『いきもののきろく』初日舞台挨拶

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3月7日(金)テアトル新宿
原案&主演永瀬正敏さん、ミズモトカナコさん、井上淳一監督が登壇。
司会は井上監督


作品紹介はこちら

井上監督 ではさっそく。11年・・・こんな日が来ましたね。みなさんいろんなところでご存じだと思いますが、2013年の暮れにこの映画を撮って、すぐ年が明けて2014年2月に映画を企画したシネマスコーレで上映して以来です。当時はなかなか47分の映画を単独で公開できる環境になくて、公開できずにいました。まさかこんな風にテアトル新宿で満席のお客さんの前で上映できる日が来るとは思っていませんでした。

永瀬 監督、司会もやられて。(会場笑)

井上 僕が監督をやると誰も司会を別に用意しない(笑)。いろんな人に「書くより喋るほうが得意だろう」って言われるんです。

永瀬 本日はありがとうございます。(拍手)
ほんとに監督のご尽力と・・・テアトル新宿さんが空けて上映していただいて感謝しています。何より今日来ていただいたみなさんに感謝申し上げます。ありがとうございます。

ミズモト ミズモトカナコです。今日はお越しくださいましてありがとうございます。12年前の私いかがだったでしょうか? こうして皆さんの前で上映ができてすごく幸せです。11年間、井上監督が上映する機会をずっと考えていてくださったことが私も嬉しくて、そしてこうやって実現するということが何よりもすごいことだなと思っています。今日は短い時間ですが、皆さんと共有できたらと思います。よろしくお願いします。(拍手)

井上 ミズモトさんこの時は、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の学生さんだったですよね?

ミズモト そうですね。22・・・

井上 いち。この前計算したら21でした。(笑)

ミズモト まだ大学生でほんとに芝居の「し」の字もわからないような小娘だったんです。当時の記憶が正直あんまりなくて・・・でも撮影が、皆さんが暖かくてフォローしていただいた記憶が大きかったです。プロとしての仕事もほとんどしていないような私に、一人の俳優として接していただいて。それが当時は有難いことだと理解していなかったんですよ。今こうして上映されることになって、当時のことを思い返してみると、それはいかに素晴らしい環境だったのかということをあらためて感じました。

井上 僕たちほんとに低予算で作ってるので、「気ぐらい使わないと」ってだけなんです(笑)。
パンフレットにも書いてあるんで、ぶっちゃけて言いますと撮影4日なんですよね。
ちょっと話が逆になりますが、出てくる工場を永瀬さんとロケハンで偶然見つけたとき、廃工場だと思ったら操業している鉄くず工場で、休みの日しか撮れなかったんです。12月の27から30日でした。寒かった~。あの雪ほんとですもんね。

ミズモト はい。あのときだけチラッと。良かったですね。あれは。

井上 最初からいうと、2013年の4月に永瀬さんと作った『戦争と一人の女』が公開になって、僕の師匠の若松孝二が作った名古屋シネマスコーレに舞台挨拶に行ったんです。1回目の舞台挨拶が終わってお昼ご飯に食べに行ったら木全支配人が永瀬さんに「今度短編映画撮るんだけど、監督しない?」って言ったんです。

永瀬 はい。

井上 あんかけスパゲティ食べながらですけど。

永瀬 「無理です」って言いました。

井上 すぐ答えてね。そのままやめりゃ良かったのに、永瀬さんが「出るだけならいいです」って言っちゃって(笑)。

永瀬 井上監督で、って。

井上 僕が。でもそういうことはこのまま終わるだろうと思った。で、2回目の舞台挨拶が終わって外に出たら車が用意されてて、そのままロケハンに連れていかれたという。

永瀬 僕、40何年やってますけど、一番段取り良かった(笑)。スムーズで。

井上 「青春ジャック」ご覧になった方わかると思うんですけど、東出さんが演った木全さんですからね。普通そんな段取りがいいわけがない(笑)。そして鉄くず工場に行って、永瀬さんが持ってたカメラで写真を撮りまくって。そのまま僕は名古屋の実家に残って、今度は愛媛のシネマルナティックへ行くのに夜行バスに乗ったら、永瀬さんから(ガラケーに)メールでこのプロットが届いた。

永瀬 散文を監督にまとめていただいて。

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井上 当時3・11から2年と2ヵ月くらい経ったころ。それを読んだら、東日本大震災のことが色濃くにじんでいました。その時は永瀬さんといちいち話さなかったんです。今回、パンフレットの座談会とかで永瀬さんといっぱい話すことになったら、やっぱり震災後、半年くらい経って被災地に入ったときの思いが一番大きかったという。

永瀬 そうですね。具体的にではなかったですけど、「思い」はそこにちゃんと置いて。そこで出逢った方々や見聞きしたことばとかが浮かんできて。僕たちはミュージシャンの方たちと違って、すぐに何かをできないじゃないですか。

井上 そう。ギターだったり歌だったりね。

永瀬 心に寄り添えるんですけど、僕らなんにも役に立たないなって。でも被災地の人たちにね、「何かを残してください」って言われた言葉がずーっと胸にあって、それが出たって感じでした。

井上 この中ではオミットされていますけど「瓦礫、瓦礫っていうけどみんな生活の一部だったんだよ」っていうのも永瀬さんが実際に聞かれた言葉だったんですよね。

永瀬 お爺さんがご自宅であろうところを片付けされていて、話しかけたらもうばーっと。皆さん同じ境遇なので、弱音とか吐露できないんですね。

井上 みんなおんなじ喪失があるわけですから。

永瀬 だから僕みたいな部外者には話してくださって、そのときに「みんな瓦礫、瓦礫っていうけどよ。これは大事なもんなんだよ。生活の一部だったんだよ」っていう言葉が強烈に残って。それが胸に焼き付いて、書かせてもらったというか。

井上 もう1個だけ。ラストの非常にシンプルな「こんにちは」「こんばんは」「ありがとう」などの挨拶も撮影中に永瀬さんが急に「あそこでやろう」と言ったものです。そのときの体験が大きかった?

永瀬 そうですね。「昨日まで”おやすみ”って言えたのに、今朝まで”行ってらっしゃい”って言えたのに、言えなくなっちゃったんだよ」って言うのがまた深くこう突き刺さりまして。そんなシンプルな言葉を普通に言えないことの悲しみがずーっと残って。
この映画はほとんどセリフがなくて字幕しかないんですけど、シンプルなその思いをこめられれば、という風に思ったんです。

井上 セリフがないので録音部がいなかった。カメラマイクで僕がとったんですよ。

ミズモト 狭いところでとりましたよね。

井上 そうそう。外をバイクが通ってて、「信号が赤だからやろう!」みたいな。

永瀬 そうだったか。手作り過ぎますね。すごいですね。

井上 手作り過ぎますよ。ミズモトさんが最初僕たちと会ったときに、非常にアマチュア感で驚いちゃったんですよね。大学と変わらないと。

ミズモト あのう良い意味で!(笑)安心したって感じがしました。プロの現場でも「思い」が一番にあって動いてる現場なんだと。商業的な映画だと、もっと次元の違うビジネス的な感じとそのときは思っていたんです。でも井上監督の現場では、根本は一緒なんだと、どれだけ規模が大きくなろうが「映画を作りたい」「こういう想いを届けたい」という根底は一緒なんだと確認、体験できてすごく安心しました。嬉しかったです。

井上 規模は大きくはなかったんじゃないですかね?(笑)

ミズモト いえいえ、永瀬さんがいらっしゃいましたし。

井上 それを言うと、永瀬さんが我々に合わせてくれてた。

永瀬 いや、昔僕は「某」林海象監督(笑)と東大駒場寮が壊されるというので、短編を撮ろうと集まったことがあったんです。そのときに「某」大学の映研の方々が、同じところで撮影されていて、あまりにも機材がすごくて唖然としたことがありました。僕ら何もない、大丈夫?むこうすごい!(笑)

井上 学校の機材だから、あるんです。向こうは。だって、実はこの映画の撮影機材、全部そこにある宝塚大学の映像メディア学科から借りたんです。(笑)なんなら、ダビングもそこでやってますから。
主題歌のPANTAさんが生で歌ってくれると言ったときに、僕たち「今チャイムが鳴ったから、これからしばらく鳴らない!」とやってましたから。

ミズモト そのへんは各大学と一緒かも。

井上 また戻しますけど、撮影前に(被災後の)石巻に行かれていたんですよね?

ミズモト 大学一年生の冬、大学の先輩のお父さんが石巻の高校の校長先生で、そこで京都でやった舞台を体育館でやらせていただきました。そこでは言葉にできない苦しさがあって、携帯を持っていても写真なんか1枚も撮れなかったし、目に焼き付けなきゃいけない、という気持ちが強かったです。「ゴジラ」というタイトルのポップな舞台だったんですが、これを見てどう思われるんだろうとプレッシャーもありました。反応はとても良く、明るいものだったという印象でした。被災地の人たちは逞しく乗り越えようとしていると感じて、逆にパワーをもらって帰った記憶があります。
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井上 永瀬さんのプロットから僕も震災のことを読み取って・・・そのままシナリオにできるんですけど、僕も何か仕事しなきゃまずいだろうと考えて(笑)。この男はなぜここで筏を作っていて、なぜ女は来たんだろう?その「なぜ」の部分を足していこうと思いました。
ご存じの方も当然いると思いますが、黒澤明監督の『生きものの記録』という映画があります。『七人の侍』という大傑作を作った翌年に撮るんですよ。ちょうどそのころ世界各地で水爆実験ががあって第五福竜丸事件が起こったりします。「放射能に殺されるのがいやだ」という三船敏郎が家族から孤立して、静かに狂っていく話。三船敏郎が狂わずにそのまま生きていたら、どうなるんだろう?このシナリオをプロデューサーの片嶋一貴に見せたらすっごいボロクソに言って、「お前このシナリオ救うには、『裸の島』(新藤兼人監督)にするしかない」って。ずっとセリフないんです。セリフなくなったんですけど、短編だし。
この台本もらってどうでした?ミズモトさん。セリフのないシナリオ来ちゃった! みたいな?

ミズモト どう・・・どうだったかな?

永瀬 ずいぶん前だしね。

ミズモト びっくり半分、あっセリフ喋らなくていい!って気楽になったような。今だったらその大変さがわかってどうしよう~となると思うんですが、当時は軽い感じのノリでした。

井上 なるほど。

ミズモト でもセリフはカッコ書きで何を喋っているのかはわかる。

井上 昔の無声映画みたいに、そこはやろうと思ってた。

ミズモト もし喋ったら何と言うんだろうか、ほんとに喋らないのか、実際口は動いて会話できているけど音はとられないのか、アドリブ的なことを求められるのかしらと、考えました。

井上 永瀬さんは自分のプロットがセリフのない映画として戻ってきて、どうでしたか?

永瀬 素晴らしいアイディアの映画だと思いました。
自分が具体的に書かなかったこともあるんですけど、限定されちゃうかも、と。日々暮らしているといろんなことが起きるじゃないですか。そういうことに置き換えられる「何か」になればいいなぁと思っていましたので。そこに言葉を入れていただけるように、そう観ていただけるように僕たち頑張らなきゃいけないなぁと思いましたね。

井上 ほんとにね、セリフなしの映画で良かったと思っています。最後にカギカッコだけのところがあるので、エックスでそのカッコの中にみなさんが何か入れられるように、永瀬さんと漠然と話しています。ちょっとお待ちください。

永瀬 みなさんのカギカッコの中。

井上 それぞれにね、ある。
今日はQ&Aでなく、こういう挨拶にさせていただいて、明日はティーチインでいきますので。

永瀬 手を変え品を変え・・・

井上 11年目の『いきもののきろく』あのときにそのまま公開されていたら、あの瓦礫、瓦礫といわれるものは「3・11の後」にしか見えなかった。残念なことにその後、熊本地震があり、能登地震があり、大きな水害があり、火災があり。戦争でいえばミャンマーやウクライナ、ガザがあり。非常に大きなものの後に見えるんです。公開されることで見返して古びていないと思ったんです。映画としては幸運だけど、世の中としては不幸じゃないですか。
ミズモトさん何かありますか?今この映画を観てもらうことで。

ミズモト そうですね。そういう意味ではこの物語を観て、どれに当てはまるか? 何が身近に感じるか? 
人それぞれだと思うんですけど、幅広くよりたくさんの人に観てもらえていろんなものを感じてもらえる映画になっていると思います。自分の中の傷と照らし合わせたり、思いを共有したりできたらと思います。

永瀬 いいことなのか、悪いことなのかっていうのはありますけど、僕たちは作品として残すことしかできないので。残した作品を観ていただける。そして初めて「映画」になるということでは、残せてよかったかなと思っています。大きいことじゃなくて、小さなことでも。
僕3日くらい調子良くなくて、ずっと部屋にこもっていたんですけど・・・地味ですか?(笑)監督とミズモトさんに会って、すかり元気になりました。日々いろいろありますから、そういうことを乗り越える、半歩でも進む「何か」になってもらえるといいなという思いはあります。
(井上監督の『いきもののきろく』シャツを見て)

永瀬 作ちゃったんですか?

井上 作っちゃったんですよ。

ミズモト かっこいい!

井上 僕もひとこと言っていい?
この映画、最初に出る言葉は「時代はサーカスに乗って」というPANTAさんの歌で「どこからでもやり直しはできるだろう」。例えば震災で誰かを失った人を目の前にして「いやいや、どっからでもやり直しはできるだろう!」と肩叩いて絶対言えないわけですよ。これを「喪失と再生の物語」と大きく括ってしまうと陳腐になってしまうかもしれない。ただ大きなことを抱えたときに、「やり直しできるかもしれない」というのが、フィクションの唯一できること、責務みたいな感じがして。お二人のおかげで非常にうまくできました。一人でも多くの方に見てもらいたいと思っています。
こうやって舞台挨拶をやると、俳優と監督が出てきますけど、実に多くのスタッフの力でできています。絶対に呼ぶなと言われているんですけど、特撮監督の石井良和さん、編集の細野優理子さんがいるので、みなさん石井さんと細野さんに拍手を。(会場から暖かい拍手)

「配給と宣伝もやってたくさんお金がかかかるので」と井上監督からグッズの紹介、「ずるいよね」と言いつつ、「サインします」とご協力をお願い。
ここよりフォトセッション。カメラマンとのやりとりで会場を沸かせる井上監督。

(ほぼ書き起こし・まとめ:白石映子 写真:井上監督提供)


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(撮影・MIOKO)

★新宿テアトルシネマにて上映中
ほか全国順次上映
舞台挨拶に全国駆け巡ります。情報をお確かめください。
http://www.dogsugar.co.jp/ikimononokiroku/
☆当日のスタッフ日記はこちら

『満ち足りた家族』ジャパンプレミア チャン・ドンゴン&ホ・ジノ監督登壇!

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いよいよ1月17日からの公開を前に、昨年行われたジャパンプレミアでの舞台挨拶の模様をお届けします。

2024年11月20日(水) 18:30~
場所:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7


登壇者:チャン・ドンゴン、ホ・ジノ監督
MC:新谷里映


MC:2023年秋のトロント国際映画祭でのワールドプレミアを皮切りに、約1年間で20以上の映画祭で入選する快挙を達成しました。韓国では10月に公開され、大ヒットを記録しています。この度、ジャパンプレミアでの来日となりました。
それではゲストの皆様にご登場いただきましょう。韓国を代表する俳優チャン・ドンゴンさんと、本作の監督と務めましたホ・ジノ監督を、どうぞ拍手でお迎えください。

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チャン・ドンゴン(以下ドンゴン):こんばんは。チャン・ドンゴンです。(ここまで日本語で)久しぶりに作品を持って日本のファンに直接会えて嬉しいです。たくさんの関心をお寄せいただきありがとうございます。

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ホ・ジノ監督(以下 監督):こんばんは。お会いできて嬉しいです。チャン・ドンゴンと一緒に挨拶できて嬉しいです。

MC: 2023年のトロント国際映画祭を皮切りに世界の映画祭を回り、今回のジャパンプレミアが日本でのお披露目となります。お気持ちをお聞かせください。

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ドンゴン:初めて上映したトロントでは評判がよく、文化の違いがあるにもかかわらず、たくさんの良い評価をいただき安心しました。日本の観客の皆様が本作をどう観てくださるのか、とても楽しみでワクワクしています。

監督:トロントで初めて上映されたのですが、私の作品の中で一番たくさん映画祭に招かれた作品となりました。韓国での公開後の評判も予想以上によかったです。日本の観客の皆さんがどのように見てくださるか楽しみです。

MC: 『危険な関係』以来のタッグを組んだ作品となりましたが、感想をお聞かせください。

監督:5~6年ぶりと思ったら、12年ぶりにこうしてまたチャン・ドンゴンと組むことができました。現場はとても楽しいものでした。いろいろ話して一緒に作り上げていきました。
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ドンゴン:『八月のクリスマス』を観て、いつか一緒にと思っていた監督と『危険な関係』を撮りました。オール中国ロケでした。今までに出会ったことのない新しいスタイルの演出で苦労もしましたが、ご一緒して興味深く楽しい現場でした。俳優をリラックスさせてくださって、粘り強く俳優のことを理解してくださる方です。 
15年ほど前に、東京ドームで、恥ずかしいのですが韓流四天王の催しがあって、監督がディレクションを務めてくださいました。
今回オファーをいただいて、シナリオを読んで、これまで自分は殺し屋やゾンビのような非現実的な役が多かったのに、今回は現実身のあるキャラクターで興味を惹かれました。ホ・ジノ監督が演出されるときいて、素晴らしい作品になると確信しました。
(長い発言の通訳を終えたことに対して)オツカレサマデシタ(と日本語でねぎらうチャン・ドンゴンでした)

MC: ヘルマン・コッホの原作「ザ・ディナー」を映画化しようと思った理由をお聞かせください。

監督:原作の小説は、4回目の映画化となるのですが、これまでの3本がどれも素晴らしいものでしたので、韓国で映画化するのをためらいました。何度も自分のシナリオを読み返すうちに、今まで作ってきたものと違うものを込められるのではないかと思いました。これまで男女の愛を描いてきましたが、今作は韓国の社会問題も表現できて挑戦になると思いました。
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MC:原作との大きな違いですが、兄弟の職業は韓国を反映したものでしょうか?

監督:医師と弁護士は、韓国の皆さんがより身近に感じるものと思いました。医師は学生も憧れる尊敬する職業。弁護士を含めて法律家は尊敬を集める職業です。

MC:道徳的で善良な医師は、チャン・ドンゴンさんにぴったりの役でした。

ドンゴン:シナリオを読んだときに惹かれた理由の一つに、現実にいそうだと。道徳的でボランティア活動もしていて、とてもいい人だというキャラクターなのですが、隠れた本性もあって、演技でも、表面的なものだけでなく、隠れた弱点を出していくという楽しさもあると思いました。
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MC: 残念ながらお時間となりました。最後に一言ずつお願いします。

監督:ご覧いただいて楽しんでいただけましたら、まわりの方にPRよろしくお願いします。

ドンゴン:韓国ではすでに公開されています。いろいろなところで舞台挨拶をさせていただいたのですが、ある劇場の壁に「映画の中で答えを出している映画は、劇場で観終わったらそこで終わるけれど、質問を投げかける映画は、映画を観終わったところから始まる」と書いてありました。この作品は観終わった後に、皆さんにいろいろなことを考えさせる映画だと思います。どうぞ考えを巡らせてください。意味のあることを考える時間になると思います。どうぞお楽しみください。

★フォトセッション★
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取材:景山咲子



満ち足りた家族   原題:보통의 가족  英題:A NORMAL FAMILY
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(C)2024 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK ALL RIGHTS RESERVED
監督:ホ・ジノ(『八月のクリスマス』)
出演:ソル・ギョング、チャン・ドンゴン、キム・ヒエ、クローディア・キム

2024年/韓国/109分/シネスコサイズ/5.1ch
字幕翻訳:福留友子
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
公式サイト:https://michitaritakazoku.jp/
★2025年1月17日(金) 全国ロードショー




『盗月者 トウゲツシャ』舞台挨拶

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         (公式写真)

『盗月者 トウゲツシャ』が11月22日に公開を迎え、11月23日に都内の映画館で公開記念舞台挨拶が実施され、ユエン・キムワイ監督が「ハロー、ハロー、ハロー!」と登壇、また香港からオンラインで主演のイーダン・ルイ、少し遅れてアンソン・ローが参加しました。(映画の内容にふれています)

ユエン監督 みなさんこんにちは!『盗月者 トウゲツシャ』を観に来てくださってありがとうございます。日本で上映できて、とても感動しております。

香港の映像が映りましたが、イーダン・ルイが一人です。「ハーイ、みなさんこんにちは!」と広東語で挨拶。

ーそれでは、イーダン・ルイさんから日本の観客の皆様にひとことお願いします。
 
イーダン・ルイ (広東語で)みなさんこんにちは、イーダンです!
(日本語で)オハヨウゴザイマス。ワタシハ イーダン・ルイ デス。
(英語で)皆さんに会えて嬉しいです。映画を楽しんでくれると嬉しいです。どうもありがとう。

―アンソンさんをお待ちいただくことにして、私の方からいくつか質問させていただきたいと思います。まず、監督から見た主演お二人の印象はいかがでしたでしょうか?

ユエン・キムワイ監督 もちろん僕の目からみて、2人ともとても有能な俳優です。イーダンはとても努力家で真面目です。脚本を何度も読み返して、たくさん質問をしてきました。200個くらい(笑)。困った俳優さんです(笑)。でも、それは作品にとても思い入れがあるということなんです。これからもそんな風に映画に情熱をそそいでくれると嬉しいです。
アンソンはまた違って、現場の雰囲気で自分のカラーを出していくスタイルの俳優です。元々のバックグラウンドがダンスだからかもしれません。あ、(アンソンが)来ました。

アンソン・ロー みなさんこんにちは、僕はアンソンです。

ーそれでは監督からもう一度アンソンさんの印象を。(会場笑)

ユエン・キムワイ監督 アンソンはすごく感覚的で、感性に訴えるような俳優です。計算して演技をするというのではなく、現場での雰囲気や相手の方とのフィーリングで演じていくタイプです。現場でもいろいろ発見がありました。

ーそれでは逆に、ユエン監督の演出はいかがでしたか?

イーダン・ルイ 監督とはこれが初めてではなくて、これまで何度か一緒にお仕事をしてきました。お父さんのように見守ってくれるタイプの監督です。ゆとりを持たせてくれる、いろいろなことを試させてくれます。ですから僕は安心して仕事ができて、自分のチャレンジもサポートしていただきました。とても感謝しています。

アンソン・ロー 撮影の際にいろいろなトラブルに見舞われました。というのは、この4人(※窃盗チームを演じた、イーダン・ルイ、アンソン・ロー、ルイス・チョン、マイケル・ニン)で一緒に仕事をしたのは初めての経験で、手探りの部分もありました。撮影前にも何度もリハーサルを繰り返して調整してきました。実際の演技でもバージョンをいろいろ変えて、どうやったら気持ちが込められるのか、もっと良くなるのか監督に観ていただいて決めていきました。我々みんなが監督を信頼し、監督も信頼してくださったので、お互いの絆の輪の元にこの映画ができたと感じています。アリガトー。

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ルイス・チョン、マイケル・ニン、アンソン・ロー、イーダン・ルイ

ーこれから会場からの質問に移ります。時間が限られておりますので、映画に関するご質問にしぼって、お一人お一つでお願いします。

Q ユエン監督は大阪アジアン映画祭のときに、「撮影で迷惑かけてごめんなさい」と仰っていたんですけど、アンソンは日本での撮影中、何を感じていましたか?寒くて大変とか、ホームシックは?

アンソン・ロー 日本で緊迫したシーンを撮影するときに、自分の感情をどう表現していくか、わざとらしくなく自然に緊張感を出すといった演技の工夫が必要でした。とても緊張したシーンの後に、そうではない平穏なシーンの撮影が始まると、その気持ちを白紙に戻します。その感情の切替えが大変でした。ご質問ありがとうございました。

Q 日本での撮影なので、親近感がありましてとても面白いと思っています。お二人、撮影中の面白い思い出はありますか?また日本でどこか行きたいところはありますか?

イーダン・ルイ 面白いエピソードはたくさんあります。印象的なシーンは、時計店の地下で金庫を開ける場面です。お店の人が暗証番号を入れるのを、みんなが肩越しに見ようとしているのですが、実際は完全に見えてしまっていました。見えているのに、見えない演技をしなければならなくて、みんなが笑うのを必死に我慢していたシーンなんです(笑)。
マイケルがタバコに火をつけるシーンで、撮影のときにタバコの火が下に落ちてしまって何かに引火して炎がわっと上がってしまいました。みんなで何んだ何が起きたんだ?と大騒ぎしました。
僕たち二人とも、東京はもちろん大好きです。大阪やほかの都市にも行ってみたいです。日本の冬はとても綺麗なので、また来たいです。

ーお名残惜しいですが、そろそろ時間となりましたので、アンソンさんイーダンさんから一言ずつ。

アンソン・ロー みなさん映画をサポートしてくださってありがとうございます。この映画は僕にとって今までとはちょっと違うもので、力を入れました。これからももっともっとみなさんに楽しんでいただけるものを提供したいと思っています。どうぞ応援してください。ありがとうございました。

イーダン・ルイ この映画を応援してくださってありがとうございます。日本での撮影は、1ヶ月間でした。海外での撮影の機会はあまりないのですが、また機会があればみなさんとの交流ができればと思っています。ありがとうございました。  

ー珍しい形となりますが、ここでフォトセッションとなります。後方から撮りますので、みなさん大きく手をふってください。

イーダン・ルイ&アンソン・ロー(手を振りながら)ありがとうございました~!

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ユエン・キムワイ監督(公式写真)

ここでスペシャル・プレゼントとして「5人のサイン入り香港版ポスター」を一名の方に。ユエン監督がチケット半券の中から一枚を引き、前方の男性の方が当選しました。監督のサインをその場で加えて完成。おめでとうございます。

―最後に監督から日本の観客のみなさんに一言お願いたします。

ユエン・キムワイ監督 みなさま今日は観に来てくださって本当にありがとうございました。面白いと思われたらぜひお友達に観てねと薦めてください。これは香港映画でも数少ない「悪役が誰も警察に捕まっていない」映画です(笑)。
楽しんで気に入っていただけると嬉しいです。サンキュー!
(写真:公式/まとめ:白石映子)

(C)Emperor Film Production Company Limited MakerVille Company Limited All Rights Reserved

★上映劇場にて来場者特典プレゼントを実施中です。
各週、ご来場の方に先着で、登場キャラクターの特製ポストカードをプレゼント!
※ランダムでの配布です。絵柄は選べませんのでご了承下さい。
※ご鑑賞のお客様お一人様1回につき1枚、先着順での配布、在庫がなくなり次第終了となります。詳細は上映劇場のHPにてご確認ください。

■上映劇場→ https://theaterlist.jp/?dir=tougetsusha
上映1週目:ヤウ(アンソン・ロー) or タイツァー(ルイス・チョン)
上映2週目:マー(イーダン・ルイ) or マリオ(マイケル・ニン)
上映3週目:ロイ(ギョン・トウ)

『帰って来たドラゴン』舞台挨拶

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7月26日(金)より『帰って来たドラゴン』(1974)2Kリマスター版の上映が始まりました。
翌27日(土)新宿武蔵野館に、満席のお客様を迎えて倉田保昭さん、ゲストの谷垣健治さんの舞台挨拶がありました。
ほぼ書き起こしでその様子をお届けします。MCは江戸木純さん。(白) 

倉田保昭 1946年3月20日、茨城県出身。俳優、武道家。日本大学芸術学部演劇科卒。東映撮影所の研究生となる。70年香港のショウ・ブラザース社のオーディションに合格し『続・拳撃 悪客』(71)で香港映画デビュー。多くのクンフー映画に出演。74年『帰って来たドラゴン』を引っ提げで日本凱旋を果たした。テレビシリーズの「闘え!ドラゴン」、「Gメン‘75」で人気を博す。
76年に倉田アクションクラブを設立して人材育成を行い、数多くの映画、テレビ番組のアクション・コーディネートを手がけ、創武館道場で空手の指導を行ってきた。85年に倉田プロモーションを設立。その後も香港映画をはじめとした数多くの海外作品に出演。

谷垣健治 1970年10月13日、奈良県出身。映画監督、アクション監督、スタント・コーディネーター。
1989年大学入学と同時に倉田アクションクラブ大阪養成所に加入。1993年の大学卒業後つてもないまま22歳で単身香港に渡り、広東語を学びながら映画の仕事を探す。スタントマンとして多くの映画に参加、アクション監督トン・ワイの推薦で「香港動作特技演員公會 Hong Kong Stuntman Association」に所属した。唯一の日本人。香港ではドニー・イェンの作品に多く関わり、『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』では監督をつとめた。日本では映画『るろうに剣心』シリーズのアクション監督ほかで活躍。
日俳連アクション部会委員長。DGA(全米監督協会)会員。

作品紹介はこちら
(C)1974 SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reserved.


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倉田 本日はお暑い中、ほんとにたくさんの方がいらしてくださってありがとうございます。50年前の映画ということで、私ちょっと不安なところがあるんですけど、いかがでした?(拍手)古臭さはなかったですか?パワーを感じていただけると有難いなと思っているんですけど。CGもワイヤーもない時代ですから。もう、今やれと言われてもとてもできないです。
ありがとうございました。ほんとに。

谷垣 おはようございます! 僕も今後ろで観ていたんですけど、面白いですよね。なんか神様がジャンプ力の調合を間違えたような2人(ブルース・リャン&倉田保昭)が(笑)こう上に上がって行く(必見)のが力強いなと思いました。先生ね、「今はもうできない」とおっしゃっていましたけど、『夢物語』では全然スピードは劣っていないですよね。むしろ速くなっているかもしれないなと(笑)。
先生、今日のこのお衣装は?

倉田 これはね、50周年なので、50年前に作った洋服。

谷垣 『戦え!ドラゴン』のときのですか?

倉田 これ、撮影では使ってないですよ。何かイベントみたいなので。たぶんブルース・リーのがかっこいいなと真似て作ったのかな。

―1974年に作られた『帰って来たドラゴン』と(新作の)『夢物語』を一つのスクリーンで上映するという、とても貴重な機会です。50年前に撮影されたこの映画、観るからに大変だったろうなと思うんです。そのへんのエピソード、こんなに凄かった、忘れられないことなどがありましたら。

倉田 先週プロデューサーのウー・シーユエン(呉思遠)に会いに香港に行ってきました。2人だけで5時間、広東語で話しました。その中で『帰って来たドラゴン』の話も出て、「あの頃はこうだったよねぇ」と。当時は中国の文化大革命の後で、国境があって行き来ができなかった。その中国大陸が見える小さい島で撮影しました。そこを見ながら「ウー・シエンのバカヤロー!なんでこんなきつい撮影させんだよー!」と(叫んでいた)。ホテルも何もないので、バーベキューやったりね。たまの休みに小さい船に乗って美味しい物を食べに行く。今は橋ができて渡れますけど。

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―谷垣さんはこの時代の香港映画、どう思われますか?

谷垣 観なおしたときに、これはできないなと思いましたね。役者にさせられないし、やれる役者もいない。僕らはこの方たちが作ったレールに乗ってアクション映画を撮っているんですけども、いろんなことを工夫しなきゃいけないわけで。言ってみたら僕らの映画には「味の素」をいっぱい足しているんですよ。味の素がいっぱいまぶされている。これ(帰って来たドラゴン)はほんとに「役者の素材の良さ」を生かした映画。すごいですよね、アクションも。
ブルース・リーが”間”で勝負するというか、”間”の中で一発パカーンとやるとしたら、これは”手”(アクションの動き)が多い。今のアクション映画も”手”は多くなっていますが、これは戦って走って、戦って走って。今も昔もアクション映画のお手本のような映画ですね。パリでオリンピックやってますけど、「アクション」という種目があったらたぶん金メダルじゃない?(笑)観れば観るほどすごい。

倉田 彼とも話したんですけども、当時は(ブルース・リャンと自分)2人だけなので、休憩時間なんてないんですよ。吹き替えもいないし、ただ2人がどうやって何ができるか、キャメラが移動するだけの時間で。一日何十回とやってそれを一ヶ月。

谷垣 移動って言っても、2人だからここからここ移動するだけでしょ?そしたらもう本番でしょ?(笑)

倉田 そう(笑)。そして”手”はついてないですから。”手”というのはアクションの、ここで出してここで受ける、という。

谷垣 今日また「発見」です。”手”があるんだかないんだか、という中でやったんだと思うんですけど、ブルースがぱっと来たら、先生がぱっと引いて(アクション付き)なんというか喧嘩強い人同士、喧嘩慣れした人同士のちょっとしたやりとり、こう動いたらこうやって、というそこんとこが面白いんだろうなぁと。

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―生(なま)の迫力、勢いというのが、50年前のフィルムの中に全部詰まっていますね。

谷垣 そう思いました。

ー今日『帰って来たドラゴン』と一緒に観ていただいた『夢物語』。作られた経緯というのは?どういうところから始まったのでしょう?

倉田 単純なものですよ。77歳になって、コロナであんまり撮影もないので、「77歳どれくらい動けるか、ちょっと竹藪を借りてやろうよ」という話で、1週間竹藪にこもりました。蚊に食われながら(笑)立ち回りをして撮影しました。これはどこに配信するのか、何も決まってない。海外の映画祭に出したら、インドのレイクシティ(国際映画祭)で最優秀短編映画賞をいただいたり、スペインで(アジアサマー映画祭)特別賞をいただいたり。
でも、これは日本では上映できないよねと言ってたら、たまたま今回の企画があり、50年前のアクション『帰って来たドラゴン』と50年後の『夢物語』、この対照はある意味初めての企画だと思うんです。

―谷垣さん、この『夢物語』変わらないと言われました。

谷垣 いやもうすごいとしか言いようがないんですよね。50年前の映画ですから、この中にはもう亡くなられた方もいますし、俳優やっている方もいる。ただ俳優はやっているけど現役感のない方もいるのに(先生は)一人だけ現役感バリバリ(笑)。

―ほんと、変わらないところがすごいですね。

谷垣 『夢物語』は何か言うのが野暮になるくらいすごい。『夢物語2』もあるんですよね。
『無敵のゴッドファーザー/ドラゴン世界を征く』と上映するとか。観たいと思いません?

倉田 今回上映するよ。

谷垣 あっもうやってるんですか?

―8月9日から2にあたる『夢物語 奪還』が併映になりますので、もう一度ご来場ください。『夢物語』もシリーズ化して、毎年倉田さんに撮っていただくとか。谷垣監督の『夢物語』シリーズをぜひ。

倉田 その話をしていたんですけどね、彼が忙しくて。

谷垣 いやいやいや。

倉田 谷垣健治監督で、79歳の倉田保昭のアクションをぜひね、撮ってもらいたいんですけど。

―みんな観たいなと思いますよね?(拍手)

倉田 彼もね、ほんとにもう私の手の届かないところへ行ってしまって。

谷垣 ちょ、ちょっと待ってください、先生。こっちの話をしましょう。これ(ポスターを指す)。(笑)

―ほんとに大活躍されています。お話面白くて延々と聞いていたいのですが、今日はお時間がありません。この続きは、売店にも売っております倉田保昭著「帰って来たドラゴン」(「和製ドラゴン放浪記」(1997)から改題して再販)を読んでいただくと、その撮影背景とか、台湾で出演した時とんでもない話とかいっぱい出てきます。ぜひお買い求めいただければと思います。

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―では最後に一言ずつ。

倉田 これから全国に挨拶に回りますけど、とにかく東京で皆さんに観ていただかないと話にならないので。1人でも多くの方に観ていただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)

谷垣 50年前の映画という事で、僕も今日初めてスクリーンで観ました。面白かったです。こういう映画は今後もう作られないと思うので、皆さんが生き証人になったと思って伝えていってください!よろしくお願いします。

ースクリーンで観る機会は多くないので、ぜひよろしくお願いします。

谷垣 まだスクリーンで観たい作品、僕いっぱいあるんで。ね。(と倉田さんへ)

倉田 キング・オブ・カンフー?

谷垣『激突!キング・オブ・カンフー』とか観たくないですか?(拍手)
ねぇ、僕はスクリーンで観たいですよ、ほんとに。『ファイナル・ファイト 最後の一撃』と同時上映とかね。(拍手)

ー企画もこれからまた進めていければと思います。本日はありがとうございました。(拍手)

(取材・写真 白石映子)

『Firebird ファイアバード』初日舞台挨拶

エストニアでの同性婚合法化にも影響を与えた真実の愛の物語

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1970年代後半、ソ連占領下のエストニアの空軍基地を舞台に、二等兵と将校の禁断の恋を描いた『Firebird ファイアバード』。
ペーテル・レバネ監督、W主演のトム・プライヤーとオレグ・ザゴロドニーが来日し、初日舞台挨拶が行われました。
イケメン3人の登壇とあって、劇場は満席! 
同性愛が厳罰に処されるソ連、さらに規律の厳しい軍の中で、真実の愛を貫いた実在の人物の自伝をもとに描いた映画について、熱く語ってくださいました。

2024 年 2 月 9 日(金) 18:30~
新宿ピカデリー シアター6


登壇者:トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ペーテル・レバネ監督
ゲスト: 小原ブラス
司会:東沙友美  
通訳:今井美穂子


MC:お待たせしました。ご登場いただきましょう。皆さま、拍手でお迎えください。
(満席の客席から大きな拍手)
皆さまより一言ずつご挨拶いただきたいと思います。まずはレバネ監督からお願いいたします。

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ペーテル・レバネ監督:ハイ! ご来場いただきありがとうございます。満席と伺い、ありがたい気持ちでいっぱいです。 この作品を携えて各国を長い旅をしてきて、ようやく日本のお客様にもお届けできます。とても嬉しいです。主人公セルゲイのモデルになった方の自伝をもとにしたストーリーです。ぜひお楽しみください。

MC: 若き二等兵を演じ、監督と一緒に脚本も書かれたトム・プライヤーさん、ご挨拶お願いします。

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トム・プライヤー:ハイ! ようこそご来場くださいました。この美しい作品を世界各国、そして日本のお客様にお届けするのに長い旅路でした。ご覧いただくときに、愛の可能性と、愛の本質について考えていただければと思います。

MC:戦火のウクライナから奇跡のご来日を果たされましたオレグ・ザゴロドニーさん、よろしくお願いします。

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オレグ・ザゴロドニー:日本の皆さん、東京の皆さん、お越しくださいましてありがとうございます。皆さんにお会いできて嬉しいです。

◆映画化しなければいけない原作に出会った
MC:レバネ監督にお伺いします。この映画はどのような経緯で撮影されることになったのでしょうか?

監督:映画の企画の発端は、2011年ベルリン国際映画祭に参加していた際に、知り合いからセルゲイの自伝を渡されたことでした。自宅に帰ってから読んで、読み終わって、涙を流していました。映画にしなければいけないと突き動かされた気持ちになりました。脚本を書き始めたところに、ハリウッドの友達のプロデューサーが主役に合う人がいると、トムを紹介してくれました。脚本にも参加してくれて、二人三脚で2年がかりで書き上げました。その間、リサーチを重ね、セルゲイ本人にも会いました。脚本が出来上がったあと、オレグさんと会いました。

MC:トムさんは、映画化の話を監督から受けてどのように思われましたか?

トム:監督から聞いた時に、好きな要素がたくさん入っている話だと思いました。もともと軍隊ものが好きでした。冷静時代にも興味があったので、これは面白そうだと思いました。自分自身のテーマである愛の本質について何なのかについても語っていて、ぜひやってみたいと思いました。いろんな困難や壁を乗り越え、愛を突き進む、愛を諦めない人物を描いているところも魅力でした。

MC:オレグさん、ロマン役をオファーされて、いかがでしたか?

オレグ:監督は素晴らしい人物をオファーしてくれました。ロマンはヒーローとして描かれていて、真の兵士。真の愛の物語で、とても演じ甲斐がありました。 このような作品に参加できて嬉しかったです。


◆エストニアでの同性婚合法化にも一助
MC: エストニアでは、先月の元旦に同性婚が法制化されました。監督は、この映画が国を動かす原動力になったと思いますか?

監督:映画というものは、他者の視点で物事を見ることができるメディアで、社会を少しでも変えることのできる力強いものだと思います。共感を呼び起こすものだと私は信じていて、この映画はエストニアで社会に影響を与えたと思います。
私は、2010年からLGBTQのアクティビティをしてきました。エストニアでは、今年1月1日から同性婚が合法化されて、マジョリティーの人にとっては取るに足らないものかもしれませんが、マイノリティーとして幸福度が大きく変わりました。私も他者と平等と感じられるハッピーな日々です。



◆ポジティブな原作者に会ってアプローチが変わった
MC:トムさんが、本作の原作者でモデルでもあるセルゲイさんご本人と会った時のエピソードを教えてくだい。

トム:脚本に参加できたのも素晴らしい体験でした。セルゲイ本人に会ったことで、キャラクターへのアプローチが変わりました。それまでに抱いていた印象と違いました。とても陽気で人生を謳歌しているポジティブ思考の方。ストーリーのバッググラウンドはダークで脅威がはびこる世界なのですが、そんな中でも自分の信念を曲げず、信じる人。愛は全てを乗り越えるということを見せてくれる人でした。こうしたことは自伝を読んだだけではわからない。会って伝わってくることです。ソ連時代の軍隊の時の写真を見せていただいたのですが、それも明るいものでした。アプローチがだいぶん変わりました。

MC:今のお話を聴いて、皆さん、ぜひ映画を楽しんで観てください。


◆スペシャルゲスト小原ブラスさん、恋に落ちるなら監督と!
MC:ここで、少し先に映画をご覧になって、とても感銘を受けたという、スペシャルゲスト、ロシア出身のタレント・小原ブラスさんにご登壇いただきたいと思います。3人にお会いするのをとても楽しみにされていたそうです。

小原ブラスさんが3つの花束を手にして登壇。一人一人に花束を渡しました。

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4人そろってフォトセッション

MC:小原さん、本日はご登壇ありがとうございます。一言ご挨拶をお願いします。

小原:だいぶぎりぎりまで押してると後ろで聞いて、ちょっと早く話さないとあかんでと聞かされてるんです。でも、感想も言ってやってもいいですか。

MC:小原さんご自身もゲイであることを公言されていて、本作も男性どうしの愛が描かれていましたが、どのような印象が残りましたか?

小原ブラス:僕はポスターや予告を見て、滅茶苦茶カッコいい人が出てるわ~と思って、はっきり言うと良からぬ考えで観た気がするんです。観たら、最初はもちろんソ連時代の迫害であったり、そういうテーマなのでちょっと重たいなと思っていたんですけど、後半になると現代でも通じるような話になっていて、日本でも2年位前に騒がれていたようなことが描かれていて、歴史というよりも、まさに現代の日本にも通じる部分があるんだなと、急にふっと近く感じたんです。良からぬ気持ちで観ようと思っている方も、最後、感動するから、そのつもりで観に来てほしいと思います。

MC:小原さんの今のお話を聞いて、監督、いかがですか?

小原:恥ずかしいな。

監督:ありがとうございます。とてもいいですね。よからぬ気持にも同意します。美しさと苦悩がせめぎ合った映画になっていると我ながら思います。

小原:ゲイやLGBTQを扱った映画というと、あまりにロマンティックに描く方向に流れたり、迫害されてつらい気持ちにぐっといくことがあったりします。今回の作品を僕が見ると、必ずしも主役二人の行動に全部は同意できなかったりするんですよ。自分ではこうはしないなとか、筋通ってないなぁと思うところもありました。よく考えたら、筋を通せないのが人間やんか、ゲイだって間違ったこともするし、人間らしいわがままな一面があるんやと、当事者から見たら肩の荷が下りるような映画にもなってました。以上です。

MC:小原さん、ありがとうございます。 3人とも、とっても皆さん魅力的ですが、小原さんは恋に落ちるとしたら誰がいいですか?

小原:え? 何それ? 花束見たらわかるやん。花束見て。監督やがな。イケメンも好きなんですけど、もちろん監督もイケメンですけど、何かなしえた人が好き。お二人もなしえているんですが、要は権力が好きなんですよ。

監督:非常にうまく外交的に向き合って答えてくださって、ありがとうございます。

MC:フォトセッションに移りたいと思います。

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まずは、トムさんとオレグさん!

次は監督・・・ と声がかかり、トムさんとオレグさんが退場しそうに。呼び戻して、3人でのショット (トップの写真)

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「続いて、小原さんも」と呼び込み、小原さんと監督を二人にしようとトムさんとオレグさんが立ち去り、このツーショット。

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トムさんとオレグさんを呼び戻し、「出演者じゃない」と真ん中を拒否する小原さんでしたが、この並びに落ち着きました。

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続いて、観客の皆さんにも写真タイム。


MC:最後に監督から一言、これからご覧になる観客の皆さんにメッセージをお願いします。

監督:ネタバレはなしですよね? 今夜はぜひお楽しみいただきたいと思います。数年かけてこの作品を作ってきましたので、ご堪能ください。こうして皆さんにお届けできるのを嬉しく思っております。気に入っていただけましたら、お友達にも共有してください。

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最後に、4人が観客を背景に写真を撮り、和気藹々の舞台挨拶は終了しました。

Facebook アルバム 『Firebird ファイアバード』初日舞台挨拶
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.903523675108552&type=3
★大きな写真や、ほかの写真をこちらでご覧いただけます。

報告:景山咲子




Firebird ファイアバード   原題:Firebird

(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms
監督・脚色ペーテル・レバネ 
共同脚色 : トム・プライヤー、セルゲイ・フェティソフ 
原作 : セルゲイ・フェティソフ 
出演 : トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ダイアナ・ポザルスカヤ

2021年/イギリス・エストニア/英語・ロシア語/107分/5.1ch/DCP & Blu-ray
日本語字幕 : 大沢晴美
配給:リアリーライクフィルムズ
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/firebird
シネジャ作品紹介:http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/502268722.html 

★2024年2月9日(金)新宿ピカデリー他にて全国公開