『帰って来たドラゴン』舞台挨拶

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7月26日(金)より『帰って来たドラゴン』(1974)2Kリマスター版の上映が始まりました。
翌27日(土)新宿武蔵野館に、満席のお客様を迎えて倉田保昭さん、ゲストの谷垣健治さんの舞台挨拶がありました。
ほぼ書き起こしでその様子をお届けします。MCは江戸木純さん。(白) 

倉田保昭 1946年3月20日、茨城県出身。俳優、武道家。日本大学芸術学部演劇科卒。東映撮影所の研究生となる。70年香港のショウ・ブラザース社のオーディションに合格し『続・拳撃 悪客』(71)で香港映画デビュー。多くのクンフー映画に出演。74年『帰って来たドラゴン』を引っ提げで日本凱旋を果たした。テレビシリーズの「闘え!ドラゴン」、「Gメン‘75」で人気を博す。
76年に倉田アクションクラブを設立して人材育成を行い、数多くの映画、テレビ番組のアクション・コーディネートを手がけ、創武館道場で空手の指導を行ってきた。85年に倉田プロモーションを設立。その後も香港映画をはじめとした数多くの海外作品に出演。

谷垣健治 1970年10月13日、奈良県出身。映画監督、アクション監督、スタント・コーディネーター。
1989年大学入学と同時に倉田アクションクラブ大阪養成所に加入。1993年の大学卒業後つてもないまま22歳で単身香港に渡り、広東語を学びながら映画の仕事を探す。スタントマンとして多くの映画に参加、アクション監督トン・ワイの推薦で「香港動作特技演員公會 Hong Kong Stuntman Association」に所属した。唯一の日本人。香港ではドニー・イェンの作品に多く関わり、『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』では監督をつとめた。日本では映画『るろうに剣心』シリーズのアクション監督ほかで活躍。
日俳連アクション部会委員長。DGA(全米監督協会)会員。

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倉田 本日はお暑い中、ほんとにたくさんの方がいらしてくださってありがとうございます。50年前の映画ということで、私ちょっと不安なところがあるんですけど、いかがでした?(拍手)古臭さはなかったですか?パワーを感じていただけると有難いなと思っているんですけど。CGもワイヤーもない時代ですから。もう、今やれと言われてもとてもできないです。
ありがとうございました。ほんとに。

谷垣 おはようございます! 僕も今後ろで観ていたんですけど、面白いですよね。なんか神様がジャンプ力の調合を間違えたような2人(ブルース・リャン&倉田保昭)が(笑)こう上に上がって行く(必見)のが力強いなと思いました。先生ね、「今はもうできない」とおっしゃっていましたけど、『夢物語』では全然スピードは劣っていないですよね。むしろ速くなっているかもしれないなと(笑)。
先生、今日のこのお衣装は?

倉田 これはね、50周年なので、50年前に作った洋服。

谷垣 『戦え!ドラゴン』のときのですか?

倉田 これ、撮影では使ってないですよ。何かイベントみたいなので。たぶんブルース・リーのがかっこいいなと真似て作ったのかな。

―1974年に作られた『帰って来たドラゴン』と(新作の)『夢物語』を一つのスクリーンで上映するという、とても貴重な機会です。50年前に撮影されたこの映画、観るからに大変だったろうなと思うんです。そのへんのエピソード、こんなに凄かった、忘れられないことなどがありましたら。

倉田 先週プロデューサーのウー・シーユエン(呉思遠)に会いに香港に行ってきました。2人だけで5時間、広東語で話しました。その中で『帰って来たドラゴン』の話も出て、「あの頃はこうだったよねぇ」と。当時は中国の文化大革命の後で、国境があって行き来ができなかった。その中国大陸が見える小さい島で撮影しました。そこを見ながら「ウー・シエンのバカヤロー!なんでこんなきつい撮影させんだよー!」と(叫んでいた)。ホテルも何もないので、バーベキューやったりね。たまの休みに小さい船に乗って美味しい物を食べに行く。今は橋ができて渡れますけど。

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―谷垣さんはこの時代の香港映画、どう思われますか?

谷垣 観なおしたときに、これはできないなと思いましたね。役者にさせられないし、やれる役者もいない。僕らはこの方たちが作ったレールに乗ってアクション映画を撮っているんですけども、いろんなことを工夫しなきゃいけないわけで。言ってみたら僕らの映画には「味の素」をいっぱい足しているんですよ。味の素がいっぱいまぶされている。これ(帰って来たドラゴン)はほんとに「役者の素材の良さ」を生かした映画。すごいですよね、アクションも。
ブルース・リーが”間”で勝負するというか、”間”の中で一発パカーンとやるとしたら、これは”手”(アクションの動き)が多い。今のアクション映画も”手”は多くなっていますが、これは戦って走って、戦って走って。今も昔もアクション映画のお手本のような映画ですね。パリでオリンピックやってますけど、「アクション」という種目があったらたぶん金メダルじゃない?(笑)観れば観るほどすごい。

倉田 彼とも話したんですけども、当時は(ブルース・リャンと自分)2人だけなので、休憩時間なんてないんですよ。吹き替えもいないし、ただ2人がどうやって何ができるか、キャメラが移動するだけの時間で。一日何十回とやってそれを一ヶ月。

谷垣 移動って言っても、2人だからここからここ移動するだけでしょ?そしたらもう本番でしょ?(笑)

倉田 そう(笑)。そして”手”はついてないですから。”手”というのはアクションの、ここで出してここで受ける、という。

谷垣 今日また「発見」です。”手”があるんだかないんだか、という中でやったんだと思うんですけど、ブルースがぱっと来たら、先生がぱっと引いて(アクション付き)なんというか喧嘩強い人同士、喧嘩慣れした人同士のちょっとしたやりとり、こう動いたらこうやって、というそこんとこが面白いんだろうなぁと。

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―生(なま)の迫力、勢いというのが、50年前のフィルムの中に全部詰まっていますね。

谷垣 そう思いました。

ー今日『帰って来たドラゴン』と一緒に観ていただいた『夢物語』。作られた経緯というのは?どういうところから始まったのでしょう?

倉田 単純なものですよ。77歳になって、コロナであんまり撮影もないので、「77歳どれくらい動けるか、ちょっと竹藪を借りてやろうよ」という話で、1週間竹藪にこもりました。蚊に食われながら(笑)立ち回りをして撮影しました。これはどこに配信するのか、何も決まってない。海外の映画祭に出したら、インドのレイクシティ(国際映画祭)で最優秀短編映画賞をいただいたり、スペインで(アジアサマー映画祭)特別賞をいただいたり。
でも、これは日本では上映できないよねと言ってたら、たまたま今回の企画があり、50年前のアクション『帰って来たドラゴン』と50年後の『夢物語』、この対照はある意味初めての企画だと思うんです。

―谷垣さん、この『夢物語』変わらないと言われました。

谷垣 いやもうすごいとしか言いようがないんですよね。50年前の映画ですから、この中にはもう亡くなられた方もいますし、俳優やっている方もいる。ただ俳優はやっているけど現役感のない方もいるのに(先生は)一人だけ現役感バリバリ(笑)。

―ほんと、変わらないところがすごいですね。

谷垣 『夢物語』は何か言うのが野暮になるくらいすごい。『夢物語2』もあるんですよね。
『無敵のゴッドファーザー/ドラゴン世界を征く』と上映するとか。観たいと思いません?

倉田 今回上映するよ。

谷垣 あっもうやってるんですか?

―8月9日から2にあたる『夢物語 奪還』が併映になりますので、もう一度ご来場ください。『夢物語』もシリーズ化して、毎年倉田さんに撮っていただくとか。谷垣監督の『夢物語』シリーズをぜひ。

倉田 その話をしていたんですけどね、彼が忙しくて。

谷垣 いやいやいや。

倉田 谷垣健治監督で、79歳の倉田保昭のアクションをぜひね、撮ってもらいたいんですけど。

―みんな観たいなと思いますよね?(拍手)

倉田 彼もね、ほんとにもう私の手の届かないところへ行ってしまって。

谷垣 ちょ、ちょっと待ってください、先生。こっちの話をしましょう。これ(ポスターを指す)。(笑)

―ほんとに大活躍されています。お話面白くて延々と聞いていたいのですが、今日はお時間がありません。この続きは、売店にも売っております倉田保昭著「帰って来たドラゴン」(「和製ドラゴン放浪記」(1997)から改題して再販)を読んでいただくと、その撮影背景とか、台湾で出演した時とんでもない話とかいっぱい出てきます。ぜひお買い求めいただければと思います。

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―では最後に一言ずつ。

倉田 これから全国に挨拶に回りますけど、とにかく東京で皆さんに観ていただかないと話にならないので。1人でも多くの方に観ていただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)

谷垣 50年前の映画という事で、僕も今日初めてスクリーンで観ました。面白かったです。こういう映画は今後もう作られないと思うので、皆さんが生き証人になったと思って伝えていってください!よろしくお願いします。

ースクリーンで観る機会は多くないので、ぜひよろしくお願いします。

谷垣 まだスクリーンで観たい作品、僕いっぱいあるんで。ね。(と倉田さんへ)

倉田 キング・オブ・カンフー?

谷垣『激突!キング・オブ・カンフー』とか観たくないですか?(拍手)
ねぇ、僕はスクリーンで観たいですよ、ほんとに。『ファイナル・ファイト 最後の一撃』と同時上映とかね。(拍手)

ー企画もこれからまた進めていければと思います。本日はありがとうございました。(拍手)

(取材・写真 白石映子)

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