『教育と愛国』舞台挨拶 5月14日(土) シネ・リーブル池袋

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―大阪から斉加尚代監督と澤田隆三プロデューサーにおいでいただいております。
大きな拍手でお迎えください。(拍手)


斉加 毎日放送の斉加尚代(さいかひさよ)と申します。今日は大切な休日にこうしてご来場下さいましてありがとうございます。昨日、初日を迎えましてとても緊張していたんですが、音楽評論家の湯川れい子さんが駆け付けてくださって、開口一番「空気を読まない女性だからこれが作れたのよね」と言ってくださったんです(笑)。さらに「わきまえない女の連帯だ」。今大阪の教育現場で子どもたちを見つめていて、この教科書をめぐる現状、教師をめぐる現状を伝えなきゃいけない。この違和感を多くの人たちと共有しなきゃいけない。そういう思いにかられて完成させた作品でした。

本作は2017年7月にテレビドキュメンタリー「教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか」という番組を元に追加取材をした作品です。私たちMBSのドキュメンタリーチームは、一人のディレクターが年間3本~4本作り続けているものですから、番組を作った後、すぐ映画にする気持ちにはなかなかなりませんでした。
なぜ映画にしたかというと、新型コロナウィルスが襲ってきて感染拡大するにつれて大阪だけではなく、教育現場の先生方が政治主導によって翻弄され疲弊する、元気を失っていく姿をまのあたりにしたからです。
なんとか教育の独立性を担保することに意識を向けていかなければ、教科書の中身も子どもたちの学ぶ権利も奪ってしまうような方向へ歩み出してしまうのじゃないかと危機感を覚え、なんとかしてこの映画をみなさんにお届けしたいと思いました。
テレビでは視聴者とお会いすることはごく限られています。映画にしたのはこうやってみなさんとお会いしたかったからだと思います。高い壇上からで申し訳ないんですけれども、本作を通じて教育について語り出していただきたいと願っています。

殊にこの映画では、「教科書でこどもたちに戦争をどのように伝えていくか」ということを大きなテーマの一つにしました。この映画がプレス発表されたその日に、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。ウクライナでは子どもたちを含めて罪のない人たちが、暮らしと命を奪われるような状況が続いています。本物の、むごい、人々の命を奪ってしまう戦争が起きるとは全く思ってもいませんでした。
今「愛国」という言葉がすごく生々しく目の前に立ち上ってきています。ロシアでは10年ほど前からプーチン大統領の意向を受けて「愛国教育」がなされてきました。それもこの映画を制作してからあらためて知ることになりました。
教育は政治と一定の距離をとらないといけないという普遍的価値は、20世紀におびただしい戦争を重ねて、日本だけでなく世界の人々が手に入れたものじゃないか、とあらためて思います。戦後、教育基本法は「世界の平和を実現する」という理想を掲げて、日本の教育は出発しました。
現場の先生たちはこれまで一生懸命に戦後教育を支えてきたのですが、2006年(教育基本法改定)以降日本の教育がどうも違う方向へ走り出したのかもしれない、という違和感をずっと持ってきました。
具体的にいうと、1990年代の大阪の学校の職員室は子どもを真ん中に置いて、先生たちがつばを飛ばして活発に意見交換をしていたものです。今では職員室は静まりかえって、校長先生が教育委員会から降りてくる伝達をするだけです。自由に議論ができない職員室、自由にモノが言えない先生たち…そんな先生たちの元で子どもたちはこれからどうなってしまうんだろう?私自身何かできることはないか?そんな思いでこの映画を作りました。
湯川さんといろいろお話したこととか、こみあげてきて長くなりましたけれども、今日はほんとにどうもありがとうございました。(拍手)

澤田 映画のプロデューサーをしました澤田といいます。監督の斉加とは大阪の毎日放送の報道情報局、同じ職場にいます。2015年から2年間、毎週1本のレギュラー、ドキュメンタリー番組「映像シリーズ」のプロデューサーをやっていて、斉加がディレクターをしていました。その2年間で斉加が7本作りました。そのうちの1本がこの映画の元になったテレビ版の「教育と愛国」で、サブタイトルが「教科書でいま何が起きているのか」です。その後5年間私は離れたんですが、斉加はそのまま丸7年大阪でドキュメンタリーを作り続けています。このテレビ版をやった後も「バッシング」とか共通するテーマを追いかけて、「今この国で、こういうちょっとおかしなことがある。気持ち悪いことが起きている」という事象を日頃から掘り起こし続けています。
と言っても彼女はイデオロギー的に、安倍政権とか政治的なスタンスで反対して出発しているのでは全くなく、彼女自身が言ってた「こんなおかしなことが、なぜ?」というところから取材活動をしています。観ていただいた映画の冒頭、「道徳」の教材の中で「男の子が街のパン屋さんで、焼き立てのパンを買って帰る」というごく自然ないい話であったものが、誰がそういったのか知らないけれども、パン屋じゃあかんと。なぜかそれが和菓子屋になって。教科書検定の理由では「国や国土を愛する態度が不適切である」と。そこの奇妙さというかおかしさ。笑い話になるような話ですが、それが出発点になっています。
彼女はライフワークとして大阪の教育の取材を続けてきましたので、元々見てきた教育の問題、教科書の検定のあり方、さらには検定後の教科書についてさえ、政治の意向で書き換えが行われていることに気がつきます。言ってみればパンがまんじゅうになったどころか、今やまんじゅうに毒まで入れられてきている。そういう状況を彼女は察知して2021年に追加取材をしてこの作品に至ったと思います。

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私も60になりますけど…テレビがどうもつまらないというのは私たちと同世代の人間、ここに来ていただいている中にも同じように思われている方が多いんじゃないかと思うんですけども。「テレビはつまらない」というのには、まあいろいろな理由があると思います。報道系でいうと「冒険しない」。上というか空気を読んでしまうんですね。「空気を読まないからこういうのが作れるのよね」とはさすが湯川さんで、その通りでありまして。やっぱり空気を読む人がどんどん増えていっている、これはどこの組織でも、社会全体がそうなんでしょうけど。テレビ番組を作っている現場で「あれがダメだろう、これがダメだろう」「こういうことやって、上に怒られたらどうしよう。自分の評価が下がる」とかそうやって会社の中で空気を読んでしまっている気がします。そういうこともあって自局の番組はほとんど見なくて、見るとしたらNHKかBS。NHKがいいとはいいませんけど。他局のドキュメンタリー系は見たりはしますが、バラエティとかは人生の残り時間を考えたら時間の無駄やと思っていますので(笑)、会社には申し訳ないけどほとんど見てないです。
そんな中で人によってはやや嫌われるような番組を続けてこられたのは、ひとえに“斉加という問題意識を持った取材者”がいるかどうかだと思うんですね。私はプロデューサーとして、後ろからちょっと押すだけで。これからは、テレビ局の中でも一人一人がどれだけ今の世の中を見て「これだけはやっぱり視聴者に伝えたい」と。それを「映画にしてさらに観客に伝えたい」と、思いを持ち続ける。そういうのが自分たちに合ってるのかと思います。
今回初めて映画を作らせてもらって、テレビと映画の違いを劇場で感じています。テレビも視聴者からのリアクションを色々といただくんです。感想、お怒りなど最近はメールか、お電話、手紙でお名前も書いてあったりなかったり。
映画の場合はこうして劇場に時間をかけてわざわざ来ていただいて、お金を払って観ていただく。今日は100人以上入っていらっしゃるそうです。高いところからで失礼ではございますが、お顔を拝見できるというのは制作者冥利に尽きます。「なんじゃこの映画は」とか「長い」とかいろいろな思いがあるにせよ、ですね。こうして観ていただいて、批判も含めて、様々な思いを持ってくださる人を目の前にできるというのは、映画ならではの体験であり喜びです。長くなりました。どうも有難うございました。

―テレビ版を見ていない方もけっこういらっしゃると思うので、テレビ版を作られた経緯と、今回映画化するのに、どういうところを追加されたかというお話を少しいただければと思います。

斉加 テレビ版は2017年の7月に放映したんですが、ちょうどその年の3月に道徳教科書の検定内容が発表されて「パン屋さんが和菓子屋さんに書き換えられた」ということを知ったんですね。インターネットの中で「あんパンだったらどうなんだ?伝統と文化の尊重なんじゃないか」、「パン屋さんの怒りは収まらない」という声が聞こえてきました。たとえば戦後学校給食はずっとパンで、子どもたちの需要を満たしてきたんです。文科省ともずっと固い関係のあったパン業界は「なんてことをしてくれるんだ、私たちが愛国心に照らして不適切だというのはどういうことなんだ」と、とっても怒っておられたんです。
一方で学生さんから、「そんなに和菓子が大事だっていうんだったら、給食に和菓子出してくれ」って(笑)。確かに私も給食で和菓子は食べたことなかったなって思ったんです。素朴ないろんな声をインターネットの中で見たり、直接聞いたりする中でちょっとクスッと笑ってしまう出来事なんだけれども、ここに教科書検定制度の問題点が凝縮しているんじゃないかと思いました。
知人の絵本作家さんは、道徳教科書のイラストに、“ザリガニ釣りをしている子どもたち”を描いたら、教科書編集者が真剣な顔で「ザリガニじゃダメなんです(外来種だから)。川エビにしてください」(笑)と言われて、作家さんはすごく困惑したそうです。「川エビ見たことないのに」と思いながら調べて一生懸命描き換えたと聞きました。教科書を制作する現場が国の意向、ときに政治家の顔色をうかがいながらでないと作れない、そんな現場になっているのではないか? 社会の同調圧力とかそういう空気が教科書に象徴されているのではないか?ということで、テレビ番組を制作したんです。
その中でも沖縄県の渡嘉敷村の集団自決(強制集団死)の記述が2006年度の高校日本史の検定で書き換えられ、「軍の関与という部分が消された」というのも私の中では強く印象に残った出来事です。戦争の記述と道徳のパン屋さんのことはまるで違うんですけれども、実は繋がっているということに着目して企画書を書きました。
当時取材してすぐ、「これは!」と思ったのが「学び舎」の中学歴史教科書を採択した私立中学校に200枚300枚というハガキが押し寄せていたということです。「学び舎」の教科書は書店でも手に取って見ることができます。ご興味があればぜひ。
子どもたちから問いが発せられるように、読み物として非常に面白く作られている教科書ですけれども、そこに”反日”というレッテルを貼って抗議ハガキが押し寄せる。その圧力がどのくらいか感じとっていただけたと思うんですけれど、圧力に翻弄される人たち、圧力をかける人たち、その両方を描くことによって、この教育をめぐる現状が映し出せないかと考えました。テレビは視聴率というものが一つの物差しとしてあります。視聴率をとるためには通常、強い、何かものすごく躍動的な映像というのを求めがちなんです。本作を制作するにあたっては、見えない圧力、見えない政治介入をどうすればリアルに感じていただいて、見えるようにできるのか。そこを苦心して制作しました。
映画の企画書を書いたときは、コロナ禍が爆発的に拡がっていて、当社の番組予算も削られたり、スタッフも人員削減されていくような中でなかなか企画が前に進まない時期でした。
そのときに、テレビ版を知ってくださっていた社外の方たちが「なんとしてでも映画にすべきなんだ」と、声をかけてくださいました。社内外の多くの方たちが支援をしてくださって、この映画は完成しました。とても感謝しています。さらに語りを俳優の井浦新さんが引き受けてくださったんですが、それも限られた予算の中で、多分引き受けてもらえないんじゃないかと、恐る恐るお願いしたんですけれど、企画書を読んで「やりましょう」と。今日もインスタグラムに「この映画観てください」とご自身の文章で書いてくださって、移動の車中で拝読して胸がいっぱいになりました。この映画はテレビ版を見てくださった方たちが映画へ押し上げてくださり、今こうして出逢えた皆さんが映画として歩き出すその背中を押してくださるんだと思っています。

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「映画は好かれる権利も嫌われる権利もある」と劇場支配人が仰っているのを耳にして、「嫌いになる権利もある」っていう言葉で私の気持ちは楽になったし、重圧からだいぶ解放されました。
たとえば「愛国」という言葉を考えたときに、自分の中から湧き上がってきて「故郷が好き」とか「この国が好き」という気持ちは否定するものじゃないし、むしろポジティブに受け止める言葉だと思うんです。ところが、上から「国を愛しなさい」と降りてきたときに、「いや、私はこの国嫌いなの。こうこう、こういう理由があるから」と言えない社会は私は嫌だなと思っています。
たとえば家族でも「お父さんお母さん大好き!お爺ちゃんおばあちゃん大好き!」という子どももいれば、いろんな事情で「大好き」と言えない、「嫌いなんだ」って言う子どももいて、そういう子どもも受け入れられる先生、教室、そんな社会のほうが生きやすい、と思うし、子ども一人一人が「自分でいること」を肯定できる社会であってほしいと思っています。
大阪は、在日コリアンルーツの子、中国や他国のルーツの子どもたちがたくさん公立の学校に通って学んでいます。そういう子どもたちにも配慮する教育を先生たちは掲げてきました。みんな違って、それでいいんだと。違うけれどもお互い理解し合おう、という教育をしてきたはずなんです。教科書を広げたときに「この教室にはいろんなルーツの子どもがいるけれども、じゃあ歴史をどう教えよう、と先生が悩んで、真面目な先生ほど苦しむという、そういう事態がすぐそばに来ているということ。私はそれを映画にして伝えなきゃいけないと強く思いました。
すごく長くなりました。大阪の先生たちは頑張っているんです。けれどもその一方ですごく苦悩しています。教育の自由が今崩れかかっている、奪われかかっているという危機感をお持ちです。

―澤田プロデューサー、制作の観点から何かありませんか?

澤田 彼女が取材してきた、撮ってきた映像は番組制作の途中に観るんですが、そのたびに驚きの連続で。学び舎の教科書を使ってる学校に来た菓子箱いっぱいの抗議ハガキ。うわーこんなに来てるんやと、これは絶対とりあげようと。それから日本書籍、私ら年代的にこの教科書だったんですけど、そこが倒産していた!ニュースで見た記憶がなかったので、びっくりしました。理由が慰安婦のことを書いてあったために、東京23区中21区に採択されなくて、あっというまに倒産するという、こんなことが起きてるんや!ということ。どういう完成になるか、そのときは分からなかったけど、「驚くべきことが起きてる」ということで、放送する価値あるなと。
ラッシュという、完成前の1時間以上の繋いだものを観たときはさらにさらに驚きの連続でした。東大の大先生のインタビューとか、学び舎の本を採択した学校に抗議ハガキを送ってた市長のあっけらかんとしたインタビューとか。ナレーションとか入る前のラッシュでそれだけ驚いた。私も何十本とテレビのドキュメンタリーをしてきたんですけど、初めての経験で。
その結果テレビ版はそれなりの評価をいただきました。映画版はさらに追加取材をして、教科書以外の部分も盛り込んでできた作品です。
さきほども申し上げましたが、映画は一人一人の皆さんによって大きく育てられていくものじゃないかなと思っています。今日観ていただいていろいろ感想はあると思いますが、ここは知ってほしいな、よかったなという部分がありましたら、どうかお知り合いの方たちにSNSでも何でも結構ですので、発信して横に繋げていただけたら、作った者の望外の喜びです。北海道から沖縄まで42館(8/1時点で60館)で上映しております。よろしくお願いできればと思います。

―時間ですので販売物の宣伝をさせていただきたいと思います。

澤田 こちら(映画パンフレット)38pもあって分厚くなってしまったんですけれど、こちらにシナリオとナレーション全文、インタビューも載っています。これ見ていただいたら復習になります。私が書いた斉加、彼女の真の姿とか(笑)。暴露はしてない(笑)。

斉加 はい、はい(笑)。
先月「何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から 」というちょっとドキッとするタイトルなんですが、集英社新書から出版されました。久米宏さんも推薦してくださっています。これを読んでいただけたら2015年の「なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち」というドキュメンタリーからこの映画、本作に至るまでの私の取材の舞台裏をご理解いただけると思います。ぜひこの書籍も手に取っていただけたらありがたく存じます。
今日はほんとにどうもありがとうございます!(拍手)

©2022 映画「教育と愛国」製作委員会
公式サイト:mbs.jp/kyoiku-aikoku
作品紹介はこちら 
⻫加 尚代監督インタビューはこちら

『教育と愛国』が公開されて2ヶ月あまり。ロングランを見越して、途中で発表しようと大事に持っていた舞台挨拶の書き起こし記事をお届けします。
すっかり遅くなってしまいましたが、行けなかった皆様にも、当日のお二人の熱量をそのまま受け取っていただけるのではないでしょうか。斉加尚代監督と澤田隆三プロデューサーは、今も熱心に舞台挨拶にトークにと全国へ出かけています。
東京ではキネカ大森、下高井戸シネマで上映中。全国での上映館については公式HPの劇場情報でお確かめくださいませ。
(まとめ・写真:白石映子)


ホン・サンス監督『イントロダクション』主演 シン・ソクホ オンライン舞台挨拶

映画『イントロダクション』&『あなたの顔の前に』日本公開記念
シン・ソクホ オンライン舞台挨拶

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3年連続ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞で注目の名匠ホン・サンス監督の新作『イントロダクション』と『あなたの顔の前に』が、6月24日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほかで全国公開されています。
詳細:公式サイト:http://mimosafilms.com/hongsangsoo/

公開初日6月24日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町での『イントロダクション』18:15の回上映後、主演俳優シン・ソクホが初日舞台挨拶としてオンラインで登壇しました。

●シン・ソクホ プロフィール
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1989年6月15日、韓国、ソウル生まれ。ホン・サンスが教授として在職している建国大学映画学科で学ぶ。ホン・サンス監督作品では、『正しい日 間違えた日』(15)にスタッフとして参加し、『草の葉』(18)『川沿いのホテル』(19)に出演、『逃げた女』(20)では猫の男を演じ、『イントロダクション』(20)で初主演を飾った。『あなたの顔の前に』(21)では、主人公サンオクの甥スンウォンを演じている。その他の出演作は、ホン・サンス監督のプロデューサーを務めてきたキム・チョヒの監督デビュー作『チャンシルさんには福が多いね』(21)、イ・ドンフィ主演の『グクド劇場』(20、未)など。

初主演を飾った『イントロダクション』では、将来に思い悩みながら、父、恋人、母と再会を果たしていく青年ヨンホを演じた。
『イントロダクション』作品紹介

『あなたの顔の前に』では、イ・ヘヨン演じる主人公サンオクの甥スンウォンを演じ、重要なシーンで登場している。
『あなたの顔の前に』作品紹介
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(C)2021 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved



◆シン・ソクホ オンライン舞台挨拶
日時:2022年6月24日(金)『イントロダクション』 18:15の回上映後 
会場:ヒューマントラストシネマ有楽町 スクリーン1
MC:ミモザフィルムズ 大堀知広
通訳:根本理恵

MC:スペシャルゲストとして、『イントロダクション』主演のシン・ソクホさんをオンラインでお迎えしております。 2作品の字幕をご担当いただいた根本理恵さんに通訳をお願いしております。
シン・ソクホさん、こんにちは~


シン・ソクホ:(日本語で)初めまして。『イントロダクション』の主役を務めましたシン・ソクホです。よろしくお願いします。

MC:お忙しい中、今日はありがとうございます。

ソクホ:今日はお招きいただき、皆さまと同じ空間にいることができて光栄です。

★途中で主演だと知らされた!
MC:本日は初日の上映に駆け付けてくださいましたお客様に、より作品を楽しんでいただきたいと思い、いろいろとお話をお伺いしたいと思います。
シン・ソクホさんは、ホン・サンス監督が教授として在職している建国大学映画学科で学ばれて、ホン・サンス監督作品には、『正しい日 間違えた日』(15)にはスタッフとして参加され、『逃げた女』などに出演され、今回は主演を務められています。どのような経緯で主演が決まったのでしょうか?


ソクホ:実は今回も特別な状況ではなくて、以前出演したものや、スタッフとして参加した時と同じように、気楽に参加しました。今回も俳優というよりスタッフという比重が大きいと思って参加していましたら、途中で、監督から「ヨンホの出演場面が増えるよ」と言われて、今回は主演なのだと知ることになりました。

MC:最初は主役だと知らずに参加されたのですね。

ソクホ:監督の撮影方法というのが、すべてのシナリオを事前に渡すのではなくて、その日その日に渡してくださいますので、誰が主演で誰が助演なのか前もってわからないのです。今回も撮影前に主演だというお話はなかったので、少しだけ出演するのだという気持ちで参加しました。

★主役と知ってプレッシャーより責任感が沸いた
MC:あとから主演とわかったとのことですが、別のプレッシャーは感じられましたか?

ソクホ:今回主演だと知らずに現場に入りましたので、気楽に参加しようという心構えでした。以前のように今回も楽しい作品を作ろうという気持ちでした。途中で主演だと聞きましたので、僕にとっては初めて経験する状況でしたので、言葉で表現できないくらいとてもプレッシャーを感じることになりました。けれども、ホン・サンス監督の現場は僕自身親しみがありましたし、スタッフの皆さんやまわりの俳優の先輩の皆さんもアドバイスしてくださいましたので、プレッシャーというよりも頑張ろうという責任感のほうが大きくなりました。

MC:撮影の段階では映画の全体像がわからない状況だったとのことですが、完成した『イントロダクション』を初めてご覧になった時は、いかがでしたか?

ソクホ:スタッフとして参加した作品と違って、今回は俳優として、しかも主演として参加しましたので、違った印象がありました。初めて完成した作品を観た時には、観客の目で見るよりも、出演した側として観ましたので、もっとここは頑張ればよかったとか、こうしたらよかったとか、個人的にそういう部分を探しながら観ました。

★酌み交わすお酒は本物
MC:ホン・サンス監督の作品といえばお酒が欠かせない存在ですが、本作でも第三章でヨンホたちがお酒を飲むシーンが印象的でした。ここで出されているのは実際のお酒だと聞きましたが、本当でしょうか?

ソクホ:そうですね。ホン・サンス監督の現場では、俳優たちは、実際にお酒を飲んで演技をしています。過度な演技を引き出すために無理に飲ませるということはないです。あくまで俳優本人がコントロールできる範囲でお酒を飲みながら演技しています。途中でこれ以上、お酒を飲んだらダメだなと判断したときには、監督からカットの声をかけてくださいます。
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MC:映画の中で、ヨンホはあまりお酒に強くない役柄でしたが、ソクホさんご自身はいかがですか?

ソクホ:僕自身、まわりの人たちと一緒にお酒を楽しむのは好きなのですが、実際のところ、お酒はちょっと苦手です。監督は僕があまり飲めないのをご存じでしたので、無理に飲ませようとはしませんでした。自然の演技ができるように、少しだけお酒が入ったような感じで演技ができるように仕向けてくださいました。焼酎でしたら、ボトル半分くらいの量でした。

★キスシーンへの戸惑いは理解できる
MC:役者を志していたヨンホが、どうしてもラブシーンが演じられなくて役者をやめたことが明らかになって、俳優がカツを入れるのですが、このシーンを演じられて、ヨンホの気持ちをどのように理解されましたか?
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ソクホ:俳優として僕が考えるには、もしかしたら自分自身の言い訳に聞こえてしまうかもしれないのですが、愛する人がいる状況だったら、悩むこともあり得ると思います。悩むに値することだと思います。僕自身も愛する人がいますので、悩んでしまうのは事実です。なかなかほんとうのことが言えないと思います。これが正しくて、これは違うといえないような気がします。映画の中では、ヨンホはその時の気持ちを言ったのだと思います。僕の考えも少し入っています。あの場面では感情移入できました。


★真冬の海に入り、しがらみを洗い流した思い
MC:ラストシーンで冬の海に飛び込んでいくシーンが切なくて印象的だったのですが、3月ごろに撮影されたと伺ったのですが、寒かったのでしょうか?
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ソクホ:撮影した日は、ほんとうに寒くて風が強かったことを覚えています。あのシーンについては、撮影のために海に行ったのですが、散歩をしていたときに、監督から「ヨンホが海に入るのはどうか」と提案がありました。「いいですね。とてもきれいなシーンになると思いますよ」とお話したのですが、撮影の最後の日に、実際に「ヨンホが海に入る」と脚本に書かれていました。とても寒くて波が強かったので心配していたのですが、いざ撮影がスタートして実際に海に入ったら心配はなくなりました。ヨンホが以前に抱えていたいろいろなしがらみを海に入って洗い流すような気持ちでした。ヨンホを演じてきた本人としては、寒いというより、今までのヨンホのしがらみを洗い流せてさっぱりしたという気持ちでした。

★当日渡される台本、展開かだんだん楽しみに
MC:ホン・サンス監督のその日に撮影する台本を当日渡すというユニークな演出方法は、演じる俳優の立場としては大変なのでしょうか? それとも面白いものなのでしょうか?

ソクホ:正直いいますと、役者にとっては面白いとはいえないです。当日台本をもらうわけですから、台本を見た時には、はたしてできるだろうか、ご迷惑をかけるのではないだろうかという心配のほうが多かったのですが、段々慣れてきまして、プレッシャーよりも、今日はどんな内容が書かれているのだろうと楽しみになってきました。シナリオをその日にいただくと、まるで本を読んでいるような気持ちで演じることができるようになりました。時間が経つにつれて慣れてきて、面白いと思うようになりました。


◆会場からの質問

- 台詞の言い回し方が、普段のしゃべり方よりもすこしゆっくりといいますか、どの映画もホン・サンス監督の映画という雰囲気を感じます。監督からはどのように台詞を話すようにという指示はあるのでしょうか?

ソクホ:監督から台詞をゆっくり話してくれということは僕の記憶ではなかったです。その日に渡された台詞を覚えて演技がスタートすると、監督がそこは変だなと思わない限り、また、監督の意図とは違うと感じない限り、止めることはありません。監督からこうしてほしいと強い希望があるときには、こういう状況だから、こんな風に話してくれと事前に簡単な説明があります。そういうやり方でいつも撮影しているので、現場で急に指示をするということはありませんでした。

― 映画とても面白かったです。海の場面はご説明を聞いてそういう状況だったのかと思いました。ホン・サンス監督の生徒さんだったとのことですが、監督に憧れている生徒さんはたくさんいて、スタッフとして参加したり俳優として使ってほしいと思う生徒さんも多くいると思うのですが、ソクホさんが監督に抜擢されたのは、どのようなところが気に入られたのだと思いますか? 思い当たることはありますか?

ソクホ:もしかしたら自分のことを自慢してしまうかもしれないのですが、学生だった当時、ホン・サンス監督の講義のクラスで班長を務めていましたので、その姿を見て、責任感を持ってやっていると思っていただけたのではないかと思います。自分がホン・サンス監督の弟子だというのは恥ずかしいという面もあります。

― 楽しく拝見しました。スタッフとして、俳優としてホン・サンス監督の映画に参加されてきたシン・ソクホさんからみて、ホン・サンス監督の映画作りの現場の面白さはどういうところにあると思いますか?

ソクホ:僕にとっては、もはやホン・サンス監督の現場が標準値で、それが僕にとっては通常の映画の現場として親しみを感じています。ほかの一般的な現場にはない、例えば次の日はどんなことがでてくるのだろうという期待を持たせてくれる現場です。ホン・サンス監督から映画作りに対する姿勢や心構えや信念を学びました。ホン・サンス監督は映画を単なる手段として考えているのではなくて、純粋なものと考えています。同じ映画を作る者としてたくさんの影響を受けています。映画を作るときには、最初に、ほんとに簡単なシノプスで、どういう映画なのかを説明してくださるのですが、ほんとうに簡単です。これがテーマだということを最初から与えるのではなくて、観る人にとっても、映画を観て、感じて心を動かして貰えればばいいという思いで、僕たちにも簡単に説明するのだと思います。

MC:お話ありがとうございました。残念ですがお時間になってしまいました。最後にひとこと会場の皆さんにご挨拶をお願いします。

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ソクホ:映像を通してご挨拶させていただき嬉しく思っております。また『イントロダクション』のような素晴らしい作品をもって、実際に日本に行ってご挨拶できる機会があればと思います。
(日本語で)来てくださってありがとうございます。おやすみなさい。



************

オンラインでしたが、シン・ソクホさんの真摯に映画の現場に携わるお人柄を感じることのできたひと時でした。今後の出演作を楽しみにしたいと思いました。
また、ホン・サンス監督の、その日その日に台本を渡すという映画作りのスタイルが、俳優にとっても新鮮で、作りこんだものでない即興的な面白さが観客にも伝わってくるような気がしました。
ホン・サンス監督の作品に流れる独特の空気感が生まれる秘訣の一旦を知ることのできた舞台挨拶でした。
取材:景山咲子

『フタリノセカイ』公開記念舞台挨拶

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1月15日(土)新宿シネマカリテにて上映後、飯塚花笑監督、片山友希さん、坂東龍汰さんの舞台挨拶が行われました。
MC:伊藤さとりさん (ほぼ書き起こし)

MC おひとりずつご挨拶をお願いいたします。

片山 ユイ役の片山由紀です。今日は来てくださりありがとうございます。

坂東 坂東龍汰です。今日はお忙しい中足を運んでくださいまして本当にありがとうございます。短い間ですがよろしくお願いいたします。

監督 本日は寒い中ありがとうございます。飯塚花笑です。よろしくお願いします。

MC この作品は2019年6月に撮影ということですが、その後コロナもあってやっとこうやって昨日初日を迎えました。まずは飯塚監督にお伺いします。想いの強いこの作品が公開されてどんなお気持ちですか?

監督 一言でいうと「山あり谷あり」で長い時間をかけて企画開発から進んでいった作品です。きのうはちょっと言葉にならなくてまだ自分の中で整理がついていません。嬉しい気持ちやらこれからどうこの作品が拡がっていくか不安もありますし、言葉では言い表せない気持ちになっています。

MC あらためておめでとうございます。飯塚監督の想いの詰まった作品に出演されたお2人は、どんなお気持ちなのか教えてもらっていいですか?

片山 私はまだ実感していなくて(笑)、これからどんどんどんどんたくさんの方が観てくれはって、どういう思いなんだろうなとすごく気になります。感想がすごく気になる映画だなぁと思います。

MC 聞きたいくらいですものね。坂東さんいかがですか?

坂東 はい。撮影自体は2年半前で…あれからもう2年半か…けっこうすごいスピードで時が経っているのを感じます。日本でも世界中でも大変なことがあった中で、みんなでお芝居してみんなで作りあげたこの映画が、皆さんの元にこのタイミングで届くことを嬉しく思いますし、とても意味があることではないかなと強く思います。みなさん、もう観たんですよね?

監督 観てくださったよ(笑)。

坂東 そうですよね。ほんとに感想が気になります。昨日、インスタのストーリーに「公開です!」とあげたんですけど、僕もまだ実感ないです。でもここからいろんな声が届くかと思うと嬉しいです。はい。

*坂東さんのマイクが入っているかどうかチェック。坂東さん「紐ほどけちゃった」「マイクと全然関係ないけど」と靴の紐を結びなおす。

MC 飯塚監督、昨日から公開していますので、反響はどうですか?届いていますか?

監督 ちらほら届いています。この作品、観る方の状況とか背景によってやっぱり感想が全然違うんだなということをじわじわと実感して。2人も言ってくれたけど、感想を聞きたいなという思いがすごいあります。

MC 片山さんと坂東さんも2019年の撮影から月日が経って、いろいろお仕事や生活をしていく上で考え方も変わっていったかと思いますけど、この作品に関わったことで何か新しい考えとか、考え方が変わったこととかありますか?

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片山 私はよく耳にしていた“LGBTQ”という言葉に対してすごく違和感を持つ方もいるということを知って…知らなかったときはLGBTQという言葉を出していたんです。そうじゃなくて“セクシャルマイノリティ”のほうが違和感を持つ方が少ないんだな、ということを知ったので、これからはLGBTQでなく“セクシャルマイノリティ”という言葉を使ったほうがいいんじゃないのかなと、気をつけています。

MC そこまでこの作品に真摯に関わったということですよね。じゃ坂東さんはどうですか?

坂東 そうですねぇ、あらためてこの…あ、(マイクが)入った!(笑)あらためて、映画ってすごいなって思いなおしました。思い直したというか。僕も撮影前は‟LGBTQ” “セクシャルマイノリティ”というものに知識があったわけでもなくて。撮影や、撮影した映画を観ることによって僕の知らなかった世界を観てわかる。‟わかる”っていうことはすごく人生にとって豊かなことなんだと再確認させていただきました。
だから人生の中で映画って”とっておきの教科書”みたいなものなのかなって、僕の人生ではっていうことなんですけど。影響を受けて育ってきましたし、今後も映画を通して「わかる」、「知る」っていうことを繰り返し繰り返し学んでいくんだとあらためて思いました。

MC 今のお話を聞いて飯塚監督いかがですか?

監督 あの、ちょっと今の話とずれちゃうかもしれないんですけど。撮影が2年半前だったので、2人がほんとに今よりずっと子どもっぽい(笑)。この2年間での2人の成長がすごく印象的で。
こんなにちゃんと喋る子たちじゃなかった(笑)。

片山・坂東 え~!(笑)

監督 映画も家族のことを描いていますし、これからも映画を通じて協力しあって行くんですけど、なんだか感慨深いです。

MC 今監督から“家族”という言葉が出てきましたけど、ご覧いただいて「こういう家族の形もありだよね」って思われた方多いんじゃないかなと。監督自身は家族や愛ということに対してどういう風にお考えになってお作りになられたんでしょうか?

監督 この映画の中で描かれている家族の形って、こういう状況では「幸せとは感じない」という方もいらっしゃると思います。またある人にとっては「こういう形もあるんだ、これは自分にとって希望になる」となるかもしれない。人それぞれ家族や幸せの形って違うと思うんです。時代によっても変わると思いますし、だから僕は定義しないってことが正しいんじゃないか、時代や背景によってそれぞれの中であるものだと思っています。

MC 片山さんと坂東さんは家族というものに対して将来どう考えていらっしゃるか、教えてもらってもいいですか?

坂東 ええっ!(会場笑)
この『フタリノセカイ』という映画の中でもものすごく大事なキーとしていたのが‟無償の愛”というものだと僕は思います。自分が育ってきた家庭環境とか、周りの友達の家族だったりとか、どの家庭を見ても、どれだけ大変な状況におかれたり、不幸なことがあったりしてもみんなやっぱり前を向いて明るい未来を信じて力強く生きている。そういう人たちでこの世界はあふれかえっている。その根本にあるのはやっぱり愛なんだなと感じながら生きていますし、この映画の小堀真也という役を通してひしひしと感じながら演じることができました。
この映画は、当事者の方でも、そうでない方が観ていただいても「未来は明るいし、変えることができる」と伝えられる映画です。僕はこの先、家族を持ったとしてもそこにある‟愛”を大切にしていきたいと思います。仕事も大事ですけど、ほんとに大事なのは愛だなって思いましたね。人との関係性の中で、はい。

MC この中で‟無償の愛”というものに気づかされたと。

坂東 ‟無償の愛”って撮影前の僕は全くわからない状況でした。迷いや葛藤やわからないということを、自分の中でどう腑に落とすことの作業の難しさ感じました。演じきった後に少しでもそれを感じられたのは大きな体験でした。

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MC そうですよね。では片山さん、どうですか?

片山 ‟家族”ですよね? 私がいつか結婚するならば、うーん、お互いが外で別々に闘って帰ってくる、安心できる場所がひとつあれば幸せだなって思います。

MC 居場所的な?

片山 そうです、そうです。それだけで十分かなって思います。

坂東 おうち?(会場笑)

片山 家っていうよりも安心できる場所。相手の人とか、自分が安心できて眠れる場所があればいいかなって思います。

坂東 確かに。

MC お互いが安心できる関係性って、作るのにどうすればいいと思いますか?

片山・坂東 ええ~~(と監督を見る)

監督 助けを求めない(笑)。

坂東 変化球が来た(笑)。「しちゃだめ」って言ったことしてる。(MCの伊藤さんを見る)

片山 「信じあうこと」じゃないですか。疑いを持たずに素直に信じて、軽やかに。ギスギスせずに。何事にも軽やかな気持ちでいられれば、お互いがリラックスできるんじゃないかなって思います。

MC 確かにね。そう思いますよね、坂東さん。

坂東 はいっ!!(会場笑)

監督 思ってる?(笑)

MC 飯塚監督、どうですか?2人の話を聞いて。

監督 あのう大人になったな、と。(笑)

坂東 そればっかりじゃないですか(笑)。

監督 靴紐ほどけてるとか、そういうのは変らないなと親のように思っています。

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MC 片山さん坂東さん、お2人共演してそれぞれ役者としての演技力を体験しながらこの映画を作っていったと思うんです。共演されてどうだったんですか?(2人顔を見合わせる)

片山 こんな面と向かって「こうでした」っていうのはちょっと「恥ずかしい(2人揃って)」。

坂東 この近さで。せめて10mくらい離れてると(笑)言いやすいんですけど。
心強かったです。ほんとに。ずっと引っ張っていただいた、という印象が強いです。たぶん監督もそれは感じていると思うんですけど。僕が真也として、わからない、感情や気持ちを掴み切れていないときに、片山ちゃんがユイとしてそこに力強く存在してくださっていたおかげで、演じることができたシーンがたくさんありました。ほんとにすごい感謝しています。

片山 ありがとうございます。

坂東 こちらこそありがとうございます。

片山 「引っ張ってくれた」と言ってくれたけど、自分ではあんまり(意識して)なくて。撮影しているときは、緊張しているとは思ってなかったんですけど、毎朝ホテルで歯を磨いていると嗚咽が止まらなかったんです。撮影が止まったらなくなったんですよ。知らない間に緊張していたんだって気づいたんです。坂東君がずっと楽しそうに現場にいて、私はどっちかというとすぐにいっぱいいっぱいになってしまうので、そうじゃない人が隣にいるというのは、私もちょっとずつリラックスできて撮影していけたんじゃないかなと思います。

MC また共演してください。ありがとうございました。
では皆さんからひとことずつメッセージをお願いします。


片山 今日はありがとうございました。たくさんの方がこの映画を観て、いろいろな感想を持っていただければすごく嬉しいなと思っています。これからもいろんな人にいっぱい言っていってください。

坂東 ほんとに今日はお越しくださいましてありがとうございました。たくさんのボードも作っていただいて嬉しいです。この映画の誕生日は昨日ですけれども、これから年を重ねていって(この映画が)成長していくのを見届けるのがすごく楽しみです。それはある意味皆さんにもかかっていると思いますので、ぜひ周りの友達だったり、SNSだったりで感想を。「ここがひどかった」でも「ここが素晴らしかった」でもいいですし、なんでもいいので拡散していただけると嬉しいです。
「わかる」ということはすごく豊かになることだと思います。今後も僕はたくさんの映画を観ていきたいと思いますし、皆さんも観ていってほしいですし、この映画もたくさんの人に観ていただきたいです。すいません、選挙みたいになっちゃった(会場笑)。よろしくお願いします。今日はありがとうございました。(拍手)

監督 坂ちゃんのうちわというか、ボードを持ってくださっているのが目に飛び込んで。
何度も言っていますけれども、2人の成長がほんとに嬉しい。こうして劇場に帰って来れたのも嬉しく思っています。坂ちゃんが触れてくれましたが、この映画は生まれたてです。今日が公開2日目で、これからどんどん世の中に羽ばたいていってほしいなと思っていますので、2日目に観た皆様はある意味「宣伝隊長」ということで(笑)。ぜひぜひこの映画の感想など広めていっていただきたいなと思います。本日は寒い中ありがとうございます。(拍手)

MC ありがとうございました。

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●飯塚花笑監督インタビューはこちら
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(取材・写真 白石映子)

『夫とちょっと離れて島暮らし』初日舞台挨拶

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12月25日(土)新宿K’sシネマにて、初日を迎えたドキュメンタリー『夫とちょっと離れて島暮らし』の舞台挨拶が行われました。10時からの上映終了後、主人公のちゃずさん、奄美出身の歌手 中孝介(あたりこうすけ)さん、國武綾監督が登壇しました。國武監督自らMCで、携帯電話や撮影について、マスク着用など注意事項のお願い、ゲストの紹介もされました。
★2022年1月7日(金)まで毎日10時より上映中(元旦のみ休映)


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監督 皆様映画のほうはどうでしたでしょうか?(拍手)ありがとうございます。初日にお越しいただいてすごく感無量です。この映画は奄美先行上映というのを行っておりまして、いろんなところで上映して来まして、たくさんの方にご覧いただきました。
奄美大島にはシネマパニックという映画館があります。土日しかやっていないんですけど、そこを3日間お借りして超満員だったんです。
(宣伝さんから合図)
イラストレーターのちゃずさん、そして本日奄美代表でお越しいただきました中孝介さん、お入りください。(拍手の中、お2人が入場)
こうして無事に初日を迎えることができてとても嬉しく思います。私はこの映画を撮影した後なんですけれども、あ、後ろでカメラを回しているのが、私の夫で本作のプロデューサーでもある中川究矢、と一緒に今年の2月に奄美大島に実は移住して、名瀬というところに住んでいます。この映画を撮る前と撮った後では、自分の性格も変わるような…「明るくなったね」と東京に来てから言われました。ほんとにこの映画を撮ってよかったなと、ちゃずさんには感謝しております。ではお1人ずつお言葉をいただこうと思います。

ちゃず 今日は年末のお忙しい中ほんとにありがとうございます。イラストレーターのちゃずです。去年の9月まで加計呂麻島(かけろまじま)に住んでいて、今は旦那と一諸に埼玉県のほうに住んでおります。ちょうど1カ月前に息子が生まれまして、なんと生んだばかり(笑)!(拍手)このタイミングで皆さんとお会いできて、中さんともお会いできてすっごく嬉しいです。綾さんありがとうございます。

監督 中さん今も奄美で暮らしてらっしゃるんですけど、映画のほうもご覧いただいてありがとうございます。いかがでしたでしょうか?

 いやもう、なんか「行かないで」って感じ(笑)。「なんで帰るの?」みたいな(笑)。

ちゃず 帰りたくなかったです(笑)。

 ですよね。そのシーンが胸に焼きついてますけども。ほんとに島の人たちが知らないことまでも、当たり前にある感情みたいなものもこうしっかり伝わってくるような、素敵な映画で。はい、非常に感動しましたね。

監督 ありがとうございます。中さん西安室(にしあむろ)集落に行かれたことは?

 僕は西安室集落に行ったことはなくて。加計呂麻には縁があるんですけど、父方の祖母が加計呂麻の人で芝という集落です。

監督 西安室とはちょっと離れているところで。

 そうですね。だいぶ離れています。

監督 結構大きいんですよ、加計呂麻島。奄美大島も実は結構大きくて、人口が今6万人くらい。私と中さん今住んでるお家が近いんです。

 そうです。名瀬で。

ちゃず ご近所さんなんですね。

 奄美群島内でも大きい街。

監督 奄美市は人口4万人かな。だから加計呂麻島によく行かれたなと、ちゃずさん。

ちゃず ああそうですねぇ。加計呂麻島に初めて行ったときに、「住みたい!」と思った気持ちが2年ぐらい消えなくて。なかなか夫を置いていくなんて(笑)。いろんな人に「えっ!大丈夫?」って(笑)。でも消えなかったんで、させてもらいました。

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ちゃずさん、中孝介さん

 その辺の夫婦間の、確固たる絆みたいなものとかもすごく感じてね。絶対ないじゃないですか、普通だと。

ちゃず ビデオ通話ができる時代だからできたっていうのはあると思いますけどね。

 遠いもの、やっぱりね。

監督 「夫とちょっと離れて島暮らし」ってどうなの?と思うんですけど、見たらラブラブやんけ(笑)。ほんとに毎日電話してるし、ビデオ通話してるし。けんちゃんとも島暮らしをしたことで、いい距離感になったということで。

ちゃず 夫婦ってずっと一緒にいるのが当たり前って思ってたけど、ある程度の距離があったほうが仲良く暮らせるなって思いましたね。今は子どもも生まれて、たまに喧嘩もするんですけど、やっぱそういう時ってすごい距離が近かったりするなって思いました。
島に住んで、自分が昔感じていた家族の仲の良い感じとか、それが集落全体だったんで、ほんとにそれに癒されたというか。うん。

監督 集落がね、大きい家族みたいな感じなんですよね。私も東京からぽんと西安室に行ったときに、すごい安心したというか、こんなに自然体の人たちがいて、なんでかなと思ったら家族のような安心感っていうのもあるのかなって。もちろん大自然に癒されてというのもあるんですけども、不思議なところでなんですよ。それを切り取らせていただけたらいいなという思いで、映画を作りました。
中さん次はぜひ西安室に。みんな大喜びですよね。

 行ってみたいです。あの別れ際の感じね、あるあるなんですけど。2月末から3月くらいは港で別れの季節なんです。いまだにこうテープを引っ張ってね。

ちゃず 空港なんかもすごくないですか?

監督 見送りね。奄美空港の屋上からみんな見送るんですよね。

 全然関係ないのに、そこからもらい泣き(笑)。

ちゃず 想像しちゃって?

 そう。

監督 島ってやっぱり来てくれたらすごい嬉しいし、離れていくときは門出を祝福するけど、寂しい気持ちになるんだなって、住んでみてわかったっていうのがありますね。ちなみに加計呂麻島に行ったことのあるよ、っていう方どれくらいいらっしゃいます?
(あちこちから手があがり、3人「おお!」)
じゃ加計呂麻島には行けなかったけど奄美大島に行ったことのあるよ、っていう方は?結構いらっしゃいますね。世界自然遺産登録もされたばかりですので、ぜひ遊びに来ていただきたいですね。中さん、住んでいらっしゃる名瀬と加計呂麻島は全然暮らしが違いますよね。

 やっぱり違いますよね。「物流」がやっぱり一番違いますかね。

監督 コンビニないですから。

 「トラ屋」しかないじゃないですか(笑)。トラ屋ってトラックの移動販売の。

監督 お肉とか売ってくれる。

 そうそう。それが来てくれるのを待つか、ちっちゃな商店。

監督 市場とかですね。トラックが「ハイサイ、おじさん♪」遠くから聞こえてくる。

ちゃず、監督 そこだけ沖縄(笑)

 僕が小さいときは名瀬でもあれが走ってたんです。ガンガン島唄かけて。

ちゃず、監督 へえー!! だいぶ変わったんですね。

監督 名瀬で上映したとき「名瀬も昔はね」って懐かしがる方が多かったんですよ。だんだん薄れてきたって、そのコミニュケーションをとる関係が。だから加計呂麻見たら、懐かしい気持ちになるって言ってましたね。
じゃ写真撮影の前に一言ずつお願いします。

ちゃず はい。この映画は自分のドキュメンタリーと言いつつ、綾さんが切り取った「島にしかない良さ」がすごいある映画なので、いろんな地域の方に観ていただきたい、人情というか、あのう暖かさを感じる映画なので、たくさん拡がってほしいなって思います。ぜひお家に帰って、ご家族やお友達に話してくれたら嬉しいです。ほんとに今日はありがとうございます。(拍手)

 今ちゃずさんもおっしゃっていましたけど、「人情味あふれる」映画だと思いますし、島の人たちも忘れかけてた素晴らしい「人が人を想いあう」感じが詰まっています。それは奄美だけの話じゃないですが。「人が人を想いあう」ことを忠実に表現されている映画だと思いましたし、ちゃずさんの素晴らしい感性がここから世界へ拡がっていくことを、優しく後押ししているような…そんな感じを僕は受け取りました。ぜひぜひ皆さん、この映画いろんな方に広めていただけたらなと思います。(拍手)
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國武綾監督

監督 ありがとうございます。
フォトセッションに移らせていただきます。皆様携帯電話出していただいて大丈夫です。この機会にたくさんSNSとかにアップしていただいて、明日も明後日もやっておりますので告知いただけたら嬉しいです。
(まとめ・写真 白石映子)

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『芸術家・今井次郎』初日舞台挨拶

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10月30日(土)
渋谷 ユーロスペース
午前10時30分からの『芸術家・今井次郎』上映後、映画出演者と青野真悟監督&大久保英樹監督によるトーク(生演奏付)あります!
ということで、本日さっそくかけつけました。
今日のゲストは元「たまのランニング」こと石川浩司さん。映画の中では「いま、いじろう…今井次郎」とギャグをかましています(笑)。

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監督お2人と今井さんの思い出を語った後に、ライブが始まりました。
「夏のお皿はよく割れる~♪」とか「道の真ん中墓建てた~♪」とか、この歌はいったいどこへ行くんだ?と聞いていると、締めの歌「ラザニア」でじーんとさせました。「不器用だった」「いじめられた」とかいろんな状態の人をたくさんあげながら、その一人一人に「産まれて良かったね」と全肯定をするのです。
「死んだ方がましだと思った 産まれて良かったね~♪」
「次郎さんも産まれて良かったね」
「お客さんも産まれたからこそ、ここで映画が観られた」…
「産まれて良かったね」
「産まれて良かったなあ~♪」

拡散可というTwitter動画はこちら
追加:公式からの動画が出ました!こちら

10月31日(日)「時々自動」より、柴田暦・高橋牧・日高和子
11月3日(水・祭日)テニスコーツ

追加が決まりました。
11月6日(土)佐藤幸雄とわたしたち
(佐藤幸雄+POP鈴木)
11月7日(日)とんぷく1/2
(近藤達郎+向島ゆり子)

作品紹介はこちら
青野監督・大久保監督インタビューはこちら

スタッフ日記に報告のつもりでしたが、せっかくなのでこちらにしました。(白)