『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』公開直前イベント

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戦争で傷つくのは普通の人たち
何があっても殺し合いはいけない


サンタクロースやムーミンで知られるフィンランドは世界幸福度ランキングで2 年連続世界一となった国。充実した福祉国家のイメージがあるだろう。しかしフィンランドには知られざる歴史がある。1939年からソ連と戦った「冬戦争」が翌年に終結。その代償としてカレリア地方を含む広大な国土をソ連に占領された。国土回復を掲げ、1941年にドイツと手を組み、再びソ連との戦争を開始。これを「継続戦争」と呼ぶ。
6 月22日に公開される『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』はその継続戦争に従軍したヴァイノ・リンナが書いた古典小説「無名戦士」を原作とし、フィンランド兵士が必死に戦う、壮絶な姿を描く。従来のイメージ180度覆す、苛烈な戦闘シーンの連続にもかかわらず、フィンランドでは全国民の5人に1人が観るという空前の大ヒットとなった。
待望の日本公開を前に、トークイベントを実施。ゲストに迎えられたフリー・アナウンサーの安東弘樹はミリタリー・マニアとして知られ、安東らしい観点で作品について語った。

<公開直前イベント 開催概要>
日時:6月11日 (火)18:10~18:25
場所:神楽座 (千代田区富士見2-13-12 KADOKAWA 富士見ビル1F)
登壇ゲスト:安東弘樹 (フリー・アナウンサー)

『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』

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継続戦争に参加した一機関銃中隊に配属された熟練兵ロッカ(エーロ・アホ)は家族と農業を営んでいたが、冬戦争でその土地がソ連に奪われたため、領土を取り戻し元の畑を耕したいと願っている。カリルオト(ヨハンネス・ホロパイネン)は婚約者をヘルシンキに残して最前線で戦い、途中でヘルシンキに戻って式を挙げ、すぐに戦場へとんぼ返りする。ヒエタネン(アク・ヒルヴィニエミ)は戦場でも純粋な心を失わず、コスケラ(ジュシ・ヴァタネン)は最後まで中隊を指揮する。この4名の兵士を軸に進んでいく。

原題:Unknown Soldier (英語) Tuntematon Sotilas (フィンランド語)
監督・脚本:アク・ロウヒミエス
撮影:ミカ・オラスマー
出演:エーロ・アホ、ヨハンネス・ホロパイネン、ジュシ・ヴァタネン、アク・ヒルヴィニエミ、ハンネス・スオミほか
2017 年/フィンランド/フィンランド語/カラー/132 分/PG-12
配給:彩プロ
© ELOKUVAOSAKEYHTIÖSUOMI 2017
公式サイト:http://unknown-soldier.ayapro.ne.jp/
2019年6月22日(土)より新宿武蔵野館にて全国順次ロードショー

武器も歴史も知れば知るほど、平和のありがたさをより感じる

魂を揺さぶられるような映画のトークショーに呼んでいただきありがとうございます。
ミニタリーマニアと紹介していただきましたが、僕は海外で実弾を撃つことがあります。しかし、撃つたびに「これは人間に向けて撃ってはいけないな」と実感します。また、武器についての興味から第二次世界大戦前後のことをいろいろ調べていますが、武器のことも、歴史のことも知れば知るほど、平和のありがたさをより感じています。
そんなわけで第二次世界大戦について詳しいと思っていたのですが、フィンランドが建国102年のまだ新しい国で、冬の戦争、継続戦争を通して、ソ連とこれほどまでに激戦を経て、今のフィンランドがあるということを知りませんでした。
フィンランドは幸福度ランキング1位で、学生の学力は1位、2位を争っている。みんなが幸せで、素晴らしい福祉国家としてうまくいっているのはなぜなんだろう。そんなことを漠然に思っていましたが、多くの血を流した歴史があった上で今のフィンランドがあると、この作品を見てわかりました。
この作品、実は今回のトークイベントのお話をいただく前から興味を持っていました。YouTubeなどの動画投稿サイトでいろいろな戦争映画をネットサーフィンしながら見ていく中で、この作品の予告編に出会ったのです。ただ、言語が日本語でも英語でもドイツ語でもなく、フィンランド語。また、フィンランドの戦争映画は初めてだったので、いろいろと調べているときにオファ―をいただき、びっくりしました。

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フィンランドが使っていた武器の見地からも切なさが伝わってくる

みなさんより先にDVDで作品を見ましたが、武器については基本的に海外のものを改良して使っていたようです。ドラム式の機関銃で、丸い弾倉に70発入っているものが出てきますが、現在は70発入っている弾倉のついた自動操縦はほぼありません。ソ連も含めて、当時はこういったものを使っていたということが作品からわかります。
(ポスタービジュアルを指して)これは機関銃の銃座。三脚架といって、この上に機関銃を載せます。機関銃は19世紀に作られていた水冷式機関銃。これは銃身が熱くなるのを水で冷やして撃つタイプですが、フィンランドではまだ使われていたのです。ソ連のT34と呼ばれる、当時の最新式戦車にこういった武器で立ち向かっていく。国土を守るため、そして取り返すためとはいえ、本当に大変だったでしょう。当時はドイツやアメリカが装備では世界一でしたが、強国に対してそういったもので戦っていたという武器の見地からも切なさが感じられました。

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戦争で傷つくのは一兵卒や国にいる女性や子ども

“英雄なき戦場”と書かれているように、大きな山があるわけではありません。実際に従軍した原作者はどういった戦闘があったのか、どういった戦争だったのかを淡々とありのままに書いています。もちろん映画では一人一人の人間のドラマも描いていますが、ハリウッド映画的なものを期待するとがっかりするかもしれません。しかし、“私たちにはこういうことがあったのです”というメッセージを感じ、僕の胸に刺さりました。改めて、戦争は人類で最も愚行なことだと思いましたね。
また、現代社会や組織の縮図も描かれています。現場を知らない、後ろの方で偉そうなことを吠えている人に限って、実際には使いものにならない。そんなダメな指揮官、上司にあたると悲惨なことになる。本当に部下を思い、戦略を立てている人が犠牲になり、意識が自分の上官、上司にへつらっている人がむしろ偉くなっていくのは古今東西同じ。そういった経験は誰にでもあると思いますが、この作品は命の懸かった戦争でダメな上官にあたると、どんなに悲惨かを描いています。戦争で傷つくのはまさに、ここに出てくるような一兵卒や国にいる女性や子どもです。何があっても殺し合いはいけない。戦争はただひたすら人間が傷ついて、醜くなっていく。議席にしがみついている、どこかの議員さんにも見てもらいたいと思うほど、戦争はダメなのです。それを受け取っていただければうれしいです。

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ストーリー、登場人物の相関関係の事前チェックがおススメ

フィンランドの方の名前に馴染みがない方は、ご覧になる前にパンフレット等を読んで、分かる範囲でストーリー、登場人物の相関関係を理解しておいた方がいいと思います。北欧の方は基本的に彫が深くてイケメンが多い。誰が誰だったか、分からなくなる可能性があるのです。事前にチェックしておくとすっと物語に入れるかもしれません。
こういう映画こそ、できるだけ多くの方に見ていただきたい。一見地味そうに見えますが、自分の人生に同じような思いをしたことが何かきっとあったはず。人生と照らし合わせることで、1人1人の心に何か残るでしょう。僕は本当に見てよかったなと思います。
(取材・構成・写真:堀木三紀)

『誰もがそれを知っている』公開記念 宇野維正、 真魚八重子 トークイベント

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2012年に『別離』、2017年は『セールスマン』で2度のアカデミー賞外国語作品賞を受賞し、イランの至宝とも言われるアスガー・ファルハディ監督。
監督が15年前のスペイン旅行で目にした行方不明の子供の写真に着想を得た物語を実生活では夫婦でもあるペネロペ・クルスとハビエル・バルデムに当て書きし、念願のタッグを実現させたオリジナル脚本の本作。

現在ヒット中の本作公開前にトークイベントが開催された。登壇したのは、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正さんと、映画評論家真魚八重子さんのお二人。
「現代に於いて、もしパーフェクトな映画があるとしたら、それはこの作品」と絶賛する宇野さん、”家族の秘密”を普遍的なものとして身近に感じたと語る真魚八重子さんが、ファルハディ監督作品に通じる演出や撮影裏話などを交え、軽妙なトークを展開した。
以下、ネタばれになる部分を割愛し、採録したい。

『誰もがそれを知っている』(英題:EVERYBODY KNOWS)

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スペインの故郷で久々に再会した家族と幼なじみ。しかし、結婚式で起きた娘の失踪をきっかけに、隠していたはずの真実をめぐり家族の秘密と嘘がほころび始める…。

監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、リカルド・ダリン 

2018年/スペイン・フランス・イタリア/スペイン語/133分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch//日本語字幕:原田りえ
配給:ロングライド  
© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION - MORENA FILMS SL - LUCKY RED - FRANCE 3 CINÉMA - UNTITLED FILMS A.I.E
公式サイト:https://longride.jp/everybodyknows/
6月1日(土) Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

ファルハディ好みの女優が多く登場

宇野 :まず登場する家族関係がややこしいですよね?皆さん、分かりました?
真魚:(説明)
宇野 :2度見ても伏線になるものが分かりくい。
真魚:キーパーソンであるペネロペの旦那が後半から出てくるし。
宇野 :ファーストショットからキーポイントを提示してくる。
真魚:『彼女が消えた浜辺』 でもそう。見せておきながら謎解きしてくれない。
それから女優陣が妙にがエロいですよね?美男美女過ぎて見分けつかない。
宇野 :女優に関しては絶対ファルハディの好みでしょ?(笑)
そういえば、ファルハディは『ある過去 の行方』でペネロペをキャスティングしたかったのに、妊娠中で断念した。今回は念願のキャスティングでしょう。

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題名はファルハディ指令?

宇野:「本題と同じにしろにしろ」と言ったのはファルハディの指令。
真魚:そうそう、『セールスマン』という題名から、あの内容は想像できないですよね。
宇野:映画で描かれた田舎の閉鎖性は、日本と共通してる。
真魚:〇〇(ネタばれにより伏せ)は田舎にはいられない。
宇野:アンダルシア云々ではない 、とファルハディは言いたいのか。僕は冒頭の結婚式シーンが大好き。マドリードの田舎町の雰囲気が濃厚で。あの冒頭がずっと続いて欲しいと思うくらい。
真魚:今までファルハディのはアート系と観られることが多かった。これはアートでもありミステリーという大衆性もある。
宇野:これ見よがしのアートではないですよね。
真魚:観客の皆さんにはもう一度観てほしいんですよ。窓のひび割れとか素晴らしいんですから。

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キーワードは”荷物”

宇野:ファルハディはまだ47歳ですよね。
真魚:ファルハディで注目して欲しいキーワードが、”荷物”。『ある過去の行方』でも別れた旦那の荷物がずっとある。何だかもどかしいんですよね。
宇野:小道具とかのモチーフも大事ですね。
真魚:荷物ないというのは、謎めいたものを捨て去った意味にも捉えられる。

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コスモポリタン

宇野:日本の監督も仏で撮ってますけど、ファルハディはスペインで撮りたかった願望は以前からあったみたい。
真魚:コスモポリタンなんでしょう。スペインが合ってる気がします。
宇野:アカデミー授賞式に出なかったり、米国と喧嘩して(苦笑)多くのコメントはやばいことだらけですよ(笑)

欧州の誘拐事情

宇野:演出技法 、脚本とも完璧。全部が傑作という監督はいない。イランの風土とも違う。
真魚:映画のような誘拐はスペイン・ラテン文化圏でよくある。空き巣も多いそうですよ。有名なサッカー選手宅の試合中を狙う、確実に留守ですからね。都会の警察も 捜査能力が低いんですよ。
宇野:身代金をかき集めたら、ある。集めるフリだけでも殺されない。風土として、そういうのがあるみたい。
真魚:日本では証拠隠滅になりますよね。 向こうは払えば戻る。
宇野:お互いに信用あるんでしょうね。イランもそういうとこあるみたい。
真魚:警察が介入しないのがいい。警察が出てくる映画はつまらない。
宇野:『万引き家族』も警察は最後のほうしか出て来ない。

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ヒットしないと映画界の損失

宇野:興行面でいうと、『セールスマン』はオスカー外国語作品賞なのに(観客が)入らなかった。題名もファルハディ指令だし、キューブリック的なとこもあるけど、今回は幅広い観客に受けるのでは?
真魚:周りに勧めてほしいですね。
宇野:良い分かりにくさというか…。入らないと映画界の損失になる。2回は見てほしいですね。

『誰もがそれを知っている』トークイベント
日時:5月14日(火)20:45〜21:15 ※上映後トークイベント
場所:ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)


『誰もがそれを知っている』公開記念 高橋ユキ、中瀬ゆかりトークイベント

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『別離』『セールスマン』で2度のアカデミー外国語映画賞に輝いたイランの名匠アスガー・ファルハディ監督。待望の最新作『誰もがそれを知っている』は15年前のスペイン旅行で目にした壁に貼られた行方不明の子供の写真に着想を得て、ずっと温めてきた物語だという。スペインを代表する国際的スター俳優夫婦のペネロペ・クルス、ハビエル・バルデムを主演に迎え、オールスペインロケで挑んだ。
このたび、6月1日公開を前にトークイベントが開催された。登壇したのは、フリーライター高橋ユキと新潮社出版部長の中瀬ゆかり。高橋は2013年に山口の集落で起きた連続放火殺人事件を2017年に取材したルポ「つけびの村」が“最恐の村サスペンス”としてSNSで話題を呼び、noteの有料記事が8000購入を突破、書籍化が決定した。一方、中瀬はアスガー・ファルハディ監督の大ファンであり、「事件マニア」として数々の取材記事を取り上げてきた。高橋と中瀬がスペインの村と日本の村で起きた事件の共通点について語った。

『誰もがそれを知っている』(英題:EVERYBODY KNOWS)
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スペインの故郷で久々に再会した家族と幼なじみ。しかし、結婚式で起きた娘の失踪をきっかけに、隠していたはずの真実をめぐり家族の秘密と嘘がほころび始める…。

監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、リカルド・ダリン 

2018年/スペイン・フランス・イタリア/スペイン語/133分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch//日本語字幕:原田りえ
配給:ロングライド  
© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION - MORENA FILMS SL - LUCKY RED - FRANCE 3 CINÉMA - UNTITLED FILMS A.I.E
公式サイト:https://longride.jp/everybodyknows/
6月1日(土) Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


ファルハディを観ていない人にとって一番入りやすい作品

作品の上映が終わり、興奮冷めやらぬ会場に高橋ユキ、中瀬ゆかりが登壇した。まず高橋が「つけびの村と共通点があるのか、半信半疑で見始めたが、見終わった後は共通点があると感じた」と話した。そして、誘拐劇というよりも村における噂がテーマになっていると指摘し、「田舎の噂は経済状況について、詳しく把握される傾向があり、この映画でもそういうシーンがよく出てきて、万国共通だと思った」と語った。
続いて、ファルハディ監督の大ファンで、これまですべての作品を見てきた中瀬は「余韻としては『彼女が消えた浜辺』が一番近い」と分析。主演の二人がトップスターであり、ファルハディ監督作品に見られる多くの要素が入っている本作を「ファルハディを観ていない人にとって一番入りやすい作品」と位置付けた。その上で「みな何かを失い、幸せになっていない。村の閉鎖的な環境の中で、出ていける者と出ていけない者がいる。残らざるを得ない者はこれからもまた新たな秘密が加わったこの村で、あの事件のことをずっと囁き続けて、10年後20年後も昨日起こったことのように噂するのだろうと考えてしまう」と振り返った。

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村の閉そく感とその中での筒抜け感

ここで、高橋が2013年の夏に起きた『つけびの村』の事件について簡単に説明した。限界集落に住む60代の男性がある夫婦を殺して家に火をつけ、その裏手の家でも女性を殺して火をつけて、家を燃やした。さらに別の家に忍び込んで2人殺害し、 “平成の八つ墓村”と言われていた事件である。一審、二審とも死刑判決が下され、最高裁で継続して審議中。加害者は妄想性障害と診断されているが、高橋は個人的には嫌がらせがあったのかが気になって取材をしたという。
つけびの村事件の話を受け、中瀬はファルハディ監督が土地にこだわり、作品の舞台は都会でなく村でなくてはならなかったと言っていることから、「村独特の人間関係、閉そく感がこの作品の大きなテーマ」だと話す。そして、「サピエンス全史」を取り上げ、この本で人類の言語は噂話と陰口で発達したと書かれているといい、「人間は言語の獲得によって、今、そこにいない人や物について、時空を超えて話せるようになり、危険や情報を共有していった」と動物と人間のコミュニケーションの違いを指摘し、噂話と陰口が人類の歴史と密接な関係にあることを説明。「人間が会って話しているとき、8割はそこにいない人の話と言われている」と付け加えた上で本作のタイトルを引き合いに出し、他人が知らないはずの個人情報を意外に多くの人が知っていることについて触れた。それに対し、高橋も「(つけびの村やこの作品の村が)なぜか筒抜けみたいな感じ」と同調した。

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キャラクターの濃さが本作の魅力

さらに中瀬は本作ではお金の話が重要になっていると話をした後、ラウラが妹の結婚式で村に帰ってきたとき、美人でお金持ちオーラ全開だったために嫌な雰囲気が感じられたとし、「みんなの目つきがけっして祝福していない。結婚式の場面でさえ、村人の目は厳しかった」と話すと、高橋もその点が作品はリアルだと共感し、「めでたい話のときに親戚の人が集まると、『でも、あれはなあ』みたいな話になるのに似ている。ぞっとするものがある」と続けた。
さらに作品の具体的な展開について触れながら、中瀬は「1人1人ちゃんと描かれていて面白い」とキャラクターの濃さが本作の魅力とし、「ラウラの姉マリアナがおばさんで、その夫フェルナンドがおじさんだと思って、パンフレットで年齢を確認したら、フェルナンドは私と同じ歳で、マリアナは年下でした(笑)。これがリアル。そちらもショックでした」と会場の笑いを誘った。

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SNSの発達により、噂話や陰口のスケールが大きくなった

続いて裁判の傍聴をしている高橋に、「噂話が事件の引き金になったものがあるか」と中瀬が尋ねると、金銭目的の犯罪は噂を鵜呑みにしたものが多いと高橋が指摘。中瀬も「Facebookなどでリア充アピールするよりも、『金、ないよ。またキャッシングしちゃったよ』と逆のアピールをした方が今の世界はリスク管理になる」と返し、会場にはまた笑いが起こった。
そのままSNSの発達について話が及んだ。高橋が「(噂話や陰口の) 場所が変わってきたのを感じる」と話すと、中瀬は噂話や陰口のスケールが変わってきたとし、「立ち聞きしてハッとなるシーンがドラマにもあるが、昔は聞かなくていいことが耳から入ってきた。今は活字で自分の悪口を見る。思わず画面の前で声を出してしまうこともある」といい、「エゴサーチはできるだけしないようにしているが、誰かに言われて気になって見てみると、ろくなことは書かれていない。あのパンドラの箱を開けてはいけない」と自らの話を出した。

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45歳で二児の母とは思えないペネロペ・クルス

高橋も中瀬も地方出身で、田舎の閉そく感が大学進学を目指す勉強の原動力だったという話になり、“ラウラもパコではなく、アレハンドロなら村を抜け出せると考えたのでは”と推測。さらに、(ラウラを演じた)ペネロペ・クルスは45歳の二児の母でありながら美貌と体型を維持していることへの賞賛に女子トークが展開。中瀬は「ファルハディ監督の映画に出てくる女優は全員美人。好きな顔なのか、美人ばっかり使うから、顔が見分けにくい。最初の頃、みなさん混乱しませんでしたか」と会場にも話題を振った。
最後に中瀬が「ファルハディ監督は高橋の好みの映画監督ではないか」といい、高橋も「他にも観てみようと思った。」と応えて、イベントは幕を閉じた。

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『誰もがそれを知っている』トークイベント
日時:5月20日(月)20:45〜21:15 ※上映後トークイベント
場所:ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
登壇:高橋ユキ(フリーライター/「つけびの村」著者)、中瀬ゆかり(新潮社出版部長)

<プロフィール>
【高橋ユキ】
1974年福岡県生まれ。2005年、女性4人で構成された裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。殺人等の刑事事件を中心に裁判傍聴記録を雑誌、書籍等に発表。現在はフリーライターとして、裁判傍聴のほか、様々なメディアで活躍中。著書に「霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記」(新潮社)、「暴走老人・犯罪劇場」(洋泉社)、「木嶋佳苗 危険な愛の奥義」(徳間書店)、「木嶋佳苗劇場」(宝島社)ほか。Twitterアカウント:@tk84yuki
▷ルポ「つけびの村」note記事URL:https://note.mu/tk84yuki/n/n264862a0e6f6

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【中瀬ゆかり】
1964年和歌山県生まれ。「新潮」編集部、「新潮45」編集長等を経て、2011年4月より出版部長。『5時に夢中!』(TOKYO MX)には番組開始初期からレギュラー出演。他にも、『とくダネ!』(フジテレビ)などにコメンテーターとして出演している。

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『アメリカン・アニマルズ』バート・レイトン監督トークイベント

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2004年アメリカ トランシルヴァニア大学で実際に起きた事件を描いたクライム青春ムービー。犯人は大学生4人組、狙うは図書館に保管された12憶円のヴィンテージ本.......。
何一つ不自由ない若者4人を犯罪に駆り立てたものとは何だったのか?前代未聞の計画は成功することができるのか?

実行犯4人を映画に登場させた今年1番の異色にして意欲作『 アメリカン・アニマルズ』が、5月17日から新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開されている。

このほど同作のバート・レイトン監督が来日し、映画秘宝編集長の岩田和明さんをゲストに迎え、記念イベントが行われた。


『 アメリカンアニマルズ』バート・レイトン監督トークイベント 概要
■日時 :5月10日(金)
■場所 :スペースFS汐留(東京都港区東新橋1-1-16 汐留FSビル3F)
■登壇者:バート・レイトン監督、岩田和明さん(映画秘宝編集長)




試写終了後、万雷の拍手に包まれ、同監督と岩田氏が登場した。岩田氏は本作のイラストTシャツを着てくるほどの気合いの入れよう。
一方のレイトン監督は、ハイエッジーな作品を撮った人とは信じられないほどの穏やかな佇まいで終始ニコニコとした笑顔。
早速、岩田氏の編集者としての視点による質問から始まった。


岩田氏:編集者として、まずこの映画は取材力が高いことに驚いた。記者として興味があるのですが、どうして実行犯の本人たちを出そうと思ったのか?
監督:報道でこの事件を知り興味を持った。私はドキュメントを撮っていたが、ドラマの中に彼らを登場させたら.......というハイブリッドなアイデアを思いついた。当事者に話を聞くのは楽しいものだから。
なぜ恵まれた環境にあった若者たちが犯行に及んだか、その動機を知りたかった。
彼らがまだ受刑中に、何度も手紙のやり取りをした。そして自分自身の背景も話し、彼らの信頼を得た。


岩田氏:映画に出てくれというのは何時の時点で伝えたのか?
監督:手紙のやり取りや面談を重ね、数ヶ月後に依頼した。鳥類の希少本を見つけたスペンサーはアーティストを目指していたことから分かるように、ただの強盗ではなく、目的を失った若者だったのではないかと直感した。

岩田氏:映画に出るのを嫌がった人は?
監督:図書館の司書は、これがどういう映画になるか分からないし、被害者としてまだ4人に怒りを感じていた。なので、直接自分が説明し、出演を説得した。
実は、完成した映画を観て最も喜んだのは司書。一緒に観ていて彼女の夫は途中で寝てしまったのに、彼女はエンディングで脚を踏み鳴らして踊っていたくらい(笑)。
もし彼女が内容に意義を唱えたら変えるつもりだった。でも、内容を肯定的に捉えてくれたのです。そして「許す」という境地に達していた。
逆に4人が内容に意義を唱えても変えるつもりはなかった。


岩田氏:私はある意味この映画をコメディとして観ました 。バカ悲しい青春映画のような.......。
監督:コメディの他、様々なスタイルをとったつもり。ただ、被害者がいるため、敢えて強盗シーンは辛くなるように描いた。一線を越えてしまった点を見せたかった。後半は面白いと言われる。
脚本の基本は知ることから始まる。彼らの若く軽はずみな行動、生活の苦労を知らないからリアルさがない。が、通常の生活はルーザーともいえるものだ。


岩田氏:実際の4人は演技をしたことはないのに、カメラの前でとても自然に見える。その訳は?
監督:時間をかけて信頼関係を築いたので率直に話してくれた。
技術的には、説明が難しいが、カメラの前にマジックミラーを置くアイデアを採用した。そのミラー越しに映った私と話せばカメラ目線で話して貰える。
カメラを見ないでカメラを意識せずに話すことができる。これはドキュメンタリーで培った技法。


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技術的に興味深い話が飛び出し、会場全体から「ほほぉ〜」というどよめきが起きたタイミングで、岩田氏より観客へ質問が呼び掛けられた。たくさんの挙手の中、時間の都合で3人が監督に質問する機会を得た。

① あの4人は実際どんな人物だったのか?
監督:出所後、10年を経ていたため、自身の罪の重さと共に、親を悲しませたという、親の悲しみをを背負ってるいるように感じた。

②題名の由来はダーウィンの本から?
監督:いい質問だ。盗もうとした鳥類の本、ダーウィンの「種の起源」から、アニマルズと取った。ダーウィンとは掛け離れた若者が盗む。動物的衝動のような意味を表現したかった。

③4人の配役はどのように決めたのか?
監督:多くの俳優たちと会った。著名で人気のある若手俳優が集まったが、私には彼らがディズニー映画に出てくるような甘ったるい2枚目にしか見えなかった。
まず犯罪グループのリーダーである、エヴァン・ピーターズが決まった。私はバリー・コーガンをとても気に入っており、彼の1度見たら忘れられない顔、繊細さからスペンサー役は彼しかいないと最初から直感していた。ところが、プロデューサーは人気のある有名俳優を勧めてきたが、そこは自分の信念を推し通した。全体的に人間味ある良いキャスティングができたと確信している。


最後に監督は、「今日は来てくれてありがとう」と日本語で観客たちに語りかけ、拝む仕草を見せると会場は大喝采!今後注目必至の若手新鋭監督を囲む貴重な夕べとなった。



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監督・脚本:バート・レイトン『The Imposter』(英国アカデミー賞受賞)
出演:エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン
原題:American Animals
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal
Pictures Limited 2018
(2018 年/アメリカ・イギリス/116 分/スコープサイズ/5.1ch)
公式サイト:http://www.phantom-film.com/americananimals/sp/

posted by 大瀧幸恵 at 00:00 トークショー












『ドント・ウォーリー』ガス・ヴァン・サント監督ティーチインイベント

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ガス・ヴァン・サント監督3年ぶりの新作、ホアキン・フェニックス主演『ドント・ウォーリー』が5月3日(金・祝)にヒューマントラストシネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷・新宿武蔵野館他にて公開される。
『ドント・ウォーリー』はオレゴン州ポートランド出身の風刺漫画家ジョン・キャラハンの実話。自動車事故に遭い一命を取り留めるが、胸から下が麻痺し、車いす生活を余儀なくされたが、持ち前の皮肉で辛辣なユーモアを発揮して不自由な手で風刺漫画を描き始めた。そんな彼に魅せられて、自伝の映画化権を獲得したのは、2014年他界したロビン・ウィリアムズ。監督にと相談を受けていたガス・ヴァン・サント監督は、ウィリアムズ亡き後、自ら脚本を手掛け、企画から20年の時を経た2018年ついに映画を完成させた。
公開に先立ち、ガス・ヴァン・サント監督が『ミルク』(2009年)以来実に約10年ぶり来日。クリエイター野村訓市氏とともに、2月19日(火)に開催された日本最速上映会に登壇した。

『ドント・ウォーリー』 ガス・ヴァン・サント監督ティーチインイベント概要

■日時:2月19日(火)
■会場:ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター1
    (渋谷1-23−16 ココチビル7・8階)
■ゲスト:ガス・ヴァン・サント監督、 野村訓市氏


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『ドント・ウォーリー』上映直後、興奮もさめやらぬ会場にガス・ヴァン・サント監督、監督の友人でもあるクリエイターの野村訓市氏が登壇した。2人の仲睦まじい様子から親交のあることがうかがえる。ジョン・キャラハンと同じくポートランドに住んでいた監督のことを野村は「ガスといえばポートランドのアンバサダーみないたところがあった」といい、監督がロサンゼルスに引っ越した理由を尋ねた。すると監督は「家族を置いてポートランドに来てもらって撮影するよりもロスで撮影した方がいい俳優に出てもらえる。ロスにはいい場所もある」と答え、ミランダ・ジュライがポートランドを舞台とする作品をロスで撮っていたことにインスパイアされたと付け加えた。

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今作の主人公ジョン・キャラハンは日本人にあまり知られていないが、ポートランドではどんな風に思われていたのかを野村が尋ねると、「80年代にカートゥーニストとして活躍し始め、僕が映画を撮り始めた頃に、ポートランドでローカルな人として知られるようになったんだ。カートゥーン(風刺漫画)は毒のあるもので、面白いけれど、いろんな人の気分を害したり、彼の障害を扱っていたりしたので苦情の手紙も届いていたようだよ。でも、それさえ喜んでいた」と語った。そしてキャラハンについての映画を作るきっかけを『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』のあとくらいに、ロビン・ウィリアムズがキャラハンの本の権利を買ったこととし、「彼はサンフランシスコに住みながら、ずっとジョン・キャラハンのファンだったんだ。それで僕に監督の話がきたんだよ」と説明した。

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監督はキャラハンが事故を起こして車椅子に乗っていることやアル中であることは知っており、「ロビンが演じるならば上手くいくのではと思っていた」という。しかし、脚本を2本書いたが、結局、映画化されなかった。そのためキャラハン本人から「一体どうしたんだよ。この映画ができる頃には死んでしまうよ」と言われたことを明かした。

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その後、キャラハンの言葉通り、2010年にジョン・キャラハンが、2014年にロビン・ウィリアムズが亡くなったが、コロンビアピクチャーズがまだ本の権利を持っており、改めて監督に興味があるかと打診があったという。断酒会やキャラハンが経験したプロセスに興味があった監督はそこにフォーカスしたドラフトを書きあげ、フォアキンに見せたのである。
野村が断酒会に興味があったのかと尋ねると「グループセラピーのことは知っていたよ。結構エキサイティングなんだ。8人が丸くなって、いろいろなことを話していくんだけど、みんなが嘘をついている。だから面白いものができるかもしれないと思ったんだ。僕は(ジョン・キャラハンが断酒会で学んだ)12のステップをやったことはないから、今でも問題を抱えているよ(笑)」と監督は意味深なことを語った。
その後、観客とのQ&Aでキム・ゴードンをキャスティングした経緯を尋ねられると、キム・ゴードンがガス・ヴァン・サント監督の『ラストデイズ』(2005年)に出演したことで付き合いがあり、ポートランドにショーで来れば見に行ったりしていたと話し、今作でのキム・ゴードンやベス・ディットーの話はアドリブだと明かした。

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また今後の作品について質問が出ると、「今、パリのファッション・ウィークについて書いているんだ。少年と父親の話だよ。『パラノイドパーク』がファッション・ウィークにいくって感じかな」と笑いを誘った。
主演のホアキン・フェニックスについて尋ねられると、「自分を徹底的に入れ込んでくれる素晴らしい俳優」と褒めた。

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野村は「登壇前の舞台裏でガスが『この映画を日本のみなさんが気に入ってくれるかな』と聞いていた」と話すと、会場からは割れんばかりの拍手が起こった。野村が「この映画は僕らの世代の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』。落ち込んでいる人や悩んでいる人にはいい話だと思う」と話すと、監督が「今日は来てくれてありがとう。ぜひ口コミをお願いします。そうしてくれないと誰も観ないから」と笑いを交えて観客たちに訴えて、会場をあとにした。

『ドント・ウォーリー』
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監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
出演:ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック
音楽:ダニー・エルフマン
原作:ジョン・キャラハン 
原題:Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot
配給:東京テアトル 
提供:東宝東和、東京テアトル
2018年/アメリカ/英語/113分/カラー
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公式サイト:http://www.dontworry-movie.com/