『恋恋豆花』今関あきよし監督インタビュー

2020年2月22日(土)新宿ケイズシネマほか 全国劇場公開
上映情報

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『恋恋豆花』(れんれんどうふぁ)

恋愛も人間関係も含め大学生活がつまらなくなり、中退を考えている奈央。そんな中、父・博一の提案で、彼の3度目の結婚相手となる綾と台湾旅行をすることに。父の再婚相手というだけでよく知らない女性となぜ旅行をしなければならないのか? 納得がいかないが、せっかくだから思いっきり楽しんでやろうと思う奈央の台湾旅行には、台湾の魅力的なスイーツやグルメとの出会い、そして思いがけない人々との出会いが待っていた…。
富田靖子(『アイコ十六歳』)、松浦亜弥(『美・少女日記』)、佐藤藍子(『タイム・リープ』)など数多くの美少女の面差しを映像に切り出してきた今関あきよし監督が今回カメラを向けた先は、「装苑」でモデルデビュー後、数々のファッション誌や広告に出演し、現在は映画・ドラマの出演が控え女優としても注目度№1のモトーラ世理奈。独特の雰囲気を持つ彼女が今関あきよし監督によってどう映像に切り出されるのだろうか。
奈央と台湾の旅を共にする綾には『朱花の月』、『ヘヴンズ ストーリー』の大島葉子、父・博一役には意外にも今関作品初出演となる利重剛、そして『刀剣乱舞』や『最遊記歌劇伝』などの2.5次元舞台で活躍中の椎名鯛造の出演も期待を膨らませる。
また本作は、今関映画の原点ともいうべき「ポップな楽曲が全編を彩る」音楽映画でもある。その、思わず心がほっこりするようなメロディを歌い上げるのは、女優としても進境著しい、これが久々の本格レコーディングとなる後藤郁、本人役で出演もしている日台ハーフのシンガーソングライター・洸美-hiromi-、日本でも人気急上昇中の台湾ポップス界の実力派・PiA吳蓓雅と、音楽業界も注目の女性ヴォーカリストたちである。
プレス資料より

シネマジャーナルHP 作品紹介『恋恋豆花』
『恋恋豆花』 公式HP

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

今関あきよし監督インタビュー 2019年1月10日
宮崎 暁美

★この作品を台湾で撮ろうと思ったきっかけは?

編集部 この作品のアイデア、発想などはどういうところから生まれたのですか?

今関監督 映画自体のスタートは、元々はこのスタイルの予定ではなかったんです。血のつながりはないけど、これから親子になるであろう二人の旅ドラマというのは、あとから出てきたアイデアです。
最初はまったく違う話で、姉妹愛のつもりでした。台湾にいる姉と妹の姉妹愛を描こうと思ってシナリオも作りあげたのですが、シナリオを作ってみたら、台湾でなくてもいいなと思って、その台本はやめてしまいました。僕が台湾を訪れた時の印象とか、面白さ、いろいろな人にもお会いしたので(台湾の人も含めて)、そこで食べたものも含めて、とても楽しかったので、この楽しい気持ちをそのまんま映画にしてみようと思ったのです。ということで半分ドキュメンタリー、半分ドラマというようなスタイルになりました。

編集部 それでは、先に台湾で撮ろうというのがあったのですね。

監督 そうですね。どこで撮ろうかというより台湾ありきですね。最初は映画を撮ろうと思って旅したわけではないないですが、何回か台湾を旅するうちに、息抜き行ったらはまってしまったんです。最低でも2ヶ月に1回行っています。実は昨日、台湾から帰ってきたばかりなんです。

編集部 今回、どうしてインタビューしようと思ったかというと、私は中華圏の映画にはまっていて、台湾が舞台なので監督にインタビューしてみたいと思ったのです。

監督 ありがとうございます。

編集部 私も台湾には何度か行っているのですが、この作品はグルメとかスィーツ、観光地案内的なところもあるけど、台湾のいろいろなところに行っているというのにも興味を持ちました。何ヶ所くらいですか。

監督 北から南まで、台湾中を見てまわりました。でも一番気になったのは台中ですね。台中はあまり観光地化されていないのと、台湾の人に聞くと、あそこは住みやすい。住むなら台中という方が多くて。その魅力はなんだろうと思い、台中には一番多く行っています。なんで観光地化されていないかというと、交通の便が悪いからです。台北だと電車でどこでも行けるけど、台中はバスかタクシーで移動しかないので、初心者にはきついですね。

編集部 今もですか?

監督 今も電車網はないですね。行くにはちょっとハードルが高いかな。バスに乗れるようにならないと難しいですね。あるいはお金がかかってもいいならタクシーですね。

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

★タイトルとロケ地について

編集部 台湾には20回くらい行ったということですが、実際の撮影はどのくらいだったのですか。

監督 ドラマの撮影自体は2週間強ですね。ドラマ部分は1回の撮影で撮って、後は風景や食べ物を別に撮りに2回くらい行きました。

編集部 タイトルの『恋恋豆花』は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『恋恋風塵』から来ているのですよね。

監督 侯孝賢監督の作品が好きで、そこから取りました。あと「恋恋」の並びが好きで、可愛らしい言葉だし、愛しいとかの意味を知って、このタイトルにしました。「豆花」に関しては、それまで知らなかったのですが、豆花を食べたらはまってしまって、このタイトルを入れたいと思いました。

編集部 私は『恋恋風塵』の舞台、十分(シーフェン)や、『悲情城市』の舞台九份に3回くらい行っているのですが、あのあたりの雰囲気大好きです。でもかなり観光地化してしまいましたね。

監督 そうですね。今は観光地化しすぎてしまってつらいです。

編集部 2月初旬に、私も台湾に行くのですが、この十分で行われる「平渓天燈節(平渓天燈上げ祭り)」に行く予定です。

監督 僕も、昨日まで台湾に行っていたのですが、今回は侯孝賢監督の『ミレニアム・マンボ』のロケ地を訪ねて行ったんです。この映画のフーストシーンでスーチーが屋根のある長い歩道橋を歩いていくシーンがあるのですが、この歩道橋が今年取り壊されてしまうというので、それが取り壊される前に撮りたいと思って、これを撮りに基隆(キールン)まで行きました。

編集部 基隆も私の好きな町ですが、日本人町が残っているというのを、林雅行監督の湾生(戦前、台湾で生まれた日本人)を描いた作品『心の故郷~ある湾生の歩んできた道~』で知りました。ここも見てみたいです。

監督 湾生を描いた作品としては、『湾生回家』(黄銘正/ホァン・ミンチェン監督)という作品を観ました。

編集部 その橋も日本統治時代に作られたものかもしれませんね。

監督 どうなのでしょう。でも古くなって取り壊されるということなので、時代的にはその頃作った橋かもしれませんね。ここ1年くらいで壊されてしまうということなので、行っておいたほうがいいですよ。

編集部 基隆の廟口夜市も好きです。

監督 僕もあそこの夜市好きですね。

編集部 台湾に着いて最初のシーンで、九份に行って、夜、お母さんになる予定の綾(大島葉子さん)とぶつかり、宿を出て歩き回るシーンがありましたが、あれは九份かなと思ったのですが、そうですか?

監督 そうです。九份の民宿に泊まっています。僕も何回か泊まったけど、九份はほとんど民宿です。ちょっと奥に行くと民宿がいっぱいあります。夜、店が閉まって、まだ電灯がついている時間というのが30分くらいあるんです。その時間が大好きで、それは泊まらないと見ることができないんです。観光客が帰ってしまって、いなくなった瞬間がいいんです。ほんとの30分くらいですが。

編集部 人が多いのに、ここの映像よく撮れたなと思いました。

監督 いやいや、昼間は歩けないですよ。昼間行くもんじゃないですよ(笑)。あそこのシーン大好きです。わずか30分しか時間がないので、1日じゃ撮れませんでした。

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

編集部 台湾コーディネーターに杉山亮一さんの名前がありましたが、知り合いです。彼はどんな役割だたんですか。

監督 台湾でのキャスティングが一番大きいですね。台湾側のキャスティングをどうしようかという時にお願いしました。そんなに有名な人は使えないけど、芝居や映画が好きという人にあたってもらいました。準備段階から相談はしています。いろいろ紹介してもらい、台湾に行った時にその人たちに会っています。けっこう有名な人にも会いました。『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』で主人公を演じた簡嫚書(ジエン・マンシュー)にも会っています。

編集部 けっこうマニアックな台湾も出てきたので、こういうところに杉山さんがかかわっていたのかなと思ったのですが、監督自身がこんなに台湾に行っているので、そのたわものだったんですね。


監督 有名な観光地ばかりではつまらないから、「ここはどこ?」というようなところもないとと思ったので入れました。台北で試写をした時、台湾の人にも「あれはどこで撮ったか教えてほしい」と言われました。それで今、まとめています。

編集部 夜市のところなどは、だいたい土林夜市多いけど、ここに出てきたのは寧夏(ニンシア)夜市ですか?

監督 そうです。あそこの夜市が好きなんです。

編集部 実は私、「豆花」を初めて食べたのが、この夜市だったんです。台湾人の友だちが屋台の脇にある豆花店に連れていってくれました。だからこの『恋恋豆花』というタイトルに親しみを感じます。この作品でも、台湾の友人がおいしい「豆花」の店に連れて行ってくれたシーンありましたね。

監督 そうでしたか。この夜市の食べ物屋おいしいですね。クオリティ高いです。台湾に行くと時間があれば行きます。この夜市の入り口近くに豆花荘という店があって、この豆花はおいしいです(笑)。ここの豆花は蜜からして違います(笑)。豆花は、あれって思うのもあるし、ピンキリですけどね。
映画のシーンでは、友だちに会うといって違うところに行くのですが、ここに出てきたグラデンスという女の子に紹介された店は、家の近くにおいしい店があると言って連れて行ってもらいました。

編集部 私も台湾人の女性に連れていってもらって、初めて豆花を食べたので、同じようなシチュエーションだと思いなが観ていました。

監督 やっぱり地元の人の紹介が一番信用できますね。ガイドブックより。

編集部 だからこの映画は台湾好きな人の心をくすぐるシーンがたくさんあると思いました。

監督 あまり通好みにしちゃうととっかかり悪いので、初心者向けと中級者向けぐらいからがいいかなと思って作りました。

編集部 最初、奈央が綾さんと合わずにつんけんしていたのが、いろいろな食べ物を食べたりしているうちになじんでくるというところはうまく繋がっているなと思いました。

監督 ありがとうございます。台湾のご飯って、全体にやさしいじゃないですか。中華料理と間違えて油っこいという人がいますが、油っこいのってそんなにないですよね。今、台湾のスイーツ、タピオカミルクティが日本でブームですが、映画の中では全然出てこないですよね。意図的というよりは、僕があまり好きではないので出していないんです。

編集部 一気にブームになってビックリです。

監督 台湾の友だちが日本に来て街を歩くと行列ができていてビックリするんですよ。インスタで広がったんですよ。台中の春水堂が発祥の地らしく、行きましたが、日本にも春水堂を始めとして、今じゃあちこちタピオカティの店ありますね。

★ストーリー展開

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編集部 この台湾への旅は、お父さんも一緒に3人で行く予定だったんですか?

監督 いや、二人で行かせて、仲良くさせたいというお父さんの魂胆があるわけですよ。

編集部 そうだったんのですね。それに奈央が気落ちしていた時だったからというのもありますかね。

監督 ただで行けるからラッキーというのもあるでしょう。ま、我慢していればいいかっていうつもりですかね。知らない人ではあるけど、お父さんのパートナー。自分にとってのお母さんには成り得ないから割り切っている感じですね。まして設定上ではバツ2ですから。3人目ですので、もう勝手にしろっていう感じじゃないですか。もうお父さんの身勝手さ満載ですから。

編集部 そうですね。観ていてどうなってるのと思ってしまいました(笑)。

監督 私もバツ1なんで、人のことはあまり言えないですが、さすがに僕は3人目は無理だろうと思います(笑)。

編集部 以前だったら考えられない設定だなと思いました。

監督 いまどきですね。だから日本に帰ってきても、友だちと台湾ヅイーツの店なんです。

編集部 マニアックそうで、そうではない女の子も観るかもしれないなという感じですね。

監督 あまりアート映画にしてもしょうがないので、タピオカミルクティを飲んで台湾に興味を持ってくれて、豆花に興味をもってくれて、映画に繋がってくれたらいいなと思っています。

編集部 旅にもって行くカメラですが、持っていきやすい大きさのものがいいですね。若い人はそれで動画も撮っていますしね。
*ここで、私が持っていったカメラの話から、カメラの話が続いたのですが、それは割愛。
注釈:奈央のカメラはチェキという「ポラロイドカメラ」です。

監督 今の若い子はスマホで動画も撮っちゃいますからね。でも限られてしまうのでつまらないですけど。

★キャスティング

編集部 キャスティングについて聞きたいのですが、まずライブのシーンに出てきた方ですが、実際に日本と台湾で活動している方なんですか?

監督 洸美-hiromi-さんと言って、日台ハーフで、高校まで台中にいて、その後、歌をやりたくて日本に来て、日本で活躍しています。2/3日本、1/3台湾くらいでライブ活動をしているようです。今回、劇中歌『恋恋豆花』を歌っています。

編集部 先にお母さん役の大島葉子(はこ)さんが決まっていて、あとでモトーラ世理奈さんが決まったとどこかで見たのですが、実際は?

監督 台湾を舞台に映画を作ろうかなと思った時に、ある機会に葉子さんとお会いして、とてもナチュラルであまり女優ぜんとしていなくて面白いと思って、映画の中身決めていないけど、次出てねって言ったんです。それからストーリーを決めてから、娘役のオーディションをやったんです。有名な人も含めて2000人くらい集まりました。その中にモトーラ世理奈も来ていて、独特な個性でインパクトがありました。最終的に決める時は葉子さんも呼んで、葉子さんと芝居をさせて、「どう?」って聞いたらモトーラがいいということで決めたのですが、モトーラ以外は質感がみんな似ているんです。最終的に5人残ったのですが、モトーラありきか、それ以外を選ぶかという感じでした。

編集部 最後に残った人たちは、別の役で出ていたりするのですか?

監督 いや、出ていないです。その役でオーディションをしているわけですから、今回は他の役に振ってはいないです。

編集部 お父さん役の利重剛さんですが、彼はどのように。

監督 彼は高校時代から知っています。ずっと知っているのですが、電話したら「やっとオファーきたか」と言われました。彼は監督でもあるので、僕の映画をずっと見てもらっていました。

編集部 利重さんは、私の中では監督のイメージだったんですが…

監督 彼は「相棒」で犯人役で出ていたりしていますね。CMも多いですし。

編集部 キャスティングというのは、この人だったからピッタリとかありますよね。

監督 重要ですよね。キャスティングが決まった時点で、ほとんど映画は決まるというけど、そう思います。

編集部 台湾の方はどのようにしたんですか?

監督 主にはティエンとヴィッキーですね。今回の台湾行きでもティエンに会ってきたのですが、ティエンは今、相当出ていますね。『若葉のころ』では主人公の若い頃を演じています。
*石知田/シー・チーティエン 潘之敏/ヴィッキー・パン・ズーミン

編集部 シー・チーティエンの出演作『軍中楽園』『私の少女時代-Our Times-』も観ています。でもどこに出ていたのか思い出せない(笑)。再度観てみたらわかるかも。ヴィッキーさんの出演作『河豚』『粽邪』は観ていないです。
*2/16に『河豚』の上映会があり行ってきました。今関監督もゲストで来ていました。

監督 シー・チーティエンは4月3日に公開される『悲しみよりもっと悲しい物語』(韓国映画のリメイク版)にも出ているし、二人は大陸の映画にも出ています。

編集部 バックパッカー役の椎名鯛造さんはどうですか?

監督 彼は『中学生日記』や『キッズ・ウォー3』の子役で活躍したあと、『最遊記歌劇伝』『刀剣乱舞』『刀剣乱舞 -継承-』など2,5次元などの舞台を中心に活躍しています。彼はピンポイントで人気ありあす。アニメおたくとか。台湾のファンもいます。
モトーラ世理奈は台湾でも有名ですね。モトーラが出るというので、台湾のキャストが出てくれたというのもあります。

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(C)映画「恋恋豆花」製作委員会

★これからの作品の予定は?

編集部 前作がロシアなどで撮っていて、今回は台湾。次の作品は?

監督 僕はロシアで撮ったり、ウクライナで撮ったり、今回は台湾、日本に近づいています(笑)。けど、もう一本、台湾で撮りたいというのと、ヨーロッパ圏でもう1回撮りたいという思いがあります。2つ迷いつつ台湾で撮りたいという構想はあるので、それで今回、台湾に行ったというのもあります。台南の方でイメージするものがあって、基隆と台南、両方に行ってきたのですが、構想中という感じ。日本で撮るというのは、今、思い浮かばないです。海外の方が楽しいです。台湾は南に行くほど人がやさしくなるし、味付けが甘くなる感人じ。台湾の人いわく「南に行くほど味付けが良くなる」と言っています。

編集部 私は台北のあたりにしか行ったことがないので、台北以南のことは映画でしか知らないので、ぜひ機会があれば行ってみたいと思っています。侯孝賢監督の作品に影響を受けて九份とか金瓜石、基隆、平渓線沿線ばかりに行っているので。

監督 侯孝賢監督と撮るのけっこう大変みたいですね。向こうのスタッフとかプロデューサーに会っていますけど、リテイク多くて泣くって言っていました。侯孝賢監督とずっとやりたいという人と、もうやりたくないという人と分かれるようです。いわゆる予定通り終わる人でないので、撮影終わって編集しているのにもう一回撮り直しするとか、あり得ないことを言い出すので、プロデューサーも心して撮影にインしないと無理なので、彼につく人は肝をすえてやらないと、ということのようです。次の仕事を入れていたりするとだめなんです。次、空けておかないと、まだ撮る、まだ撮るというタイプなので。そういう意味では粘る監督です。僕は『ミレニアム・マンボ』に関しては観ていなくてやっと観たんですが、けっこうはまって、それで、この間、そのロケに使った歩道橋を見に行って、撮影してきたところです。

*編集部 私も2月に見てきました。
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編集部 スーチーが出ていた作品ですよね。彼女は台湾の人だけど、香港映画で有名になりましたし、シルヴィア・チャンなんかも台湾出身だけど香港映画で活躍しているように、日本の俳優さんでも台湾で活躍したりとか、けっこうアジア圏ではそういうことがありますよね。

監督 言葉の問題が多少ありますが、香港が今、ゆれているけどそういう影響もありますね。台湾もそういう状態になってしまうかもしれないということがありますね。僕が台湾に行っていた時は、ちょうど選挙戦の時で、ただ見ていただけなのに旗を渡されてしまったんですが、街をあげて大騒ぎでした。中国側につくタイプの人か、そうでないかで大接戦です。高尾の方の人なんかは中国側についたほうが得だと思っている人も多いですが、そうだと国が失われてしまう国家の危機というのがあるので、いまの総統につくという人と半々という感じです。どうなるんだろう。シリアスな問題です。
俳優や監督も、SNSで台湾は1国だと主張するような人は中国では働けないし、みんな言いたいけど言えない状態で悩んでいます。言っている人もいますけど。中国でも仕事をしようと思うと、その問題はデリケートです。

編集部 日本人はそのへんのことあまり知らないですよね。

監督 これだけ日本からたくさんの観光客が行っているし、人が行き来しているのに、僕も台湾に行くまで台湾の大使館がないというのを知らなかった。中国にならって国として認めていないわけですから、非常に複雑ですね。

編集部 台湾の話ばかりになってしまいましたが、監督が台湾にはまってしまったきっかけはなにかあるんですか?

監督 僕は甘党なのでスイーツですね。タピオカミルクティはもちろん日本でも飲んでいたけど、そんなでもないんですが、愛玉子 (オーギョーチー) とか豆花とか含めて好きです。オーギョーチーなんか、材料を買って自分で作ったりしましたから。あれ作った日本人はあんまりいないと思いますよ。原料の実をガーゼに包んで、水の中でグニュグニュすると寒天状のものが出てくるんです。そういうのにはまって、台湾好きになっていったというところがありますね。映画でなくて、台湾話、もっとしたいですね。

編集部 はまると台湾通いになりますよね。

監督 台湾の映画もたくさん観るようになりました。台湾の映画クオリティ高いし、むしろ日本の映画のほうが遅れていると実感しています。

編集部 そういう意味では、コラボレーションとかあると面白いですね。

監督 この映画を台湾で上映する時に、なんか台湾の方のと一緒に上映するとか、仲良くなった監督も何人かいるので、一緒にやってもいいかなと思っています。

編集部 最近、若手の人多いですよね。

監督 多いですね。がんばっています。面白いし。すごいです。インディーズで撮っている人もいるし、みんな苦労しながら撮っていますよ。

編集部 この『恋恋豆花』も、大手の会社というのではなく撮ったのは?

監督 そうですね。自分で自由に撮りたいなというのがありますね。もちろん大手もいいけれど、自分の大好きな台湾で、スイーツで、自分のテリトリーでやりたいというのがスタートではあります。

編集部 ありがとうございました。

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映画『静かな雨』公開記念舞台挨拶

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でんでん、仲野太賀、衛藤美彩、中川龍太郎監督、宮下奈都(原作者)

2月8日(土)シネマート新宿にて『静かな雨』の中川龍太郎監督と出演者による上映後の舞台挨拶が行われました。まず、朝早くから観に来てくださったたくさんのお客様にお礼を一言ずつ。MCさんとのQ&Aに移ります。


―今のお気持ちはいかがでしょうか?

中川監督 宮下さんが書かれた美しい原作を初めて読んだのが1年前のことになります。1年経ってこの映画の最初のお客さまに、皆さまになっていただけて非常に嬉しいなと思っています。初めて原作がある作品を作ったので、最初は不安もあったんですけど、この素晴らしい仲間や先輩方に囲まれて作れたので、ここに立てて光栄だなと思っています。

衛藤美彩 映画の初主演というこのオファーをいただいたときには、不安のほうが大きかったんです。まだグループ(乃木坂46)在籍中でしたし、調整して撮影に臨みました。監督がおっしゃったように、素敵なキャストの皆さまとスタッフの方々に支えられました。それから約1年経って、今日皆さんに見ていただけて…ここまでの過程が全部初めて、こんなに嬉しい気持ちになったのも初めてです。とても嬉しい気持ちでいっぱいです。

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仲野太賀 観てくださった衛藤さんのファンの方にお叱りを受けないかなとちょっと怖気付いています。w
衛藤さんとご一緒するのは初めてですけれど、中川監督と2度目です。素晴らしいキャストの皆さまとスタッフの方と作り上げた、濃密な時間が刻まれた映画になっています。どういう風に皆さんの元に届いて、どういう風にこの映画が広がっていくのかなって興味もあって楽しみです。なんかこう、大丈夫でしたか?(笑)本当に嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいです。

でんでん 僕はこの映画をテレビ(DVD)でしか観ていないんです。寝転びながら見ていたんです。無言のシーンがものすごく多いんですよね。耳が遠くなったんじゃないかと(笑)思うくらいでした。太賀くんと衛藤さんのキメの細かい芝居が、同じ役者から見ても素晴らしいなと思って見ていました。新藤兼人監督の『裸の島』を彷彿させるようなシーンもありましたね。とっても静かな、淡々と流れる映画の中で、細かい感情の起伏なんだけど、太賀くんと衛藤さんが上手に演じているのを見て、共演者としてもちょっと痺れた映画でもありました。監督には「どうも呼んでいただいてありがとうございました」(笑)

―ほぼ1年前の撮影だそうですが、振り返ってみて現場の雰囲気やエピソードを。

中川監督 自分としてはこのお話は一種のおとぎ話だと思うと同時に、メインのキャストに関しては年齢の近い人間でこの物語を作りたいなと思っていました。将来、先行きが見えない中で、走り出したくても走れない行助と、未来に進みたくても過去に戻ってしまう、ここでしか生きられないこよみの寓話というかおとぎ話を作ろうと取り組みました。なかなかどこをとっかかりにしえいいか苦しんだのが、本当のところでありました。
そういう意味では、現場で自分と太賀がぶつかるというか、気まずくなることが結構あったんですけど(笑)、衛藤さんがめちゃくちゃ空気が読める人で、読んでくれたんじゃないかな。(笑)
衛藤さんがいなかったらもうちょっと現場の空気が暗かったかもしれないです。

仲野太賀 めちゃくちゃ喧嘩してるみたいじゃん。(衛藤:喧嘩のシーンは見てない。でんでん:カメラオフではあったかもしれんけど)

衛藤美彩 私今日でんでんさんと「初めまして」なんです。

でんでん (一緒のシーンがなくて)現場では全然会ってないもんね。

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衛藤美彩 そうですね。映画と全然違うねって言われました。
私は太賀さんとのシーンが多くて、年齢も同い年で、ねっ?(笑)想像していたよりも気さくで、カメラが回っていないときでもたくさん話しかけてくださったりして、私も緊張がほぐれて楽しく撮影できたかなと感謝しています。

太賀 僕も感謝しています。確かに、中川監督とは同世代でもありますし、意見交換で激しめのディスカッションがあったかも、しれないんですけど(笑)、衛藤さんが現場を明るくするパワーを持っていて、衛藤さんが現場に来るだけでみんなが明るくなるという。本当に助けられましたね。ありがとうございます。(二人してお辞儀)

中川監督 衛藤さん、本当にいい人。現場にご飯を作って来てくれたりね。無限ピーマンとか作って来てくれましたね。

仲野太賀 衛藤さんに支えられましたね。

衛藤美彩 ありがとうございます。

でんでん そんな衛藤さんと一度もからめなくて、ちょっと残念なんですけど。(笑)
僕と太賀くんはここ2,3年よく仕事しているよね。(太賀:そうですね)CMでも一緒だったし。なんとなくいい感じだと俺は思っているんだけど。(笑)

太賀 僕も思ってます。(笑)

でんでん で、なんとなくほんわか~な感じで二人お芝居していたと思うんだけど。そういえば中川監督てんぱってたね。(笑)今思い出した。

中川監督 でんでんさんに相談しましたよね。緊張しないように、アドバイスいただいたりしました。

でんでん あ、そう?(笑)アドバイスするの逆じゃないの?楽しかったよね。俺はね。2,3日のお仕事だから。見てわかるように。ほんと、赤いマフラーが似合うなと思ったね。恥ずかしかったんだけど、あれ。

―はい、みなさま、素敵なエピソードたくさんありがとうございます。

仲野太賀 バッサリ行きますね。(笑)

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―次の質問させていただいてよろしいでしょうか?
仲野さんに伺います。今回クランクインの前に取り組んだことなどあったでしょうか?


仲野太賀 僕に限らず、だったと思うんですけど、クランクインの何ヶ月か前からワークショップみたいなのをしましたね。衛藤さんと。

衛藤美彩 はい、しましたね。2,3か月前。

中川監督 月に1回か2回ずつやりました。

仲野太賀 現場に入ってしまう前に衛藤さんとの関係性とか、一緒にいて居心地がいい、お互い気を使わないような空間を作ることで、衛藤さんとワークショップをしたり。あと監督やスタッフのみなさんと今ある脚本をいかに前進させるかとか、よりいいものにするためのディスカッションにすごい時間をかけた気がします。

―ありがとうございます。では、衛藤さんに伺います。こよみは鯛焼き屋という設定ですが、あの屋台はセットだと伺いました。そこでぜひ鯛焼きエピソードを教えてください。

衛藤美彩 鯛焼きエピソード?鯛焼きを一人でパチンコ屋さんの横で焼いてる女の子っていないんです…

中川監督 どんなに取材しても出てこなかったですね(笑)。

衛藤美彩 1丁焼きっていうのがあるのも知らなくって。なので、今回監修していただいたお店に行って、1週間くらい行って仕事が終わってから実際に教えていただきました。監督も何回か来てくださって。ほんとうにずっとそこで働いている人に見えるようにたくさん教えていただきました。たくさん失敗したりもしたんですけど、最後はきれいに焼けるようになって、それを現場のセットで美術さんが同じように作ってくれたので、とても焼きやすかったです。
映画の中で食べているものは、私が実際に焼かせていただいたものもあって、それを太賀さんがすっごく美味しそうに食べくれて(笑)。何個?たくさん食べましたよね?

仲野太賀 たっくさん食べました。

衛藤美彩 たくさん食べるんだけど、いつ食べても初めて食べたときの美味しい顔をしてくれて。

仲野太賀 ほんと美味しかったんです。

衛藤美彩 良かったです。その姿に励まされたというか、本当に作っているかたはこういう気持ちになるんだなって体験させてもらいましたね。

―心がほっこりするエピソードをありがとうございます。スペシャルゲストがお見えになっていますのでお呼びしましょう。本作『静かな雨』の原作者、宮下奈都さんです。(拍手)公開日であります昨日2月7日は仲野太賀さんの誕生日(27才)でした!

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宮下奈都 お誕生日おめでとうございます。(花束を贈呈)

仲野太賀 ありがとうございます。なんだか受賞したみたい(笑)。

中川監督 どうでしたか?作品を観ていただいて。

宮下奈都 はい。手触りがザラザラだったり、ツヤツヤだったり、本当にいい映画で。「ゆきさん」って呼んだ衛藤さんの声で、ゆきさん(行助)の世界が立ち上がった気がして、ほんとにこよみさんの目と、行助さんの目が同じ色で、すごくよかったと思いました。すごく嬉しかったです。(拍手)

ここからフォトセッション

―ではお別れの挨拶をでんでんさんから

でんでん では「お別れの挨拶」を(笑)。ほんと月並みなんだけれど、口コミでよろしくお願いいたします。こういうことはなかったかと思いますが、朝いちばんの上映で睡眠不足で眠られた方、もう一度見直してください。(笑&拍手)

仲野太賀 みなさん、観に来てくださってありがとうございました。ちょうど一年前に作った映画なんですけれど、中川監督と素敵なキャスト・スタッフのみなさんとご一緒できたのも嬉しくて。宮下先生の原作が素晴らしくて、それを映画化するときにいかに、なんだろな、「顔に泥を塗る」じゃなくて(笑)、塗らないように、丁寧にやっていこうと思いました。映画化するときに、また違う要素、音楽的な要素、ほかの要素も含めて最終的に中川監督の作品になればいいなと思ってやっていました。
僕としては中川監督の新しい作品の一つになったと思いますし、衛藤さんの輝かしい初主演作になっているんじゃないかと思っております。今日はほんとにありがとうございました。これでお別れの挨拶とさせていただきます。(笑&拍手)

衛藤美彩 一年前にお話をいただいて撮影して、今になるまでの過程で、映画っていいなって。個人的にすごく映画界の魅力に自分自身もどっぷりつかってしまいそうなくらい、このお話も大好きですし、この作品をこれからたくさんの方に観ていただけるんだということがすごく嬉しいです。行助とこよみは、この作品の中で毎日を丁寧に生きていて、そういう姿は私自身も原題を生きるにあたって考えさせられます。みなさんの心の中にこの『静かな雨』の優しい物語が少しでも残ったら嬉しいなと思います。何度も観に来てほしいです。今日はありがとうございました。(拍手)

中川監督 宮下さんの素晴らしい小説があった上で作らせてもらったわけですが、いろいろ自分も初めてのことが多くて、一番苦しんだ作品でもありました。そういう中で、今日来てくださっている太賀さん、衛藤さん、でんでんさん、そのほかほんとに素晴らしい人に恵まれてこの作品が、生み出せたのでぜひこの作品が広まってほしい。届くべき人に届いてほしいと思っている次第です。ぜひ周りの方とか、ご自身にとって大切な人に少しでも気に入っていただけたら。
率直な感想を、僕の所属している東京ニューシネマという会社にメールでください。必ず見るようにしています。ご連絡いただけたら嬉しいなと思います。今日はほんとうにありがとうございました!(拍手)

宮下奈都 原作を書いているときには無意識だったんですけど、今回この美しい恋愛映画を観て「恋愛って、その外側で人がどう生きるかっていうことだったんだな」と知りました。ほんとにいい映画になっていて感激しました。ありがとうございました。(拍手)

ほぼ書き起こし。(まとめ・写真 白石映子)
作品紹介はこちら

映画とゲームの融合!?「DEATH COME TRUE」

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左から森崎ウィン、栗山千明、本郷奏多、梶裕貴、山本千尋

2月6日(木)新宿バルト9にて実写ムービーゲーム「DEATH COME TRUE」プレス発表会が開催されました。 
まず制作側の梅田 慎介氏(イザナギゲームズCEO)、安藤隼人氏(ムービー・ディレクター)、小高 和剛氏(ディレクター/シナリオライター)。続いて映画のキャスト、本郷奏多、栗山千明、森崎ウィン、梶裕貴、山本千尋が登壇。ツイッターのお知らせをRTした中から抽選で招待されたファン70名の歓声があがりました。 
スクリーンで予告編を紹介、「インタラクティブコンテンツ」というジャンルだそうです。プラットホームも使用可能言語も多数。
映画のストーリー中、主人公が選択しなければならない場面がたびたび出てきます。その選択次第でゲームがどちらかに進み、何通りもの組み合わせが生まれます。映画を観ているような感覚で、ふだんゲームをやらない人に体験してもらいたい、と映画と同じ設定の格安価格です。これは買って試してみたいです。
6月の発売に向けて準備中のため、スタッフ・キャストたちもネタバレを避けなければならず、Q&Aに苦戦していました。(白)

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梅田 慎介氏、安藤隼人氏、小高 和剛氏

≪DEATH COME TRUE≫
舞台は、とあるホテル。
主人公、カラキマコト(本郷奏多)は連続殺人事件の犯人として指名手配されている。
しかし男には一切の記憶がない。
そんな状況の中、男には死ぬと『タイムリープ』して過去に戻る不思議な能力がある。
犯人として追われながら、男は誰を信じて、誰を疑う?
そして、自分自身の本当の正体とは?
選択と死を繰り返しながら、男は真実を目指す。

■CAST
本郷奏多:カラキ マコト役 
栗山千明:サチムラ アカネ役 
森崎ウィン:クジ ノゾム役 
梶裕貴:ホテルのフロント役 
山本千尋:クルシマ ネネ役 

■STAFF
ゲームディレクター・シナリオ:小高和剛
プロデューサー:梅田慎介
クリエイティブディレクター:鎌田俊輔
製作:イザナギゲームズ
リリース予定:2020年6月 予定価格1900円 
(C)IZANAGIGAMES, Inc. All rights reserved.
■『Death Come True』カウントダウンサイト:https://deathcometrue.com/
■『Death Come True』公式Twitter:https://twitter.com/DeathComeTrue 

『おっさんずルネッサンス』髙野史枝監督インタビュー

2010年1月11日(土)名古屋名演小劇場にて公開

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高野史枝監督

シネマジャーナルに名古屋から寄稿している高野史枝さんですが、もう25年くらいになります。その高野さんが監督第一作の『厨房男子』を作ったのが2015年。そしてこの作品の中に描かれていた大府市の「メンズカレッジ」という講座とこの講座卒業生の「男楽会」に参加する男性たちをさらに追いかけたのが、この『おっさんずルネッサンス』です。
*『厨房男子』高野史枝監督インタビュー記事はこちら

定年後の生き方のモデルは大府(ここ)にある!

働いている人には必ずやってくる定年後の生活。仕事一筋できた人は「効率第一」だったり、「経済効果だけを見てしまう」など、会社や組織の中で、そういう考え方が染み込み、地域とのかかわりやコミュニケーション不足、孤立感などを感じている人もいるかもしれません。
人生100年の時代、定年後の生活に不安はありませんか? 女性に比べて男性のほうが定年後の生活をどのように暮らすかに不安が大きいのかもしれません。「楽しいセカンドライフ」をどのよう送るか、こんな定年後の「悩めるおっさん」たちに、愛知県大府市の施設「ミューいしがせ」では、20年以上前から「メンズカレッジ」という講座を開いています。ここで男性たちは、「生活自立(料理・家事)」「地域活動」「健康」など、セカンドライフに必要なことを学び、活動を通じて友達を作ります。年間23回ある講座は全て無料!
「おっさんずルネッサンス」は、 愛知県大府市で意識変革と生活の自立を果たす「おっさん」たちを主人公にしたドキュメンタリー映画です。
「おっさんずルネッサンス」には、幸せなセカンドライフを過ごすためのヒントがたくさんあります。大府発のこの映画は定年を迎えた本人だけでなく、向き合う女性や家族の共感もきっと得られることでしょう。 そして意外にも「花が似合う」おっさんたちの明るくいきいきした表情を観にいってみてください。

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公式ブログより
 名古屋市の南に隣接する愛知県大府市(人口9万2000人)。このまちにある施設、「大府市石ヶ瀬会館(ミューいしがせ)」では、20年以上前から「メンズカレッジ」という男性対象の講座が開かれている。30人の講座生は、1年間一緒に料理を作り、講座や講演会に参加し、遠足に行き、活動を通じて友だちになる。卒業生は「男楽会(だんらくかい)」という自主活動グループを作り、料理技術をさらに磨いたり、様々なボランティア活動の中心になって活動を続ける。男楽会の会員は、それぞれの家庭でも、習った家事の腕を生かし、料理、洗い物やアイロンかけなどに積極的に取り組むので、家族からは感謝され、孫たちにも良い影響を与えている。
メンズカレッジと男楽会の会員およそ60人が、協力して積極的に取り組むコロッケ作り。コロッケは石ヶ瀬コミュニティの夏まつりの模擬店で販売されるが、美味しさで定評があり、すぐに売り切れる人気商品だ。今年(2019年)も2600個のコロッケは完売した。4月に始まったメンズカレッジでの学びも、9月には半分を終えた。今年参加した受講生は、それぞれ自分たちの半年間の変化を語り始めた・・・・

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髙野監督が撮りたかったもの
この映画を撮っている髙野監督は、ミューいしがせとは大変つながりが深く、長く映画講座を担当し、前作『厨房男子』では、大府市の男楽会を登場させました。 監督は「ミューいしがせがやっているこんな講座や活動が、日本中のどの地域にもあった ら、家族からハミでたり、引きこもりになるおっさんは間違いなく減る。男性たちが機嫌よく幸せになれば、それは周りにいる女性たちの幸せにつながる」と考え、この映画の製作を思い立ちました。何よりも「大府のおっさんたちの明るい顔を、日本中の人にお見せしたい!」と意気込んでいます。多くの市民の協賛を得て、「おっさんずルネッサンス製作実行委員会」も出来、サポート活動を続けています。 大府発のこの映画は、きっと現在の日本の「おっさん」たちだけでなく、今後必ず「その時」をむかえる男性や、その人たちと向き合う女性や家族の共感を得ることでしょう。

シネマジャーナルHP 『おっさんずルネッサンス』作品紹介
『おっさんずルネッサンス』公式HP

高野史枝監督インタビュー

Q1:『おっさんずルネッサンス』は、監督が2015年に製作された『厨房男子』に続く2作目のドキュメンタリー映画ですね。製作に至るまでの経過を教えてください。

高野史枝監督:前作の『厨房男子』は、「私の親しい男性(夫、息子、友人、友人の配偶者など)が料理を作り、みんなで一緒に食べる」という、わかり易い映画でした。そんなシンプルさが気に入っていただけたのか、名古屋の映画館で1か月の上映が叶い、その後も大阪や京都、神戸、横浜などの劇場で上映、映画祭へも出していただけるなど、「ビギナーズラック」な作品になりました。劇場公開が終わった後も、日本中あちこちの自主上映会に招かれてお話する機会に恵まれましたが、その時、観客の皆さんの反応が抜群によかったのが、「定年後のおっさんたち45人が挑む2500個のコロッケ作り」というパートだったんですね。「なぜみんな、あんなに仲良く楽しそうなんですか」「高齢者がコロッケをうまく作るのにビックリ!あの腕はどこで身に着けたの?」…と関心を持って感想や質問をしてくださるのは、登場人物と同年配(60~70代)の男性諸氏。その年代の方々は、「定年後の人生をどう生きたらいいのだろう。その参考にならないか」という切実な気持ちで映画をご覧になっていたんでしょう。
その反応に出会い、「そうだ!私は定年後の人生を生き生きと過ごす人たちを、大府でたくさん見ている。あのおっさんたちの生き方を『映画で見たいな・・・』と思う人は大勢いるかもしれない…」というアイデアがヒラメキました。それが運の尽き…ではなく(笑)、「おっさんずルネッサンス」製作のキッカケになりました。舞台になる愛知県大府市の施設、「石ヶ瀬会館(ミューいしがせ)」からも、ご協力いただけるというお返事があり、『厨房男子』でコロッケを揚げていたおっさんたちからも、「ええよ~やろまい。(やりましょう。名古屋弁です)」という「ご許可」が出たので、取り掛かることになった・・・というわけです。

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Q2:大府市のおっさんたちを「撮りたい!」と思った一番の理由は何ですか。

監督:まず何より「表情が明るくていいな」と思ったところ。ほら、高齢の男性って、眉の間にしわ寄せて、不機嫌そうな顔してる人が多くないですか? 大府市のメンズカレッジ、男楽会のおっさんたちは「眉間にしわ」寄せてません。威張ることなく、コミュニケーションを取るのが上手で、基本楽しそう。ひとことでいうと、「いい顔してる」人が多いんです。
長らく大府市の「ミューいしがせ」で映画講座を担当していて、前作にも出てもらって、大府のおっさんたちとすっかり仲よしになりました。皆さんとお話しているうち、「料理が上手く、女性と偏見なく話ができるステキなおっさんが大府に多いのは、たまたまじゃない。彼らが『ミューいしがせ』の講座や活動に参加しているからなんだ」と分かってきたんです。もちろん講座の内容が素晴らしいという事なんですが、もう一つ、おっさんたちに影響を与えているのが、メンズカレッジの姿勢だ」と考え付きました。
ここでは「前歴は一切問わない、言わない。上下関係のない平(たいら)な関係)」が前提になっているんですね。これって、男性が集まる組織ではかなり珍しい。活動には全員が加わり、仕事は公平に分担します。ここではみんなが社会の裃(かみしも)を脱ぎ捨て、一人の人間として向かい合うことからスタートしています。市長がコロッケ作りに参加しても、先月まで県議会議員だった人が出し巻き焼いてても、みんな平気で「下手だな~」「アンタ、家でもっと料理せなイカンわ」と、ハラハラするほど遠慮がない。権力や肩書、上下関係から解放され(「会社の毒気が抜けた」・・・とでも言えばいいでしょうか)、家族や周りの人の役に立つ喜びを知り、友だちと一緒に人生を楽しんでいる明るい顔したおっさん・・・こんなチャーミングなおっさんたちだからこそ、撮りたくなったんです。

Q3:大府市の皆さんの、熱心な応援があったようですね。

監督:はい。その通りです。今回「ミューいしがせ」を中心にした関係者の皆さんは、この映画の製作を本当に熱心に応援してくださいました。製作を決めるとすぐに、25人からなる「おっさんずルネッサンス製作実行委員会」(実行委員長・広川希依子さん)を立ち上げて毎月会議を持ち、大府市、大府商工会議所、大府市社会福祉協議会へ後援のお願いに行くときも、企業へ協賛のお願いに行くときも、必ず同行してくださったんです。地元の人間ではなく、顔もなく、当然信用もない私に対し、すぐに後援を決めてくださったり、応援カンパを出していただけたのは、この「後ろ盾」の皆さんへの信用以外の何物でもありませんでした。その後も製作資金集めについて一緒に悩んだり、撮影したい場所や人にはすぐに繋いだり、申請や許可を取りに走ったりと、普通ならフィルムコミッション(*)がやるような事もこなしてくださいました。ほんとうに、実行委員会の皆さんがいなかったら、この映画は出来ませんでした。
「ありがとうございました」と、心からお礼がいいたいです。
(*)映画製作の撮影支援をする機関。地方公共団体や観光協会が事務局を担当し、撮影場所のアドバイスや申請業務をサポートする

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Q4:今回の映画製作で苦労されたところは・・・

監督 一つ目は、撮る対象との距離ですね。特にメインで撮る予定の男楽会の皆さんとは、あまり遠慮のない関係。撮影でカメラが回ってても気にせず、全くいつも通りなのはありがたいんですが、カメラのこっち側にいる監督の私にも気楽に話しかけてくる(まあ、ワタクシメなど「監督」だなんて認識がないんでしょうが…)コロッケ作りの時、棒アイスを食べながら料理をやってるおっさんたちを撮ってたら、「アンタも食べやあ」と、私のところまでわざわざアイスを持ってきてくれた…(「あ、ありがと」と、つい受け取る私も私ですが)。「今の、もう1回やって」とお願いしても、「めんどくさい、ヤダ!」・・・よく知るためには仲良くならなくてはならないし、仲良くなりすぎると遠慮がなくなるし・・・・難しいものです。
二つ目は、自主映画を作っている人なら全員持ってる悩み、「製作資金不足」です。はい、私もそれに苦しんでいます。第一作目の時は、「何をやればいいか」ということすらわからず、一人でキリキリ舞いしてクタビレ果てたニガ~い経験があるので、今回は知人友人の様々なプロを総動員し、PR関係などは全部お願いして、労力の軽減を図りました。これでかなりのラクと責任転嫁はできたけれど、プロに頼んだ以上、最後にその請求書は必ずやって来るという事に気づきませんでした! 結局、最初にお話した「資金不足」という根源的な苦労は舞い戻ってきたのでした。
ジョーク好きな友達は、会うたび「いつ家売るの?」と挨拶してくるし・・・売りたくないんですけど~(泣)。

Q5:撮影中のエピソードはありますか。

監督:撮影に行った日本福祉大学の坂道で、ころころすってーん!と見事に転び、肋骨にヒビが入ったこと、編集に時間がかかり、2ヶ月近く外出しないで(歩かないで)机に向かっていたら、ある日突然、弱った膝裏の筋肉が「ピキッ!」と切れたこと、撮影に夢中になっていて、行く先々で眼鏡を忘れ、4つあった眼鏡が1つになったこと・・・あれ、これってエピソードじゃないですね。単なる「加齢現象」でした。失礼・・・。
そうそう、撮影担当のノンちゃん(城間典子)はイケメン好き。おっさんの中でも、特にご贔屓の「押しメン」がいて、微妙に彼のシーンが多かったような気が・・・(笑)。探してみてください。

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Q6:女性監督は、女性を主人公にして描くことが多いのですが、監督の作品は、なぜ2作とも男性が主人公なんですか。

監督:私は「映画界にもっと女性監督やスタッフが増えなくてはならない」と、ずっと言い続けてきて、とうとう自分も監督になってしまったようなヤツです。それは「女性監督は女性の発想が理解できるので、男性監督とは違う視点で女性像が描けるはず。映画でそれが見たい」という自分の思いが強かったからなんです。ここ10年近く、女性監督の数は飛躍的に増え、毎年行っている「大阪アジアン映画祭」では、2019年コンペ部門に入選した14本の作品中、8本が女性監督の作品だった…というほどになりました。
ご質問の通り、女性監督は女性を描くことが多いです。男性監督が勝手に「解釈」した女性ではなく、女性監督が描いたリアル女性像を見て、男性が女性への理解を深める・・・という状況が、もっと進んでほしいです。それと同時に私は、「女性はこんな男性が好き。男性にこうなってほしいと思ってるのよ~」という直接的なアピールもしたいな・・・と思ってました。ドラマではなく、ドキュメンタリー映画なら、それができるんじゃないかな・・・と思って『厨房男子』(2015年)を作りました。内容はズバリ、「女性は料理する男性が好き!」。わかりやすいですね。では、「おっさんずルネッサンス」という映画で、私がしたいアピールは何か?それは、「男性がシアワセに暮らしていないと、女性もシアワセになれない」です。結婚している人なら、夫の定年後は顔を突き合わせる時間が増えます。そんな時、夫が「やることも行くところも友人もなく、終日ムッツリして家から出ない」「しかも食事は3回キチンと食べる」という状態になったら、妻はきっと「こんな生活ゼッタイいや!」と思うに違いありません。こんな夫も大してシアワセではないでしょうが、妻もまた不幸せです。実際私の女友達など、「定年後、夫が毎日家にいるかと思うと恐怖」「そうなったら離婚を考える」と広言してます。
でも、大府の「ミューいしがせ」の「メンズカレッジ」講座生、そこを卒業した「男楽会」の皆さんはぜんぜん違います。やることがいっぱいあり、家族にも地域にも溶け込んで、楽しく暮らしています。こんな「豊かなセカンドライフ」を送るおっさんたちをお見せしたかった!
 これが、男性を主人公にした「おっさんずルネッサンス」を作った理由です。

Q7:この映画を、どんな人達に、どんな風に見ていただきたいですか。

監督:やはり、定年が視野に入ってきた男性、その配偶者や家族の方に、ぜひ見ていただきたい!
定年後を過度に恐れるんでもなく、楽観視もせず、「今までとは違った人生が始まるんだな。そのために考えておかなくてはならないことがあるんだな(経済的な問題は知りませんケド)」と、知っていただけるといいなァ・・・と思います。実際、この映画にはいろいろなヒントがあると思いますしね。自分の親がこの年代に差し掛かった30代、40代の若い方も、「親へのアドバイス・励まし」のためにご覧になっておくといいんではないでしょうか。親が無気力になり、元気に暮らしていないと、結局負担は子どもの肩にかかってきますから・・・。
また、自治体の「生涯学習」「高齢者関連部署」の方々、地域の公民館や女性会館などの担当者の方々に見ていただけたら、地域で求められているものを知るきっかけになり、今後の支援活動がより的確なものになるんではないかと思います。まあ結局、「皆さん見てくださいね~」に尽きますが・・・。
『おっさんずルネッサンス』パンフレットより転載
写真クレジット:おっさんずルネッサンス製作実行委員会
まとめ:宮崎 暁美

『だれもが愛しいチャンピオン』ハビエル・フェセル監督インタビュー

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*ハビエル・フェセル監督プロフィール*
1964年スペイン・マドリード生まれ。マドリード・コンプルテンセ大学でコミュニケーション学の学位を取得。著名なジャーナリストで、監督、脚本家でもあるギレルモ・フェセルを兄に持つ。1990年代半ばにいくつかの短編を監督したのち、『ミラクル・ペティント』(98)で長編デビュー。子供に恵まれない老夫婦と宇宙人の奇妙な交流を描いたこのSFコメディで、ゴヤ賞の新人監督賞にノミネートされた。
フランシスコ・イバニェスの人気コミックを実写映画化した長編第2作のスパイ・コメディ『モルタデロとフィレモン』(03)では、ゴヤ賞の編集賞、美術賞など5部門を受賞している。その後はゴヤ賞で作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞など6部門に輝いた『カミーノ』(08・ラテンビート映画祭)を発表。『モルタデロとフィレモン』のシリーズ3作目にあたる長編アニメ『Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo』(14)では、ゴヤ賞のアニメ映画賞、ガウディ賞の長編アニメ賞を受賞した。

『だれもが愛しいチャンピオン』作品紹介はこちら
2018年/スペイン/カラー/シネスコ/118分
(C)Rey de Babia AIE, Peliculas Pendelton SA, Morena Films SL, Telefónica Audiovisual Digital SLU, RTVE
★2019年12月27日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて順次公開

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フェセル監督はこれまで1999年、2008年に映画祭などで来日されています。今回到着してまず京都に行かれた監督、「24時間ではとても足りません。また何回でも行きたいです」とのことでした。
(通訳:比嘉世津子さん)


―明るくて元気な映画で、これまでの障がい者が主演の映画の印象をひっくり返してくれました。

知的障がいのある方というのは、世界の見方がとっても前向きです。楽しくて、キラキラと光っているものとして見ています。そういうところが自分たちに元気を与えてくれるのだと思います。
みなさんが先に辛いとか苦しいとか思ってしまうのは、たぶん彼らのことをよく知らないからです。今回は、現実の彼らの考えや行動をできるだけ出そうとしました。彼らを知れば知るほど、彼らとのコミュニケーションはほかの人よりも簡単だとわかります。なぜかというと、彼らは頭でなく心でコミュニケーションをとるからです。

―私の知っている障がいのある方も裏表がなく、嘘を言わない、純真な心の持ち主です。

みんな常に本当のことを言います。それが攻撃にならないのは、彼らが裏表なく誠実だからなんですね。今の社会は知的には発達してきたかもしれませんが、精神的には本当に愚かになってしまっています。彼らの純粋な言葉を聞く耳を持つということ、彼らがどれだけ社会に貢献できるかということが、この映画を作ったことでよくわかりました。

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―今回600人もの中からオーディションで出演者を選ばれたそうですが、重要視したことはなんですか?

キャスティングは柔軟に行いました。脚本はあったのですが、最初の主な出演者は7人でした。とても面白いと思った人たちを入れたら9人になりました。たとえばグロリアです。脚本には女性はいませんでした。その中に彼らの個性、話し方、まなざし、人生の経験などそれらを入れ込みました。
マリン役のヘスス・ビダルは知的障がいではなく、視覚障がい者です。彼を入れて10人のメンバーです。

―ヘススさんが一番先に出てきた方ですね。とても印象に残りました。グロリアは予定外に入った女性メンバーなんですね。

みんなそれぞれ魅力的な人々です。
グロリアは私が出会った中でも美しい人だと思います。常にエネルギッシュで力強く、同時に優しさと大きな心を持っています。グロリアはダウン症で小柄なんですが、彼女がこのチームに加わると、物語を動かす力になるということがわかりました。

―この10人のメンバーは本当に個性的で、大きかったり小さかったり、見た目もバラバラです。意識して選ばれましたか?

もちろんキャスティングのときに似たような人はさけて、この人が唯一と思われる人を選びました。そして一人ひとりみんな違う、そういう人が一つのチームを作るところが面白いのです。
600人の人たちの組み合わせ次第で、違ってくる。いろんな物語ができるわけですね。
リメイク権を売るときにつけた唯一の条件は「ほんとの知的障がい者を採用する」ということです。それを抜いてしまったらこの映画の魂はなくなってしまいますから。

―撮影するうちに脚本が変わっていくことはありましたか?

撮影自体はなるべくシンプルに、彼らに注目して行いました。思いがけなく起こることを逃さないように努力しました。この映画の中にある面白いことの大半は、テストのときに彼らから即興で出たことなんです。それを本番に入れ込みました。だから彼らはもうこれは自分たちの映画だと、どんどんいろんなことを提案してくれるし、やって見せてくれました。

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―台詞も彼らの中から自然に出てきたものが多いのですか?

キャスティングした後で書き直した脚本には、普段の言葉を入れ込んでいます。誰かを演じているのでなく自分自身であり、全てが現実のドキュメンタリーのように撮れたと思います。映画の中にグロリアが男性に「馴れ馴れしく呼ぶな」という場面があったのですが、それは実際、彼女とプロデューサーのやりとりで言った言葉なんです。

―試合のシーンがたいへん盛り上がって、観ていてハラハラしました。どんな風に流れを作って撮影されたのでしょう。

知的障がい者のバスケットボールのチームは実際にあって、彼らの試合を見ていたのですが、彼らの目的は勝つことではないんです。実力の差があったとしても、お互いにとても信頼しあっています。それを映画で見せることが目的でした。
もちろん流れというのはある程度決めてはありました。けれどもできるだけ彼らが自由にゲームをして、ほんとにそれを楽しんでいられる環境を作りました。

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―バスケットボールのルールは同じものですか?

いいえ。それぞれの障がいによって違うルールがあります。たとえばボールを持ったまま走ってもファウルにならない、とか。
そしてとても面白いルールがあるんです。「20点以上入ったら、それ以降の点は相手チームに入る」というものです。

―え?? それは大きな差をつけないということでしょうか?

そうです。レベルの差がありますから、あまりがっかりさせないように。それは普段の生活でも大切な教訓になるんです。

―初めて聞きました。それでみんなが仲良く楽しんで終わるんですね。

そうそう。ですから映画のラストは私が作ったフィクションではなく、知的障がい者のチャンピオン・リーグでほんとにあったことです。2位になってもここまで来たことを喜び、相手チームが勝ったことも喜ぶ。プロのチームでは負けると自分を責めたりしますが、それと違って互いに喜び合うんです。

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―日本では、親たちが亡くなった後の子どもたちのことを心配しています。スペインではその点福祉が充実しているのでしょうか?

スペインも同じです。これは世界中同じだと思います。ですから社会の中に障がい者の人たちのできる仕事、居場所が必要です。家族というよりは、社会参加の機会があり、社会の中で根付くことが一番大事です。彼らは非常に働き者で、誠実で信頼できる人たちなので、社会に対して大きな貢献ができると考えています。

―ありがとうございました。

=インタビューを終えて=
この映画が大好きで、監督が来日されると聞いてすぐに取材をお願いしました。ハビエル・フェセル監督はお髭の似合う素敵な方でした。魅力あるメンバーの1人1人について伺いたかったのですが、時間が足りず。撮影が楽しく実りあるものであったのは作品を観るとわかります。
バスケットボールのルールの違いは初めて知ることでした。勝ち負けにこだわらず、試合そのものを楽しむ姿勢はなんと素敵なのでしょう。
世界も日本も効率よくお金儲けすることばかりに走って、その間に大事なものをぼろぼろと落としてしまっているような気がします。その代表のようなマルコの姿に、いろいろと思うことがありました。最後の質問に「障がいのある子どもたちを残していく親の気持ちは世界共通、だからこそ社会の中に彼らの居場所を作らなくては」とのお答えには、深く共感しました。
スペイン語の響きは聞きやすいし、親しみがあります。ムード歌謡にもよく使われていました。覚えたら楽しそう~。どうぞ映画館で”アミーゴス”を応援してください。(取材・監督写真 白石映子)