kiarostamiforever.com/

この記事へのコメント