『パリの家族たち』 マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督インタビュー 

パーフェクトでなくていいと感じてほしい!

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パリの家族たち   原題:La fete des meres
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:オドレイ・フルーロ、クロチルド・クロ、オリヴィア・コート、パスカル・アルビロ、ジャンヌ・ローザ、カルメン・マウラ、ニコール・ガルシア、 ヴァンサン・ドゥディエンヌ、マリー=クリスティーヌ・バロー、パスカル・ドゥモロン、ギュスタヴ・ケルヴェン、ノエミ・メルラン

*物語*在任中に出産した大統領、シングルマザーのジャーナリスト、教え子との恋愛を楽しむ独身の大学教授、認知症の母の介護に悩む小児科医、病を抱えた舞台女優、息子を国に置いて娼婦として暮らす中国女性、連絡の取れない恋人の子を身篭った花屋の女性・・・ 母の日を前に様々な思いのパリの家族たち。

公式サイト:http://synca.jp/paris/
シネジャ作品紹介:http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/465769882.html
★2019年5月25日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開


プロデューサー・脚本家・監督
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
Marie-Castille Mention-Schaar
*プロフィール*
コロンビア・ピクチャーズのDevelopment Excutive、ハリウッド・リポーターの国際版編集長を務めたあと、制作会社Trinacaでエクセキューティブプロデューサーを務める。1998年に制作会社LOMA NASHAを共同で立ち上げ、着想、脚本執筆、公開時のマーケティングなどの、プロジェクトを通した展開戦略に力を尽くしている。2001年、さらにVENDREDI FILMを共同で立ち上げ、この2つの制作会社で12本の長編を制作している。主な長編作品として、国際映画祭で数々の賞を受賞し日本でも大ヒットした『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(14)、第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映された『ヘヴン・ウィル・ウェイト』(16/劇場未公開)などがある。また、プロデューサー、配給、テレビの映画編成担当者、エージェント、ジャーナリストなど、映画業界の女性たちからなるCERCLE FEMININ DU CINEMA FRANÇAIS (フランス映画の女性サークル)の設立者でもある。(公式サイトより)


◎インタビュー

監督にお会いするのは、『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』が日本で公開された2016年以来、3年ぶり。

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』公開時のインタビューは、こちら

今回は、公式サイトに既に詳しいインタビューが掲載されているので、それを踏まえてお話を伺った。

公式サイト インタビュー 



◆出産した大統領像に到達するのが大変だった


― 女性たちが皆生き生きとしていて素敵な映画でした。
在任中に出産した大統領アンヌが、本作ではなんといってもカッコよかったです。思い出したのが、実際に、ニュージーランドのアーダーン首相が2018年6月に出産して育児休暇を取られたことです。この物語はそれより前に構想されていたのですよね?

(注:過去には、パキスタンのベナズィール・ブットー首相が在任中に出産しているが、妊娠を理由に反対勢力が解任しようとしたため、育児休暇を取らなかった。アーダーン首相は、国家元首クラスの女性で初めて育児休暇を取得した。)


監督:このストーリーを書いた時には、まだですね。

― ニュースを聞いて、どのように思われましたか?

監督:女性が権力のある立場に立つことはいいことだと思います。というのは、男性は政治に関わるときには現実離れしがちだけど、母親には現実と近づけて考えることができると思うからです。どんな地位にあれ母親であることだけで大変だけど、現実に近づいて決断がくださるので、とてもいいと思います。
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©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA


― 大統領の母親業の係わり方の部分、3回、根本から書き換えられたとのこと。具体的にどのように監督の考え方が変わっていったのでしょう?


監督:大統領像を正しく発見するのが大変でした。最初はあまりにも赤ちゃんにべったりの大統領を考えて、これは良くないと思いました。次に書き直した時には、心理的におかしいと思ってやめました。大統領役がオドレイ・フルーロさんに決まって、話をしたところ、彼女が第一子を産んだとき、産後鬱になって、赤ちゃんを可愛いと思えなかったというので、それが興味深くて採用しました。実際に女優さんが経験したことでもあるし、現実に即していると思いました。
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©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA

― 大統領の夫があのように協力的だと、とても見本になっていいと思いました。産むことは女性にしかできないけれど、子育ては夫婦で行うものだと思います。フランスの男性は一般的にいかがですか?

監督:だんだん変わってきていると思います。特に若い世代は協力的。子どもが生まれた直後に、男性も育児休暇が取れるといいなと思います。新しい法律ができるようです。お母さんと同じくらい、お父さんにも育児休暇が取れるように。

◆登場人物に少しずつ自分が入っている

― 色々なタイプの女性が出てきて、観る人それぞれ、登場人物の中に自分を見つけることができるのではないかと思います。私自身、観ていて、自分の生き方がそれでいいと思わせてくれました。

監督:映画の中でいろんな人を観て、自分はそれでいいと思ってくださったのが面白いと思いました。母としても女性としても、何かと罪悪感を抱きがちです。いろいろな人を見て、パーフェクトでなくてもいいと思って貰えればいいなと思っていました。それがこの映画を作って達成したいと思っていたことの一つです。

― 様々な女性を描くにあたって、監督のまわりの人たちを観察されたのでしょうか? また、監督が投影された人物は?


監督: いろんなキャラクターにちょっとずつ自分が入っています。
私に一番近いのではなくて、一番感動するキャラクターは、中国女性です。母として子どもに一番大きな犠牲を払っている女性です。子どもがもっといい生活が出来るようにと、遠く離れたところで働いています。

◆映画を通して異文化を知ってほしい

― 私自身は独身なので、やはり独身の大学教授に思いがいきました。
監督にはお子様がいらっしゃるのでしょうか?


監督:二人います。25歳の娘と、16歳の息子です。
私はシングルマザーなので、育てるのは大変でした。
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― フランスでは、女性の映画監督も多く、日本にくらべて、女性が自立して活躍できる国というイメージがあります。監督自身もシングルマザーと伺って、日本よりも女性が生き生きできる国なのかなと思いました。


監督:ほんとにフランスがそうかどうか、私にはわかりません。もしそうだとしたら理由はわかりません。フランスには、200万人のシングルマザーがいます。仕事と子育ての両立は大変です。シングルマザーの多くは貧困に近い状況で、もろい立場です。確かに女性は自立して活躍していますが、それなりの代償を払っていると思います。

― 日本の観客に、どんなところを一番観てほしいですか?

監督:私にとって映画を観るというのは、自分に似た人を見つけたり、違う人を見て学ぶのが好き。映画というのは、違う文化や違うバックグランドのあるところを体験することができて、映画で旅が出来ます。私が映画を観る時にするのと同じように、地理的にも社会的にも違うフランスを体験していただければと思います。

― まさに、私も映画を通じて、異文化や異なる社会を知ることができるのが、映画の一番の楽しみです。


◆次は男性に性転換して出産するトランスマンの物語
― 先ほどから気になっていたのですが、ペンダントが星と三日月です。イスラームのシンボルですね。

監督:そういうつもりじゃなかったのですが、確かにそうですね。

― 監督の前作『ヘブン ウィル ウェイト』は、残念ながら観ていないのですが、過激派イスラームに走るフランス女性を描いていてとても興味があります。もうそのテーマでは撮りませんか?

監督:もう撮らないですね。次はすごく違うものを撮ります。

― どんな作品ですか?


監督:トランスマン、つまり元は女性で、男性に性転換した人の物語です。
愛する奥さんが妊娠できないので、その彼女の代わりに子どもを産むのです。

― 産めるのでしょうか?


監督:性転換しましたが、まだ女性としての機能は持っているという設定です。

― 私の友人の娘さんがやはり性転換して男性となり、女性と結婚しています。子どものことはどうなるのだろうと・・・  誰かの精子を貰わないと出産できないですよね。実話に基づいているのでしょうか?

監督:アメリカでは、2000人の性転換した元女性の男性が妊娠しています。トーマス・ビーティという有名なトランスマンがいて、愛する奥さんのために3人子どもを産んでいます。私の映画はその人の話ではないです。フランスで実際にあるかどうか確認していないのですが、いるのではないかと思っています。

― 大胆な物語、楽しみにしています。ありがとうございました。


             取材:景山咲子




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