『サイゴン・クチュール』グエン・ケイ監督来日イベント

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『サイゴン・クチュール』
1969年のサイゴン。代々続くアオザイ仕立屋の母と対立、60年代の洋服にこだわる娘・ニュイが21世紀にタイムスリップ。変わり果てた自分と寂れた店に驚愕。自分の《人生》を変えるべく奔走するファッション・ファンタジー。1人の女性の成長を鮮やかに描いた、女性が元気になれる【ビタミンムービー】。
★2019年12月21日(土)より全国順次ロードショー
作品紹介はこちら

2019年11月11日(月)笹塚ボウルにて、ベトナムから来日されたグエン監督を囲んでのイベントが開催されました。
グエン監督は深い黒地に色とりどりの花を散らしたアオザイで登場しました。ゲストにベトナムで活躍中の落合賢監督、歌手の野宮真貴さん、俳優のデビット伊東さんを迎えてのトークと、華やかなアオザイのファッションショーが行われました。
司会は映画ライターの新谷里映さん。通訳は秋葉亜子さん。

1960年代を舞台にした映画を製作した理由について、グエン監督「1960年代は素晴らしいことがたくさんあった希望に満ちた時代でした。そんな時代をとても愛しているからです」と回答。
元々の脚本は姉妹の設定だったのが、母と娘のストーリーに変更になったことなど製作中の裏話を明かしました。
アオザイをはじめとするファッションをデザインしたのは、プロデューサーも務めたトゥイ・グエン。デザイナーである彼女から、「フランスの植民地時代の象徴である花柄のタイルや、1960年代の象徴である水玉模様をアオザイのデザインに取り入れたいと提案されたんです。彼女のおかげで現代的でありながらもレトロな雰囲気を持つ、素晴らしい衣装となりました。嬉しいことにこの映画をきっかけにアオザイを普段から着る若い人たちが増えたんです」と笑顔で語りました。

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第1部の終盤には、ベトナムで映画を製作、『サイゴン・ボディガード』、『パパとムスメの7日間』などヒット作を送り出した落合賢監督が登壇しました。お二人はこれが初対面でしたが、グエン監督が落合監督の2作品を観ていること、お互いに共通の友人がいることがわかりお話がはずみました。
落合監督はベトナムの印象を「エネルギーに満ち溢れている国。どの人もフレンドリーで仕事がしやすい」と語り、『サイゴン・クチュール』については「特に美術と衣裳について色使いが印象的でした。どのようにアプローチされましたか?」と質問。学生時代美術を専攻していたというグエン監督は「1960年代はポップな色使いをする時代でした。また、ベトナムのような熱帯の場所はトロピカルカラーが映えるんです」。
アオザイを何着お持ちですか?の問いに、「3着です。イベントや結婚式に着ます。昔はアオザイを男性も着ていてとても素敵でした。この映画の2ではアオザイと背広の葛藤部分を。3では京都を舞台に描く予定です」と続編の話題にもちょっと触れました。60年代のアオザイや最先端のファッションまで、映画のために用意されたたくさんの衣装は231着にも上ったそうです。

トークショー第2部には、90年代の渋谷系と呼ばれていた“ピチカート・ファイヴ”のボーカル、今はソロのミュージシャンの野宮真貴さん、ベトナムで俳優も経験、今年ホーチミンにラーメン店を出店したデビット伊東さんが登場しました。
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作品についての感想を野宮さん「とてもカラフル、キュートでポップ!まさにピチカート・ファイヴで着ていたような60年代のお洋服、ベトナムの民族衣裳のアオザイもたっぷり見られますし、久しぶりにワクワクするような楽しい映画でした」。ベトナムを訪ねたおり、オーダーメイドでアオザイを含めて10着くらい作られたそうです。「見本を持って行くと滞在中にできるんです。ベトナムは人が優しいですし、食事が美味しいですし、買い物も楽しいですし…」とベトナムの魅力も。
デビット伊東さん「とにかくカワイイ映画。映画の中で主人公の母親が「基本を大事に」と言うんです。僕はあの言葉が大好きで。どんな業界でも基本を大事にすることで新しいことに進めます。監督、あれはどこから来たんでしょう?」と監督に質問。

グエン監督「私の祖母や母がよくそう言っていましたので、私もそれを映画で使いました。アオザイは、だんだん着られなくなっていましたが、嬉しいことにこの映画で”アオザイってカワイイじゃない"と思ってもらえました」。
デビットさんのお店に友人を引き連れて伺います、と約束した監督、野宮さんに「第3作目は京都を舞台にする予定なので、野宮さんには一番良いアオザイを10回くらい着替える役で出て欲しい。すごく似合うと思います」と今からオファー。野宮さんも「ステージで10回着替えたことがあります。着替えは得意です」と、嬉しそうです。

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イベント終盤には、本作のコスチュームデザインを担当したテュイ・グエンによるブランドTHUY DESIGN HOUSEの革新的なファッションをお披露目するスペシャルファッションショーも開催。華やかなアオザイ姿のモデルさんが次々とランウェイならぬボウリング場のフロアを歩きます。作品のテーマ曲をバックにベトナム人ダンスグループ9Flowersが、元気いっぱいのダンスで会場を盛り上げました。
(資料提供:ムービー・アクト・プロジェクト 取材・写真:白石映子)

グエン監督インタビューはこちらです。

『カーマイン・ストリート・ギター』公開記念 高田漣、カーマイン・ストリート・ギターから直輸入のギターを弾く

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高田漣

ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジにある、手作りのギターショップを描いた映画『カーマイン・ストリート・ギター』が、8月10日㈯より公開されている。その公開に先駆けて、同店の職人リック・ケリーが制作したギターが直輸入され、その音色を聴く試奏会が開催された。演奏者はギタリストの高田漣さん。

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日時 :2019年 8月5日(月)
会場 :御茶ノ水 Rittor Base
試奏者:高田漣 (ギタリスト)

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©MMXVⅢ Sphinx Productions.
ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを手作りする「カーマイン・ストリート・ギター」の職人リック・ケリー。彼が古い木の板を使って作るギターは世界で一つしかないギター。伝説のギタリストたちを虜にしている。ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら、フォーク、ロック界の大御所がリックのギターを愛用。劇中でも有名なギタリストが来店し、リックが作ったギターを手に演奏に熱中する姿が映し出される。
古い木材のほうがギターの響きがいいということを発見したリックは、廃材があると聞くと引き取りに行き、ギターとして復活させる。こうして長年愛されてきた街の歴史がギターの中に生き続ける。
この店では、ほかに見習いのシンディ・ヒュレッジとリックの母親が働いている。シンディは、大工だった父親の影響で物作りに興味を抱き、アートスクールに通ってからこの店に入った。細かい作業が得意でウッドバーニングやペイティングを施したギター、ストラップも作っている。

そんなギターが直輸入され、試奏会が行われた。リックが作ったギターを試奏したのは高田漣さん。なぜ漣さんと思ったら、細野晴臣のニューヨーク公演に同行した際、このカーマイン・ストリート・ギター」を訪れたという。漣さんの語りとギターの演奏をしばし楽しませてもらいました。
店の様子は映画で出てきた感じそのもので、リックは作業を止めて、ひとつひとつ丁寧に説明してくれたという。仕事が滞ってしまうのではないかと心配になるくらいと語っていた。工房の壁という壁に、もらってきた木材が積み上げられていて圧巻でした。その風景だけでも一見の価値ありと、材木のあまりの量に驚いていた。

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©MMXVⅢ Sphinx Productions.

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さらに驚いたのはリックが持つ工具の数。ギター職人が持つ工具の量じゃなかった。彫刻家とか芸術家の作業場を見ているような雰囲気だったそう。ただ雑然と工具が置いてあるように見えたけど、必要な工具がどこにあるかはリックだけがわかるのでしょう。
劇中に登場するギタリストたちを魅了している理由は「リックの心意気や姿勢に共感し、彼らは楽器を買うと同時に、その心意気をかっているのだろうと語った。30分以上はいたけど試奏は出来なかったので。今回、試奏したいという念願がかないましたと言っていた。
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ギターを持ち、最初に出た言葉は「ネックがものすごく太い! 今まで触ったギターの中で一番太いネックかも」と言い、しきりにネックを触っていた。「細いネックに慣れた人は驚くかも知れないけれど、ネックが太い分、手が疲れないのでは」と言っていた。そして、重さが先端(ネック)にある方が音に重みが生まれて、鳴りがいいのでは」と語った。しかし、手が小さい人は扱いにくいかも。他の「カーマイン・ストリート・ギター」制作のギターもみんなそうなのだろうか?と、思わず思ってしまった手の小さな私。試奏後、司会者から「このギター欲しいですか?」と聞かれ、「欲しいです」と即答していた。「オーダーメイドのギターは値段があってないようなもの。欲しくなったら困ると思い、店では値段を聞かなかったと言っていたけど、このギターの値段を聞き、思ったより高くはないですねと語り、そのくらいなら買えばよかったと残念がっていた。「このギターは作り手の愛情が感じられ、リックの佇まいが出ているように思います」と、ギターへの思いを語り試奏は終了した。
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音響の良い会場だった。試奏会のあと、「このギターを弾いてみたい方、触ってみたい方はどうぞ」と案内があり、参加者たちが次々とギター演奏していた。たぶんそうそうたるギタリストたちが来ていたのかも。私も手にとってみようと思ったけど、皆さんとても上手で、私など、とてもギターのそばには寄れなかった。
それにしても、古い木材のほうが良い音が出るというのが、この映画を観た発見だった。家にあるギターは、50年くらい前に買って10年以上ほったらかしにしているけど、意外にきれいな音が出るのかもしれないなどと思った。取材 宮崎暁美

8月10日(土)より新宿シネマカリテ、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!公開中
監督・製作:ロン・マン
扇動者:ジム・ジャームッシュ 
編集:ロバート・ケネディ
出演:リック・ケリー、シンディ・ヒュレッジ、ドロシー・ケリー
ジム・ジャームッシュ(スクワール)、ネルス・クライン(ウィルコ)、カーク・ダグラス(ザ・ルーツ)、ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン(ボブ・ディラン・バンド)他
音楽:ザ・セイディーズ

高田漣さんのエピソード

私は高田漣さんの父の高田渡さん同じアパートに住んでいた。高校時代にフォークソングに目覚め、初めて買ったのが高田渡さんのレコードだった。ライブに行ったこともある。三鷹に長年住んでいたけど、街を歩いていると時々高田渡さんに会うので、この辺に住んでいるのかなと思っていたけど、あるとき引越ししたら、そのアパートに渡さんは住んでいた。めったに会わかなかったけど、会えば挨拶はしていた。また漣さんのお母さんも知り合いだったけど、その頃はすでに別々に暮らしていたので漣さんに会うことはなかった。
漣さんのことは、渡さんのバックで演奏もしていたので、ギタリストとして活躍しているとは知ってはいたけど、CDなどは買ったことがなかった。私は中島みゆきさんのファンで、数年前、彼女の新しいCDが出たので、東京駅中にあるタワーレコードに買いに行った。彼女のCDをみつけ、他にも何かCDをと思ったら、偶然目に入ったのが高田漣さんの「コーヒーブルース~高田渡を歌う~」というCD。
これは父親の渡さんが歌っていた歌をカバーをしたもの。こんなCD出したんだと思って、これも買うことにした。さらに、中島みゆきのコーナーで「歌縁」(うたえにし)というアルバムをみつけ、これも買った。これは中島みゆきをリスペクトする歌手たちが一同に会して中島みゆきの歌を歌ったコンサートのCDだった。この日、この3枚のCDを買ったのだけど、なんと、この「歌縁」の音楽監督は高田漣さんだった。なんという偶然と思った。そして漣さんの意外な仕事を知り、嬉しかった。

『旅のおわり世界のはじまり』青木崇高さんのウズベキスタン弾丸ツアー!スペシャル映像上映付き加瀬亮さんとのトークイベント

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黒沢清監督、前田敦子、加瀬亮、染谷将太、柄本時生らが出演するシルクロードを舞台に描く『旅のおわり世界のはじまり』が全国公開中だ。

この度、友だちの加瀬亮さんに会うために青木崇高さんが大河ドラマ収録の合間をぬい、ウズベキスタンまで弾丸ツアーを敢行した旅行記映画が完成。

青木崇高初監督作品として、加瀬亮さんと青木崇高さんによる上映付きトークイベントが行われた。
題して、「あおきむねたかのウズベキスタンまでちょっと会いに。」

イベント 6月21日(金)21:05〜
於:テアトル新宿
東京都新宿区新宿 3-14-20 新宿テアトルビル B1F


司会者の「初監督作品ですね」との問いかけに、
青木:僕の主演映画の時もこの映画館で初日舞台挨拶したんですけど、全然その時より多いですやん!(笑) こんなに集まって下さって嬉しいですよ〜。
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司会:お二人の付き合いは長いんですか?
青木:吉高由里子さん主演の『婚前特急』での共演が初めてですね。
加瀬:それとマーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』(16)で共演しました。『沈黙』は台湾ロケだったので、仲良くなったのは『沈黙』からですね。撮影オフの日には2人で台湾をあちこち回りました。
帰った後は、青木さんから当日のご飯の誘いが多いんですよ(笑)
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青木: 「今日ご飯行きませんかァ〜?」って電話するんです。
司会:いつまでもお話を聞いていたいですが、早速上映と行きましょう。
青木:はい!もう、なるようになれ〜っちゅう感じで撮ったんで気軽に観てください。それから、タイトルなめてて、すんません(笑)

スペシャル映像「あおきむねたかのウズベキスタンまでちょっと会いに。」の内容は、「スタッフ日記」をご閲覧ください。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/467414022.html


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観客席で一緒に鑑賞した加瀬亮さんと青木崇高さん。上映後、再登壇して開口一番
加瀬:んもう、前田敦子さんの「愛の讃歌」の余韻(本編の)が台無しじゃないですかァ〜(笑) もろにYouTuber目指してるってバレバレですよ(笑)
それにしても、本当に来るとはねぇ。半々くらいに思ってて、軽い気持ちで「来れば?」ってメールしたら…(笑)
青木:いやぁ〜 、観てから気が付いたんですけど、縦(サイズ)で撮っててゴメンなさい。スクリーンに合わせることを考えてなかった。
着いた時、柄本時生と加瀬さん、前田敦子さんが階段で笑って待っててくれたのが嬉しかったですよ〜。
加瀬:でも撮影、上手でしたね。僕は本編ではカメラマン役で撮ってるから、ドキュメントとの比較が面白い。
青木:初っ端のメール画面から笑い声が起きたのは意外でした。前日まで大河ドラマの「西郷どん」の収録で、雨だったら企画はおじゃん。直行便はないし、苦労しても会いたい人に会いに行けて良かったです。
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加瀬:青木さんが持ってきた「地球の歩き方」を見せてもらったら、バス便まで線引きしてあるんですよ。旅の仕方が自分と似てると思いました。怪しい人には”付いていく”という(笑)
青木:そうそう、”付いていく”(笑) とりあえず逃げるルート確保しつつ…みたいな(笑) あまり観光地らしい所には行かないですよね。
映画に登場する人たちは仕込みじゃなく、本当にリアルに出会った人たちですよ。
加瀬:僕ら俳優は撮影中、体調を恐れたんですよ。一応、気をつけるじゃないですか。食べたいものも我慢して。だから試したいものは青木さんに毒味させる(笑)
ウズベキスタンはもっともっと行ってみたい所や、もっと食べたかったものもありました。
青木:うどんは美味しかったです。もっと田舎のほうにも行きたかったし。
加瀬:地方での待機時間て楽しいですよね。 台湾は楽しかった。あの時と同じ感じ。
青木:観てて感動したんですけど、あの(家に招いてくれた)おっちゃんにとっては 、あれが普通なんですよね。こっちは”想い出の出逢い”なんて勝手に感動してるけど、おっちゃんには、あれが日常になってる。帰る時も普通に家に入って行きましたもん。
加瀬:東洋人は少ないからね。外国人を歓待してくれる。
青木:鳥の占いですけど、嘴が欠けたんちゃうか?と思うほど…動物虐待?(笑)
占いの紙に書いてある内容が分からなかったんで、帰国してから訳してもらったんですよ。そしたら、
「会いたい人に会える」
って内容だったんでビックリしました。まさに当たってたわけなんです。
色んな人たちから、「映画に出てないのになぜ行ったの?」とよく聞かれるんですけど、僕としては会いたい人に会いに行っただけなんです。
加瀬:旅番組持ちたいよね?(笑)
青木:今回の経験で作り手に興味を持ちましたね。今までは、「青木さん、オールアップ、お疲れ様でした〜」で去ってたけど、監督やスタッフはその後も色々な作業があんねやなぁ、ということが分かりました。一つ夢を叶えられました。本当に皆さん、有難うございました。(場内拍手)
加瀬:もう、これで上映はないんですか?…あぁ、そうですか。アハハ、まぁ本編も公開中ですから、そちらのほうも宜しくお願いします!
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トークを終えた加瀬亮さんと青木崇高さん。名残惜しそうに捌ける間際まで手を振り続けていた。
息の合った2人の和やかなトークに、観客席からも笑いが途切れない楽しいイベントとなった。青木さん初監督作品がDVD特典映像に収録されることを祈りつつ…。

取材:大瀧幸恵(文)、景山咲子(写真)


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『旅のおわり世界のはじまり』
監督・脚本:黒沢 清
出演:前田敦子、加瀬 亮、染谷将太、柄本時生、アディズ・ラジャボフ

配給:東京テアトル
公式HP:tabisekamovie.com
★テアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開
(C)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

シネマジャーナル 作品紹介



『ザ・ファブル』スペシャルトークイベント

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(撮影:堀木)

6月13日(木)スペースFS汐留にて『ザ・ファブル』スペシャルトークイベントが行われました。
岡田准一、木村文乃、山本美月の3人が登壇、この日の特別試写に招待された観客の前で撮影のエピソードを披露したり、クイズや観客の悩みに答えたりと和気あいあいとした雰囲気で終始しました。
MC:森圭介(日本テレビ)
ほぼ書き起こしてその空気をお届けします。 (まとめ 白石映子)

『ザ・ファブル』
監督:江口カン
原作:南勝久
脚本:渡辺雄介
撮影:田中一成
音楽:グランドファンク
主題歌:レディー・ガガ

謎の殺し屋ファブル(岡田准一)は6秒で相手を仕留める。あまりにも鮮やかな手口に裏社会ではもはや伝説となっていた。彼を育てあげたボス(佐藤浩市)は、ファブルに「一年間、仕事を休んで普通に暮らせ。誰かを殺したりしたら俺がお前を殺す」と、妙な命令を下す。ファブルは素直に従い“佐藤アキラ”という偽名を使って大阪の街に移り住んだ。相棒のヨウコ(木村文乃)は妹としてアキラに同道する。生れて初めての普通の生活をぎこちなくも楽しみ始めるアキラ。知り合ったミサキ(山本美月)の世話でアルバイトもするようになった。
しかし、裏社会はそんなアキラを放っておくはずがなかった。

2018年/日本/カラー/シネスコ/123分
配給:松竹
(C)2019「ザ・ファブル」製作委員会
http://the-fable-movie.jp/
★2019年6月21日(金)ロードショー


―本作は、今一番面白い作品と呼び声高いコミック『ザ・ファブル』の映画化でございます。主演の岡田准一さんをはじめとしたオールスターキャスト、世界基準のアクション、さらにハッピーな笑いが融合したどんな方でも笑ってスカッとできるという最高のエンターテイメント作品になっております。来週が公開でございまして、本日はキャストのスペシャルトークベント、みなさん胸をおさえながらハアハア言っていますけれども(笑)、少々お待ちください。さっそく呼び込みましょう。みなさま盛大な拍手でお迎えください。(拍手)
まずは伝説の殺し屋ファブルを演じられました岡田准一さんです。


岡田 お忙しい中ありがとうございます。やっと、もう少しで、来週公開になります。嬉しい気持ちと、どういう風に受け止めていただけるのかと、すごく楽しみに日々を過ごしております。梅雨と暑い夏が来ると思いますけど、すっきりする笑いのあるエンターテイメントアクションができたと言われて、とても安心しております。ぜひそれを体験していってください。今日はありがとうございます。(拍手)

―続いてファブルの相棒佐藤ヨウコを演じられました木村文乃さんです。

木村 木村文乃です。今日は珍しい催しというか、みんなと一緒に遊ぶことができるのでとても楽しみにしております。最後まで楽しんでいってください。よろしくお願いします。(拍手)

―素直で優しい苦労人、アキラのバイト仲間“清水ミサキ”を演じられました山本美月さんです。

山本 みなさんこんばんは。こんなに客席の後ろまでお客様の顔が見えるイベントが久しぶりなので、とっても嬉しいです。少しでもこの映画の魅力をお伝え出来たらな、と思っております。よろしくお願いします。(拍手)

―今コメントにもありましたけれど、今日は120~130人くらいのプラチナチケットを手に入れた方々なんですよ。いかがですか? この会場の雰囲気。

岡田 いやもう全員見えるんで…なんか肩に乗ってる人が。(笑)
(会場へ)それ(ナナちゃんカチューシャ)、みんな持ってるんですか? 持ってるんですね。

木村 わ、(ナナちゃんが)いっぱいいる!

岡田 どこにつけるかは? あ、後程ですね? (笑)

―はい、あの形状ですから、つくところはかなり限られております。(笑)

岡田 そうですね。頭につけるやつ、みんな持たされたんですね(笑)。ありがとうございます。後でたぶん写真撮るときに、よろしくお願いします。

―これから上映ということですから、みなさんにはネタバレに注意しながらいろいろお話しいただきたいな、と思いますけれども。岡田さん今お話にもありましたけど試写会での評判はとっても上々で。

岡田 そうですね。試写で評判はだいたいわかるんですけれども。すごく記者の方が来てくださったと耳にするので。今の時期に合うアクションというか、笑いもあり、楽しめる、すっきりできるアクションになっているんじゃないかなと思います。

―かなり手ごたえも。

岡田 どうですかね、もっとできるとは思っていますけれど。

―おお~!それはぜひ今日観ていただいた方が、近くの方にお勧めいただいてね。本格的なアクション、さらにはコメディ要素が岡田さん、今いろんなところで映像がばんばん出ていて、岡田さんの面白いところが出ていると。

岡田 面白いところ(笑)!? 出てますか?

木村 面白いところだらけですよ。

岡田 ありがとうございます。

―いかがでしたか? 撮影現場というのは?

岡田 撮影現場は、お芝居部分とアクション部分が2部構成になっていて、アクションは後半にまとめて撮ったんですけども、なんかこう別の作品のような感じでしたね。

―シリアスな作品にも多く出られていますけれども、コメディ作品に出るとき岡田さんどんなお気持ちなんですか?

岡田 どんな? もともとコメディ出身なので。(会場笑)出身?出身?出身っていうとおかしいですけど、宮藤(官九郎)さんの作品とか若いころよくコメディでやらせてもらってたことが多いんで。
真面目にやればやるほど面白い役なので、そこらへんを意識したり、監督もコメディ要素を強くしたいとずっとおっしゃって、「リアクションは強めにやってくれ」というのを話し合いながら作っていった感じですかね。

―笑いにシビアな現場だったんですか?

岡田 笑いにシビアですか(笑)。監督すごくシンプルでそれを膨らませていくというのが…。柳楽くんはじめこのお二方、佐藤二朗さんも、言葉悪く言えば「適当にやってください」みたいなのがけっこう多くて、お二人のシーンも5分くらい回しているのをずーっと終わらないまま、そのいいところ使ったりとか。その場でなんかやってくださいっていうの多かったですよね。

木村 そうですね。私わりとアドリブばっかりでした。

―ばっかり?

木村 ばっかりでした。監督はカットをかけてくださらないので、続けるしかないんですよね。だから山本さんにも藤森さんにも大変失礼なことばっかりしてしまったなぁと、後で観ていただいたらわかるんですけど。

岡田 鼻にピスタチオ詰めまくっていました。(爆) 詰めては拭いて、詰めては拭いてをしまくったらしいです。(笑)

―それもアドリブで?

木村 そうですね。私とお酒飲むときは気をつけていただきたいです。(爆)

―山本さんもかなりアドリブで、木村さんには顔をこう?

山本 はい、顔はほんとにもうメチャクチャにしていただいて(笑)もう感謝です(笑)

岡田 あれはほんと、5分くらい顔いじられてましたよ。

―そのとき山本さん、どういう気持ちなんですか?

山本 もう監督がモニターの前で面白がってる姿が想像できるというか(木村 うん、そうね)、クソーと思いながら…(爆)

―しょうがない、そういうシーンですからね。この後で作品を「ここ5分やってたんだぁ」とぜひ感じながら見ていただくと感慨もひとしおじゃないですかね?

岡田 いやもう忘れていただいて(笑)、すいません、余計なこと言ったかも。

―台本はシンプルで、演者のみなさんの個性やアドリブが存分に詰まった作品になっている、ということなんですが。本日このアットホームな雰囲気で、皆さんには企画に参加していただこうと思います。
題しまして、「プロとしてスカッとクリアせよ!究極のミッション2番勝負~!」(拍手)
これからは個人戦です。2番勝負、二つのミッションにチャレンジしていただきます。勝敗ポイント制になります。クリアするたびにポイントが加算されまして、終了時点で最もポイントの多い方が勝利、優勝すると素敵なプレゼント。そして、負けると罰ゲームということになります。

一つ目のミッションはこちら!「ミッション1 6秒以内に決断せよ!3択クイズ~!」(拍手)
これから映画『ザ・ファブル』にまつわるクイズを3問出題いたします。6秒以内に相手を仕留めるファブルにちなんでの「6秒」なんですが、番号札を上げて正解すると1ポイントとうことです。岡田さん何か番号札に違和感ありましたか?(笑)


岡田 いえいえ、なんか初めてだなぁと思って。映画の企画でこういうの持つの。

―映画館でやりますと、上映時間がどんどん押しちゃうので長くできないんですけれど、今日はイベントスペースなのでたっぷりと(笑)スペシャルトークしていただいております。
第1問です。ファブルのペットとして本作品に登場するインコのナナちゃん、どれが本物のナナちゃんでしょうか?

(3羽のインコが登場)会場&壇上で「可愛い~!」の声

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(撮影:白石)

―6秒以内にこたえてください、用意、スタート!
(全員が3番の札を挙げる。3番のインコしきりに鳴く)
―3番挙げられているから、テンション上がっています(笑)。岡田さん、これは?

岡田 ナナちゃんは頭の上によくのせていたので、絶対3番だと思います。色がやっぱり違いますよね。あと、この「鳴き待ち」がけっこうあったんですよ。この声はナナちゃんだなと。僕のほうばっか見てますからね。

―1番2番は向いてないけど、3番だけ向いているということで。これで間違ったら大変なことになりますが、では正解は? 3番、大正解!(拍手)ここは楽勝でしたね。

岡田 ナナちゃんよく鳴くね~!(笑)いい子なんですよ、ナナちゃん。

―では第2問にまいります。「藤森さん演じる河合ユウキはヨウコとの飲み比べのシーンで、何杯目のテキーラで白目を剥いたでしょうか? 1番10杯目 2番20杯目 3番30杯目」6秒以内にお答えください。

岡田 これずるくないですか?(笑)

―では札を一斉に挙げてください。どうぞ~!お、割れた!
(木村 2番 岡田 2番 山本 3番 の札)

岡田(2番にしたわけは)いやいや、勘ですけど。10杯もすごいと思うんですけど、30はないだろうと。テキーラですから。そうなると、20杯で。これ絶対当たってます。

山本(30杯)あ~間違えたぁ。(笑)

木村 まだわかんないよ。

―まだわかりませんよ。木村さんは自信を持って?

木村 はい。たぶん。ただ最後まで飲んだのが20杯だったか? 白目を剥いたのが20杯だったか? どっちだっけなぁと思って。

―正解はこちら。2番の20杯! 岡田さん木村さん大正解~!
山本さん予感があたってしまいましたね。そんなに悲しい顔しないでくださいね。3人にまつわるクイズということですから、山本さん次は。


山本 えー、絶対覚えてない気がするけど、こわいー、頑張りまーす!

岡田 これ去年なんでね。一年前だからね。

―フォローが優しい! 今のところお二人は正解でしたから、果たして3ポイント獲得なるんでしょうか?
はい最終問題こちらです。「山本さん演じる清水ミサキ、過去に出していた写真集のタイトルはいったい何でしょうか?」 1番“もぎたてエンジェル” 2番 美少女絵巻” 3番 漂流記”


木村 マ二アックですね。

岡田 これ、覚えてますか?

―では札を一斉に挙げてください。どうぞ~! 割れた!
岡田さん1番 木村さん2番 山本さん3番。岡田さん、なんで1番?


岡田 “もぎたてエンジェル”(笑)、一番やばそうじゃないですか。監督やばい人なんですよ。だから監督っぽい、監督が好きそうな、監督が選んで「あ、いいねぇ」って笑いそうなのは“もぎたてエンジェル”かなって。(笑)

―“もぎたてエンジェル”だと、どんな感じの仕上がりになってますかね?

岡田 “もぎたて“(笑)どんな感じですかね。

木村 すごいフレッシュそうですね。

岡田 ちゃんと写真撮ってましたよね?(山本へ)

山本 撮りました。ちゃんと「写真集を撮る日」がありました。(会場:ほー)

―木村さんは?

木村 “美少女絵巻”。そのまんま、すっきりしたタイトルだなと思ってそれだけ。

―“もぎたてエンジェル”ではないと?

木村 それは絶対違うだろうなと。なんかもう男性目線すぎるって。(笑)

岡田 なるほど。モロすぎると。(笑)

―それ言われたのに1番出しているってちょっと恥ずかしい?

岡田 いえいえ絶対“もぎたてエンジェル”ですよ。(笑)

―そしてご本人の山本さんは3番。

山本 “漂流記”? 漢字見てなんとなく思い出しました。確か原作もこれだった気がする。

―正解はこちら。3番の“漂流記”~!“もぎたてエンジェル”ではありませんでした。(笑)
山本さん覚えてらっしゃいました?


山本 覚えてました。良かったー!

―岡田さん残念?

岡田 “もぎたてエンジェル”が良かった。(笑)

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(撮影:白石)

―一つ目のミッションは同率、では二つ目のミッションにまいりましょう。
「ミッション2 スカッと解決!究極の悩み事にこたえます~!」(拍手)。
本日ご来場のみなさま、応募の際に「相談したい究極の悩みごと」を書いていただきました。あらかじめスタッフが厳選いたしましたので、これからこのお三方にその悩みごとを解決していただきます。で、3人のうちから「一番スカッとした」という回答を選んでいただきます。そして獲得するのは3ポイント、さっきのクイズは何だったんだということですけれど(笑)、まだ逆転のチャンスがあるということでございます。それでは最初の方●●さん。


質問者1 今保育の勉強をしていて、学校でピアノを弾く機会が多いですが、こどもたちの前だと緊張してしまってよく間違えます。みなさんはどうやって緊張した場面を乗り越えていますか?

―岡田さん スカッと解決してください。

岡田 練習はしてるんですよね?(質問者へ)では自信を持って、子どもたちと遊ぶ気持ちで、完璧を目指そうとしなきゃいいんじゃないですかね?そしてもし何か困ったことがあったら、「ミ」と「ソ」の音で変な顔してください。(爆笑)
やってみますか? ド、レ、ミー(変顔)!(爆笑)
やってみましょうね。懐かしいネタですよ。やってみてください。(笑)

―岡田さんの解決方法でした。続いて木村さん、スカッと解決してください。

木村 たぶん、すごくまじめだから緊張しちゃうんだろうなと思うので、間違えたらニコニコっと笑って「せんせい間違えちゃった~!」って言って、逆に子供たちの憧れの先生になれたらいいんじゃないかな、って思います。

―会場が「はぁー」って。

木村 ごめんなさい、まじめに答えちゃって。

岡田 俺もまじめに、まじめに答えました。(笑)

―山本さんいきましょうか?

山本 どうしましょうか。そうですね、根拠がない自信を持って、間違えても死ぬわけじゃないんで(笑)、「もう、なんとでもなれー」って感じでやっちゃったらいいんじゃないですかね。

―山本さん、実際そういう風にされてるんですか?

山本 はい。本番だけは根拠のない自信を持って挑むようにしています。

―木村さんいかがですか? アドバイスはやっぱり自分にも言える?

木村 どうだろう?(笑) でも、NGを出してしまったときに「あ、やっちゃった!」とズンってなるより「ごめんなさい!もう一回お願いします!」って言ったほうが現場は明るいなと思います。

―岡田さんはどうでしょうか?

岡田 僕は変な顔しますよ(笑) 。まあでも「うまくできなーい」っていうほうが強くなっちゃうと絶対失敗するので・・・僕らでいうと「飲み込まれる」って、「その場所にいられなくなる」ってあるんですけど。だから音をしっかり感じるとか、生徒たちがどういう気持ちでやっているかとか、こうやったら喜んでくれるかなとか、っていうほうを大事にしたほうが。上手く聞かせることより保育園でやることの本質じゃないですか?だから本当のやりたいことを見つけるのが、一番緊張しないことだと思うんですけどね。はい。

―すっごいいい話になりましたねぇ。

岡田 「ミ」と「ソ」ですよ。(爆笑)「ミ」と「ソ」(笑)

―三つの解決方法がありましたけれど、一番スカッと解決してくれたのは誰ですか?

質問者1 岡田さんです。

―岡田さんに3ポイントです!

岡田 「ミ」と「ソ」ですよね?

質問者1 「本質を見て」の。(笑)

岡田 あ、まじめに答えてよかった。

―ありがとうございました。大きな舞台を経験している3人だからこその回答をいただきました。では続いての方は●●さん。あ、いらしゃる!

質問者2 最近職場に入ってきた方がいるんですけども、ポーカーフェイスな方であまり自分からはお話されません。どうやったら仲良くなれるのか悩んでいます。

―おお、なるほど。ポーカーフェイスの上司とどうやったら、ということですが山本さんからいきましょうか?

山本 無理やりぐいぐい話しかけるよりも、相手のペースに合わせてこっちがずっと笑顔できちんと対応していれば、向こうもきっといつか心を開いてくれるんじゃないかなと思います。はい。

―やっぱり笑顔大事ですか?

山本 笑顔!笑っておけば間違いない気がします。嫌な気持ちになる人はいないんじゃないですかね。誠実に対応していれば。

―こちらから心を開く、と。木村さんいかがでしょうか?

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(撮影:白石)

木村 コーヒー出しながら「顔怖いですよ」って(笑)。

―それ使ってますか?

山本 萌えますね。

岡田 萌えるの?それ。

山本 萌えますね。

岡田 怖くない?「マジすか」って言われそう。

山本 木村さんがすごい可愛いから。(木村 再現)

木村 岡田さんには効かないっぽい。ごめんなさい、ちょっとアドバイス違うかもしれないです。

岡田 いやいやいや。

―それ、あえて直接言っちゃうってことですか?

木村 うん、そうですね、「やっぱり笑顔が」っておっしゃってましたけど、可愛く「顔怖い」って言われたら「そうかな?」ってなるんじゃないかなっていう。

岡田 確かにね。「そうだったか」ってね(木村へ)?

―岡田さんにはあまり効いてなかった?

岡田 いやいやいや効いてますよ。

木村 岡田さんにはもう絶対やんない。(笑)

岡田 もう一回だけ、もう一回だけ!もっかいだけお願いします!(笑)

―さあ、では岡田さんスカッと解決してください。

岡田 ええー。なんだろなぁ? マジメに? まじめパターンがいいですか?

質問者2 まじめに。

岡田 まじめパターン…。興味もっているっていう理解者になったほうがいいですよね。この人ここがすごいんだなってことをわかって、それを伝えるとか。そういうのをやっていくと、理解されているから教えたくもなるし、会話もしてくれるし。それが一番いいと思います。いいかなぁ、なんか。はい。(笑)
まじめすぎましたか?

質問者2 参考になりました。ありがとうございました。

岡田 ちょっといいところ褒めるとか、興味もつのが一番いいと思いました。

―(声を低めて)もう一個聞いちゃいます?じゃないほう、聞いちゃいます?

質問者2 じゃないほうもお願いします。

岡田 じゃないほう?(笑)なんかあのう、モノマネとかしましょうか?(司会爆笑)

―たとえば?

岡田 年齢聞いて、ね。意地でも(モノマネに)突っ込ませるっていう。 

―ちなみその上司の方おいくつくらいですか?

質問者2 えっとー、よ、四十くらい。

岡田 わかりました。じゃ、中森明菜さんで(笑)。絶対できますから。すごい小さい声でしゃべってください。(笑)

質問者2 小さい声で。

岡田 (ものすごく小さい声でモノマネ。「中森明菜です」しか聞き取れず)場内爆笑。
そのうち突っ込んでくれますから。中森明菜さん? すいません。バカにしてるわけじゃないんです。僕ら世代のネタですから。(小さい声でもう一度モノマネ)すいません、ほんとごめんなさい。

質問者2 頑張って練習してみたいと思います。

岡田 頑張って。

―計四つお答え出ましたけど、一番スカッとした解答出してくださった方は誰でしょうか?

質問者2 岡田さん!(拍手)

岡田 ありがとうございます。独走状態ですね。

―ちなみにどっちでした?

質問者2 モノマネにチャレンジしてみたいと思います。頑張ります。

―いいんですね、頑張らせて。岡田さん?

岡田 はい。内田有紀さんもちょっと試してみてください。

―内田有紀さん?

岡田 なんとなく雰囲気がね(似てる)、元気な。

―内田有紀さんのモノマネってどう?

岡田 どうやりますかねえ? すいません。自分で言って。中森明菜さんをぜひ。

質問者2 テレビで見て研究してみます。

―ありがとうございました。次の方いきましょうか? ●●さんいらっしゃいました。

質問者3 今好きな人がいるんですけど、その人に告白しようと思っています。その人はお笑いが好きなので、ちょっと面白く告白したいなと思っています。何かいいセリフがありますか?

―さあ、ちょっとシンキングタイムが来ています。じゃあ木村さんからいきましょうか?

木村 お笑い見ないんですよね。ほんとにお勧めなのは、これから見ていただくとわかるんですけど“ジャッカル富岡”っていう面白い芸人さんが作中に出てくるんです。それやってほしい。で、わからなかったら「一緒に観に行ってもらえませんか?」って誘えたらいいかなって。(場内 ああ~)ぜひ!

―かなりスカッと度の高い解答をいただきました。それでは山本さん。

山本 私もお笑い全然わかんないんですけど…。真剣な告白に面白要素はいらないと思います。まじめにまっすぐ気持ちをお伝えしたほうがいいと思います。はい。

―なるほど。両極端ですけれども、どちらも真実の解答ですよね。では岡田さん。

岡田 これはですね。ちゃんと本気で伝えますけど、まじめにこたえてほしい?
まじめに告白したほうがいいですよ。それ、いけそうなんですか? 賭け? 手ごたえある?
だったら真面目にいったほうがいいですよ。笑い入れちゃうとごまかしてるのかな、って思われる可能性ありますよね。なんかね、ちょっと茶化すのもね。

―面白く告白したいんですよね?

質問者3 せっかくなら。

岡田 せっかくなら? 「好き~」を変に言うしかないですよね。恥ずかしいからごまかしてるんだなくらいな。(笑)

―というと?

岡田 「私あなたのこと好ぅきぃ~!」(爆笑)好ぅきぃ~!みたいな。(シャッター音響く)
ちょっと、写真がすごいです。すんごいびっくりしたんですけど、シャッターチャンスですか?(爆笑)
それ使われるとちょっと恥ずかしい。(と言いつつまた)好ぅきぃ~!!(笑)
今の、明日使われたら、ちょっとあれだな。いいですけど。
可愛いな、くらいで。「はいどーも!」から始めちゃうと難しいんで「恥ずかしいからごまかしてるんだな」くらいの。「あなた私のこと好ぅきい~?」(爆笑)(記者席に向かって)速いですね、プロは!
言ってみたり、聞いてみたりしたらどうですかね?はい。

―ということで、三つ、いや四つの答えが出ましたけれども、一番スカッとした解答出してくださった方は誰ですか?

質問者3 岡田さん。

岡田 独走です。ありがとうございます。

―独走でしたね。岡田さんということになりました!ありがとうございます!!(鐘が鳴る)
鐘が鳴りましたので、ミッション終了。集計するまでもないと思いますが一応しましょうかね。
ほかにどんなものがあったのかというと「仕事のイライラを家に持ち込まないための、いいストレス発散法はなんですか?」「夏に向けて痩せたいので、最強の筋トレをどうか教えてください」などがあったんですけれど、あります?


岡田 痩せたいんですか?“カルニチン”とればいいです。(笑)L-カルニチンとって何か食べないで走ったほうがいいいです。
(*カルニチンはwikiで調べてみましょう)

木村 こういう話するときだけ、すっごい饒舌なの。

岡田 何でも聞いてください。(笑)食べちゃうと、それが栄養になっちゃう。食べる前に走る、それが一番いいです。

―最近筋肉キャラに。

岡田 (筋肉に向かって)「おい、聞いてんのか? 俺の筋肉」(笑)。シャッターチャンス!(笑)。(再びシャッター音)すごいですね、プロは!「あ、キター」って。(笑)

―今日はいろんな…あ、出ましたね。ではこの2番勝負、結果を発表いたしましょう。このようになりました。
岡田准一さん11ポイント獲得~!(拍手)


岡田 これちょっと卑怯でしたよね。だいぶ2人より長く話しました。

―二つ答えたりしましたしね。ということで見事優勝しました岡田さんにはプレゼントがございます。南勝久先生の直筆のイラスト色紙をプレゼントいたします。大阪から昨日の夜に到着したばかりで、講談社の方が持ってきてくださいました。いかがですか?

岡田 嬉しいです。ありがとうございます。僕バージョンをここに足してくれたら…。あ、これでいいですね。(笑)

木村 岡田さんに見えます。

岡田 見えますか? 似てますかね?(木村 うなずく)嬉しいですね、飾ります。

―さあそして、木村さんと山本さんには罰ゲーム。木村さん、さっきこうやって告白したらいいんじゃない、っていうときなんておっしゃってました?

木村 ジャッカル富岡?

―はい、そうです。映画を観る前に勉強できますよ。ジャッカル富岡のモノマネをやっていただきましょう。

山本 やりたくないなぁ…

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(撮影:白石)

岡田 あのうミサキちゃん、いつきちゃん(山本から「美月!」)美月ちゃんのリズム感知ってますか?(木村 笑う)

―ちょっと僕わからないですー。

山本 ダンスが踊れないんです。

岡田 こういうリズム取るのがしんどいんですよね。

山本 ライブとかで、手拍子ができないんですよ。

―手拍子ができない?

山本 わからなくなるんですよ。みんなの手拍子聞いていると惑わされちゃって。

岡田 行きますよ。(手拍子始める)

山本 え、合わせればいいんですか? 裏? 合わせる?(頑張るが合わない)
できるんですよ、美月ほんとはできるんですけど、ドキドキしてできなくなっちゃうんです。

岡田 合わせなきゃ、とすごいドキドキするらしいんで、これ二人でやるってどうなるのか?

山本 (お手本を)見たい、見たいです。見てから…

―あ、スクリーンにネタとかありますか?(スタッフへ)先にお手本見てからお二人にやっていただくということですね。こちらです。
(スクリーンにジャッカル富岡登場「なんで俺もやねーん!なんで俺もやねーん!」)

岡田 楽しみですね。

―そうですね。何かドラマが生まれそうですね。(笑)

木村&山本二人でフリの練習。「なんで俺もやねーん!なんで俺もやねーん!」(笑)

岡田 大丈夫、(お客様から)可愛いって言われてるから。

―せっかくですから、中央に来ていただいて。(記者席へ)みなさんカメラの準備よろしいですか?ムービーの方もよろしいでしょうか? じゃあお客様に「せーの」と言っていただきましょうか。意気込みを聞きましょう。

木村 頑張ります。

山本 ドキドキしています。

―じゃ、行きますよ。(客席と)せーの!

木村&山本 動きつつ「なんで俺もやねーん!なんで俺もやねーん!」(笑 & 拍手)
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(撮影:白石)

―ありがとうございました!全然違うものでしたけれど。(笑)

岡田 可愛い、可愛い。どっちかというと、こういうキャラクターが。こういうところじゃあんまり言えないけど(笑)。

―そうですね。海のね。(笑)

岡田 近くにいるこういうキャラクターになってましたけど。(笑)

―あっというまですね。このスペシャルトークイベントも時間となりましたので、これから映画をご覧いただきますお客様に、岡田さんからメッセージをお願いいたします。

岡田 はい。ほんとに日本の現代ものアクションをどうやって作っていくのかと、みんなで模索しながらチャレンジをした作品になっていると思います。ぜひその笑いあり、スカッとできるアクションというものを体感していただけたら、嬉しいです。面白かったらたくさんの方に勧めてまた来てください。アクションも速いので、何回でも確認に観てもらえると思いますので、ぜひ楽しんでください。よろしくお願いします。(拍手)

ここからマスコミ向けフォトセッション 
ナナちゃんカチューシャをつけた観客をバックに、3人がタイトルボードを持って並ぶ。
(取材・写真 白石映子、堀木三紀)
 

作品紹介はこちら http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/467099861.html
江口カン監督インタビューはこちら http://cineja-film-report.seesaa.net/article/interview-the-fable.html
堀木の愛あふれるレポはこちら https://ichigoichiei-mhoriki.blogspot.com/2019/06/blog-post_14.html

=取材を終えて=
『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』会見で岡田准一さんを見たのは2006年のこと。居並ぶキャストたち、みなさんまだ20代でした。イケメンたちを前におばちゃんもドキドキしましたっけ(笑)。
その後の活躍ぶりは周知のとおりです。今回13年ぶりの岡田さんはすっかり大人の雰囲気で、お客様に楽しんでいただこうと場を盛り上げているのがよくわかりました。
普通の子どもとは違う育ち方をしてプロの殺し屋となった”ファブル(意味は寓話だそうです)”が笑うのは、ひいきの芸人ジャッカル富岡を見るときだけ。ひたすらボスの命令を守って、大真面目に”普通の生活”を送ろうとする姿が逆に笑いを呼びます。この日はファブルと違ってよく笑っていた岡田さん、いいところできっちりフォローする木村文乃さん、明るくて率直な山本美月さん、3人のチームワークもよく、来場したお客様はみな楽しんで帰宅したはずです。劇場公開も待ち遠しいですね。(白石映子)

『ザ・ファブル』は司会者が説明していたように、コメディ要素たっぷりの作品。しかもファブルかストイックであればあるほど笑ってしまいます。今回のトークでも岡田准一さんの真面目な対応ぶりが笑いを誘います。
一方、ファブルの相棒ヨウコを演じた木村文乃さんは作品のはっちゃけぶりから一変、控えめな感じ。特に来場者からの質問のときには、質問者に寄り添い、なおかつ登壇者として求められている役目を果たさねばという気持ちが伝わってきました。木村さんの役作りについて、江口カン監督がインタビューで驚いていましたが、こちらが素の木村さんなのでしょう。
そして山本美月さん。作中ではアルバイトを掛け持ちして、借金を返そうと奮闘する、バイタリティあふれる役どころでしたが、舞台に立った姿が繊細な感じで驚きました。
3人がトライしたミッションは岡田さんの勝ちでしたが、罰ゲームをする岡田さんも見てみたかった。ファブルのように真面目な顔しながら、「なんで俺もやねん」と腰を振って踊った姿を想像してしまいました。初日舞台挨拶ではぜひ!(堀木三紀)

『バイス』公開記念 映画評論家・町山智浩氏トークイベント

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アダム・マッケイ監督作『バイス』はジョージ・W・ブッシュ政権(2001~2009年)で副大統領を務めたディック・チェイニーの驚くべき裏側を描いた前代未聞の実話。チェイニー役をクリスチャン・ベールが演じるほか、チェイニーの妻役にエイミー・アダムス、ラムズフェルド国防長官役にスティーヴ・カレル、ブッシュ大統領役をサム・ロックウェルが演じて脇を支える。
アメリカ在住ジャーナリストで映画評論家の町山智浩氏は本作をアメリカで観て、アダム・マッケイ監督、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムスにインタビューを行った。果たして、アダム・マッケイ監督は『バイス』でチェイニー副大統領をどう描いたのか。
公開に先立ち行われた試写会に、ディック・チェイニーの等身大と思われるパネルを抱えて町山智浩氏が登場。「この映画は登場人物が100人超えるんです。『この人、誰?』とわからない人がいても当然。俺もわかんないですよ。一瞬だけそこにいる、名前も解説されない人が実在の政治家だったりする映画です」とざっくばらんな語り口で作品を徹底解説した。

『バイス』原題:VICE

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<ストーリー>
「バイス」:バイス・プレジデント(副大統領)を指すだけでなく、“悪徳”や“邪悪”という意味もこめられている―ワイオミングの田舎の電気工から“事実上の大統領”に上り詰め、アメリカを自在に支配し、アメリカ史上最も権力を持ったチェイニー副大統領の姿の前代未聞の裏側を描いた社会派エンターテイメント!

監督・脚本:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェル
日本語字幕:石田泰子
字幕監修:渡辺将人
提供:バップ、ロングライド 
配給:ロングライド
2018年/アメリカ/英語/シネマスコープ/5.1ch/カラー/132分
公式サイト:http://longride.jp/vice/
© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
★2019年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー

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アダム・マッケイ監督が戦争を予言していた!

アダム・マッケイは元々お笑いの人。即興お笑いコント劇団みたいなところでギャクを書いて、自分も演技をしていました。その後、テレビのお笑いバラエティ番組「サタデーナイトライブ」で作家になり、ちょっと演出もするうちに、ウィルフェレルと知り合って彼の映画を作るようになりました。ここから監督に転身。『タラデガ・ナイト オーバルの狼』を監督して、そこから『俺たちニュースキャスター』など、段々と政治的なものを描くようになっていきました。
『俺たちニュースキャスター』は70年代のニュースキャスターの話ですが、アメリカでも当時は女性がニュースキャスターをするのはとんでもない時代。みんなで追い出そうとする様子を描いています。ついこの間のことで、アメリカも短い間に世の中が変わったことがわかりますね。
「サタデーナイトライブ」は1週間に起こった政治関係のニュースをコメディアンが政治家に扮して事件そのものをコントで見せます。ディック・チェイニーのこともイラク戦争が起こる前に、茶化しています。
ブッシュとゴアのどちらが大統領になるかを争っていた2000年の頃、チェイニーは副大統領候補としてブッシュと一緒に出ていたので、コメディアンがチェイニーのフリをして出てきて、「ブッシュが大統領になったら戦争を起こすからな!軍需関係の株を買っておけよ」と言うんです。911テロの前、2000年ですよ。予言が当たったんです。アダム・マッケイすげえと思いました。

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ルアーとナレーターが作品を象徴

ルアーが何度も出てきますね。あれはフライフィッシング。餌をつけないで、ルアーを動かして、餌のふりをして魚を釣る。911テロの黒幕はイラクではありませんでした。911でブッシュや国民を釣って、イラクを攻撃させた。「ブッシュを魚扱いかよ」と思いますよね。ルアーはチェイニーが国民やブッシュを釣る男の象徴です。
カートさんは中産階級の白人で都会に住んでいない。オフィスワーカーではなく、ブルーカラー。でも、真面目な人で、戦争が起これば自分から戦争に行く。共和党の典型的な支持者で、ブッシュに投票し、トランプに投票した人です。
でも、支持したブッシュ政権によって、散々な目にあっていきます。肉屋を支持する豚という話ですね。彼のハートをチェイニーがもらう。チェイニーは今、自分のハートがありません。アメリカの真面目で愛国心のある典型的な国民のハートを奪ったのです。

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なぜ、副大統領を主役にしたのか

副大統領を主役に映画を撮るのは前代未聞。チェイニーは頭のいい人だと思われがちですが、この作品を観ると、あまり頭が良くないことがわかります。イエール大に入りましたが、成績不良で叩き出される。その後、ワイオミング大を卒業していますが、イエール大は全米3位の名門校。ワイオミング大は183位。完全に挫折人生です。
ところが副大統領になり、湾岸戦争、イラク戦争と2回も戦争を起こしました。合計の死者数はものすごい。ブッシュとチェイニーが組んで、選挙に出たけれど、誰もチェイニーに入れたつもりはないでしょう。誰も投票していない人がアメリカを引っ張って戦争を起こしてしまった。なぜそんなことになったのかとアダム・マッケイ監督が思って映画にした話です。

4月5日(金)全国公開『バイス』アダム・マッケイ監督_インタビュー映像


クリスチャン・ベールの役作りは意外なところで役にたった

チェイニーを演じたのが、クリスチャン・ベール。これまでもクリスチャン・ベールは『マシニスト』ではがりがりになり、『バッドマン ビギンズ』で筋肉もりもりになって、シャブ中の役を演じた『ザ・ファイター』ではまた、がりがりに痩せ、その後、『アメリカン・ハッスル』でぶくぶくに太っています。痩せたり太ったりを短期間で繰り返して大丈夫なのか。インタビューで聞いてみました。

4月5日(金)全国公開『バイス』クリスチャン・ベール_インタビュー映像


チェイニーが心臓麻痺になった演技をするため、心臓外科医にいろいろな話を聞いて、研究したところ、「俺がやっていることが一番まずい」とわかったのでやめると言っていました。
実はこの作品の撮影中にアダム・マッケイが心臓を悪くして倒れたんです。そのときに、クリスチャン・ベールが「俺、何でもわかるから」と言って、助けたそうです。役者って勉強するんだなと思いましたね。彼が話すには、心臓が苦しくなると胸を押さえて倒れるというのは嘘で、腕がおかしくなるらしいです。それで、本作でもそういう演技にしたといってます。
役者ってみんな物知りですよ。その役のことを徹底的に研究するから。アダム・マッケイはそのお蔭で助かったとクリスチャン・ベールが言っています。チェイニーのおかげで助かってんじゃん。

チェイニーを真似するときのポイントは?

チェイニーはいつも口を曲げているんですけど、映画で見てみると最初の方は曲げていません。実際にも昔は曲がっていなかったようです。政治家をやっているうちにどんどん曲がってきた。クリスチャン・ベールはそれを「防衛本能とか何らかのサイコロジカルに彼自身、抑圧があるから、それが押さえきれずに曲がっていくのだろう」と分析していましたが、俺はかみさんが原因だろうと思いますね。もともと政治に興味がなかったチェイニーを奥さんが無理やり政治家にしたのです。本当はワイオミングで釣りをしたり、鳥と間違えて人を撃ったりしている方が楽しいでしょうね。それをなんでワシントンなんかで暮らさなきゃいけないんだという気持ちから、どんどん口が曲がっていったと思います。

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町山によるエイミー・アダムス評

エイミー・アダムスはこの作品の撮影と同じ頃に、「KIZU-傷-」というテレビドラマに出ていました。そちらのキャラクターはリンと全く逆で、母親から虐待を受けていたことでトラウマを抱えている弱いヒロイン。身体じゅう自傷癖で傷だらけになっています。それと同時期に国を操っているマクベス夫人を演じている。「全然キャラが違うのによくできましたね」といったら、本人も「大変だった」と。女優としてすごいですね。『ザ・マスター』(2012年)ではサイエントロジーという宗教団体の教祖を操っていた奥さんをやり、『バイス』ではディック・チェイニーの奥さんをやって、スーパーマンの奥さんも片手間でやっていますからね。大変な人だと思います。

4月5日(金)全国公開『バイス』エイミー・アダムス_インタビュー映像


リン・チェイニーがイラク戦争のきっかけを作った?!

娘が2人いて、1人が本当にレズビアンです。もう1人の娘が保守的な支持層を集めようとしているときに、同性婚に反対するという道を選んだのはチェイニーではなく、この人。自分の娘がレズビアンで同性婚をしたいと言っても、政治のために否定する。怖い人。普通できませんよね。それでどういう人かわかります。ちなみにコロラド大学主席なので、頭は本当によかった。ただ、ワイオミング出身なので、自分がそこから政治家になるというのは思想的にできなかった。自分の娘にはさせていますけれどね。
これまでみんな、ブッシュは操り人形で、ディック・チェイニーが操っていると思っていました。ところが、この作品では「いや、ディック・チェイニーも操り人形だよ」となっています。エイミー・アダムスがインタビューで最初にリン・チェイニーは悪い人だと思わないと言っていますが、リン・チェイニーの目的は国を操ることではありません。自分が政治家になることができなかったので、夫を通じて自己実現したいという個人的な理由でした。それが、巡り巡って大戦争が起きてしまった。とんでもない話だと思います。その辺りはオリバー・ストーンが撮った『ブッシュ』では、ブッシュは父親への対抗心、コンプレックスで戦争を起こしてしまったと精神分析しています。どちらも個人的な理由で戦争を起こしたとしているわけですね。しかも、ディック・チェイニーは国防長官もやっていますが、ベトナム戦争のとき、戦争から逃げているんです。軍事経験がまったくない男がアメリカを使って戦争を起こしてしまうという。とんでもない話ですね。

ブッシュを演じたサム・ロックウェルがそっくり!

もともと似ていましたが、あの顔真似がすごいですよね。ハの字眉毛と(顔真似しながら)口がこんな感じ。これのブッシュ感がすごい。またサム・ロックウェルが意地悪だから(笑)、バカみたいにやっている。でも、ブッシュはイエール大学を卒業して、ハーバード大学のビジネススクールも出ています。チェイニーより頭がいい。バカにすんな(笑)と思いましたけれど。とにかく、メチャクチャ似ていておもしろい。

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アダム・マッケイ監督のトランプ大統領への評価

ディック・チェイニーがラムズウェルに「思想とか信条とか、そういったことで信じていることはあるんですか」と聞いたら、「信じていること、いいね、そのギャグ」というシーンがあります。本当はそんなこと、言っていないでしょうから、いろいろなところで面白く作っているなと思いますね。
アダム・マッケイはトランプ大統領のことはそんなに嫌いじゃない。インタビューで、トランプが大統領になったことで撮った映画なのかと聞いたら、「そうじゃない。トランプの方がましだ」といっています。
トランプは戦争しない。世界から軍隊を撤退させる方向に向かっている。最初に出てきたときに、“アメリカが韓国や日本、NATOを助けるのはおかしい。お金や軍隊をなぜアメリカが負担しなきゃならないの”と言って、トランプは右からも左からもある一定の支持を集めました。トランプは国際安全保障についてよくわかっていないのですが、アメリカ第一主義だからいいんですよ。世界で誰が死のうが、アメリカと関係ないというモンロー主義です。アメリカが世界の警察になっていったのは、国際連盟を創設したウッドロウ・ウィルソン大統領が世界の平和に対して、世界一豊かなアメリカは何らかの貢献をすべきだと言い始めたことがきっかけです。それまでは世界で何が起ころうと知ったこっちゃないというスタンスでした。トランプはそこへ戻っているし、アダム・マッケイはそれでいいと言っている。アダム・マッケイは“アメリカは関わるべきではない”という立場なんです。

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アメリカでアダム・マッケイ監督が受けている批判は?

チェイニーはハリバートンという会社でCEOをやっていました。ハリバートンは戦後復興のための仕事を政府から受注しています。株主でもあるチェイニーは、自分が儲けるためにイラク戦争を起こしたことが作品から見えてきますが、この映画では戦争の理由をそれしか描いていないとアダム・マッケイは非難されています。
ポール・ウォルフォウィッツ、ジョン・ボルトンが出てきますが、彼らはシオニストで、イスラエルの安全保障を重要視しています。そんな彼らにとって大事なのは、イラクにイスラエル以外に親米国家があること。イスラエル以外は全部、反イスラエルなので、他の親米国家が欲しくて、イラクを攻撃したと、ちょこっとだけ出てきますが、その部分が強調されていないと批判されています。

「アメリカ」という曲が最後に流れるのはなぜか

この曲は『ウェスト・サイド・ストーリー』で、プエルトリコ系の女性が“アメリカは最高”といい、男性は“ひどい目に合って、差別されている”と掛け合うシーンで歌われます。金持ちばっかり優遇され、苦労するのはカートのようにアメリカを真面目に信じ、政治家のいうことをただ聞いて、戦争があるといわれれば、それが全然意味のないものであっても、信じて行くような不公平なことが行われているということを意味しています。

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法律の研究家が水攻めを肯定?

チェイニーは水攻めや拷問について、若い韓国人の法律専門家に、大丈夫かどうかの理論を組み立てさせました。なんで、彼がいいと言っただけでよくなるのか、わからないですが、水攻めは拷問に当たらないという言葉の言い換えをしていきます。
それまで水攻めは拷問だったのですが、その後、表現をちょっと変えて、強化された尋問としました。板の上に寝かせて、頭の方を少し下げて、そこに水を掛けるのが水攻め。そのまま続けても死なない。だから拷問ではない。尋問がちょっと強くなっただけとしたんです。
最近、ユダヤ系のイギリス人俳優のサシャ・バロン・コーエンが「WHO IS AMERICA」というどっきり方式の番組で、モサドという名のイスラエルの秘密警察の人のフリをして、ディック・チェイニーに会いに行き、「あなたがイラクに攻め込んでくれて、イスラエル人、感謝しています」とでたらめな訛りで話していました。サシャ・バロン・コーエンは実はユダヤの言葉を話せるんです。
で、サシャ・バロン・コーエンがメイクしているから、チェイニーはサシャ・バロン・コーエンだとは気が付かないんです。サシャ・バロン・コーエンは水を入れるポリタンクを持って行って、「あなたの大ファンです。特に水攻め最高です!」といって、ポリタンクにサインを頼むと、チェイニーが喜んでサインしていました。全然、悪びれていない。釣り師が釣られましたね。その番組を見たアダム・マッケイは「サシャ・バロン・コーエンはすごい」と言っていました。テレビ番組で政治家を騙して、バカなことをやらせるなんて、日本では誰もやらない。言わせなくてもバカなことをいいますけれどね。

政治家批判の映画を日本で作れるか?

日本で政治家を実名にした映画を作れますか? 口が曲がっている人、いますけれど。やらないでしょ、法律で禁じられていないのに。「アメリカはこれを作って大丈夫なの?訴訟とあるんじゃないの?」って思いません? アメリカではこんなことで訴訟を起こしたら恥ずかしいからやらないですよ。だってこれ、映画ですから。言論に対するひどい弾圧になってしまいます。でも、いくらでもネタがあるのに、日本では誰もやらない。日本人は腑抜けばっかりです。
「サタデーナイトライブ」では毎回、政治家の真似をコメディアンがやっていて、トランプ大統領は毎週出てきます。いつもアレック・ボールドウィンが演じているので、アレック・ボールドウィンのことをトランプだと思ってる人も多いと思いますよ。アメリカ人は昔の映画を見ないから、アレック・ボールドウィンが昔、イケメンだったと言っても若い人は信じないでしょう。昔はイケメン俳優としてキム・ベイシンガーと結婚していたというと、「嘘だ」といわれますよ。

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最後はアダム・マッケイ監督のインタビュー映像で町山はトークイベントを締めくくった。
「一つ言えるのは“権力を疑え”ということだ。監視を怠れば政府は暴走する。国の危機に陥り崩壊するだろう。政府に動きがない時も自分のすべてを懸けてでも疑わなければダメだ。時には仕事を失い、恥をかくかもしれない。でも歴史が証明してくれる。最終的には、あなたが正しいことをね」
(取材・構成:堀木三紀)