『カムイのうた』劇場公開前のトークイベント!

ピリカウレシカ アイヌ文化と知里幸恵さんの魅力

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9月2日(土)東京ビックサイト「@GOOD LIFEフェア2023」会場にて 
トークイベントに登壇した 左から菅原浩志監督、吉田美月喜さん、島田歌穂さん、木原仁美・知里幸恵記念館館長

映画『カムイのうた』の北海道先行公開(11月23日)と東京での公開を控え、9月1日(金)~3日(日)に開催された朝日新聞社主催の「GOOD LIFEフェア2023」でトークイベントが実施されました。
本作で主人公テルを演じた吉田美月喜さん、主人公の叔母イヌイェマツを演じ主題歌も担当した島田歌穂さんに加え、本作のモデルである知里幸恵の記念館館長である木原仁美さんと、本作で脚本も担当した菅原浩志監督が登壇。「ピリカウレシカ アイヌ文化と知里幸恵さんの魅力」をテーマにトークショーが繰り広げられ、映画公開に先立ちアイヌ民族についての歴史や貴重な話が語られました。
*「ピリカウレシカ」とは、ピリカ=GOOD、ウレシカ=LIFEというような意味で、「快適な暮らし」、「良い暮らし」というようなことだそうです。

『カムイのうた』のロングバージョンの予告編も本会場で初お披露目され、更に劇中でも披露されているアイヌ民族の楽器・ムックリ(口琴)を吉田美月喜さんが披露し、アイヌ民族に口承されてきた歌謡形式による叙事詩ユーカラを島田歌穂さんが歌いました。島田歌穂さんが歌った時には、吉田美月喜さん、菅原浩志監督が竹片を木の枝でたたき楽器にし3人のコラボになりました。さらに木原仁美知里幸恵記念館館長による本格的なムックリの演奏まで披露され、アイヌの伝統的な伝承文化を堪能することができました。

全てに神が宿ると信じ、北海道の厳しくも豊かな自然の中で暮らしてきたアイヌの人たち。その生活や文化は和人が入って来た事で奪われてしまった。生活の糧である狩猟やサケ漁が禁止され、住んでいた土地を奪われ、アイヌ語も禁止された差別と迫害の歴史。
そんな中でこの映画は、口承で伝えられてきたアイヌ民族の叙事詩ユーカラを日本語訳し、「アイヌ神謡集」を完成させた知里幸恵さんの実話がベースになっている。幸恵さんがモデルのテル役を吉田美月喜さんが演じている。

『カムイのうた』トークイベント
アイヌ文化と知里幸恵さんの業績、吉田美月喜さんのムックリ演奏と島田歌穂さんのユーカラ披露も!

映画公開に先立ち「ピリカウレシカ アイヌ文化と知里幸恵さんの魅力」をテーマにトークが展開された。

主演の吉田美月喜さん(20)は、アイヌ民族の血を引くというだけで希望する進学を阻まれたり、差別的な待遇を受けたテルを演じた。知里幸恵さんはユーカラを日本語に訳した「アイヌ神謡集」を完成させた1922年(大正11年)、19歳の若さで亡くなった

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吉田美月喜さん:この映画に携わるまで正直アイヌ文化をあまり知らなくて、今年(2023)1、2月に北海道東川町を中心に行った撮影前からアイヌ民族の歴史、文化など、役を演じるうえで必要なアイヌ文化を1から学ばせていただきました。
その中で一番驚いたのは、叔母役の島田さん演じるイヌイェマツが床にお茶をこぼしたときに言った「床の神様は喉が渇いていたんだ」というセリフです。
床にも神様がいるという考え方にびっくりしました。アイヌの方は全てに神が宿っていて、その神の中で自分たちは助けられて、生かされているという考えを凄く大切にしていて素敵だなと思いました。
実在された方を演じるのは初めてだし、自分の知らない文化を学びながら説得力のある作品にしなければいけないというプレッシャーもありました。アイヌ文化をしっかり伝えていくには自分が一番理解しなくてはいけないし、知里さんのこともイメージしながら臨みました。撮影時は私もちょうど19歳で、知里さんが亡くなられたのと同じ歳。幸恵さんはどう思っていたんだろうとしっかり考えながら演じたと、19年という短い生涯を送った主人公に思いを馳せた。

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島田歌穂さん:私も全てのものに神が宿っているという考えは本当に素晴らしいと思います。1番、驚いたのは、床にお茶をこぼしてしまった時「床の神様は喉が渇いていたんだ」というセリフと即答。日頃、ぞんざいに扱ったり、邪魔だなと思うものにも1つ1つ命が、神が宿っている。その考えがまさにそのセリフに象徴されていると思ったと吉田さんに同調。父親が北海道出身だという島田さんだが、「本当にアイヌの文化や歴史について知らなかったなとおもいました。アイヌの方々の考え方、色々な境遇にも負けずに自分たちの文化を守っていく生き方に感銘を受けました。
テルの叔母イヌイェマツ役の島田歌穂さんは、作曲家である夫の島健氏が作曲した主題歌「カムイのうた」のほか、ユーカラも歌唱する。

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菅原浩志監督:この作品は、北海道の雄大な自然や動物たちも登場します。
「ピリカ」というのは素晴らしいとか、綺麗とか、Goodという意味、「ウレシカ」は人生、Life、生活と言うような意味です。「ウ」は互いに、「レシカ」は育てるなので「互いを育てる」=Life(生活)というのが語源です。すごく意味深いと思います。
映画を作るにあたってアイヌのことを勉強したのですが、非常にたくさん教わることがありました。今までどうしてこんな大切なことを教わってこなかったんだろうと感じました。
先住民として独自の生活、文化を築きながら、和人が入って来たことでそれを奪われ、生活の糧である狩猟、サケ漁が禁止され、住んでいた土地も奪われ、アイヌ語が禁止されるなど、アイヌ民族は差別を受け続けてきた。
北海道の地名はアイヌ語が起源のものが多い。アイヌ民族が北海道中に住み、地名に意味を込めていたか。和人が入ってきて、その名前の上に全部漢字を書いていって、アイヌの文化、歴史が書き直されてしまった。
さらに、見た目だけじゃなくて本質は一体何か、その裏の本当の意味は何かということを我々は見ていかなくちゃいけない、そのことをアイヌ民族たちが教えてくれた。我々も12年前には「原子力明るい未来のエネルギー」と大きな看板を掲げていた原発が爆発しているわけです。我々が思っていたことが実際はそうではないということを、考えなければいけない時代がが今。そのきっかけになるのがアイヌ民族であり文化です。

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トークのあと吉田美月喜さんが、この映画のため学んだというアイヌ民族の楽器ムックリを生演奏した。撮影が始まる前から教えていただいて、家でも練習をしました。撮影が終わっても家でやるんですが、やればやるほど知らない音が出る。ちゃんと表現できたかわからないけど、主に撮影させていただいた東川町をイメージして演奏してみましたと語った。

菅原監督は「アイヌは自然と共存してきた民族。とても自然をリスペクトしています。ムックリは自分で作ることができるくらいシンプルですが音がなかなか出ない。こんなに音がでるのはすごい」と吉田さんをほめ、島田さんは「本当にとても上手に演奏されていました」と称えた。

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さらに、独自のアイヌ文化とも言えるアイヌ民族に伝わる叙事詩ユーカラを島田歌穂さんが生披露。アイヌたちは神話や英雄の伝説、自然界の動植物や神など多様な事象を文字ではなく、語り手の表現、語り口による表現方法で語り伝えてきた。ユーカラは長いものだと数時間、何日も続くものもあるが口伝えで継承されてきた。島田さんは「小鳥の耳飾り」という曲を披露。監督と吉田さんは30㎝くらいの長さの竹を木の枝のような棒でたたき、吉田さんが合いの手を入れたりしてて参加。島田さんの素敵な歌声が会場中に響き渡った。

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島田さんが謡ったユーカラ「小鳥の耳飾り」について、内容を話せば長くなるのですがかなり切ない話ですと語っていた。全国の民謡を歌っていますが、ユーカラは今まで聴いたことがない初めて聴く音楽。リズムといい、メロディといい未知の世界。でも、懐かしい感じのする音楽でした。

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このあと、知里幸恵さんのめいの娘で知里幸恵記念館の館長を務める木原仁美さんがアイヌ民族衣装で登壇。「19歳で亡くなった人におかしいんですけど、血縁としては大叔母さんです。今年は知里幸恵生誕120年、1923年発行の『アイヌ神謡集』出版100年で節目の年。この年に映画が公開されて、さらに幸恵が注目されると思います。さらに世界にまで広がっていければ嬉しいです」と語り、持参したムックリを奏でてくれた。やはりベテランの音の響きは違う。音の連弾のよう。まるでいくつものムックリがつらなうように音が重なって音が伝わってきた。
木原さんは風の音や熊の鳴き声など、自然界の音を想像して弾いてみましたと語り、
アイヌ民族は「カムイ」と言って、全てのものに魂が宿ると考えています。人間に役に立つものは全て「カムイ」なんです。火、熊、船等々、いろいろなものが神様になります。その神が見ているから物を大切にすること、命をいただいたものを全て余すことなく活用するという考えで生きています。またアイヌは文字を持たないので、記憶力がすごく良かったと聞いています。ユーカラも耳で覚えて1度聞いたら全て覚えるほどだったとと、アイヌ民族の考えや知恵などを語った。

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最後に、菅原監督は「アイヌ神謡集」について、知里さんがその序文を19歳で書かれているのですが、本当に素晴らしい名文。北海道の歴史、アイヌ民族の歴史、彼女の想い、将来どうしたいかということが凝縮された2ページなので、ぜひ読んでいただきたい」と絶賛。この映画の中でもこの序文を映像で表現して‎います。知里幸恵さんがスクリーンで蘇ってほしいという思いでこの映画を作りました。また『日本の先住民族の文化を伝えるだけでなく、いじめや差別のない社会をと言う願いを込められています。
また、取材時に出会ったある子どもたちの話を例にあげた。「氷が解けたら何になる」という質問に、普通は「水になる」と答えるのですが、アイヌの子どもは「氷が解けたら春になる」と答えました。その感受性、自然を大切にし自然と共に生きてきた彼らの心を我々も学んでいきたいと思います。ぜひ、映画をご覧になって吉田さんの素晴らしい演技、島田さんの彼女でしか歌うことができない歌をご覧いただき、そしてアイヌ文化に触れるきっかけになっていただければ嬉しいです」とメッセージを語り、イベントは終了しました。


公式HPより
アイヌの心には、カムイ(神)が宿る――
学業優秀なテルは女学校への進学を希望し、優秀な成績を残すのだが、アイヌというだけで結果は不合格。その後、大正6年(1917年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学したが土人と呼ばれ理不尽な差別といじめを受ける。ある日、東京から列車を乗り継ぎアイヌ語研究の第一人者である兼田教授がテルの叔母イヌイェマツを訊ねてやって来る。アイヌの叙事詩であるユーカラを聞きにきたのだ。叔母のユーカラに熱心に耳を傾ける教授が言った。「アイヌ民族であることを誇りに思ってください。あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ」

教授の言葉に強く心を打たれたテルは、やがて教授の強い勧めでユーカラを文字で残すことに没頭していく。そしてアイヌ語を日本語に翻訳していく出来栄えの素晴らしさから、教授のいる東京で本格的に頑張ることに。同じアイヌの青年・一三四と叔母に見送られ東京へと向かうテルだったが、この時、再び北海道の地を踏むことが叶わない運命であることを知る由もなかった…。

出演:吉田美月喜、望月歩、島田歌穂、清水美砂、加藤雅也
監督・脚本 菅原浩志 プロデューサー:作間清子 主題歌:島田歌穂
製作:シネボイス  
製作賛助:写真文化首都「写真の町」北海道東川町  
配給:トリプルアップ 
Ⓒシネボイス 上映時間:125分 公式サイト:kamuinouta.jp
2023年11月、北海道先行公開

監督・脚本 菅原 浩志
『ぼくらの七日間戦争』『写真甲子園0・5秒の夏』『早咲きの花l『ほたるの星』『北の残照』『ヌプリコロカムイノミ』
この『カムイのうた』は東川町が企画協力し製作。

取材を終えて
このイベントのあと、いくつかのブースをまわってみましたが、興味深いブースがたくさんありました。まず最初に向かったのが、この映画で企画協力している写真の町として有名な北海道東川町のブース。ジャムや米などの特産品が並んでいましたが、このブースの中で、ちょうど、この映画をもとにしたコミック(春陽堂書店より9月6日に発売)を書いた、なかはらかぜさんがサイン会をしていました。それで、普段アニメなどは見ないのですが思わず買ってしまいました。 
コミック「カムイのうた」が9月6日に発売!

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著者のなかはらかぜさん

「アイヌ民族の抒情詩ユーカラ」という言葉を初めて聞いたのは50年以上前の中学生の時、それ以来、アイヌ民族の文化がずっと気になっていたのですが、5年くらい前に平取町にある二風谷アイヌ文化博物館に行ってきました。その時に東川町にも寄りました。
そのユーカラを日本語口語に訳したのが知里幸恵さんという女性で、19歳で亡くなったというのは全然知りませんでした。その方をモデルに描いた映画『カムイのうた』を早く観てみたいです。

*スタッフ日記に、少しだけこのイベントのことを載せています。
シネマジャーナルHP スタッフ日記 
退院して、少しづつ活動始めています(暁)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/500612667.html
取材 宮崎暁美

『ウムイ 芸能の村』トーク 7月15日 ポレポレ東中野

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*プロフィール*
ダニエル・ロペス(監督・脚本)
スペイン系スイス人。2003年より沖縄に拠点を置き、映像作家、写真家として活動している。2016年『カタブイ‐沖縄に生きる‐』2020年『KAKERU 舞台の裏の物語』を監督。2022年に完成した『ウムイ 芸能の村』は3本目の長編ドキュメンタリー作品。

エバレット・ケネディ・ブラウン (Everett Kennedy Brown)
アメリカ、ワシントンD.C.生まれ、在日30年の写真家、文筆家、日本文化研究家。2003年にEpa通信社日本支局を設立し、10年間支局長を務める。また、日本有数のサスティナブル・ラーニングセンターであるブラウンズフィールドを設立。アーティストとして、幕末明治時代の湿板光画に対する革新的なアプローチで知られ、その写真は海外の主要美術館のパーマネントコレクションに所蔵されている。(HPより)

『ウムイ 芸能の村』作品紹介はこちら
スタッフ日記はこちら

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(C)VIVA RYUKU

―ダニエル・ロペス監督と写真家のエバレット・ブラウンさんがゲストです。
本日お越しいただいたお客様に監督からご挨拶をお願いいたします。


監督 みなさんこんにちは、今日は『ウムイ 芸能の村』を観に来てくださってほんとにありがとうございます。この映画はコロナの時に撮影したんですけど、芸術とかアートは特に大事と思います。映画館にも行けなくて、舞台もできなくて、だから監督として沖縄の芸能を映画に残したい。舞台に上がれない出演者たちの「気持ち」、沖縄の言葉で「ウムイ」を聞きに行って、この映画になりました。

―エバレット・ブラウンさんがいらっしゃいました。

エバレット・ブラウン(以下ブラウン) (監督へ)おめでとうございます。

―ではここからお二人にお任せしてトークのほう、進めていただければと思います。エバレットさんからお聞きしたいこと、感想など監督へ。

ブラウン わかりました。いやー、感動しました。聞きたいこといっぱいあるんです。まずは映画祭にいくつも選ばれたんですよね。

監督 そうですね。結構選ばれました。最初は東京ドキュメンタリー映画祭で賞を獲って、ドイツのニッポン・コネクション、フランスのトゥールーズの映画祭、それからカンボジア国際映画祭にノミネートされて、ほかの映画祭は返事待ち。
海外では沖縄のことがあまり知られていないことにびっくりします。だから海外で沖縄の伝統芸能を紹介できることが、とても嬉しいですね。

ブラウン 海外ではどういう評価があるんですか?

監督 沖縄の文化や伝統が知られていないから、獅子舞の印象がとても強い。ドイツに獅子舞を連れて行った。

ブラウン すごい面白かった?

監督 うん。獅子のイメージは中国の文化でちょっと派手です。映画の中で拓也さんも言っていますけど、見守る神様のイメージです。彼らは(獅子に)入るとき、出るときもそう、とても大事にしています。ドイツでもドイツ人のスタッフも一緒にみんな集まって祈ってから入る。場所もちゃんとお祓いして。私いつもこれを観ると感動します。

ブラウン 映画の中で獅子がいろんなところを歩いているので・・・最初からそういう想いがあったんですか?

監督 ないです(笑)。最初に神社に行って、(獅子への)入り方を見たときにほんとに真面目で。本人が「入ったら自分がなくなる」って言っています。今パンデミックだから、映画の中で宜野座村に行って「邪気のお祓いをする」というインスピレーションがきて、追加撮影をしました。場所は直感で決めて、綺麗な映像と獅子が映画のつながりを作りました。

ブラウン いやすごい。考えさせられるところですね。よくあるような質問なんだけど、この映画を作るのは何がきっかけだったんですか?

監督 きっかけはさっきも言ったんですけど、パンデミックでみんなが舞台に出られない。がらまんホールの小越(おごし)さんが、「ドキュメンタリー作らないか?」「みんなに会いに行って話を聞こう」と言って出かけました。長い「ユンタク(おしゃべり、会話)」して、お茶して、その人たちの想いを聞きました。私は沖縄のことばが好きだから、前の映画も「カタブイ(晴れている片方で降る雨のこと)」、今回は「ウムイ」。エバレットさんと共通点ありますね。

ブラウン そう、何?このタイミング~!?(笑)これがもう不思議ですね。

監督 説明してもらえますか。

ブラウン 僕は去年の10月に「ウムイ」という写真集を作りました。ちょうど撮影している最中、現場で、居酒屋でヤギの刺身を食べながら同じ「ウムイ」をテーマにしているんだって、ちょっと話題になったんです。
だけど、僕たちは日本人でもないし、沖縄人でもないのに、どうして?みなさん「ウムイ」っていう言葉、この映画を観る前にわかりましたか?ちょっと手を挙げてください。はあ、ほぼ、ほぼ知られていないんだ。
これは、監督はもう十分映画に表したんですけど、言葉でいうと「ウムイ」って何?

監督 難しいね。やっぱり英語に通訳するといろんな言葉が出てくるね。気持ちとか、自分の想い、感じることとか、内面にあるものとか、結構いろんな意味があります。日本語は一言で言えないいろんな意味が入っていてすごく面白いと思います。
沖縄の言葉はウチナーグチ、もう50歳以上の人しか喋れないと言われています。言葉は使わないと消えていくけど、沖縄には唄三線があります。唄はみんなウチナーグチ。
沖縄の人はもちろん、海外の人まで喋れないけど歌える。芸術、アートとして残っていて素晴らしいと思っています。それはほかのところで観たことがない。
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ダニエル・ロペス監督

ブラウン 映画の最初のほうに猫が歩いているところがあります。けっこうボロボロの顔だったけど、三線を聞いて立ち止まって座って、なんかいい気持ちになって(笑)。あれ感動しました。

監督 比嘉さんの家ね。この映画はおなかすいたときに観ないほうがいいと思う(笑)。
あの奥さんの作る美味しいオムレツとかね。
映画を撮る前に行って珈琲飲んで話したんです。三線を聞いて風が吹いて・・・あれは「癒し」。それを感じると分かち合いたい。自分の感じた気持ちを観客に見せたい、その瞬間、時間を。今回はその雰囲気ね、猫がいたりとか、風とか。だから音はすごく大事にしました。
みなさんのいいところをたくさんもらう、話してくれることに感謝の気持ちしかない。あの人たちがいないと映画ができません。
沖縄はすごい、寛大さがある。人の家に行ったらどうぞカメカメ。食べて、食べて、これ食べてとか(笑)。スケジュールとかいつもつぶれてる(笑)、長くなる。でも楽しい、とても!沖縄の面白いところ。

ブラウン あのデブちゃんいいねぇ!

監督 心誠(しせい)くん?もう中学2年生?3年生だっけ?大きくなってます。彼は相撲もやってます。舞踊ももちろん続けていますが、困ること一つあります。大きくなって衣装が入らない(笑)。新しい衣装買わないといけない。

ブラウン 彼が何か食べているとき、さりげなく後ろの子にあげてる。それがいいね。

監督 つながりね、それも。
お父さんから息子へとか、師匠から弟子へとか継承する。これすごく大事。

ブラウン ところどころ感動するシーンがあった・・・お父さんと中学生の娘と釣りに行く。あれ、普通行かないでしょ?

監督 そうですね、私もすごく仲のいい2人だと思いました。だいたいお父さんを好きと思うけど、中学生になってもね。彼女は今高校生だけど、すごい仲いい。
お父さんのことを、日本語で言う「背中を見る」?それがすごい。自分も息子がいるんですけど、言うことはきかないけど、私のやることは見ている。伝統芸能も同じこと、一緒。
心誠(しせい)くんもお母さんが琉球舞踊をやっていたから、彼はずっと見ていた。子どものときはおじいちゃんと一緒にいたから、自分の家庭からそれを受け取る。で、続く。

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エバレット・ブラウンさん

ブラウン じゃちょっと次の話題にいきましょ。2人で同じ時期に「ウムイ」をテーマにして作品を作った。わ~、なんだろうね?

監督 ね、すごいタイミングでした。二人宜野座の美味しいところで食べながらウムイの話してたの、ヨーロッパでは撮影始まるときに特に何もしない。これうまく通訳できないけど、日本は神社や神様のところで無事をお願いする。沖縄は御嶽(うたき=神事を祈るところ)で挨拶する。次の日、そこで法螺貝の音がしたの。そしたら友達(松永正剛)が「あ、これはエバレットさんだ」って。エバレットさんが隣で撮影をするところだった。その前に法螺貝を吹いてた。なんでこれをしますか?

ブラウン あの~ちょっとマニアックなことなんだけど、その場所には古い記憶が残っているの。それで呼び起こすのに、法螺貝を使っている。一応修験道の経験があるので。だからその場所に宿っている神とか、ご先祖様の記憶を呼び起こして撮影しようと。写真集持ってきたので、ご興味のある方は割引きしますんで(笑)。ご覧になってください。
法螺貝を吹くと思いがけないことが起こるんですよ、不思議に。それを写真に現しているので。

監督 目には見えないところね。

ブラウン そう。そうですよ。これどうしてもこの場を借りて言いたかった。どうも日本から見ると沖縄は「リゾートとか、基地問題とか、戦争の頃は可哀想だったなぁとか」ずっとそういう想いばっかり。でも実際に沖縄に行くと、沖縄の人々が持っている心を伝えていない!これが「ウムイ」の写真集を作るきっかけだったんです。たぶん同じ?

監督 同じ。陰と陽というか。
沖縄はドキュメンタリーでもいつも社会問題で、米軍基地とか。今回はもうみんな疲れているから心を癒す映画を作りたかった。(問題は)映画の中にも出てきても、でも直接じゃない。みなさんの日常生活が一番大事と思います。

ブラウン そうです。

―時間があっというまに経ってしまいまして、そろそろ。まだ延々とありそうですが。
よろしかったらみなさん写真を撮る時間を設けたいと思います。SNSなどで「観てきたよ~」と記念に撮って発信していただければと。


ここから撮影タイム  
*ブラウンさん「僕、一応写真家なので」とスマホを取り出す。「すごく面白いー!これいいね!」と客席を撮影。

ブラウン なんか別の場所でしゃべりたいんですよね(笑)。
監督 ロビーにいますから。

―写真集もパンフレットも今日はもれなくサインがついてきます。
みなさま今日はどうもありがとうございました。


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サイン中の監督


(写真・まとめ:白石映子)

『エンドロールのつづき』パン・ナリン監督トークショー

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*パン・ナリン監督プロフィール*
インド共和国・グジャラート州出身。ヴァドーダラーのザ・マハラジャ・サヤジラオ大学で美術を学び、アーメダーバードにあるナショナル・インスティテュート・オブ・デザインでデザインを学んだ。初の長編映画『性の曼荼羅』(01)がアメリカン・フィルム・インスティテュートのAFI Festと、サンタ・バーバラ国際映画祭で審査員賞を受賞、メルボルン国際映画祭で“最も人気の長編映画”に選ばれるなど、30を超える賞を受賞し、一躍国際的な映画監督となった。BBC、ディスカバリー、カナル・プラスなどのTV局でドキュメンタリー映画も制作しており、“Faith Connections”(13・原題)はトロント国際映画祭の公式出品作品として選ばれ、ロサンゼルス インド映画祭で観客賞を受賞した。2022年にグジャラート州出身の映画監督として初めて映画芸術科学アカデミーに加入。他の代表作に『花の谷 -時空のエロス-』(05)、『怒れる女神たち』(15)などがある。
*ストーリー*
作品紹介はこちら
ALL RIGHTS RESERVED (C)2022. CHHELLO SHOW LLP
★2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋 他全国公開

劇場公開をひかえて17日に来日されたばかりのパン・ナリン監督が最終試写の上映後登壇されました。ほぼ書き起こしでその様子をお届けします。(通訳:大倉美子)

―パン・ナリン監督をお迎えして、本作についてたっぷり語っていただきます。拍手でお迎えください。
(満席の試写室に入ってワオ!と目を輝かせる監督)

観てくださって、そして残ってくださってうれしいです。

―上映が終わった後、拍手がわいていました。

ありがとうございます。残念ながら拍手は聞き逃してしまいました。映画をシネマホールで観ていただく、ということが日々難しくなっています。今日は試写会場にわざわざお越しくださって、(トークのために)残ってくださってうれしく思います。この作品の公開に関しても、配信などプラットホームではなく、まず映画館でと思って力を尽くしてきました。

―監督は日本にいらっしゃるのは何回目ですか?

12、3年ぶり5回目の来日です。前は映画『花の谷』(未公開)のために、クライマックスの撮影やキャスティングをしました。東京での撮影でとても楽しかったです。

―今回日本で一番やりたいことは何ですか?

やはりこの映画を観てくださった観客の方とお話しする、これが一番の目的です。パンデミックが少し落ち着いてきている中で、この映画がみなさんにどんな風に届くのかとても興味があります。

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―では映画について伺っていきたいと思います。まずはアカデミー賞国際長編映画賞インド代表としてショートリストへの選出おめでとうございます。世界から大注目されている本作のきっかけから教えてください。

2011年ころ、自分の親の住んでいる地元に戻りました。そのときに、映写技師の友人に会いに行きました。彼は非常につらい経験をしていました。というのはデジタル化の波がやってきて、映写技師の仕事を失ってしまったんです。彼だけではなく、インド中で何十万人という映写技師たちが仕事をなくしていました。新しいデジタルでの映写ということになると、コンピュータを使ってデータをダウンロードしなくてはいけない、英語ができなければいけない。そんな中で読み書きが得意ではなかった彼などは失職してしまい、「なんて世界になってしまったんだ。映写機もフィルムも変わってしまい、僕たちのような者はみな忘れられてしまったんだ」と悲しげに話していました。そんな彼を見て、心動かされました。
同時に自分の子供時代の話を、家族や友人たちからたくさん聞きました。「こういうことをしていたから、やっぱり映画監督になる人間だったんだよね」と。たとえば映画の中にでてきたように、色ガラスや「屑」と言われているものを集めたり、それで映写機を作ったり、フィルムを盗んだというのも実は本当です(笑)。
そういう自分自身の子ども時代のこと、年の離れた映写技師の友人の話を組み合わせることで、これは映画になるんじゃないかと思いました。それが2019年、ちょうどセルロイドフィルムが使われなくなって10年くらいだったんです。その変化についても触れられる素晴らしいタイミングなのではないか。ストーリーテラーとして、媒体が変わっていく中でどういう風にストーリーテリングをしていくかについての映画を作りたいと思いました。

―キャンペーンで訪ねた各国の反応はいかがでしたか?

自分と携わったチームはこれほどまで、この映画が世界中に連れて行ってくれるとは思ってもみませんでした。ほんとにたくさんの国に足を運ぶことができました。やはり映画界で仕事をしている方には胸に来るものがあったようですし、多くの方々が映画を愛していること、コロナで映画館に行けない状況が続きましたが、映画館で再び映画を観たいと思っていることを実感しています。
みなさんの共感のしかたというのは、いろいろあります。たとえば、サマイが大人になっていく過程―どんな風に映画ファンになっていくのか、そして夢のためにどう戦うのか、希望を見出すのか―というところにぐっときたという方もいます。
驚いたのは、ニューヨークの株式関係の方々が観たときに、「これは金融のベンチャーとしてあるべき形なんじゃないか」と称賛されたことです。つまり彼らの目には「同じ夢を見た人が一つのグループを作って戦うことで成功を手にするストーリー」という風に映ったようでした。
中国では、これも意外だったんですけど、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の分断ができていることをご存じの方が、その調和をうたった映画であると言ってくださったんです。というのは、主人公の少年サマイはヒンドゥー教徒で、映写技師のファザルはイスラム教徒・ムスリムなんですね。そのテーマは、劇中に何度も出てくる大衆的な人気を誇る『ジョーダーとアクバル』という映画を通してでも示唆されています。ヒンドゥー教徒のジョーダー姫とムスリムのアクバル皇帝の二人が一つになるという物語であるからなんです。
そういう風に人によって共感するところが違う映画になっております。

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そしてもちろん映画がお好きな方には、たくさんの映画へのオマージュが詰め込まれています。気づかれたと思いますが、『アラビアのロレンス』、タルコフスキーの『ストーカー』、ルミエール兄弟など、ほかにも入っていますのでそういった部分を見つける楽しみもあるのかなと思います。試写を観てくださった方には、映写関係、技師の方、撮影家督、編集の方々がいらっしゃいまして、中には目を真っ赤にして終わった後僕のところに来てくださった方もいました。世界中でいろんな感情を抱いてくれたそんな作品になったと思います。アイスランド、中国、台湾、インドなどいろんなところに行って、たしか12の観客賞を受賞しています。それだけでもどんな映画か伝わるでしょうか。

―これから時間の許す限り会場からのご質問を受けます。監督に直接うかがえる貴重な機会です。

Q 素晴らしい作品をありがとうございます。サマイの未来、どういう大人になって、どういう作品を作っていくのかという構想をされていたらお伺いしたいです。

サマイはほぼ自分自身で、体験したことがそのまま描かれています。自分の子ども時代からインスパイアされた物語なので、たぶん大きくなったサマイは心から作りたいものを作っているはずです。インドでは、大衆向けの映画は、映画の方程式というようなものにのっとって作られていることが多いように思うんですね。音楽、ダンス、ドラマ、アクションとちょっと過剰なまでのものが盛り込まれています。そういうものではない、自分にとってリアルなものを作る映画監督になるんじゃないかなと思います。

Q すごく映画愛にあふれていて、映画館で映画を観る喜び、映画ファンとしての幸せをあらためて感じる映画でした。ありがとうございました。
二つ質問させていただきたいんですけど、一つは映画を観ることに厳しいお父さん、料理上手な優しいお母さんというご家族にはモデルがいるのでしょうか?
物語の中で「光」というのが大事な要素だったと思うので、監督が映画を撮られるにあたって、光の演出に特別なこだわりがあればお聞きしたいなと思います。


素敵な質問です。映画の両親も本物の僕の両親にインスピレーションをうけたキャラクターと言えます。今おっしゃっていただいたように、父は最初自分の息子が映画を作りたいと思っていることを良くは思っていませんでした。というのは、インドの地方で育つと、映画というものは道徳的ではないと思われていたんですね。ただ、自分の息子には幸せになってほしいという想いから、最終的にはやりたいことを応援してくれました。自分と同じような状況でいては同じになってしまう。だったら自分の道を歩んでほしいと考えてくれたんだと思います。
一方で母は、映画に興味を持った一日目から映画の夢を追うことをずっと応援してくれました。料理がとても上手で、そのスキルを家族全員に伝えてくれたんです。実は今回登場する料理は弟が作ってくれました。本物の色彩や味をこの映画で再現したかったからなんです。

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光の質問ですが、映画と同じく初めて映画を観たときは頭上に踊っている(映写室からの)光の筋がとても印象的でした。当時は映写室で何が起こっているのか、映画がどうやってできるのかなど全くわかっていなかったんですが。
空中のホコリやタバコの煙によって、よりその筋がはっきりと見えました。今はデジタル化してしまったので、もう光の筋は見えなくなってしまったんですけれど、当時はとにかく魅了されたんです。絶対に映画の魔法というのが光の中にあるに違いないと思い、その光を求める旅がそこから始まって、歳を重ねるごとに重要になってきました。
また精神面でも、仏教であろうとヒンドゥー教であろうと、”物理的な光”と人の中にある”内なる光”は等しく大事なものとされています。そういった意味でも自分にとって大事なもので、物語というものは光から始まり、映画の場合ストーリーは光から綴られていくわけですから、それが光に戻っていくというのがとても素敵だなと思いました。

―あっというまに時間が過ぎて最後の質問です。

Q とても心に響きました。ありがとうございました。映写技師の方はこの映画を観られたのでしょうか?何か印象に残るお話をされていたらお伺いしたいと思います。

映画ではファザルでしたが、彼の実の名前はモハメドといいます。作品は完成前のバージョンも完成後も見てくれています。見た後一日中泣いたと聞いています。彼にとっては、これはフィクションではなく、まるでドキュメンタリーにしか思えないと言っていました。
彼については面白い話があります。『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989/イタリア)がリリースされたときに、僕は彼に観るべきだと勧めました。お弁当を交換するとか、技師と友情をはぐくむとか、自分自身の子供時代から持ってきたかと思うようなシーンが5,6シーンあったので、観てほしいと思ったんです。そしたら観た彼が自分のことをスパイされたんじゃないかと疑念を抱いたりして(笑)。さらに「間違っている」と言い出しました。というのは、『ニュー・シネマ・パラダイス』の映写ブースの中には、映写機が一台しかなかったんです。フィルムの映写をご存じだと思うんですけど、2台ないと(巻を交換するため)あれだけの映画は映写することができないので、技術的に間違っている、と言っていました。
さきほどお話したように、コンピュータや英語を使うことや、読み書きもそこまでできない、そういう教育を受けたわけではないけれども、彼は人として聡明な僕の二人目の先生という存在です。

―最後にナリン監督からひとことお願いいたします。

今日は来てくださって心からありがとうございます。
みなさんも映画が好きな方々、映画というものがこれからも生き続けるためには、やはり映画館へ観に行かなければなりません。もし気に入ってくださったのであれば、ご友人やご家族に「こんな作品があるよ」と声をかけていただければ、大変うれしいです。
松竹さんもすごく頑張ってくれていますが、映画をお届けするのには配給会社や監督チームだけでは限界があります。
多くの方が映画館でこの『エンドロールのつづき』を見出すことができればうれしいです。
また弟さん、妹さんや若い方もぜひ。実はお子さんにはそんなに響かないかなと思っていたのですが、全然そんなことはなくて逆に驚くほどいろんな意味で共感してくださっています。今ではお子さんに向けての試写を行っているくらいです。
そして最後に主人公のサマイを演じたバヴィンくんが、よくQ&Aで言っているコメントを締めくくりとしてお伝えします。彼はインドの小さな村出身の男の子なんですが、彼に言わせるとこの映画をおすすめする理由は「まず笑えて、泣けて、最後はおなかが減る」(笑)そんな映画だからです。

ーありがとうございました。(これよりフォトセッション)

(取材・監督写真 白石映子)

『声優夫婦の甘くない生活 』豪華声優夫婦登壇トークイベント付試写会レポート

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ソ連でスター吹き替え声優だった夫婦がイスラエルに移民して夢の第2の人生をスタート。しかし、仕事にありつけない2人が始めたのはなんと闇仕事!
長年連れ添った夫婦が甘くない世の中で、お互いがかけがえのない存在であることを思い知る。
エフゲニー・ルーマン監督が旧ソ連圏から移民した自身の経験をもとに、7年の歳月をかけて丁寧に作り上げた本作はフェデリコ・フェリーニや、ハリウッドの往年の名作へのオマージュがクラシカルな映像と相まって、甘美なノスタルジーに誘ってくれます。

主人公が声優夫婦という設定にちなみ、11/ 22 (日)のいい夫婦の日に、リアル声優夫婦のトークイベント付き試写会が実施されました。
「ONE PIECE」の主人公ルフィの義兄ポートガス・D・エース、「ドラゴンボール」シリーズのピッコロ、「うる星やつら」の諸星あたる、洋画の吹き替えでは『バットマン フォーエヴァー』のジム・キャリーや『愛と哀しみの果て』のロバート・レッドフォードなどの声を担当した古川登志夫さん。そして、「美少女戦士セーラームーン」大阪なる、「ドラゴンボール改」ビーデル、「クッキングパパ」芹沢マリ、「きんぎょ注意報」智恵子などの声を担当した柿沼紫乃さんの、日本を代表するレジェンド声優夫婦をゲストに迎え、本作について語っていただきました。

<概要>
【日時】11月22日(日)15:30トーク開始〜16:00 トーク終了
【ゲスト】古川登志夫さん、柿沼紫乃さん 声優夫妻
【場所】アキバシアター(千代田区神田練塀町3 富士ソフトアキバプラザ2F)

<古川登志夫(ふるかわとしお)さんプロフィール>
日本大学芸術学部卒業後、劇団「櫂(KAI)」に参加。「劇団青杜(せいとう)」の創立・主宰し、作・演出を担当。青二プロダクションに移籍後、声優として『ドラゴンボール』のピッコロ、『ONE PIECE』のポートガス・D・エース、『うる星やつら』の諸星あたるなど数々の国民的人気アニメのキャラクターの声を演じ、人気を博す。洋画吹き替えでは『バットマン フォーエヴァー』のジム・キャリー、『愛と哀しみの果て』のロバート・レッドフォードなど多くのハリウッドスターの声を務める。2019年より青二プロダクション附属俳優養成所「青二塾」東京校の塾長も務め、後進の輩出にも力を入れている。


<柿沼紫乃(かきぬましの)さんプロフィール>
国立音大附属音楽高等学校卒業後、「劇団青杜(せいとう)」に入団。ラジオパーソナリティーとしてデビュー。人気アニメ「美少女戦士セーラームーン」の大阪なる、「ドラゴンボール改」ビーデル、パン、「クッキングパパ」芹沢マリ、「きんぎょ注意報」智恵子などの声で知られる。また、ゲームやテレビのナレーションなど幅広い分野で、現在も第一線で活躍している。


司会
この映画を観た感想をお聞かせください

古川登志夫さん(以下、古川)
映画にはさまざまなジャンルがあって、さまざまな楽しみ方があると思う。夫婦の心の機微を扱った作品は今年に入ってからかなりの本数を見ていますが、その中でも特に良質な作品でしたね。
良質とはどういうことなのかと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、夫婦生活って長くなればなるほど、空気や水のようになって、会話も少なくなっていきますよね。あるいは話はしても本心が聞こえなくなってくる。齟齬が生まれることがあるかもしれません。
先日、声優仲間から夫婦の問題を相談されたのですが、そいつにこの作品を見せたらいいんじゃないか。何かヒントがあるんじゃないかと思いましたね。


司会
妻と夫、それぞれ気づかないところに気づかせてくれる映画ですよね。

柿沼紫乃(以下、柿沼)
アニメーションのイベントで、イスラエルにお招きいただいたことがあったのですが、建物や道路といった街全体がエルサレムストーンという色で統一されていたのです。この映画を拝見したときに、エルサレムストーン的な色で包まれていたので懐かしく感じました。
そして、本当の声を聞くのにハリウッド映画のようなドラマチックな台詞は必要ないのかもしれないと思いました。


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司会
声優夫婦の日常の中で繰り広げられる物語でしたが、声優夫婦だからこそ共感したポイントは?

古川
声優の仕事がないかと知人を頼っていくシーンがありましたよね。自分も声優の仕事を始めたばかりの若い頃は自らアルバムや資料を作って、大学のサークルの先輩でプロデューサーになった方に連絡を取って、「何か仕事はないですか」と頼んで歩いたのです。あのシーンはとてもリアリティがあって、昔の自分を思い出して身につまされました。
でも、最近の日本における声優事情は全然違います。日本の声優の大半の方が事務所に所属しています。たとえば、僕たちは2人とも青二プロダクションに所属していますが、400人強のタレントが所属していて、それに見合うだけのスタッフ編成で、スタッフの方々がシステマティックに仕事を取ってきてくださる。自分の仕事を頼みに行くことはほとんどありません。
現在、日本のサブカルコンテンツをコンセプトにした海外でのコンベンションが数多く行われていて、僕らも過去9年間に21回くらい呼ばれてあちこちに行きました。そこで海外の声優の方々とシンポジウムやフォーラム、個人的に話をするとみなさん、「日本の声優事情は天国だね」とおっしゃるんです。海外には事務所がない。どうやって仕事をしているのかを聞いたら、2~3人のグループで力を合わせて仕事を頼みに行ったりするそう。声優の地位が日本と比べて低い。それを聞いて驚きました。


柿沼
ラヤが電話の仕事でマルガリータになったときに、相手にあわせて、キャラクターを変えていきましたよね。突然、ものすごく低いトーンになったりしていましたが、あれは声優あるあるです。セールスマンの方がピンポーンと来たり、電話を掛けてきた時に、子供のフリをしたり、すごく具合が悪そうなフリをしたり、あからさまに忙しそうに演じたりしちゃいますから。


古川
それ、あなただけでしょ。


柿沼
いやいや、業界あるあるですよ。インターフォンだとご近所の方に聞こえて、「あの奥さん、またやっているわ」と思われているかもしれませんが、そういう風にどんどん変えてしまうことがあるので、あのチェンジの仕方はあるなぁと思いました。
声優夫婦としては、最初のディナーシーンで乾杯をしていましたが、ラヤがヴィクトルにハリウッド的なセリフを言ってくれて乾杯になるのを期待して、「何か挨拶を…」と促したら、ヴィクトルは台本がないので「えっ」となって、固まってしまいますよね。あういうのはうちの中でもあります。
「(家族が)声優だといろんな声が聞けていいね」と言われますが、普段の生活ではそんなことはなくて、時々、妙にかっこつけていたりするので、「今、誰の真似をしているの?」、「今、ビル・ プルマンをやった?」、「今、ピッコロになっている?」と言ったりします。


古川
たまに機嫌が悪いとピッコロみたいになってしまうことがありますけれどね。


司会
いろんな声が使い分けられてうらやましいです。声という点でヴィクトルはラヤの声にほれたという話がありましたが、お二人はそれぞれ、お互いのどんな声が好きなのでしょうか。

柿沼
声優には2タイプありまして、まったく声のトーンを変えずに自分の持ち味だけでいく人と彼のように千変万化する人に分かれます。本当に彼はものによって、まったく別人に変えてしまうんです。業界の人でも最後のクレジットを見るまで古川登志夫だと気がつかれないくらい変えるところがあります。中でも『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』のロバート・カーライルを演じたときの声は、悪役なのに寂しく抑えて痛みを感じない苦しみを表現していて、あの声が一番好きですね。あれは業界の方にも最後まで古川登志夫と気づかなかったと言われるんです。ヨイショ!


古川
今のヨイショだったんですか?(笑)
あれは僕の中では最も低い音を使うように監督さんから言われたんですよ。相手役は田中秀幸さんのピアーズ・ブロスナン。僕は敵役でしたが、2人で昔、「白バイ野郎ジョン& パンチ」やっていたので、お互いがどんな芝居を返してくるか、だいたい想像がついてしまう。楽しく仕事をさせていただきましたが、あれは「テロップ見るまで分からなかったよ」とよく言われましたね。


司会
古川さんは柿沼さんのどんな声がお好きですか。

古川
今やっている、「ワンピース 和の国編」のお鶴とかがいいかな。彼女はラジオからスタートしました。「忌野清志郎の夜をぶっとばせ」とか「What’s in?」で忌野清志郎さんのパートナーをやって、七色の声を出すからという洒落で「レインボー柿沼」というあだ名がつけられていました。うちの劇団に入ってきた研究生だったので、それをラジオで聞いたときに鼻にかかった面白い声だなと思いましたね。


司会
映画の中ではヴィクトルがラヤの声を電話でも一瞬で分かりましたが、電話のお客さんは半日一緒に過ごしても分かりませんでした。気づく、気づかないは夫婦の愛情や長年連れ添ってきたところの愛情表現の1つでしょうか。ご自身だったら気づきますか。

古川
僕はどんなに化けてもすぐに分かりますね。


柿沼
家でセリフの練習を聞いていて、準備段階を知っているから、どこでオンエアされてもだいたいわかりますね。でも、もし、練習を聞いていなかったら、セリフだと分からないかも。フリートークならわかるかもしれませんが…。これ、褒め言葉?


古川
それは愛情が少ないんですね。(笑)


柿沼
それだけ演技の幅が広いと受け取ってはいただけませぬでしょうか。


司会
それでは、お二人にとって忘れられない映画は?

柿沼
フェリーニだと『道』が好きです。ジュリエッタ・マシーナが監督の実の奥さんであることを後から知って、ピュアなあの役を奥さんにあてるという心根に惚れましたね。
2人で旅行することが大好きなのですが、ロケ地巡りも好きなんです。エルサレムに行ったときにオリーブの丘とかを見上げながら、パゾリーニの『奇跡の丘』に思いを馳せました。


古川
僕が映画好きなので、毎週末に映画を見ています。リビングにでっかいスクリーンを設置して、彼女が4本くらいチョイスした中から2本くらい。年に120本くらい見ますかね。
海外に行く時は映画を事前に調べてロケ地にいく。サンフランシスコでは『めまい』のゴールデン・ゲート・ブリッジの撮影地に行ったりしました。
僕が印象に残っている映画は『カサブランカ』でしょうか。何と言ってもイングリッド・バーグマンの美貌のすごさにやられました。部屋にバーグマンの写真をかけたら、(柿沼さんに)私の写真にしなさいと言われました(笑)。そのくらい好きですね。


司会
劇中でヴィクトルが「映画は豊かな世界そのもの 吹き替えはその入り口だ」と語る台詞がありましたが、ふたりにとって、映画の吹き替えとは?

古川
神様が与えてくれた天職。これ以外にできることがないという気がしています。そして映画などのサブカルコンテンツは民族や国民性を一気に飛び越して理解し合えます。言葉の障壁を越えて豊かな世界に誘う。そういう橋渡しをする役目だと思っています。


柿沼
翻訳マシーンで翻訳はできますが、国民性によって感情表現が違います。欧米だとこう表現するけれど、日本ならここは抑えた方が伝わるんじゃないかとか。そういう感情表現のところも翻訳してお伝えするのが吹き替えの仕事として心がけています。


最後に、主人公の声優夫婦ヴィクトルとラヤの声をおふたりにやってほしいと司会から振られると、会場からも大きな拍手が起こった。古川さんは「ぜひやってみたい」と熱望し、柿沼さんも「うまい俳優さんが演じている作品は、吹き替えに挑戦したいし、乗り越えたいと思う。」と熱いコメントで、会場も盛り上がり、まだまだ熱く語りたい空気の中、トークイベントは終了した。
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『声優夫婦の甘くない生活』
<STORY>
1990年、イスラエルへ移民したヴィクトルとラヤは、かつてソ連に届くハリウッドやヨーロッパ映画の吹き替えで活躍した声優夫婦。しかし、夢の第2の人生のはずが、新天地では声優の需要がなかった!生活のため、ラヤは夫に内緒でテレフォンセックスの仕事に就き、思わぬ才能を発揮。一方ヴィクトルは、違法な海賊版レンタルビデオ店で再び声優の職を得る。ようやく軌道に乗り始めたかに見えた日々。しかし、妻の秘密が発覚したことをきっかけに、長年気付かないふりをしてきたお互いの「本当の声」が噴出し始める。

監督:エフゲニー・ルーマン 
脚本:ジヴ・ベルコヴィッチ エフゲニー・ルーマン
出演:ウラジミール・フリードマン マリア・ベルキン
2019年/イスラエル/ロシア語、ヘブライ語/88分/スコープ/カラー/5.1ch/英題:Golden Voices/日本語字幕:石田泰子 
後援:イスラエル大使館 
配給:ロングライド 
公式サイト: longride.jp/seiyu-fufu/
12月18日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

ユニセフ・シアター・シリーズ『存在のない子供たち』特別試写会 ナディーン・ラバキー監督トークイベント

愛されない子供たちが大人になった時の世界を危惧して、この映画を作った
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「子どもの権利条約30周年」を迎える節目の年、日本ユニセフ協会のユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」の一環として、高輪のユニセフハウスで7月20日から公開となる『存在のない子供たち』の特別試写会とトークイベントが行われました。

2019年7月5日(金)夕方
場所:ユニセフハウス
MC:伊藤さとりさん


トークイベントには、ナディーン・ラバキー監督と、夫でプロデューサーと音楽を務めたハーレド・ムザンナルさんが登壇し、フォトセッションの時には、一緒に来日している子どもたちも登壇予定と聞いていたのですが、最初からラバキー監督が娘のメイルーンちゃんの手を引いて登壇。息子のワリード君も後をついて登場しました。

◎挨拶
ナディーン・ラバキー監督
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両親も一緒に来日しました。家族ぐるみで作った映画を日本に届けることができて嬉しいです。美しいと聞いていた日本に初めて来ることができました。いろいろなことを体験したいと思って子供たちも連れてきました。皆さんに歓迎していただいて感謝しています。映画が日本の観客にどのように受け入れられるかわくわくしています。感情的に通じるものがあると自負しています。

ハーレド・ムザンナル
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ナディーンと同じように幸せを感じています。日本の文化、特にアニメは子供の頃から見ています。at homeな気持ちで作った映画を日本で分かち合えるのが嬉しいです。涙を誘ってしまったかもしれません。申し訳ありません。

◎MCの伊藤さとりさんより代表質問
MC ワリード君は10歳。来てくれてありがとうございます。メイリーンちゃん、3歳です! (皆、大きな拍手)
ユニセフでの子供の権利条約30周年を記念して、12作品の上映シリーズとして、今日は実施しています。
まず、監督になぜこの作品を今作ろうと思ったのかお伺いしたいと思います。また、ストリートキャスティングによって、子供たちが翼を得たと聞いています。
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ラバキー監督がマイクを持って話している脇で、メイリーンちゃんが客席に手を振り愛想を振りまいたり、パパと指で会話したりするので、観客の目は彼女に釘付けに。

ラバキー監督:レバノンに住んでいると、日々、劇中のような子供を目にします。ガムを売ったり、水の入ったタンクを運んだりと、仕事をしています。レバノンでは、150万人以上のシリア難民を受け入れていて、経済的にも苦しいのです。その影響を一番受けているのが子供たちです。ショッキングなことです。何かしなければ、自分も犯罪に加担している気持ちです。数百万人の子供が苦しんでいます。世界では、10億人以上もの子供たちが、発展途上国だけでなく先進国でも貧困にあえいでいるといわれています。
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(C)2018MoozFilms/(C) Fares Sokhon

私に何ができるかと考えたとき、映画というツールで、人々の見方を変えることができると思いました。皆さんの心の中で、これは許せないという気持ちが芽生えていれば、少しずつ変わっていくと思います。子供たちの待遇が不公平であってはいけません。
愛されない経験をした子供たちは、大人になって悪に巻き込まれる率が高いです。私たち大人がそういう風な世界を作ってしまってはいけないと思います。
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ハーレドさんが、真っ先に拍手をおくりました。

MCつらいと思いながら、ゼインの最後の笑顔に救われました。どんな思いをこめて作られたのでしょう?

監督が答えたいのに、メイリーンちゃんがマイクを離しません。
「私が監督したかったのに、なぜ私の言うことをきかないの?」と泣きながら訴えるメイリーンちゃん。客席は大笑いの渦。
やっとマイクを持って語る監督の脇で、メイリーンちゃん、今度は変顔をして見せるので、困ったわねという顔で笑う監督。


ラバキー監督:最後の笑顔は、実は笑顔以上の意味があります。観客がスクリーン越しに初めてゼインと目を合わせたシーンです。ゼインは、あの場面で初めて目を正面に向けて、「自分はここに存在している」と主張しているのです。「僕には希望がある」という終わり方です。エモーショナルな気持ちになってしまうのですが、今、ゼインは国連の助けを借りてノルウェーの海を臨む家に住んで、学校に通っています。笑顔は今も続いています。

MC ハーレドさんに伺います。監督の第一作『キャラメル』から音楽を担当されています。今回、プロデュースを担当されていかがでしたか?  公私共に監督を支えていらっしゃっいますよね。

ハーレド:製作は困難で悪夢でした。(会場、笑う)『キャラメル』では、作曲家と監督の関係で、監督の方がボスでした。今回は僕の方がプロデューサーなのでボス。自分がプロデュースすると決めたのは、こんな企画、誰もプロデューサーを引き受けないと思ったからです。ストリートチルドレンの実態をリサーチするのに3年。撮影に6ヶ月。さらに編集に2年間。12時間にしたものを、さらに編集しました。誰も引き受けてくれないと思ったので、すべて自分たちでやろうと思いました。ナディーンに言われて、12時間バージョンに音楽をつけなければなりませんでした。音楽の使い方は難しいです。リアリティを一線越えてしまうことになりかねません。映画は虚構で、音楽が使われると監督の思いが入ってしまいます。そういう形にはしたくなかった。場面を二つの種類に分けました。音楽をつける場面と、音楽をつけるというより、街の音をそのまま使う場面に。後者ではクラクションなども、そのまま入れました。心理を表したい場面では音楽を少し入れるなど、バランスをとって作りました。
最後は自分たちの感情を止められなくて、音楽が存在感を放っているのではないかと思います。

◎会場との質疑応答

― 子供たちの状況が日本と真逆かなと思いました。日本では若い人たちが、子供に自分たちと同じレベルの生活はできないだろうからと、子供を作らなくなって少子化が進んでいます。何か解決法はあるでしょうか?

ラバキー監督:解決法があるわけじゃなくて、大きな問題として捉える必要があると思います。今回リサーチをして多角的にアプローチが必要だと思いました。法律の整備も必要です。コミュニティーなどで、子供を持つことはどういうことかをポジティブに説明することも必要だと思いました。
他者を怖れるのではなく、他者を受け入れる。子を持つことも同様です。ゼインが両親に子供を産まないでほしいと訴えます。子供を産む権利は皆にあるけれど、育てることができるのかも考えないといけません。愛され、育まれるべきです。勝手に産み落として何とかなるではいけない。育つには育っても、愛されているかどうかで、人として成功するかどうかに繋がっていきます。親になった時に、自分が受けたことと同じことを75%の人がしてしまうとされています。負の連鎖を断つようにしていかないといけません。

― 私にとって重要な映画です。

(と英語で語りながら涙ぐんでしまう女性。聞いていた監督も涙ぐんでしまい、それを見たメイリーンちゃんも「ママ、なぜ泣いてるの?」と泣き出してしまいました。抱きかかえる監督。)
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ゼインに最初に会った時の印象はいかがでしたか? 

ラバキー監督:ゼインはキャスティング担当者が写真を見て選んできて、私はオフィスで初めて会いました。自分の経験や、これまでの人生を語ってくれたのですが、この少年はこのままストリートで過ごすのではないと直感しました。とても賢い子だと思いました。でも、学校に通ってなくて、読み書きも出来ませんでした。12歳なのに、7歳位にしか見えませんでした。栄養不足だったのですね。今ではノルウェーで家族と一緒に過ごしています。トークの始まる10分ほど前にお父様から電話があって、アメリカでベストアクター賞を貰ったと聞きました。声変わりも始まっています。クラスで成績は一番だそうです。

☆フォトセッション
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メイルーンちゃんが最後までマイクを離さず、まさにひとり舞台! 大きなお辞儀をする彼女に、皆、大喝采でした。

★★★☆☆★★★

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『存在のない子供たち』ナディーン・ラバキ―監督インタビューは、こちらで!



『存在のない子供たち』
 
 原題:Capharnaum

監督・脚本: ナディーン・ラバキー
プロデューサー・音楽:ハーレド・ムザンナル
出演: ナディーン・ラバキー、ゼイン・アル=ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレ

*ストーリー*

推定12歳の少年ゼイン。法廷で自分を産んだ罪で両親を訴える。
両親が出生届けを出さなかった為に学校にも行けず、路上で水タンクを運んだり、ティッシュを売って日銭を稼ぐゼイン。唯一の心の支えだった妹のサハルが11歳で無理やり結婚させられてしまい、怒りと悲しみから家を飛び出してしまう。行く当てのないゼインを助けてくれたのは、赤ちゃんと二人暮らしのエチオピア移民のラヒル。彼女も不法滞在で、いつも不安を抱えていた・・・

2018年/レバノン・フランス/カラー/アラビア語/125分/シネマスコープ/5.1ch/PG12
配給: キノフィルムズ
(C)2018MoozFilms/(C) Fares Sokhon
★2019年7月20日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラスト渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開