『ドント・ウォーリー』ガス・ヴァン・サント監督ティーチインイベント

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ガス・ヴァン・サント監督3年ぶりの新作、ホアキン・フェニックス主演『ドント・ウォーリー』が5月3日(金・祝)にヒューマントラストシネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷・新宿武蔵野館他にて公開される。
『ドント・ウォーリー』はオレゴン州ポートランド出身の風刺漫画家ジョン・キャラハンの実話。自動車事故に遭い一命を取り留めるが、胸から下が麻痺し、車いす生活を余儀なくされたが、持ち前の皮肉で辛辣なユーモアを発揮して不自由な手で風刺漫画を描き始めた。そんな彼に魅せられて、自伝の映画化権を獲得したのは、2014年他界したロビン・ウィリアムズ。監督にと相談を受けていたガス・ヴァン・サント監督は、ウィリアムズ亡き後、自ら脚本を手掛け、企画から20年の時を経た2018年ついに映画を完成させた。
公開に先立ち、ガス・ヴァン・サント監督が『ミルク』(2009年)以来実に約10年ぶり来日。クリエイター野村訓市氏とともに、2月19日(火)に開催された日本最速上映会に登壇した。

『ドント・ウォーリー』 ガス・ヴァン・サント監督ティーチインイベント概要

■日時:2月19日(火)
■会場:ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター1
    (渋谷1-23−16 ココチビル7・8階)
■ゲスト:ガス・ヴァン・サント監督、 野村訓市氏


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『ドント・ウォーリー』上映直後、興奮もさめやらぬ会場にガス・ヴァン・サント監督、監督の友人でもあるクリエイターの野村訓市氏が登壇した。2人の仲睦まじい様子から親交のあることがうかがえる。ジョン・キャラハンと同じくポートランドに住んでいた監督のことを野村は「ガスといえばポートランドのアンバサダーみないたところがあった」といい、監督がロサンゼルスに引っ越した理由を尋ねた。すると監督は「家族を置いてポートランドに来てもらって撮影するよりもロスで撮影した方がいい俳優に出てもらえる。ロスにはいい場所もある」と答え、ミランダ・ジュライがポートランドを舞台とする作品をロスで撮っていたことにインスパイアされたと付け加えた。

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今作の主人公ジョン・キャラハンは日本人にあまり知られていないが、ポートランドではどんな風に思われていたのかを野村が尋ねると、「80年代にカートゥーニストとして活躍し始め、僕が映画を撮り始めた頃に、ポートランドでローカルな人として知られるようになったんだ。カートゥーン(風刺漫画)は毒のあるもので、面白いけれど、いろんな人の気分を害したり、彼の障害を扱っていたりしたので苦情の手紙も届いていたようだよ。でも、それさえ喜んでいた」と語った。そしてキャラハンについての映画を作るきっかけを『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』のあとくらいに、ロビン・ウィリアムズがキャラハンの本の権利を買ったこととし、「彼はサンフランシスコに住みながら、ずっとジョン・キャラハンのファンだったんだ。それで僕に監督の話がきたんだよ」と説明した。

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監督はキャラハンが事故を起こして車椅子に乗っていることやアル中であることは知っており、「ロビンが演じるならば上手くいくのではと思っていた」という。しかし、脚本を2本書いたが、結局、映画化されなかった。そのためキャラハン本人から「一体どうしたんだよ。この映画ができる頃には死んでしまうよ」と言われたことを明かした。

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その後、キャラハンの言葉通り、2010年にジョン・キャラハンが、2014年にロビン・ウィリアムズが亡くなったが、コロンビアピクチャーズがまだ本の権利を持っており、改めて監督に興味があるかと打診があったという。断酒会やキャラハンが経験したプロセスに興味があった監督はそこにフォーカスしたドラフトを書きあげ、フォアキンに見せたのである。
野村が断酒会に興味があったのかと尋ねると「グループセラピーのことは知っていたよ。結構エキサイティングなんだ。8人が丸くなって、いろいろなことを話していくんだけど、みんなが嘘をついている。だから面白いものができるかもしれないと思ったんだ。僕は(ジョン・キャラハンが断酒会で学んだ)12のステップをやったことはないから、今でも問題を抱えているよ(笑)」と監督は意味深なことを語った。
その後、観客とのQ&Aでキム・ゴードンをキャスティングした経緯を尋ねられると、キム・ゴードンがガス・ヴァン・サント監督の『ラストデイズ』(2005年)に出演したことで付き合いがあり、ポートランドにショーで来れば見に行ったりしていたと話し、今作でのキム・ゴードンやベス・ディットーの話はアドリブだと明かした。

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また今後の作品について質問が出ると、「今、パリのファッション・ウィークについて書いているんだ。少年と父親の話だよ。『パラノイドパーク』がファッション・ウィークにいくって感じかな」と笑いを誘った。
主演のホアキン・フェニックスについて尋ねられると、「自分を徹底的に入れ込んでくれる素晴らしい俳優」と褒めた。

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野村は「登壇前の舞台裏でガスが『この映画を日本のみなさんが気に入ってくれるかな』と聞いていた」と話すと、会場からは割れんばかりの拍手が起こった。野村が「この映画は僕らの世代の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』。落ち込んでいる人や悩んでいる人にはいい話だと思う」と話すと、監督が「今日は来てくれてありがとう。ぜひ口コミをお願いします。そうしてくれないと誰も観ないから」と笑いを交えて観客たちに訴えて、会場をあとにした。

『ドント・ウォーリー』
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監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック
音楽:ダニー・エルフマン
原作:ジョン・キャラハン 
原題:Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot
配給:東京テアトル 
提供:東宝東和、東京テアトル
2018年/アメリカ/英語/113分/カラー
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公式サイト:http://www.dontworry-movie.com/

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