早稲田大学大隈記念講堂に野村家親子三代と犬童一心監督が登壇!
人間国宝の狂言師・野村万作を追ったドキュメンタリー映画『六つの顔』が8月22日(金)より公開されるのに先立ち、7月24日(木)夜、舞台挨拶付きの完成披露試写会が開催されました。
会場:早稲田大学 大隈記念講堂 大講堂
主催:万作の会、カルチュア・パブリッシャーズ
共催:早稲田大学演劇博物館
『六つの顔』
監督・脚本:犬童一心
出演:野村万作、野村萬斎、野村裕基、三藤なつ葉、深田博治、 高野和憲
ナレーション:オダギリジョー
題字・アニメーション:山村浩二 音楽:上野耕路
監修:野村万作 野村萬斎
650年以上にわたり受け継がれ、人々を魅了してきた「狂言」。その第一人者であり、芸歴90 年を超える今もなお、現役で舞台に立ち続ける人間国宝の狂言師・野村万作。映画『六つの顔』は、ある特別な1日の公演に寄り添い、万作が磨き上げてきた珠玉の狂言「川上」と人生の軌跡に迫る──。監督は、『ジョゼと虎と魚たち』、『のぼうの城』の犬童一心。アニメーションを『頭山』山村浩二、ナレーションをオダギリジョー、監修を野村万作と野村萬斎が務める。豊かな映像表現で織りなす、至高のドキュメンタリー。
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/six-face/
★2025年8月 22 日(金)シネスイッチ銀座、テアトル新宿、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
●舞台挨拶
舞台挨拶付き完成披露試写会が行われたのは、万作の母校である早稲田大学の大隈記念講堂。映画の上映後、野村万作、野村萬斎、野村裕基の親子三世代、そして犬童一心監督が登壇。MCは萬斎の娘である野村彩也子アナ。
万作;学生時代、大隈記念講堂では、毎年早稲田祭でお能や狂言を上演していました。もう一つ申しあげますと、学生時代、歌舞伎研究会に入っていまして、6代目菊五郎が現役の頃で、歌舞伎はよく観に行きました。この講堂では歌舞伎の映画の上映もしました。幸四郎、羽左衛門、菊五郎の「勧進帳」の映画を演劇博物館の館長さんを通じて松竹にお願いしてお借りして上映いたしました。そういう思い出が多々あった上での今日の初めての映画上映でございます。ありがとうございます。
萬斎:今日は遠路ありがとうございました。クラウドファンディングなどでご協力いただいた方にもいらしていただきました。映画では、父の90年の足跡を監督に撮っていただきました。ご覧になった皆さま、どうでしたかねぇ? (会場より大きな拍手) ありがとうございます。いろいろな感想を頂戴できればと思います。今日は付け加えの裏話などもお話いただければと思います。
裕基:早稲田大学卒業ではなく、わたしは慶應を卒業したんですが、慶應の講堂より早稲田の講堂に立たせていただくことの方が多い野村裕基でございます。本日はありがとうございました。この映画が、まさか全国津々浦々の劇場で上映されることになったというのも、その規模感がすごく驚きとともに、ありがたいことだなと思っております。
犬童監督:僕は早稲田も慶応も出ていませんけども、今日は3人の方と一緒にここに立つことができました。よろしくお願いします。
MC: 万作さんは、大学在学中の1950年に「狂言研究会」を設立。その後、現在に至るまで一門で学生に指導を続け、2010年より毎年、大学主催「早稲田 狂言の夕べ」公演を行っておられます。そんなゆかりの深い場所での初お披露目となったことについて、どう思われましたか?
万作:大学時代、毎年、お能や狂言をやっていた場所ですし、いろいろな思い出がたくさんございますので、感慨深いものがあります。
MC:万作さんは芸歴90年を超え、文化勲章も受賞された記念公演も収録されています。これまでの歩みを描いた映画になっていますが、自ら映画化を希望されたとも伺っています。
万作:先ほど申しあげましたとおり、勧進帳や小津安二郎の素晴らしい映画を若いころに観ていますので、狂言の演者として狂言についての映画を作りたいなぁと思っておりました。
MC: 犬童監督は、この映画のお話をいただいてどう思われましたか?
監督:私が思ったのは、しめたなと。前から万作先生を撮りたいと思っていましたし、能楽堂も映画的に撮ってみたいと思ってました。この話をいただいて、なんといっても万作先生の映画を撮る仕事を頼まれた、ということがものすごい名誉だと思いました。大事にやらなきゃいけないと思いました。
萬斎:われわれは無形文化財です。隣にいる父は本物の人間国宝です。(会場から拍手と笑い) 父の代弁をするならば、おそらく自分の芸を形に残したいという想いはあったと思います。有形のものにしたいと。
万作:映画の中にも丸々収められている演目「川上」は、近年ライフワークとしても取り組んでいます。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で狂言のシンポジウムを行った際、野外で上演した「川上」でものすごい拍手をいただきました。ミラノでは、ある老夫婦が、舞台で手を取り合って立ち去る夫婦の姿を見て、自分たちも一緒になって手を取り合って帰っていったと通訳の方から聞いて、あ~嬉しいなあと思いました。
私が好きなのは、静かな狂言。もちろんゲラゲラ笑うのも悪くはありませんけれども、それ以上に和というものがある、柔らかい狂言。泥棒を許してやる。桜の花を盗人にあげて、お酒もふるまって帰すというような柔らかい人と人との交流というものが、「川上」にもあるということ。そのような狂言を少しでも色濃く演じていけたらばなぁ~と思います。
監督:万作先生の狂言の考え方として、まず美しくなければいけないということをよくインタビューでおっしゃっています。映画自体が先生の趣旨に沿っていることが大事だと思いました。万作先生は普段、座っていても立っていても、シルエットや佇まいがすごく綺麗。だから、本作はドキュメンタリーなんですけど、その佇まいやシルエットをとにかく綺麗に撮る。そうすることで万作先生が普段言ってらっしゃる狂言に、映画が近づけるのではないかと思いました。
萬斎:われわれは全身で表現しているという思いがあるので、顔ばっかり追われるより、シルエットにこだわっていただいたというのは、そういう意味でも本当にその通りだなと思いました。前半部分、撮影に立ち会っていないので、どういう風になっているのかと思いましたら、いきなりただ歩く後ろ姿。90年の歩みを感じさせる始まり。
裕基:この映画の中で思ったことですし、普段からも思っていることでもあるんですが、万作先生から芸を継承することはあっても、記憶を継承することはできないなぁ~ということを感じました。映画というものになることで、万作先生がこういう方に思っていらっしゃったのだ、戦時中のことであったり、未来に向けてどういう道を歩んでいくのかといったことが記憶されると思いました。
万作:この映画で大変嬉しいことが一つありました。後半部分で、能楽堂の2階席から撮ったNHKのアーカイブを映画に取り込んでいただいたこと。50歳位の時の舞台だったと思いますが、僕にとっては嬉しいことでした。
MC: 映画『国宝』の大ヒットで人間国宝に注目が集まっていますが、人間国宝・野村万作さんを、息子と孫という関係で、どのように捉えていらっしゃいますか?
萬斎:父というより師匠であるということがすごく大きいです。家族でありながら、師弟でもあるという特殊な関係。やはり同じように考えていくということがとても重要に思います。僭越ながら同士でもあり、同業者であり、共演者であるというところがとても重要。僕らは単なる技芸を受け継ぐだけではなく、父が言いましたように精神を受け継ぐところがあります。時代時代とアップデートされていくことに合わせて、自分たちが何を守り、何を更新していくのか。そのための色々なチャレンジを惜しまないということを身をもって見せてくれた。そういう意味で『先達』であり『先人』でもある。われわれは『猿に始まり狐に終わる』と言いますけれども、まさしく『獣の世界』ですよ。親が、餌はこうやって獲るんだよということを言葉では説明しないわけです。まず親が『獣の獲り方はこうやるんだよ』という姿を見せて、それを見様見真似で覚えていく。そういう意味で特殊ではありますが、ずっと背中を見せてきてくださったなと思っております。
裕基:「芸に実直であれ」という姿勢の方であると感じています。94歳になってもまだ高みを目指す、というような気持ちと精神と体力を持ち合わせている。本当に改めて大きな存在なのだなぁと感じました。
*フォトセッション*
観客の皆さんにも、撮影タイムが設けられ、いよいよ舞台挨拶も終盤。最後のコメントを求められた万作さん、
「当たるといいですねぇ~」と、ひと言。会場がどっと笑いに包まれ、大きな拍手で4人を見送りました。
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少し耳が遠い万才さんに、孫の裕基さんが時折、耳元でささやいている姿が微笑ましかったです。 萬斎さんも、万才さんを気遣いながらフォローされていました。師弟でありながら、やはり家族だと感じました。
学生時代には、歌舞伎もよく観に行ったという万才さん。ほんとうに歌舞伎が大好きだったご様子。同じ日本の伝統芸能である歌舞伎からも大いに学ばれたことと思いました。 狂言を生で観たのは、ほんの数回ですが、この映画を観て、「川上」の演目をいつか能楽堂で観てみたいと思いました。
取材:景山咲子(文・写真)
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